トップページ > 旧シャア専用 > 2019年08月14日 > qkxtmBqe0

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◆tyrQWQQxgU
宇宙世紀の小説書いてみてるんだけど

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宇宙世紀の小説書いてみてるんだけど
270 :◆tyrQWQQxgU [sage]:2019/08/14(水) 00:01:40.47 ID:qkxtmBqe0
 ティターンズの2人が再び格納庫へ戻ってきた。ウェイブスはまた出迎える。
「すみません。先程はつい出過ぎたことを口走ってしまいました」
「お気になさらず。大丈夫ですから」
 女は笑って答えた。少し目が赤くなっているが、泣いていたのだろうか。
「それで?このガンダムは貰っていいんだな?」
 男の方が腕を組みながら言う。
「勿論。実戦データさえいただければそれで十分です」
 ウェイブスにとって、NT以外の実戦データなどどうでも良かったが。

「機体の詳細はメカニックが説明しますから。えっと…」
「私はワン中尉。彼は…」
「俺か?アトリエ中尉だ」
「どうも。アトリエ中尉、メカニックが来ますからここで待っていただけるかしら。ワン中尉はこちらへ。詳しくお話をお聞きしたいので」
 ウェイブスはワン中尉を連れて歩きだした。
宇宙世紀の小説書いてみてるんだけど
271 :◆tyrQWQQxgU [sage]:2019/08/14(水) 00:02:22.23 ID:qkxtmBqe0
 一年戦争時にNTという言葉を知った。軍としても精々与太話であまり現実味を帯びたものではなかったが、その連邦軍の認識はコンペイトウでの出来事で急変する。
 MA、特にエルメスである。

 NT兵の有効性に気付いた連邦軍は、戦後ジオンから接収したデータも手に入れ研究を加速させた。ウェイブスもその頃から研究員として加わったのだが、すぐにその魅力に取り憑かれた。
 人類の革新。ジオン・ズム・ダイクンはそう言った。NTと呼ばれる彼らは明らかに常人とは違う脳波を発していた。
 常人に動かせないものを動かし、見えないものを見る。
 ウェイブス自身にはそれを体感することは叶わなかったが、いずれは人類全てがそうなる日が来るのではないかという希望も生まれた。
宇宙世紀の小説書いてみてるんだけど
272 :◆tyrQWQQxgU [sage]:2019/08/14(水) 00:03:12.97 ID:qkxtmBqe0
 しかし、現実はそう簡単なものではない。NTの脳の仕組みを解明していく為には非人道的な実験も行った。
 薬物投与も最終的には人間を使った臨床試験が必要であったし、その過程で多くの被験体を失った。
 その多くは身寄りの無い子供や、何かしら超常の評判が立った者達だったが、基本的に普通の人間ばかりで期待に応えてくれるものは皆無だった。
 そういった被験体に行ってきたのが、所謂強化と呼ばれる人工NTを作る為の施術だ。
 初期ナンバーを与えられた者の多くは選りすぐりで、何かしらの成果を生んだ。しかしその裏では数え切れない失敗があったのだ。
宇宙世紀の小説書いてみてるんだけど
273 :◆tyrQWQQxgU [sage]:2019/08/14(水) 00:03:53.15 ID:qkxtmBqe0
「では、こちらで」
 小さな個室でワン中尉の話を聞くことにした。この部屋は元々8号の為に空けておいた部屋だった。

 ウェイブスには幼い娘がいた。冴えない旦那との結婚生活はとうに冷めきっていたが、それでも我が子は可愛かった。
 好奇心の塊とでもいうべきか、目の前の全てが新鮮な様だった。そんな娘の姿がウェイブスには羨ましくもあった。
 ある日、何の気なしに娘の脳波を調べてみた。血液型占いでもやるような軽い気持ちだった。しかしその結果は驚くべきものだった。
 ジオンから接収したNTのデータと酷似していたのだ。

 正直言って、心躍った。これまで巡り合わなかったNTがこんな身近にいたなんて。更に分析を進めれば進めるほど、研究したい思いは強くなっていった。
 しかし我が子である。被験体を数多く見てきただけに、時としてこの研究が人の命を軽視するものだという自覚はあった。
 そこに娘を放り込むのか。苦悩は想像を絶した。
宇宙世紀の小説書いてみてるんだけど
274 :◆tyrQWQQxgU [sage]:2019/08/14(水) 00:04:17.11 ID:qkxtmBqe0
 結果として、ウェイブスは娘を研究の為に手放した。その代わり研究内容は逐一確認し、基本的には自身の管理下に置くことを条件にしてのことだ。
 娘が物心つく頃には、母ではなく、ひとりの研究員として接していた。言えるわけがなかった。夢の為に娘を研究材料にした自分が、母親などと名乗ることは許されなかった。

 いつしか娘は、被験体8号と呼ばれることとなった。

「…8号はどんな様子でしたか」
「エゥーゴの男2人と主に行動を共にしている様でした。特別な事は何もありませんでしたね。気楽に過ごせている様でしたよ」
 ワン中尉は特に感慨もなさげに言った。
「差し支えなければお聞きしたいのですが…」
 ワン中尉が続ける。
「なんでしょう?」
「彼女はエゥーゴ、或いはカラバに身柄を奪われたのですか?連行されている様には見えなかったもので」
 至極当然の疑問だった。
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275 :◆tyrQWQQxgU [sage]:2019/08/14(水) 00:04:59.50 ID:qkxtmBqe0
 8号は逃げ出したのだ。いや、ウェイブスが逃したと言うべきか。
 つい先日、被験体4号が戦場へ赴いた。暴走の果てにニューホンコンの街を火の海にしたと聞いたとき、流石にウェイブスも狼狽えた。
 4号は所謂強化人間だった。記憶の操作を行うことで潜在的な能力を引き出した反面、情緒はかなり不安定になっていた。
 最近は様々な条件付けを行うことで比較的安定していたが、いざ戦場へ出してみるとこんなものだ。
 この4号と同じく、事前に出撃の候補として挙げられていたのが8号だった。ウェイブスもいつかはこんな日が来ることを予見していたが、いざとなると耐え難かった。
 何も知らない我が子。こんな幼子を戦場へ駆り出すなど常軌を逸している。しかしそんな研究を邁進したのもまたウェイブス自身だった。

 4号か、8号か。その決定が下される前夜、ウェイブスは8号を外に連れ出した。何も知らない彼女は初めての外界にはしゃいでいる様だった。
 お互い、この日のことは忘れないだろう。あの日は…。
宇宙世紀の小説書いてみてるんだけど
276 :◆tyrQWQQxgU [sage]:2019/08/14(水) 00:05:48.51 ID:qkxtmBqe0
「…ウェイブスさん?」
 ワン中尉に声をかけられて我に返った。
「ええ…8号の身柄のことね。彼女、施設を脱走したところをカラバに保護されたの。それがあなたの潜入と重なったから、併せて奪還任務もお願いした形ね」
 ただ、ありのままに話せることだけを話した。ワン中尉に多くを話したところで意味はない。

 そんなやりとりをしていると内線が鳴った。
「どうぞ」
 ワン中尉に促され、受話器を取る。
『ティターンズのアイバニーズ少佐から通信です。取れますか?』
「ええ、繋いで。…アイバニーズ少佐からだわ」
 ワン中尉にも伝える。何故か彼女の表情が少し曇ったような気がした。

25話 人類の革新


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