- 【2次】漫画SS総合スレへようこそpart78【創作】
107 :永遠の扉[sage]:2016/08/14(日) 23:40:08.35 ID:s8RD7gdj - 西方2493m。
一見普通の森の中で空間が裂けた。 裂け目はあっという間にブラックホールを思わせる暗紫の渦となり…… ある物を2つ、吐き出して閉じた。 少し前。ヘリの中で。 「……ん?」 殺陣師は一瞬ピクっと耳を動かした。何かあったのかと訝しんだのは斗貴子だがネコ型で耳のいい香美に それとなく問いかけても「?? 別に何もないじゃん」。 (じゃあ何だ今の反応? 何に反応したんだ彼女?) 斗貴子の疑念も震洋の文句もよそにアーミールックな先輩は心の中で、笑う。 (成程。このタイミングか。いよいよ彼女も参戦と) (ならちょっと、『調整』が必要、だな…………!) 森の中。 時空のねじれが吐いた物の片方は青年だった。 大きな刀を手にした金髪長髪の欧州美形だった。胸には認識票。 「フ……。やはり『ワダチ』の複製は……身を削るか。とはいえ時の結界を壊しうるのはコレしか、な」 ジジリと存在の解像度を下げながら溶けていく肉体の輪郭にやれやれと溜息をついた彼の名は総角主税。 銀成におけるマレフィックとの戦いで少女を庇い時空の彼方へ消えた、音楽隊のリーダーである。 周囲を見渡した彼は軽く息を吐いた。 「フ。てっきり元の銀成に出ると思っていたが……位相のズレという奴か、どうやら決戦場の近くらしい」 ヘルメスドライブを起動した彼は、香美や鐶と言った部下たちが自分のいる座標に近づいてきているのを見た。地図の上で マーカー表記の体(てい)を取っている彼らの移動速度はヘリのそれ、ならばココが坂口照星奪還の決戦場だと推測するに 些かの時間も要さない。 「……運よく来れたと思うべきなのだろうが…………。フ、果たしてこれは偶然なのか? 何者かの作為や導きを感じなくもない が……まあいい、ともかくもコレで義理を果たした。『本家への』義理を、な」
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108 :永遠の扉[sage]:2016/08/14(日) 23:40:59.50 ID:s8RD7gdj - 剣を握っていなかった方の手で抱きすくめていたのは女性である。年の頃は20代前半といったところか。流れるような
金髪はどこか総角との血縁を疑わせる色艶だ。どうやら意識がないらしくジっと目を閉じているがそれでも知性の高さが 伺えるのは何も小さめの眼鏡のせいではない。雰囲気だ。磨きぬいてきた佇まいが無言の説得力を与えている。 彼女には2つ、目立った特徴があった。1つは髪の先端。セミロングの先端は虹を並べたような色艶に分化している。 赤や青、紫に黄色と言った基本的な色彩の他に、黒や茶色といった地味なものも混じっている。そして……金髪のブランク に染まっていた部分がどういう訳かみるみると銅色に染まっていく。 もう1つの特徴は服装だった。『法衣』を纏っている。露出こそ少ないが胸部ははちきれそうな程に膨らんでおり、却って 妖艶だった。 「ソウヤ君……」 覚醒の兆候が見えた彼女を総角は、手近なベッド型の石にそっと降ろし南西を見据える。 「同じ改竄者の手によって時空の彼方に追いやられたお前が今まで何をしていたのか……。ひょっとしたら魂だけを過去に 飛ばし何らかの対策を打っていたかも知れないが……フ。聞いている時間はないな。俺には俺の戦いをすべき責務がある。 義理は返した。別行動だ。お前の方も好きなよう動くがいいさ」 消える総角。同時に身を起こした法衣の女性はゆっくりと辺りを見回し──… 数分後、チメジュディゲダール師範に率いられた戦士たちはここを通過するが、その時のベッド型の石には……もう誰も 横たわっていなかった。 「フ」 森を駆けながら総角は笑う。 (しまったぞ集合地点に居る犬飼・円山・戦部と俺は面識が……無い! ヘルメスドライブで瞬間移動できないぞこれじゃ!) 汗を頬に浮かべたが、彼はすぐさま余裕タップリの表情で走り直す。傍目から見れば英姿颯爽だが、内心は(どうする鐶たち の方へ跳んで合流するか? いやそれだと目的地から一旦遠ざかるしツッコまれる! 策士気取るなら犬飼たちの所にも飛 べるようにしておけよと呆れられる! それは嫌だ、走って着く方が絶対速い!)と焦っているなんとも締まらない男だった。 同刻。銀成市・聖サンジェルマン病院。職員を務める戦士用の稽古場で。 早坂秋水は自分の繰り出した竹刀が弾かれるのを見た瞬間、少しだがその端正な瞳を丸くした。相手は両目を包帯で 覆っている楯山千歳。少し前あったレティクルエレメンツ・木星の幹部との戦いで一時的にとはいえ失明した彼女が稽古を 申し込んだのは秋水が度重なる疲労によるしばしの眠りから目覚めてすぐだ。 「感謝するわ戦士・秋水。武器を持った相手に馴染むには貴方のような優れた剣術家と戦うのが一番だから」 「……傷は、大丈夫ですか?」 瞳を隠しても匂い立つような色香が漂ってくる妙齢の女性を秋水という比肩なき美剣士は心配そうに眺めた。手の甲や頬 についた痛々しい青痣はもちろん稽古でついたものだ。相手が光を失くしている以上秋水としては極力加減したかったが、 「本気で来て貰わないと私も実戦で戦えないから」という千歳たっての申し出に迷いを断って……攻め続けた。 「しかしたった20分ほどの稽古で10回に7回も防げるようになるとは……」 「索敵専門だったから、敵とか攻撃の気配には敏感なの。さすがに逆胴は防げなかったけど…………」 軽く脇腹をさする千歳。もちろん必殺の一撃を盲目の女性相手へ全力投球するほど非情な秋水ではない。技が技だけに 幾分か抑えたものを予告つきで(それも千歳の要請に従う形で)放ってみたが、流石に完全回避とまではいかなかった。 「あれは強力な攻撃が来たらヘルメスドライブで咄嗟に避ける訓練だったの。でも視覚がないぶんいつもより対応が遅れて いて、だから転移前の一瞬、掠ってしまったようね」 (剣道部員なら掠っただけで5分は寝込む威力なんだが……) 千歳は平然と立って稽古を続けている。大した精神力だと秋水は思う。 (この街がレティクルに狙われている疑惑もある。だからいざという時の守りの戦力として少しでも最善を、か) 彼女の過去は又聞きだが知っている。とある任務で多くの子供を死なせてしまったのだ。優しさゆえに犯してしまった些細 なミスを悪用したホムンクルスこそ本当の元凶ではあるが、それを防ぎたいと願ってきた真面目な千歳にとっては自責と 自罰の決して抜けぬ咎の棘。
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109 :永遠の扉[sage]:2016/08/14(日) 23:41:25.23 ID:s8RD7gdj - (演劇の時、生徒達を見る千歳さんの目は……)
『今度こそ』という決意に満ちていた。その光を脳裏に照らすたび秋水はカズキを思い出すのだ。蝶野邸で多くの人命を救 えずパピヨンすら殺さざるを得なかった悔恨あらばこそ、彼は「今度こそ」と奮起し秋水相手の苛烈な特訓をやり抜いた。 今の千歳はカズキに似ている。しかし剣を交える秋水の方は彼を相手どっていた頃の彼ではない。相手を、ただの練習 道具としか看做(みな)せなかった頃ではない。相手の理念を理解し、尊重し、そしてそれを達するための努力に貢献できる コトに静かな幸福と充足を覚えている。 (俺も千歳さんたちと同じくこの街を守る使命を帯びている。残留した他の戦士たちも同じだ。守りたいという気持ちは同じ) そういう者たちの力になりたいと秋水は思っている。剣で助けるだけではない。剣客としての着眼点を提供し、仲間たちの 思考の幅を少しでも広げる助けるになりたかった。 「そろそろコレを使うわ」 千歳が構える小ぶりな刀に青年は見覚えがあった。 (シークレットトレイル。行方を晦ませたねごっちー……もとい根来が残していった武装錬金) 戦友の両目を潰した狡猾な忍びを討つため自由な立場の抜け忍になった根来。彼が去りぎわ千歳の枕頭に愛刀を置いて いったと判明したのはつい先刻。身を守れ……などというメッセージは孤高の彼らしくないと皆思うが千歳の状況を鑑みると 到底一笑には伏せぬ推測だ。 (とにかく目が見えない相手とはいえ手にしているのは真剣……。盲剣法という言葉もある、却って無軌道な攻撃が来るかも 知れない。注意を──…) 秋水は決して千歳を見縊っていた訳ではない。索敵専門とはいえかつて剛太が音を上げた過酷なサバイバル訓練をやり 抜いた体力の持ち主なのだ。大戦士長・坂口照星の懐刀として難易度の高い潜入任務を幾つもこなしてきた行き掛かり上、 いざという時の心得、武術の嗜みがあるのだって秋水は見抜いていた。演劇で剣舞を披露した彼女に対し(初段以上はある。 剣道1つに絞れば1年で三段相当の腕前になれる)とさえ太鼓判を押したのだ。 だがそんな彼の動体視力を超越する動きを千歳は起こした。端的にいえば「消えた」。 (防人戦士長直伝の抜重? いや、違う!!) 即座に振り返る。白刃が白刃を受け止める音がした。舞い散る火花の向こうには浮遊する千歳。床と足裏は2mほど離れ ている。飛んで跳ねる剣法は決してない訳ではない。タイ捨……松林蝙也斉……。だが秋水のアンサーは違う。 (瞬間移動! 俺の背後にワープし剣を、か!!) 刀を引きつつ空中で身を捻る千歳。斜め下へ向かう斬撃は落下質量を加味した物だ。47kgと軽量な千歳ではあるが 未知の刀法に軽く酩酊する秋水はごく僅かだがたじろいだ。剣を弾く。陽炎を抜けた。千歳はもう真横に居る。横目で 顔を見た秋水は裂帛の気合を上げながら……彼女に背を向け! 剣を動かす! 真・鶉隠れ。剣風乱刃で敵を包囲して切り刻む忍びの技が乱れ斬りに弾かれ床に刺さった。 千歳は、頬を掻いた。 「私を囮にすれば少しぐらい当たるかと思ったけど」 「見事な策ですが、姿を見せようとするあまり近づきすぎたのが敗因です。あの距離に瞬間移動できるなら迷わず刺すのが 剣士……無銘なら間違いなくやっていた」 「なのに私はしなかったから、囮、と」 小細工を弄するのも考えものね。どこか悩ましく息を吐く千歳に 「ですが瞬間移動による斬撃と真・鶉隠れの二者択一は攪乱には充分です。どこから来るか分からない斬撃と、瞬間移動に 目を奪われた隙に亜空間から発生する乱撃……。うまく組み合わせれば充分敵の意識を逸らせます」 秋水は自分なりの感想を伝える。 「ありがとう。でもやっぱり、決定打にしようとするのは……危ないわよね」 ええ。秋水は頷く。剣士だから知悉し抜いているのだ。功を焦る「力み」がどれほど危険かを。 「ただでさえ目が見えなくなっていますからね。攪乱は回避に重きを置いた方が」 「そうなると、決定打は」
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110 :永遠の扉[sage]:2016/08/14(日) 23:41:39.86 ID:s8RD7gdj - 別の階の稽古場に佇む防人衛はその鍛え抜かれた筒型の体を静かに踏み出す。
大人ほどある背丈の藁人形に左の掌底を叩き込み、右の拳を上から当てる。 ずっと研鑽している重ね当ては様々な人間との様々な交流によって少しずつ完成形に向かいつつあった。 (だが……あと1つ。あと1つ…………何かが足りない) (この程度では俺は子供達を……。赤銅島の過ちを、また…………) 閃光を放ち爆発する藁人形に背を向けながら防人は憂いのある表情を浮かべる。 「……いや、未完成ってカオしてるけど、ソレもう充分な威力じゃないの?」 呆れたような声に防人はふっと顔を上げる。部屋の入り口に居るのは輝くような少女だった。艶やかな金髪をヘアバンチ という筒で小分けにしたセーラー服の彼女の名はヴィクトリア。小さいのにいつも戦士相手には剣呑な目つきをしている 彼女はホムンクルスではあるが、自ら志願してなった訳ではない悲劇ゆえに今は銀成学園の生徒の1人だ。生意気だが 根はマジメで優しい少女と知っているから防人は逢うたびついつい気軽に応対する。 「ブラボー。充分といってくれるのは励みになる。だがまあ、俺的にはまだまだだな。見てくれ」 技の話である。藁人形の上半身は右が3分の1ほどが削れず残っている。 「柔らかい素材すら完全には爆砕できていないんだ。俺が戦うホムンクルスは金属質……この程度ではとても切り札には、な」 「それでもニアデスハピネスと……黒色火薬(ブラックパウダー)とどっこいどっこいの威力じゃない」。耐火不燃性の床の上で メラメラばちばちと燃え盛る藁くずをゲンナリした半眼で肩落としつつ眺めるヴィクトリアはごちる。「重傷で戦線離脱と聞いて るけど……不十分でコレって。呆れるしかないわ」 「ん? ああそうか。キミ、もしかしてパピヨンを探しているのか?」 会話の流れからすると妙な気付きだが、「敵に何やら超エネルギーを降ろす媒介として狙われているらしい」と先の戦いで 判明したため病院地下深くに匿っているヴィクトリアが、である。嫌いな戦団に説教されるの覚悟の上で部屋を出てうろつ いているとすれば、最近急速に距離を縮めた気まぐれな蝶人を探していると考える他ないのである。果たして図星だった らしい。「その様子じゃ見てないようね。いいわ」。プイっと出て行くヴィクトリア。防人は考える。 (パピヨンがいない? ボロボロで収容されたのに? 病原菌”そのもの”な幹部の、天敵の攻撃を受けて消耗しきっているのに……?) (まさか彼……病院(ココ)の外へ? 「なあ、病院(ココ)の外って行っちゃいけねえのか?」 「やめとこうよ岡倉君。演劇の途中でヘンな武器出しちゃった僕たちは念のためしばらく隔離って話だよ」 「大浜の言うとおりだぞ。じっとしてろ。どうせバイクだろ。雨が降りそうだからカバーかけたいとかそんなんだろ」 「うるせェ六舛!! 俺のバイクは寄宿舎の裏にこっそり止めてんだぞ! 屋根がないから予報で雨って聞いたら、人情だろ!」 同じく地下施設の一室で騒ぐ少年3人の傍で少女2人は困惑顔。 「……ねえちーちん、絶対何か、起こってるよね」 「うん……。演劇の会場、あの養護施設、火事起こしたのに何故かすぐ元通り、だし」 普段は対ホムンクルスのミーティングルームとして使われているその部屋にはテレビがあった。ちょうどローカルニュース が放映中で、画面の中では見慣れた押倉レポーターが市内でマイクを持っていた。
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111 :永遠の扉[sage]:2016/08/14(日) 23:42:06.90 ID:s8RD7gdj - 「ご覧いただけるでしょうか。あのテープの向こうは銀成市の再開発地域の中心部ですが、およそ500mに渡って何か途轍
もない熱源が直撃したように溶けています。現在、警察や消防が現場検証を行っているため直接立ち入るコトはできませんが、 私達から見える範囲でも鉄骨ごと溶けたビルや放置車両のものだったと思しき残骸、更にアスファルトに大きく開いたクレーター など被害の凄まじさを伺わせる光景が広がっております。更に視線を変えると最上階付近だけが消滅しているビルが遠くに 見えます。記録映像出ますでしょうか。はい。こちらは私が今の現場につく前に撮影した映像ですが、1つのビルの屋上に 複数のビルの最上階が突き刺さっています。果たしてこれは今見える上部が消滅したビルのものでしょうか。崩落の危険 があるため直接屋上へは行けませんでしたが、一番近いビルからでも100mほどの距離があります。私、現場で作業する 消防員の方に話を伺いましたが、普通の崩落事故ではまず有りえないとのコトでした」 画面が切り替わり、視聴者提供の映像が流れる。再開発地域上空を遠くから捕らえたものだが、巨大な火球が膨れ上がり ながら落ちていく様子に撮影者の悲鳴や驚きが混じっている。 「これだけではありません。本日銀成市ではあちこちで小さな爆発が発生したという通報が相次ぎました。銀成市消防局に よると現在のところこの爆発による火災の報告は入っていないとのコトです」 目撃者の映像へ。 「なんか急に、バチバチーって、ね」「そうそう。最初花火かなと思ったけど、やまなくて」 「爆竹みたいな音だったよな」 「し、信じられないかも知れないけど、渦、爆発の近くに渦があって」 「しかも目が、疵(きず)のついた目がこっちを……」 押倉レポーターに戻る。 「他にも市街地で巨大な鳥がビルに激突したという情報も寄せられています。春先から初夏にかけて相次いで発生した 資産家邸宅集団行方不明事件や銀成学園集団ヒステリー事件の記憶もまだ覚めやらぬころ突如として頻発した怪現象。 市街地からわずか9kmという再開発地域で発生した大規模な爆発事故に市民達は眠れぬ夜を過ごしそうです」 岡倉英之、大浜真史、六舛孝二、河井沙織、若宮千里。武藤カズキや秋水たちと縁深い生徒たちはひしひしと感じて いた。何かよくない現象が起こりつつあるのではないかと。それは彼らと共に保護された──演劇中、敵の能力によって 強制的に武装錬金を発動させられたため、経過観察が必要だった──10人近くの生徒も同じだった。 「ブラボーさんとか寮母さんとか、貴信君たちとか、僕たちを守るために戦うよね、絶対」 「何かできるコトねえかな。学園が襲われた時とか守られっぱなしじゃねえか俺達」 「そう思うなら病院を出ようとするな。指示にちゃんと従い、的確に行動する。それが一番だ」 「ですよね。あとは……励ますぐらいしか」 「そうそう。元気で無事で済めばみんな笑ってくれるよきっと」 5人は思う。それが自分達のすべきコト……と。 「では不肖たちの成すべきコトは!?」 「交戦したマレフィックどもの細胞片の回収です、母上」 廊下で浅黒い少年が頷くと、シルクハットにタキシードのお下げ髪少女は「なのですっ!」とロッドを振り上げた。 2人は鳩尾無銘と小札零。生真面目な少年忍者とお気楽極楽・実況大好きマジシャン少女である。2人は義理だが母子の 絆を有している。 「我らがリーダーもりもりさんは目下のところ行方不明! ですがご帰還されたときの為、備えて動くは必定なのであります!! もりもりさんは武装錬金をコピー可能な特異点!! 対象のDNA情報をば入手すれば取得は容易! 「だからこそマレフィックどもも自分のDNAを取られまい、残すまいと常に警戒を続けている。実際先ほど10人居る奴らの 大半と交戦状態に陥ったが……誰1人、髪1本すら残していない……!」 筆舌に尽くしがたい脅威を肌で体感したからこそ無銘は敵の能力が欲しい。首魁たる総角に何としても複製して欲しい。 「そこで不肖がご用意いたしましたのがこのキット! 細胞保存用の中型カプセル!!」 「中型カプセル〜」。無銘は予め録音しておいたエンゼル御前の声を流した。 ともかく掌ほどある強化ガラス製の円筒を煙と共にポンと出した小札、手に乗せた。 「本来ホムンクルスの肉体は本体と分離したり死んだりしますと即座消滅、風に還る細胞とばかりにちりぢりばらばらに なりまするがこのカプセルをば使えばあら不思議!!」
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