- 宇宙世紀の小説書いてみてるんだけど
488 :◆tyrQWQQxgU [sage]:2019/10/08(火) 11:22:37.18 ID:TWQjmDH00 - 駆け出したメアリーはびっくりするくらい速かった。ワン中尉はどうにか追いつく。
「格納庫いって、MS乗って、それからどうするつもりなの!?」 「あの黒いのを説得するの。やめてって」 「話が通じる相手じゃないわ!無人機なのよ?」 「人が乗ってなくても、動かしてるのは人よ」 「それは…」 「出来ることをやらなきゃ」 そうこう言っている間に格納庫へ到着した。殆どの機体は出払っているが、補給に戻った隊の機体や予備機が待機している。
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489 :◆tyrQWQQxgU [sage]:2019/10/08(火) 11:23:20.72 ID:TWQjmDH00 - 「どうしたお嬢さん達」
ヴィジョンが出迎える。 「おいちゃん!MSを1機出してほしいの!」 突然の頼みにヴィジョンも苦笑いして頭を掻いている。 「おいおい、遠足の駄菓子か何かじゃねぇんだからよ…」 「ヴィジョン、私からもお願い。急を要するの」 観念したワン中尉も口添えした。危険は百も承知だが、やってみる価値はある。 そもそもメアリーの所在が朱雀にあると敵が掴んでいるのにも訳がある筈だ。メアリーの言うように感応し合っているのだとすれば、何かしら反応があるだろう。 中尉達がいつまでも釘付けにされているのも作戦上好ましくない。 「…わかってて言ってるんだな?戦線真っ只中に女子供だけで飛び出すのがどんなにイカれてるか」 「今時男だの女だの言ってると痛い目見るわよ」 怖い怖いといった手振りでヴィジョンが両手を上げる。 「またハッチぶち壊されちゃ堪んねぇ。艦長には報告するぞ、いいな?」 「ええ。私が責任を持つわ」 「やれやれ…。余ってるジム2しかねえが、SFSだけで行くよりはまだマシだな。くれぐれも気をつけろよ?」 そういってヴィジョンが手早く支度を始める。 「…ありがと」 メアリーがワン中尉の袖を引っ張った。 「あなたの事は私が守る。でも、危険になったらすぐ引き返すからね」 メアリーは小さく頷いた。
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490 :◆tyrQWQQxgU [sage]:2019/10/08(火) 11:23:51.01 ID:TWQjmDH00 - 出撃準備を済ませたジム2に乗り込む。すぐヴィジョンからの通信がモニターに映る。
『いいか、まともに戦闘はやるなよ。Gも考慮してカタパルトは使わねえ』 「ありがとう、無理言ってごめんなさいね」 『全く。無事に帰ってきたらそれでいい。護衛を付けるから無理はするな』 呆れた様子のヴィジョンが親指を立てた。続けて別の通信が入る。 『我々はカラバの別小隊です。補給に寄ったところでしたが、これから再度出ます。近くまで誘導しますから』 「とてもありがたいです。お願いします」 彼らの申し出をありがたく受け入れ、共に出撃した。
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491 :◆tyrQWQQxgU [sage]:2019/10/08(火) 11:24:35.74 ID:TWQjmDH00 - 朱雀を後にすると、そこは既に戦場だと改めて実感した。空はまだ明るいというのに、あちこちで光が見えた。
『行きますよ。付いてきて』 「了解」 カラバの部隊に囲まれながら朱雀の前方へ急ぎ回り込む。 「アトリエ中尉!戦況は?」 通信が通じる距離まで近づくことが出来た。 『ワン中尉か!?何でこんなとこに出てきた!』 「ベイト!手伝いに来たわ!」 メアリーがモニターに割り込む。 『お前…!自分が何やってんのかわかってるのか!?危ねえから早く戻れ!』 「やることがあるの。早く戦況を」 ワン中尉は落ち着いて返答した。 『くそ…話は後だな。サイコガンダムとは依然交戦中。お前の見込みは当たりだぜ。羽一枚もいだらだいぶ高度が落ちた』 「接触するなら今ね」 『正気か…絶対正面には立つなよ』 「わかったわ」
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492 :◆tyrQWQQxgU [sage]:2019/10/08(火) 11:25:12.13 ID:TWQjmDH00 - サイコガンダムをはっきり目視出来た。片翼を失い、煙を吹き出しながらも浮遊している。
『これ以上近づくのは危険です』 カラバ兵の通信が入る。 「ありがとう。でももう大丈夫です。アトリエ中尉達も居ますから」 『しかし…』 「あなた達も任務があるでしょう。これ以上迷惑は掛けられない」 『わかりました。…御武運を。きっとご無事で』 そういってカラバの部隊が離れていく。入れ替わる様にシェクター少尉のメタス改が随行してきた。 『メイ!今詳しくは聞かないけど…』 「スティレット。今からメアリーが意思疎通を図るわ。こちらの脳波に反応があるかみてみる」 『援護する。危険があればすぐ戻るんだ』 「頼むわね」 ワン中尉達のジム2は恐る恐るサイコガンダムとの距離を詰めた。 「やってみる…」 そういってメアリーは目を閉じた。
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493 :◆tyrQWQQxgU [sage]:2019/10/08(火) 11:25:45.17 ID:TWQjmDH00 - メアリーが目を閉じてしばらくすると、ガンダムMk-Wと交戦していたサイコガンダムの動きが突如鈍った。砲撃をやめ、静かに佇んでいた。
『驚いた…まるで魔法だな』 シェクター少尉がこぼす。先程までと打って変わり、サイコガンダムは緩やかに地上へと降りていく。 『追うぞ少尉!』 アトリエ中尉とシェクター少尉がサイコガンダムに合わせて高度を落とし始めた。ワン中尉も少尉の傍から離れない様に飛んだ。 「ママが…」 メアリーが口を開いた。ワン中尉は彼女の言葉を待った。 「ママがね、あたしに会いたかったって。あたしは大丈夫だよって言ったら、ママも大丈夫だって。そしたら、黒いのが少しずつ晴れたの。一緒にママの声もしなくなった」 話すメアリーの表情は明るかったが、その頬には涙が伝っていた。ワン中尉は思わず抱きしめた。 地表に降り立つと、サイコガンダムはMS形態になった。接近するワン中尉達に、膝をついて頭を垂れている。 『まじか』 着陸したアトリエ中尉が呆気に取られている。少尉も同様だ。 「…この子は悪い子じゃないわ。私の妹みたいなものだもんね」 サイコガンダムを見つめながらメアリーが言った。 「お姉さんは、妹と一緒に居るものよね」 そう言うワン中尉に笑顔を向けるメアリー。
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494 :◆tyrQWQQxgU [sage]:2019/10/08(火) 11:26:11.23 ID:TWQjmDH00 - 『一難去ってまた一難だぜ…!』
アトリエ中尉の言うとおり、周囲には熱源反応。敵の基地に上陸したのだから当然だ。 『今から朱雀に戻るのは難しいな…』 シェクター少尉がジム2を守る様に正面で構える。ワン中尉もジム2の装備を確認した。 「皆…大丈夫よ」 メアリーの声に呼応する様に、サイコガンダムが立ち上がる。敵機が我々を取り囲む様に姿を現した瞬間、それらはまたたく間に撃破された。両手の指先に装備されたメガ粒子砲は的確に敵を撃ち抜いた。
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495 :◆tyrQWQQxgU [sage]:2019/10/08(火) 11:27:11.28 ID:TWQjmDH00 - 「どうなってるのこれ…」
思わずワン中尉は声に出して驚いた。 『メアリー、やるじゃねえかよ』 アトリエ中尉が冷や汗を流しながら苦笑いする。メアリーが動かしているというのか。 「ベイトは判るわよね。スティレットは?」 さも当然の様にメアリーが言う。 『いや…感じが変わったのはわかるけど…』 困惑する少尉。何を言っているのかすらワン中尉にはわからなかったが。 「こういうの、ニュータイプっていうのよきっと」 メアリーが笑った。アトリエ中尉もそうなのだろうか。活躍は納得いくものばかりだが。 『俺がニュータイプってのは保証しかねるが、メアリーは本物だぜこりゃ』 『何はともあれ、こんなに心強い味方もそういませんよ』 シェクター少尉のメタス改がサイコガンダムを見上げる。 「一理あるわね」 メアリーが得意げに言った。しかし、メアリーの言うママというのは誰なんだろうか。ワン中尉は何となく、ウェイブス研究員の事を思い浮かべていた。 55話 まるで魔法
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