- 【デビルマンG】高遠るい総合part23【ボイス坂】【ミカるんX】
277 :作者の都合により名無しです[sage]:2014/05/10(土) 15:50:41.91 ID:FfTA/lB90 - うん
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31 :永遠の扉[sage]:2014/05/10(土) 20:16:42.33 ID:FfTA/lB90 - レティクルエレメンツ幹部の1人、リヴォルハイン=ピエムエスシーズ。
その号は「坤宅に捧ぐ済世輪菌(マレフィックサターン)」 なにやら小難しい単語が並んでいるが、イオイソゴというあどけない老女によれば 「”女房の実家に救いのつまった穀物倉を捧げる”……それだけの意味じゃよ。明瞭明瞭。ひひっ」 らしい。 1つ1つなぞってみよう。 まず、坤宅(こんたく)とは妻の実家。 坤とは、天地を示す「乾坤」の坤でつまり地面だ。地面には窪みがある。窪みがあるのは女性。つまり「坤」=女性。妻。 済世(さいせい)とは要するに救世。頭文字は”救済”なる言葉があるように同列なのだ。 最後の輪菌(りんきん)というのは病原菌の一種……ではない。なんと「丸い穀物倉」を指す。 漢字が大好きなイオイソゴはこの話題になると、とかくやかましく鬱陶しい。 「なぜ”ばいきん”の菌が倉を指すかじゃって? ひひっ、それは、それはじゃなっ! 菌という字の下半分にあるのじゃ!」 「「禾(のぎへん)」を「□(くにがまえ」で囲った”ぱーつ”あるじゃろ! のぎへんってのはおいしい穀物じゃ! くにがまえは ”囲む”って意味じゃ! しかも四角い癖に”丸く囲む”とかぬかす生意気ふとどき千万な輩じゃ、許せんっ!」 「とにかく穀物を丸く囲む倉って意味なのじゃよ。「菌」のくさかんむりの下の”ぱーつ”」 「で、漢字っていうのは連想げーむなのじゃ。菌の語源は「倉のように丸い草」……つまりきのこじゃ」 「でも下の”ぱーつ”のせいで”倉”として使われるコトもあるのじゃよ、「菌」って文字!」 ……かつて戦士だったころ、敵方に囚われた妻を助けられなかったリヴォルハイン。 号には亡き妻への想いが見受けられるが真意までは分からない。 何しろ仇であるレティクルエレメンツに属しているのだ。戦団を裏切りホムンクルスの共同体に属す……ただでさえ倫理的 に許されない裏切りをしているというのに、よりにもよって妻を殺した組織に属しているのだ。これで無理やり従わされている のならまだ同情も余地もある。だが自発的だ。自ら志願し属した。ここまで書けば「実は妻の仇を取るタイミングを虎視眈々 と狙っているのだろう、隷属はうわべだけなのだろう」と彼知らぬ人々は巷間溢れる書物の不文律に照らし察するが、 「わが妻は戦いの中で生を全うしたのだ! 身重に関わらず敵に捕らわれ拷問されたと人は同情を寄せるだろう。だが わが妻は吏使に屈したりはしなかった。誇りを貫いたのだ。つまりは勝ったのだ。結果訪れた”死”などは結果に過ぎん。 死と形而的敗亡は同質ではない。形の上では敗亡する道めがけ命をぶつけたればこそ英雄と呼ばれる者が居る……妻 はそれだ。仇討ちうんぬんを論ずるならば既に奴自身が勝ちを以てやっている。夫たる及公に怨嗟引きずる道理なし!! むしろ仇を討たんと生ぬるい感傷で動く方が冒涜! 死者への冒涜であろう!」 復仇の意思はまったくない。 ちなみに妻の名は幄瀬みくす。鳩尾無銘の実の母親らしい……とは聖サンジェルマン病院のナースの話だが、確定は していない。母親だと仮定した場合、リヴォルハインは自動的に無銘の実父となる。 だとすれば。 実母を殺し、自らを犬の姿に押し込めた仇2人に復讐せんとする無銘と。 復仇を捨てているリヴォルハインとでは。 なかなか隔絶したものがある。 もっとも、現段階で彼らが親子だと断定できる証拠は1つとして存在ない。果たして、どうなのか。 それはともかく、なぜ元戦士が共同体にいるのだろう。 「正邪を問うては成せぬ救いがあるのだ!!」 「及公、倫理などは時代的相対の幻影に過ぎぬと思われている!! いやそもそも倫理などは従う物ではない! 創る物だ! 何者かの都合を脱さぬよう創られし物に、万民が不服を抱きながら隷属するゆえ倫理は幻影と化し形骸に至る!! ゆえに 人民は常に自ら不合理を砕き自ら新しき倫理を創出すべきなのだ!! さもあれば衝突せん? 否!! 衝突とは不徳ゆえ 起こるものだ! 相手を心から納得させ笑顔にできる倫理を持たぬから人はぶつかり合い傷つけあう!!」 リヴォルハインが奨励する倫理とはつまり、独りよがりな物ではなく、他者の敬服できる、心から正道ゆく言わば”規範”。
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32 :永遠の扉[sage]:2014/05/10(土) 20:23:57.96 ID:FfTA/lB90 - 感染するといっても直接的な被害はまったく皆無だ。
『体が弱い』程度の存在でさえ、くしゃみ1つするだけで呆気なく馴染む。 『極端に免疫が落ちて』さえ居なければ、リヴォルハインと化した細菌たちは全く気付かれず活動する。 感染者の……脳の中で。 蠢動する陰謀など知らぬ小札はただナレーションする。大道具が置かれるまでの時間稼ぎだ。 『百年未来とボス、新撰組、ブラボー、五種、ライトニングまひろスパスパ槍』 『縺れた糸を縫って、神の手になる運命のシャトルが飛び交う』 『ダイホンナクシタ銀成に織りなされる、神の企んだ紋様は何』 『巨大なタピスタリーに描かれる壮大なるドラマ』 『その時、ブラボーは叫んだ』 『ゴディバ! と』 (フィアナじゃないんだ!?) (なぜにゴディバ!?) (声か! 声なのか!! 声なんだな!!) 最低野郎たちがさざめくなか、小札は力強く断言する。 『いよいよ、キャスティング完了!!』 (というか台本なくしたんだ……) 観客達ややウケ。 舞台袖。 (小札!! 盛り上げてくれるのはいいが!!) 秋水は穏やかではない。ハードルが上がるわ内情さらっとバラされるわでたまった物ではない。 「あれよね。すごいコト言ってるっぽいけど冷静に見るとまったく次の道筋示していないわよね」 「そりゃ毎週毎週行き当たりばったりだったからな。そこがブラボーなんだが」 困ったように口を押さえる桜花に「基本適当」と帽子回しつつ言う防人。「それ別の話ですよね」とツッコむのは斗貴子。 「大道具配置完了しました!」 来たかと秋水は頷いた。色々悪い流れが続いているが(総角の裏切り疑惑は自分で撒いた種だが)、剣は逆境での粘り を与えた。流れは頭に入っている。斗貴子と署で話をする、そういう流れだ。即興劇とはいえ舞台袖に掃ける時間はある。 考える余裕も……。 秋水は顔を上げ、掌を叩く。眼光が気合に満ちた。 (試合と同じだ! 落ち着いて戦えば目はある!!) 舞台を見る。宇宙ステーションになっていた。 (無理だ!!) 無理だった。 昔のSF映画にあるようなコンピュータのコンソールがボタンを赤やら緑やらにビコビコ光らせている。それだけなら実験 施設設定で進められるのだが、窓が大変やばかった。およそ6割を青い地球の遠景が占めている。もちろん秋水、すぐ諦 めた訳じゃない。地球が映っている液晶パネルだと誤魔化すのも考えたが、上の方に「おいでませ弟5宇宙ステーション」 とかいう横断幕がデカデカと掲げられている。もうどうしようもなく宇宙ステーションで整合性は完全敗北だった。 (なんで) 秋水の体が崩れる。膝を突く。倒れながら、思う。 (なんで宇宙ステーションなん……だ) (秋水先輩が耽美溢れる顔で倒れた!! 警察署行くという流れ完全無視の暴挙に負けたーーー!!) まひろは小声で叫んだ。
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33 :永遠の扉[sage]:2014/05/10(土) 20:26:04.16 ID:FfTA/lB90 - >>31と>>32の間が抜けていました。すみません。
「それを各人が示しもせずアリモノに任せるまま任せている故いまある倫理は常に前時代的……なのだ! だから脱さねば ならない、壊さねばならない!! そのため及公は『病気』となられよう。旧弊が敬意の循環を滞らせ弱り果てた世界! その 病みし体質と困憊の劇的回復を促すため病気となりて刺激する!」 何やら理想を持っているようだが、悪の組織に属し、助けているのだから迷惑な話である。何しろ彼は細菌型ホムンクルス で、人の脳髄にもぐりこんで余剰帯域を勝手に使い分散コンピューティングを行っている。規模は空前だ。いまや彼の形なき 民間軍事会社の武装錬金は、量子コンピュータレベルの巨大な演算機と化している。その研究成果が悪党どもの肉体強化 に連日貢献しているのだから、世間的に言えばリヴォルハインはそれこそ独りよがりな倫理にトチ狂った人物だろう。 にも関わらずレティクルエレメンツの中でただ1人、神と崇められるのだから世間というのは妙な物だ。 一体何をしたのか? 「及公は錬金術の鉄則を崩す。絶対戻りえぬとされているコトを打破する。戦団ではそれを成せない。10年前わが妻を亡く したとき確信した。レティクルならば……成せる。盟主メルスティーンたちの技術力ならば必ず成せる」 (その救いはここからなのだ!) 2m近い貴族服の男が舞台を見る。即興劇は秋水たちが斗貴子と共に警察署へ行ったばかりだ。 幕が閉じ、何やらごとごとと物音がする。倉庫から持ってきた大道具を配置しているのだろう……手の空いた部員たちが 突貫作業でいろいろ運んでいるのを道すがら見たリヴォルハインだから察しがつく。 「どうも、順調すぎるの」 傍から声がした。腕組みするイオイソゴ──すみれ色のポニーテールにかんざしを差している少女──は物足りない表 情だ。 「ゴばーちゃんが思われるのも無理からぬコト……。早坂秋水と津村斗貴子がうまく立ち回っているのだ」 「ひひっ。そのうえ総角率いる音楽隊が裨益(ひえき。力添え)しているとあらば大過なきは当然か」 それでは困るのだリヴォルハインは。銀成学園演劇部はすでにかなりヒドい目にあっている。斗貴子たちの助力で千里が 徹夜も辞さず書き上げた台本をパクられ、先に上演されたのだ。 ゆえに即興でやる他ないのだが、それは思いの他うまく行っている。 「だが最後の幹部……マレフィックアースの器をいぶり出すには平穏で合ってはならんのだ」 リヴォルハイン=ピエムエスシーズにとってもまたこの劇は重要な意味を持っていた。 (ライザウィン=ゼーッ!。勢号始は言った) ──『マレフィックアースの器』。オレでありオレでない存在を降ろすその器が誰か……教えてやるぜ。 ──オレは別の時系列や並行世界に降り立ったコトがある。だから分かるぜ。誰が器に適してるか。 ── ヒントは演劇だ。目覚めさせるタイミングはそこしかねー。 ──お前の能力……リルカズフューネラルなら一斉蜂起前に違和感なく覚醒できる。 ──他んとき、強引に発現させるコトも可能だろーけどさあ、そするとレティクルは困る。 ──だって一度負けてるからな。蜂起ギリギリまで事は構えたくない。戦士との戦いは避けたい筈……。 「違和感なく器を覚醒させるには、この劇、もっと荒れて貰わねば困る」 「やる気か”りう゛ぉ坊”」 ひひっ。い汚い笑みを聞きながらリヴォルハインは神経を研ぎ澄ませる。 (やりようはある。なぜなら既に銀成学園の生徒達は──…) ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ (及公に感染している) 彼が細菌型というのは最初の話。急速な進化のせいで今はウィルスの集合だ。 ウィルスに感染するウィルス……ヴァイロファージ。 雑多な細菌やウィルス”だけ”ホムンクルスにする特殊な幼体ウィルス群……それがリヴォルハインの正体だ。
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34 :ややこしいので>>33の続きから[sage]:2014/05/10(土) 20:27:18.14 ID:FfTA/lB90 - 感染するといっても直接的な被害はまったく皆無だ。
『体が弱い』程度の存在でさえ、くしゃみ1つするだけで呆気なく馴染む。 『極端に免疫が落ちて』さえ居なければ、リヴォルハインと化した細菌たちは全く気付かれず活動する。 感染者の……脳の中で。 蠢動する陰謀など知らぬ小札はただナレーションする。大道具が置かれるまでの時間稼ぎだ。 『百年未来とボス、新撰組、ブラボー、五種、ライトニングまひろスパスパ槍』 『縺れた糸を縫って、神の手になる運命のシャトルが飛び交う』 『ダイホンナクシタ銀成に織りなされる、神の企んだ紋様は何』 『巨大なタピスタリーに描かれる壮大なるドラマ』 『その時、ブラボーは叫んだ』 『ゴディバ! と』 (フィアナじゃないんだ!?) (なぜにゴディバ!?) (声か! 声なのか!! 声なんだな!!) 最低野郎たちがさざめくなか、小札は力強く断言する。 『いよいよ、キャスティング完了!!』 (というか台本なくしたんだ……) 観客達ややウケ。 舞台袖。 (小札!! 盛り上げてくれるのはいいが!!) 秋水は穏やかではない。ハードルが上がるわ内情さらっとバラされるわでたまった物ではない。 「あれよね。すごいコト言ってるっぽいけど冷静に見るとまったく次の道筋示していないわよね」 「そりゃ毎週毎週行き当たりばったりだったからな。そこがブラボーなんだが」 困ったように口を押さえる桜花に「基本適当」と帽子回しつつ言う防人。「それ別の話ですよね」とツッコむのは斗貴子。 「大道具配置完了しました!」 来たかと秋水は頷いた。色々悪い流れが続いているが(総角の裏切り疑惑は自分で撒いた種だが)、剣は逆境での粘り を与えた。流れは頭に入っている。斗貴子と署で話をする、そういう流れだ。即興劇とはいえ舞台袖に掃ける時間はある。 考える余裕も……。 秋水は顔を上げ、掌を叩く。眼光が気合に満ちた。 (試合と同じだ! 落ち着いて戦えば目はある!!) 舞台を見る。宇宙ステーションになっていた。 (無理だ!!) 無理だった。 昔のSF映画にあるようなコンピュータのコンソールがボタンを赤やら緑やらにビコビコ光らせている。それだけなら実験 施設設定で進められるのだが、窓が大変やばかった。およそ6割を青い地球の遠景が占めている。もちろん秋水、すぐ諦 めた訳じゃない。地球が映っている液晶パネルだと誤魔化すのも考えたが、上の方に「おいでませ弟5宇宙ステーション」 とかいう横断幕がデカデカと掲げられている。もうどうしようもなく宇宙ステーションで整合性は完全敗北だった。 (なんで) 秋水の体が崩れる。膝を突く。倒れながら、思う。 (なんで宇宙ステーションなん……だ) (秋水先輩が耽美溢れる顔で倒れた!! 警察署行くという流れ完全無視の暴挙に負けたーーー!!) まひろは小声で叫んだ。
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35 :永遠の扉[sage]:2014/05/10(土) 20:28:13.78 ID:FfTA/lB90 - なのに幕は上がるのだ。
「チョ、チョット待って……」 誰だ情けない声をと秋水、起きながら見た。斗貴子がもじもじと手を伸ばしていた。彼女もまた心砕けたらしい。 (そりゃそうだ!!) でも幕は上がる。出なければならない。大道具にいろいろ言いたくなったが後だ。 演劇部員たちを見る。誰もが首を振る。当然だ。誰が宇宙ステーションなど行きたがるか。僕らは未来の地球っ子なのだ。 ヴィクトリアが冷徹に呟く。 「ジャンケンね」 ((((絶対負けられない戦いだ!!!)))) うおおお。秋水が、斗貴子が、総角が、まひろがそして総ての演劇部員達が拳を掌で包みながら突貫した。 (結果がこれだ!!) 舞台に行った部員達を見て秋水は観念した。 特攻隊に選ばれたのは──… 毒島。 千里。 大浜。 貴信。 (お、おばあちゃんの作る弁当かっ!!) 斗貴子も絶望したようだ。目をぐるぐるしながら妙な裏拳を繰り出す。 (み、みんなには悪いけど地味すぎるよ!! 全員人前で喋るの苦手そうだし!!) 沙織を筆頭にみんな絶望が色濃い。 自業自得だ。そもそもこんな難局を、ジャンケンで負けるような運の無い者どもに任せる方がどうかしている。 「と、とにかく!! 勝たせるようサポートをしなきゃ!!」 桜花は、他の部員に悟られないようこっそり武装錬金を発動。エンゼル御前を飛ばす。 「フ。そういうコトならば) 総角も倣う。もともと桜花とは旧知の間柄なのだ。皆神市で根来と千歳の邪魔をした時だって使っていたのだ御前様。 しかし異変は御前経由で指示が降るより早く起こる。 ぱぁん。 大浜がビンタを喰らった。部員はおろか観客すら呆気に取られた。 なぜなら殴ったのは、貴婦人姿で大人しげなおかっぱ少女……だったからだ。 (ち! ちーちんが大浜先輩ビンタしたーーーーーーーーーーーっ!!) まひろは見る。すっかり目から正気を失くしている千里を。 (あ、あの目! あの目は!!) 沙織も口に手を当ておののく。何やらあるらしい。秋水はハっとした。 (そういえば彼女、原作第一話冒頭で騒ぐ武藤たちに怒鳴っていた!!) (何の話!!? 違うよ!!) (秋水先輩さっきからヘンだよ!! 落ち着いて!!) と言われるが正直止まれそうにない。演劇発表という、戦いとはまた一風異なる非日常の世界で突然即興劇をやらされ ているのだ。多少の興奮もやむなしだ。
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36 :永遠の扉[sage]:2014/05/10(土) 20:28:57.50 ID:FfTA/lB90 - とにかく千里の異変についてまひろ解説。
(三日連続で徹夜した時の目!! 理性も何もかもフッ飛んで箱ティッシュ1枚1枚をもぐもぐ食べたときの目!!) (た、多分、ちーちんは、何かインパクトのあるコトしようとって焦りまくったんだよ!!) (そして暴走した!?) 斗貴子たちがどうしようと考える間に金切り声が耳を叩いた。 「あなたたちのせいで宇宙ステーションが落ちるじゃないの!!) (落ちるんだ!!) 驚かない者はいない。観客席で目立たぬよう潜んでいる黒幕──イオイソゴ──でさえ驚いた。 (ええい!) 無銘はすかさず龕灯で物々しい赤色を演出する。 (世話が焼けるな! というか誰だよこの眼鏡の子!」 剛太は画面越しに千里へ毒づく。顔をじっくり見るのは初めてなので、誰かよく分からないのだ。 とにかくサイレンの音を選択し、鳴らす。裏方は楽だが大変である。 紋付の袴羽織の大浜は実に真摯だった。いきなり理不尽に殴られたにも関わらず、一生懸命応対した。 「う、宇宙人を捕まえすぎたせいですね。すみません……」 宇宙人、という単語に貴信や毒島に視線が集まる。 (成程。あの2人を宇宙人にするのか) (フ。両名ともパンチの効いた外見だからな) (片やガスマスク! 片や貴信!!) (片や貴信……で…………宇宙人……確定……ですか……) がっと拳を握る秋水に鐶はツッコむ。秋水の精神状態はどうもおかしくなりつつある。 貴信はびっくりしたように周囲を見渡す。 「え! 宇宙人だって!! 一体どこに!?」 (お前だ! 誰がどれも見てもお前だ!!) (っ!!!)。斗貴子の容赦ないツッコみに桜花の腹筋また痛む。 千里は金切り声をあげる。 「そうよ!! 地球人が私たちを乱獲したせいでこの宇宙ステーションは落ちるのよ!!」 (お前の方かよ!!?) 観客の心は一致し、まひろもまた驚く。 (ちーちん宇宙人だったんだ!!) もちろん貴信や毒島に悪いと思ったゆえの大転換なのだが、お陰でかなり妙な話になってきた。桜花の腹筋は死んだ。 意外性はあるが観客は賛否両論という所だ。 「なんで宇宙人が乱獲されたんだ?」と興味を示す者と。 それよりさっきの新撰組とかどうなったと首を傾げる者。 ちょうど半々。綺麗に別れた。 「あー。お嬢さんお嬢さん。乱獲というのは誤解なのだよ」 ここにきてやっと毒島が喋った。(なにそのキャラ)。普段を知る者はギャップに驚いた。 (アレは……艦長や戦士長のモノマネか。演技しているんだ) (何だって! つまり毒島は演技しなきゃならないほど追いつめられているのか!!) (いや普通だから秋水先輩! ここ舞台だよ!?) まひろにツッコまれるのも妙な話である。とにかく毒島は意外な奮闘を見せた。 「私はレパートエスチュアリ隊長。いま地球で時空転移現象や裏切りをもたらす謎の光を調査している者だ」 (繋げた!!) (恥ずかしがり故に舞台は駄目だと思っていたが意外にやる!!) 秋水と斗貴子は驚きながらも安堵した。どうにか話の前後がつながった。 「それがこの宇宙ステーション墜落とどういう関係があるのよ!!」 昂然と叫ぶ千里。相変わらずテンパっているが、しかし元は台本担当なのだ。物語の整合性を取る方へ舵を取った。 まったく演劇というのは普段の心がけが出るものだと秋水は感心した。千里もだが、毒島も実によく心得ていたのだ。 「あの光がココから出ているという報告があってね。どうしても全員から話を聞く必要があった」 「だからってどうして皆を!!?」。叫ぶ眼鏡の少女の気迫は、大浜が一言も発せられないのを見ても分かるようにかなり の物だ。だが気迫だけならそれ以上を知っているのが毒島だ。日ごろ火渡からの無理難題を処理している秘書的な能力 は舞台上においても発揮される。千里の叫びは怒りより焦りが大きいのだ。 「残念だが、君たちシェパード星人の首から下は総て別の生物に乗っ取られていた。宇宙ステーションが落ちるのもその生 物の仕業なんだ」 「天敵に、といえば分かるよね」 大浜も千里に呼びかける。交友ゆえに能力を把握したうまい”フリ”だと総角が唸った。
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37 :永遠の扉[sage]:2014/05/10(土) 20:29:28.28 ID:FfTA/lB90 - 「まさか……」
眼鏡の少女が一拍を置いて、答える。 「まさか暗斑帝國! 暗斑帝國ネプツガレのせいで……!?」 震えを伴った見事な演技だった。 (津村。ネプツガレというのは、確か) (ああそうだ!) 斗貴子の顔に生気が戻る。 (台本作るときに……私が…………書いた…………短編の……設定です……!!) 鐶は頷く。無表情で瞳も暗いが口元はひどく嬉しそうに綻んでいる。 (シェパード星人の元ネタは私) 沙織も喜ぶ。ちょっとグロかった設定をうまくリファインしたものだと友人を褒めた。 (火をつけたのはガスマスクの戦士ね。レパートエスチュアリ……私の作品よくも勝手に引用してくれたわ) 文句をいうヴィクトリアだが満更でもなさそうだ。 『説明しよう! 暗斑帝國ネプツガレとは次元の膜・Dブレーンの果てより現れた暗くて斑な帝國なのですっ! 最後は旧字 体!』 さらっと文字の構成を説明する小札、親切だった。あの場で読んだからこその発想だ。 (これで観客たちも概要を掴めるだろう) (悔しいが言葉にかけては一番、かもな) 例の短編も桜花以上だったし。感心する斗貴子の耳朶を意外な言葉が叩く。 『ちなみにネプツガレは実在しますっ!』 「!!?」 唯一執筆をした鐶がそれ故一瞬固まる。事情を知らぬ他の者の衝撃はそれ以上である。あれはジイちゃんの”龍星群”。 「でもネプツガレは3年前滅んだ筈よ!」 「《武器創庫》によって滅ぼされた。私もそう思っていた」 だが。毒島は拳を握り厳かに叫ぶ。 「君たちシェパード星人の首から下を奴らが喰い破った時、私は確かに見た!」 「見たって何を!?」 「奴らの幹部が乗るロボット……十元弩リーベスクンマーが地球へ降下するのを!」 素顔こそ愛らしい少女だが、ガスマスクのお陰ですっかり性別不明だ。ちなみに衣装は白衣である。カズキ声の息子がデュ ラハンと同棲しそうな格好だった。 「そしてリーベスクンマーは光を撒いていた。地上で不可解な現象を巻き起こしている……あの、光を!!」 (どんどん話が繋がってく……) (フ。ここまで話が広がるとはな。でっち上げた俺自身予想外だ) ここで事態の鎮静をみた千里はやっと本来の気配りを思い出したようだ。細かいコトだが大事なコトを処理しにかかる。 「私の仲間が乱獲されたというのは誤解でした。ネプツガレに乗っ取られた以上、みんなもう元には戻りません……」 「あ、え、ああ。全部倒したよ!」 やや噛み合わない大浜にちょっと笑いが湧いた。 (いや大浜。あのシェパード星人はもう1人だけなんだぞ。なのに殺したのを誇るな。可哀想だ) (正論だけど秋水先輩落ち着いて! あそこに居るのはちーちんだよ! シェパード星人じゃないし1人じゃないし!) (フ。すっかりのめり込んでいるな秋水) ツッコミにツッコミが入る。マジメすぎるのも考えものだ。 (ところで、そろそろ宇宙ステーション落とした方がいいんじゃない?) ヴィクトリアが一歩あゆみ出た。 (あ、ああ。メリハリ的には頃あいだが)。斗貴子は眉を顰めた。落とす? 幕を下ろすなら分かる。だが……落とす? 皮肉と嘲笑でできているのではないかと思える少女は舞台上を指差す。 すっかり忘れ去られているが、先ほど飛ばしたエンゼル御前2つがそれぞれ千里と毒島の脇にいる。 (なるほど。連絡ね) 桜花に続き総角も頷く。千里が御前と初対面とかいう細かい問題はこのさいどうでもいい。撤収を告げると、千里は、台本 執筆を経て急成長した文学少女は、ちょっと大浜を見た。何だろうと覗きこんだ彼を誘導するのは容易い。軽く顎をしゃくり ……それから貴信を見る。地味ではあるがまひろや沙織のように赤点は取らないのが千里だ。大浜とてカズキ含む4人の 中では2番の成績だ。決して2人とも鈍くない。しかもサポートは総角と桜花。舞台にはもう当初の不安感はない。むしろ 最高のキャストがココに居ると演劇部員全員が確信した。 エンゼル御前2つが飛ぶ。貴信めがけてふわりと飛ぶ。
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38 :永遠の扉[sage]:2014/05/10(土) 20:30:36.29 ID:FfTA/lB90 - 耳打ちもしたがその声は毒島と大浜によってかき消される。
「ところでネプツガレのシェパード星人乗っ取りを見抜いたのは、いま飛んで行った解析用モジュールですが」 「どうやらこのコは白……。でも、地球人も乗っ取るようだね」 エンゼル御前2つをくっつけた貴信が、心の中で香美に呼び掛けるのは、もちろん誰も知らない。 大浜は叫ぶ。 「人形は飛んだ!! 貴信くん! 君もどうやらネプツガレに乗っ取られたようだね!!」 『ば! ばれたら仕方ないじゃん!!』 やっと香美の声。もちろん観客はまさか貴信と二身同体のコンパチモデルとは知らない。ナレーションかな? とキョロキョロ したがもちろん外れだ。 「た、隊長……体が、体の中が、ぐわっ!!」 体を丸め胸に手を当て呻く貴信が不自然な力を込めて直立不動した。やめろ、やめろという彼の手が頭に伸びた瞬間、何やら 異様な雰囲気に観客たちは息を呑んだ。 そして回る頭。変わる体。 「よっと」 無銘が貴信たちにスポットライトを当て派手な光を演出すると。剛太は剛太で緊迫感溢れるBGMを流す。 かなり今さらだが、SF的なボディーアーマーを着ていた貴信の体が一瞬にして魅惑のラインを描いた。 「おおっ!」 観客はどよめいた。さもあらん、宇宙人顔だと思っていた役者が突如として野性美溢れる少女に変身したのだ。 「ど、どういう仕組みなんだ!?」 「あの子ずっと立っていたよね!? 他の人と入れ替わった様子なかったのに!」 「特殊メイク……いや、マスクなのか?」 素人目には「可愛い女の子がフリークスのマスクを被っていてそれを脱いだ」ようにしか見えない。が、それでも体型の変化 までは流石に説明しようがない。その点の疑惑を払拭するよう大浜は。 「おのれネプツガレめ!!!」 大浜は特攻する。いきなりの攻撃に香美はしゃーっと吹いたが、そこは貴信が手綱を取っている。しかも彼は体の秘密を大浜に 話して以来、短い期間だがそれなりの友人関係を結んでもいる。 意思の疎通は可能だった。 大浜は、映画などでよく見る「巨漢らしい戦い方」をした。太い腕を突き出し、前蹴りをやり、時にはタックルを繰り出した。 香美はそれをひらひら避ける。人間対ホムンクルスとなれば性能差は歴然だ。貴信はしなやかな体がより美しく見えるよ うな躱し方を香美に指示してなお大浜の動きを予測する余裕があった。大浜は大浜で香美の性格を知っているので恐れず 攻撃を繰り出すコトができた。 腕を突き出す。受け止められる。拳を繰り出す。捌かれる。空手の上段突きの組み手のような動きを繰り返しつつ舞台袖 ギリギリまで香美を追い詰めた大浜は、ヴィクトリアの目の動きにすべきコトを悟る。 (香美ちゃん。僕を投げてみて) (ちょ! ここ下、堅い! 危ないじゃん!) (大丈夫だ香美! 向こうを見ろ!) ヴィクトリアがいるのとは反対側の袖。香美はそこに防人を認めた。 (なる!! あーの銀ピカが受け止めるってゆーならさ! 全力出しても大丈夫そうじゃん!!) 何度目かの拳を飛んで避けた香美はそのまま大浜の頭上を通り過ぎた。 足を彼の首にかけながら。 「がぶりんちょめっちょむーちょ荒れてやるぜ今日も! ファイヤー!!」 水面に飛び込む女豹のように両手を床めがけめいっぱい伸ばす香美。しなやかな両足はねじられながら首に迫る。 (あれは! いつぞやの私との練習で見せた!!) (フランケンシュタイナー!!) 太ももで頸動脈を圧迫しながら倒立した香美は加速の赴くまま大浜を投げる。ただの少年ではない。恰幅のいい、ヘタを すればたおやかな肢体の2倍ぐらいの重量感を感じさせる大浜が、丸まりながら舞台の端から端まで水平に吹っ飛んだの だ。 「すげえ」 「ワイヤー、ワイヤー使ったの!?」 ざわめく客たちに香美は、ガキ大将のようにニカリと笑いながらピースを突き出す。誰かが打った柏手が万雷の拍手に なるまで3秒とかからなかった。 「ブラボー。いい投げられっぷりだったぞ生徒・大浜」 「ブラボーさん居なかったら頼まれてもしなかったです……」 無事受け止められた大浜だが受難は続く。 「てめ、大浜!! 香美ちゃんの太ももに挟まれて投げられるとか……!」 1人でいい思いしやがってという岡倉の抗議は六舛の冷や水によって鎮静する。 「演技とはいえちーちゃんにビンタかまされたんだぞ。いいだろそれ位」
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- 【2次】漫画SS総合スレへようこそpart76【創作】
39 :永遠の扉[sage]:2014/05/10(土) 20:31:38.66 ID:FfTA/lB90 - 「……ま、アイツにしちゃ良くやった方だ」
予想外に喝采を浴び、あちこちフリフリ見渡しながら答える香美に剛太も思う。 とはいえ香美は敵なので、ちょっと悪い顔をしながら千里たちに詰め寄る。普段が普段なので一見危なっかしいが、貴信 がいるのでセリフ回しはコントロールされる。 「ふっふっふー。あたしの正体知った以上、あんたらはもうオシマイ!! 峰ぎゃーで仮ぎゃーじゃん!!」 千里も毒島も殴りかかるが軽く蹴散らされその場に崩れる。 「ここね」 宇宙ステーション崩壊はヴィクトリアが核鉄を握りしめた瞬間始まった。 舞台に六角形の穴が空き、レトロなコンピュータの筺体を飲み干したのだ。 「なに! なんなのさ!?」 本能的に落下の恐怖を感じぐるぐると周囲を見渡す香美にかかるは毒島の声。 「とうとう、来ましたね」 「!!?」 「宇宙ステーションの崩壊です。さきほどあなたが大浜サンを投げた衝撃が、トドメに……」 言葉半ばで毒島も……沈む。 「なんだこの舞台装置!? さっきの劇じゃこんなんなかったぞ!」 「だいたいココは演劇用に作られた施設じゃないよな!?」 「児童養護施設の多目的ホールなのになんでこんな次から次から」 落ちていく。コンピュータだけではない。未来的な机。ソファー。何もかもが舞台の下に沈んでいく。 しかも穴からは煙幕すら絶え間なく吹きあげるではないか。 誰かが、叫んだ。 「なんだコレ! どういう仕組みなんだ! でもすごい! すごいぞ! アハハ!!」 (アンダーグラウントサーチライト) (まさか地下壕の武装錬金で崩壊を演出するとは……) ふふん。形のいい顎を得意げに跳ね上げるヴィクトリアに秋水も斗貴子も感嘆した。 (ついでにいうと煙幕は毒島だな) 最初に沈んだのは偶然ではない。崩壊の演出にはスモークが必要だ。だがA4用紙程度のサイズでしか投影できない 無銘の龕灯は当てにならない。だからまず彼女を沈めたのだ。 (私もどうにかして舞台から掃けようと思っていたところです。助かりました) 深さ僅か1m20cmの避難壕の端にしゃがみ込む毒島は、ガスマスクの武装錬金、エアリアルオペレーターで、ひっきりな しに煙幕を上げる。 その作業は地味。セレクターでインフェクテッドでウィクロスな感じだった。 ご丁寧にも「安全地帯」と刻まれ飛び石で並ぶ六角形の床をよちよちと四つん這いで移動しながら、あちこちから煙を吹 くのだ。 こうなると無銘や剛太といった演出組も意気込む訳で。 龕灯は混乱を演出するように光の円錐をあちこち8の字にのたうたせ。 SEは爆発音と地響きを連発だ。 残った演者は香美と千里。両名とも頭を押さえたまましゃがみ込んでいる。(前者は演技ではなく、暗くて狭くて高い所が 苦手だからだ。舞台的な意味の奈落はまさに奈落だった)。 いったい彼女たちはどうなるのだろう。 固唾を呑んでいて見守っていた観客たちの心臓がいっそう跳ね上がったのは、ただ穴を開けているだけだった舞台が…… 弾けた、からだ。 (正直ココで出るのはおいしいところどりの様で気が引けるが) (そろそろ……序盤の謎を……解決しろと……言われたので……) 巨大な鳥に乗った総角が舞台を突き破って飛び出してきた。 (……びっくりしたあ)
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40 :永遠の扉[sage]:2014/05/10(土) 20:32:12.71 ID:FfTA/lB90 - 密かに潜航した御前から連絡を受け、総角たちと接触しない場所に退避した毒島だったが、それでも地下壕が、毒島退避
用に周囲四辺に1mほどの幅を残したきり、あとは総て10m以上の深さになったには仰天だ。へたり込みながらドキドキだ。 翼開長5mを超える巨大な鳥が地面から出てきたのも驚きだが、それが一瞬にして光に包まれ少女の姿になったのにも 驚きだ。変貌直前、垂直に登る背中から、見覚えのある金髪の新撰組が舞い降りた衝撃が霞むぐらいだった。 とりあえず相変わらず煙と爆音と騒々しい光に彩られる宇宙ステーションの中で総角は鐶に呼び掛ける。 「もう正気に戻ったのか。ええと」 「第五種第五種攻脈の擦り切れ不可分爆轟の水魚松、ビークソリッド喰う所にレクタングル所ミラージュピーのランページ ピーパイポパイポポチューリンガン……です (ダメだ一文字増えた!! (分かる秋水先輩もすごい!!) 混迷は増すばかりだ。鐶のコードネームも秋水のボケツッコミも。 (よし。覚えたぞ) 頷く斗貴子は斗貴子で大概だった。 皆どこか壊れていた。 (ここが即興。これが……戦場) 沙織は息を呑んだ。 そして相変わらず有能なナレーション。 『あの光を浴びたせいで警察に追われる身になりました第五種(以下略)どのですがゾンビとかいる館でブラボーどのから 薬を貰ったため正気を戻しました。そして同胞を裏切らせたネプツガレへの復讐のため総角どのと手を組んだのであります!』 この辺りで総角と鐶口パク。 『総角どのは語ります! ネプツガレ。奴らは幕末にも存在した。アメリカで何人もの政府要人を殺したのち京都へ飛んだの だ、だから俺はペリー殿の密命を帯びて新撰組に入ったのだ。ネプツガレには弟も殺されている。許さねえ!』 『第五種(略)どの答えて曰く、だから手を組んだ。そして宇宙ステーションに居るのを突き止めたが十元弩リーベスクンマ ーは逃げたようだ、許さねえ!』 (駄目だ小札。セリフが長すぎる! そんなんでは観客の興味が薄れるぞ!!) (……もういいよ。秋水先輩がいいなら私はそれでいいよ) まひろは諦めた。 「ム!! お前もネプツガレか!」 「こらあんた!! なんでいま下ふっとばしたのさ!! 火薬ってゆーらしいけどさ! そんなん使って火事になったらどう なるのさ!!!」 香美は総角をボカリと殴った。どっと笑いの起きる会場。まったく正論だとみな頷いた。 総角は焦る。 (まずいぞ。普段通り香美を流すコトもできるが、そうなると何だかド派手な登場に対する危険性の認識が拭えぬまま劇が 続くんじゃないのか。面白くても倫理とか安全に反する劇は観客の心にしこりを残すぞ……) 言う。 「だ、大丈夫だ! 派手だが火薬とかは使っていない安全な仕組みだ! 消防署への届け出が必要なほど危ないコトは しちゃいない!! こ、ここには子供だって居るんだぞ! 住んでる所が危なくなるようなコトはしてないからな! ほら、 床だって、元通り!! 元通りなんですよ皆さん!!」 一生懸命下を指差す総角。どらどらと立ち上がり覗きこんだ観客たちは納得した。あれだけ陥没し、かつ、下から弾き 飛ばされたというのに傷一つない。 「どうです! これが銀成学園演劇部の底力!!」 何だか小札っぽい物言いしつつ腕を広げる総角。その何だか必死そうな感じにクスクス笑いが起きる。 総角はちょっと赤くなった。 (……普段気取っているから。普段気取っているから…………) (こういうとき恥ずかしいんだろうな総角は)
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41 :スターダスト ◆C.B5VSJlKU [sage]:2014/05/10(土) 20:33:11.89 ID:FfTA/lB90 - 「ん」。総角は懐中電灯を香美に渡した。彼女は不承不承受け取った。
「何さコレ。何に使「こうなればヤケだ! とにかく問題が消えたので一時退場しろクラッシュ!!」 総角が摸造刀で切りかかると香美の体が書き割りの窓めがけ飛んだ。 窓は、開いた。まさに宇宙的な闇を湛える穴の中に「ふぎゃあああ! 暗い暗い暗い!! 狭い!! もりもりのバカ! あ、でもピカリンコするの渡されてた! 明るい!! わーーーい!!」と叫びつつ香美が消える。そして戻る窓。 ヴィクトリアは不愉快そうに息を吐いた。 (私の避難壕、実は壁にも作れるけど……) コピー品で同じコトをされると不愉快だ。そう。香美は書き割りの窓の後ろに空いた避難壕へと呑まれたのだ。書き割り が壁と見なされたのは密着していたせいだ。 そして千里に手を伸ばす総角。 「宇宙空間を漂っていたガスマスクや恰幅のいい男性も保護した。お前も来るか?」 頷く千里。ここで幕が下りる。 「だ、大浜先輩ごめんなさい……」 ビンタについて恐縮しきった様子で頭を下げる千里。大浜はいいよいいよと受け流した。 「ああでもしなきゃ進まなかったし。それにちーちゃんは台本担当だったしね。お陰で何とかなったよ」 大浜の体格もいい感じに作用した。貴信の特異体質もまた。 「というかなんで彼を投げるときワイヤー使わなかったんだ?」 「ワイヤーではない。指かいこだ」。少年無銘は訂正してから、「ブラボーさんが受け止めてくれるからだ」と付け足す。 そういえば先ほど指かいこを使ったのは他ならぬ防人自身だ。吹っ飛ぶ彼を受け止められる肉体の持ち主はいない。 「フ。少しは俺が裏切らずに済む目も見えてきたが……しかし気になる」 「何がだ総角」 音楽隊のリーダーはいう。 「背景が宇宙ステーションになっていたコトだ。大道具の連中に聞いたところ『気付けばああなっていた』という」 「それは……気になるな」 秋水の心の中に言い知れぬ不安が蘇る。 それは演劇の練習を始めたときからある。演劇の神様。そう呼ばれる存在に逢ったあと、”何か”があった。 思いだそうとするたび脳が押さえつけられる……何かが。それは斗貴子も同様のようだ。 (私も……) 毒島も同じだった。かつて学校で、敵の幹部……イオイソゴとまみえた記憶はまだある。だが言おうとすると、伝えようと すると、圧迫的な力が登ってきて、できなくなる。 (…………) 防人も時おり違和感を感じる。鐶の義姉の自動人形の絵。それと似た顔の少女に最近出逢った気がするのに、いくら 考えても思いだせない。 (不穏な気配はある。だが今は演劇に全力を尽くすだけだ!) 深く息を吸う。 (落ち着くんだ。俺に足りないのは対処しようとする心。大丈夫だ。良くない現象は何もかもあの光のせいにすればいい) どんな場所でも『あの光を追ってきた』といえば大体どうにかなる。そこは楽だし救いだった。 改めて衣装を見る。新撰組だ。 思い返してもみよ、秋水は新撰組が現代に来た不可思議、時間のもたらす絶対的断絶すら克服したではないか。 (大丈夫だ。どんな場所だろうと対応してみせる!) 舞台を見る。幕末の京都になっていた。 「最初にやれえええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!!!」 「だな」 ぼやく斗貴子と共に舞台へ。 『えっ!? 幕ま……ええっ!! ええええええええ』 小札もまたビックリ仰天である。 以上ここまで。
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