- 宇宙世紀の小説書いてみてるんだけど
330 :◆tyrQWQQxgU []:2019/08/26(月) 16:30:26.90 ID:0STwH1Iv0 - 「定時報告無し…。やられたのか?ストランドバーグ中尉」
スペクター大尉が通信機器に向き合ったままひとりごちた。 敵とあんな形で遭遇するとは考えていなかったが、どうにかミデア1号機は戦線を離脱出来た。そろそろ敵にも情報が渡り始めるはずである。 エゥーゴの胃袋に入り込んだ形だが、突き破れなければそのまま喰われておしまいだ。 「どうだ?音沙汰無しか」 アイバニーズ少佐が後ろから声を掛けてきた。まるで今日の天気でも聞くかのように、何の感慨も感じられなかった。 「やられたかもしれません。目視しただけですが、例のガンダムMk-Wらしき機影も確認しましたし…」 「そうか。だがストランドバーグ中尉が一方的に落とされたとは考えにくいな。ここまで敵の追撃もない辺り、それなりに健闘しているのではないかな」 やはりこの男の声から感情を読み取るのは困難だった。不気味なほど静かに、淡々と喋る。 「そろそろこちらもガルダ級との接触が近いですな。どうされます?」 「予定に変更はない。手筈通りやれば良い」 アイバニーズ少佐の表情は変わらないままだった。
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331 :◆tyrQWQQxgU [sage]:2019/08/26(月) 16:30:57.12 ID:0STwH1Iv0 - それぞれの乗機へ乗り込み、発進準備に取り掛かる。
ミデアからの通信はスペクター大尉が仕込んだプログラムで自動的に行われるが、せいぜい数回の通信で敵も異変に気付く。 『やっと出撃だぜ。ようやく戦場に出られる』 ビー少尉が子供の様にはしゃいでいる。長らく待機を命じられてさぞかし退屈していたことだろう。 「撹乱が目的だ。無理に深入りする必要は無いぞ」 『堅いこと言わんでくださいよ。ヤバくなければあのデカいの、そのまま落としちゃって良いんでしょ?』 「我々だけで落とせるものか。戦力を見誤るな」 『へいへい』 呆れた様にビー少尉が通信を切る。そんな少尉にスペクター大尉もまた、呆れた様に溜息をつく。 「これで大勢が動く。有象無象が寄り合い所帯で抵抗したところで、結果はいつも同じだ」 スペクター大尉は独り小さな声で呟いた。
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332 :◆tyrQWQQxgU [sage]:2019/08/26(月) 16:31:48.81 ID:0STwH1Iv0 - 外が騒がしくなってきた様だ。流石に気付くのが早い。既に情報が回っていたとなると、やはりストランドバーグ中尉は敵を抑えきれなかったと思われる。
「いくぞ。敵が来る」 『あいよ!』 左右に別れて2機で出撃する。 スペクター大尉の機体はアイバニーズ少佐やストランドバーグ中尉と同じくジムクゥエルをベースとしている。 ただし、彼の場合はストライカーカスタムの仕様を流用したワンオフ機である。 流用といっても精々設計思想程度のもので、各部をアップデートした本機は最新鋭の機体に勝るとも劣らない。搭乗するSFSも高機動戦闘に対応するべくカスタマイズされている。 共に出撃したビー少尉の機体は部隊唯一のTMA、ジムクゥエルと同じくオーガスタ系に属するギャプランである。 基本的には強化人間の搭乗を前提として調整されているが、ビー少尉の持つ特異なG耐性によって運用が可能となった。 とはいえ彼も常時乗り続けるのは困難な為、基本的にはリミッターを掛けて稼働させている。
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333 :◆tyrQWQQxgU [sage]:2019/08/26(月) 16:32:24.63 ID:0STwH1Iv0 - 左翼を担うべく出撃し、ほとんど出会い頭の様な形で敵と接触する。後方とはいえ敵の陣地のど真ん中だ。想定の範疇といっていい。
スペクター大尉はすれ違った敵機を目視せずにビームスピアーで後ろから貫く。 正面から近づいてきた機体も、そのまま返す刃で横一文字に凪ぐ。敵機はまばらだが、こちらの襲撃を予知していたかの様な配置だ。 片や右翼のビー少尉も、敵と敵の間を縫うように飛び回っている。撹乱しつつも確実に敵の数を減らしていく。 『こんなもんか!殆ど的みてぇなもんだなぁ!』 嬉しそうにビー少尉が叫ぶ。 「油断はするなよ。抵抗はこんなものではあるまい」 『ははっ!どうだかねぇ!』 大きく旋回しながら、尚も敵を落とし続けるビー少尉。さながらシューティングゲームの様だった。
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334 :◆tyrQWQQxgU [sage]:2019/08/26(月) 16:32:59.88 ID:0STwH1Iv0 - 近辺の敵を掃討し、ミデアの進路を確保する。ここからが本番だ。
「よし、少尉。少しでもミデアへの対空砲火を減らすぞ」 『楽勝だぜ!』 ガルダ級へ向かうミデアの両翼に付き、共に進路を揃える。 「君らの戦いはこれから始まる。そう、これからだ」 スペクター大尉は、目の前に航行する巨大な輸送艦の背中を見つめながら口元に笑みを浮かべ、眼鏡を掛け直した。 34話 ゲーム
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335 :◆tyrQWQQxgU [sage]:2019/08/26(月) 16:35:08.18 ID:0STwH1Iv0 - 「何!?サドウスキー大尉達が??」
バッカス少佐が驚きの声を上げる。敵がB地点を突破していた。 私も正直サドウスキー大尉達のポイントよりこちらが本命だと思っていたのだが。我々の守るA地点が最も攻めやすい補給線の筈だった。 「まさか1番遠いB地点から来るとは…。相当根回しされていた様だな…」 モニター越しのバッカス少佐の声が怒りで震えていた。 「どうしますか?情報通りならガルダ級のC地点も危険です!そのままガルダ級を警備するのはエゥーゴの部隊だった筈ですが…」 シェクター少尉の声からも焦りが滲み出ている。 「とはいえ、このA地点を放棄する訳にも行くまい…!戦力を割くにもこれ以上数が減っては…」 歯ぎしりするバッカス少佐。しかし、こうしている間にも敵の奇襲は成果を上げているはずだ。 「…近辺のエゥーゴの部隊に、この座標へ幾らか戦力を割いてもらうよう要請できませんか?」 私も考えられるだけ知恵を絞る。 「それはいいが、作戦の全容を知る部隊はこの辺りには居ないぞ。連携が難しい」 バッカス少佐も動きかねている様子だった。 「少尉が1番機動力に優れています。彼をガルダ級へ向かわせて、少佐はここへ合流してくるエゥーゴ部隊との連携の要になっていだけませんか」
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336 :◆tyrQWQQxgU [sage]:2019/08/26(月) 16:35:35.16 ID:0STwH1Iv0 - 「…わかった。迷っている猶予は無いな。しかし大尉はどうするつもりだ?」
「私にひとつ考えがあります。我々はここで先手を打つ。そうでしょう?」 今回当たりが外れた場合や、想定外の動きがあった時自分がどう動くべきか。何度も考えを巡らせていた。 共通していたのは、とにかく先手を打つということだけだった。きっとこれなら勝てる。 「…。…。…。」 私は少佐に考えを伝えた。 「それが大尉の秘策ということか。他の面子では行えない作戦だな。確かに事前に全容を明かすわけにはいかなかっただろう」 バッカス少佐の表情は少し曇っていた。 「本当に良いのか?決行すれば戻れる保証はないぞ。私といえども力添えできるかどうか…」 「その時はその時です。いつか来るだろうこの日の様な時の為に準備してきましたから」 私は笑った。この部隊にはかなり世話になったし、恩返しをしたいと思っていたところだ。これくらいは安い代価といっていい。
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337 :◆tyrQWQQxgU [sage]:2019/08/26(月) 16:36:00.50 ID:0STwH1Iv0 - 「大尉…!」
シェクター少尉が力ない声で言った。 「心配するな。別に死ぬわけじゃあない」 「でも…」 「いいから行ってこい。事態は急を要するぞ」 「…!はい…!」 少尉のGディフェンサーがガルダ級の元へと駆けていった。私もそろそろ行かねばならない。 「それでは少佐。行ってまいります」 「ああ。確実に呼応してくれるのだな?」 「問題ありません。後はタイミングです」 「敢えていうが…。必ず戻れよ。メアリーも待ってる」 「…了解しました!」 「私もここを守り抜く。ガルダ級への奇襲があった以上、ここを抜かれてしまっては敵の花道になってしまうからな」 「必ず、戻ります。それまでどうかよろしく頼みます」 「任せろ」 そうして少佐との通信を終えた。
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338 :◆tyrQWQQxgU [sage]:2019/08/26(月) 16:36:41.36 ID:0STwH1Iv0 - 私は北に向けて進路を取った。敵の陣地を少し通るが、問題なく目的地へ行ける筈だ。いや、行かねばならない。
マラサイのモノアイが鈍い音とともに光る。ここからは私次第だ。ガルダ級よ、どうか到着まで持ちこたえていてくれ。 私は、家とも呼ぶべき存在に思いを馳せた。 35話 家とも呼ぶべき存在
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339 :◆tyrQWQQxgU [sage]:2019/08/26(月) 16:37:38.90 ID:0STwH1Iv0 - 「エゥーゴの部隊は何をやっている!」
スギ艦長は怒号を飛ばした。 「応答ありません!…壊滅したものと思われます…」 オペレーターが震える声でそう答えた。まさか敵の部隊がもう到着するとは考えていなかったが、それにしても鮮やかな手並みだ。 「それで、状況は!?」 「ミデア輸送機は尚もこちらに向かって前進中。対空砲火で対応しますが、如何せんMS部隊が…」 「居ないものを頼るな!しかし…!何が目的だ…ヴォロ・アイバニーズ…!」 敵の動きが完全には読めないが、エゥーゴの部隊がやられている以上、MSは既に展開中の筈だ。これ以上どうしようというのか。 「敵機2機!SFSとTMAがそれぞれ後方左右から来ます!」 「集中砲火で叩き落とせ!ミデアはどうした!?」 「そのまま前進中!これは…」 「そのまま!?…まさか」 言い終わるよりも先に、艦に衝撃が走る。 「ぬうう…!奴ら、体当たりしたな…!」 ガルダ級は他に類を見ない巨大な艦だ。その艦橋まで響くほどの衝撃。ただ体当たりしただけではあるまい。 「爆薬でも積んでいたのか…?ええい、非戦闘員をより安全な区画へ移せ!残るものは白兵戦の用意!何があるかわからん、気を引き締めろ!整備班は被害状況知らせ!!」 吠えるようにスギ艦長が指示を出す。応答したのはヴィジョンだった。
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340 :◆tyrQWQQxgU [sage]:2019/08/26(月) 16:38:09.51 ID:0STwH1Iv0 - 「くそ!無茶苦茶やりやがるぞあいつら!!!」
「無事か!?」 「無事なもんかよ!助かったのはほんの一握りだ!」 モニターに映った格納庫は火の海だった。喚くヴィジョンもススか血かわからないもので塗れている。通信も声が辛うじて聴き取れる位で、殆ど雑音で何も聞こえない。 「やつら、突っ込んできたあとで爆薬に火を着けやがった!内側から爆破されたんじゃこの艦といえども…!あとMSが1機…」 そこまで言って通信が切れた。スギ艦長はモニターを拳で叩く。 「ここまでやられるとは。他ポイントから報告は?」 「アトリエ中尉、シェクター少尉がこちらへ急行中!遅れてサドウスキー大尉もこちらへ向かっています」 「彼らの到着までに落とされては笑いものだな。…諸君、ここは我々の家だ。これ以上他所者に土足で踏み入らせるな!礼儀ってものを教えてやれ!」 消火作業に当たっていない各部署の手の空いた者から銃を手に格納庫へ走る。 各所へ指示を出し終えたスギ艦長は深く椅子へ座り込んだ。こういう時こそ上の者がどっしりと構えていなければならない。
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341 :◆tyrQWQQxgU [sage]:2019/08/26(月) 16:38:35.92 ID:0STwH1Iv0 - 「報告します!格納庫へ敵のMSが1機侵入している模様!設備や隔壁を破壊しているとのこと!機種は…ジムクゥエルです!」
「乗員を下手に近付けるな!生身ではMSには敵わん」 ジムクゥエルは対人の兵装も装備していた筈だ。迂闊に仕掛ける位なら好きにさせたほうがまだ良い。人的被害は後から単純に補充出来るものではない。 艦内のマップを睨みながら報告へ耳を傾ける。いかにMSと言えども、様々な障害物がある広大な艦内を容易く突き進める訳ではない。 しばらくは問題なく持ちこたえられる。とはいえ、格納庫はもう使い物にならないだろう。
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342 :◆tyrQWQQxgU [sage]:2019/08/26(月) 16:39:00.16 ID:0STwH1Iv0 - 程なくして再度オペレーターが報告する。
「アトリエ中尉が到着しました!着艦します!」 「着艦!?」 アトリエ中尉は、燃え盛る格納庫へ乗り上げるようにして着艦した様だ。全く何処までも強引な男だ。 「よ…よし!ジムクゥエルを追撃させろ。艦内だということを忘れるな!…いや!撤回だ!忘れろ!とにかく敵を艦から叩き出せ!!」 「は…はい!伝達します!」 オペレーターが焦りながらアトリエ中尉へ通信する。 『おい!艦長!どうなってんですこりゃあ!』 アトリエ中尉からの通信が届く。 「説明は後だ!オペレーターからの指示は聞いたな!?」 『好き放題していいんすね?俺は敵さんと違って節度は守るんで安心してください』 「よく言う。任せたぞ」 『あいよ!任されて!』
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343 :◆tyrQWQQxgU [sage]:2019/08/26(月) 16:39:57.93 ID:0STwH1Iv0 - 通信が切れる。続けてオペレーターが声を上げる。
「シェクター少尉も到着!外の敵と交戦中です!」 「思っていたより皆迅速だな。連携できる地点へ散らせていた甲斐があった。しかしGディフェンサー単機では…」 『単機でもやれます!引き続き対空砲火を!』 通信が開いていたのか、シェクター少尉から応答がある。 「よく来てくれた。しかし、エゥーゴの部隊は壊滅したと思われる。補給無しではいつまでも持たんぞ?」 『承知の上です!ワーウィック大尉の到着まではなんとか持たせてみせます』 「…死ぬんじゃないぞ、若人よ」 『当然です』 そういって少尉は通信を切った。 役者は揃いつつある。ここまではお互い痛み分けと言ったところか。敵の部隊の殲滅が先か、ガルダ級の轟沈が先か。 ティターンズと向き合う前線には何があっても攻める手を緩めるなと伝えてある。ベトナム基地防衛戦の鍵を握るのはこの一戦といっていい。 ここさえ踏み留まれば、ティターンズに余力は無い筈だ。 これまで後方支援ばかりしてきたスギ艦長だが、ここで舞台が周ってきた。それも大舞台である。 「乗るかそるか?…乗った艦から降りる気は毛頭ないものでな…」 スギ艦長は燃え盛る艦内が自分の腹のうちのようであった。 36話 大舞台
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344 :◆tyrQWQQxgU [sage]:2019/08/26(月) 16:48:16.83 ID:0STwH1Iv0 - pixiv更新
https://www.pixiv.net/novel/series/1155468
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347 :◆tyrQWQQxgU [sage]:2019/08/26(月) 22:24:43.69 ID:0STwH1Iv0 - >>345
どうなんでしょう? いわゆる同人誌とかも厳密に言えば色々あるとは思うんですが、悪質なもの以外はある程度寛大に見ていただいているってことではないでしょうか?? 僕の小説なんかもサンライズやらバンダイやらからしても歯牙にかける程のものでも無いでしょうし…w
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