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お前名無しだろ
☆★馬場の名言★☆

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☆★馬場の名言★☆
182 :お前名無しだろ[]:2011/10/29(土) 01:07:03.52 ID:7ZfouL1b0
十代の頃、不思議で恐ろしい体験をした。
あの時、一歩間違えば、おれはこの世にいなかったかもしれない。

親父の実家は自宅から車で二時間弱くらいのところにある。
農家なんだけど、何かそういった雰囲気が好きで、高校になってバイクに乗る
ようになると、夏休みとか冬休みなんかにはよく一人で遊びに行ってた。
じいちゃんとばあちゃんも「よく来てくれた」と喜んで迎えてくれたしね。
でも、最後に行ったのが高校三年にあがる直前だから、
もう十年以上も行っていないことになる。
決して「行かなかった」んじゃなくて「行けなかった」んだけど、
それは奇怪な出来事に遭遇したからだ。

春休みに入ったばかりのこと、のどかな天気に誘われてじいちゃんの家にバイクで行った。
まだ肌寒かったけど、広縁はぽかぽかと気持ちよく、そこでしばらく寛いでいた。
そうしたら、

「あぽぉ、あぽぽっぽ、あぽ、あっぽぉ…」

と変な音が聞こえてきた。機械的な音じゃなくて、なんか生物が発してるような感じがした。
生まれて初めて聞くような、それも濁音とも半濁音とも、どちらにも取れるような感じだった。
何だろうと思っていると、庭の生垣の上に帽子があるのを見つけた。
生垣の上に置いてあったわけじゃない。帽子はそのまま横に移動し、垣根の切れ目まで来ると、
一人ノッポが見えた。まあ、帽子はそのノッポが被っていたわけだ。
ノッポは白っぽいネグリジェを着ていた。

でも生垣の高さは二メートルくらいある。その生垣から頭を出せるってどれだけ背の高いんだ…
驚いていると、ノッポはまた移動して視界から消えた。帽子も消えていた。
また、いつのまにか「あぽぽぽ」という音も無くなっていた。
☆★馬場の名言★☆
183 :お前名無しだろ[]:2011/10/29(土) 01:12:18.87 ID:7ZfouL1b0
そのときは、もともと背が高いノッポが超厚底のブーツを履いていたか、
踵の高い靴を履いた背の高い男が女装したかくらいにしか思ってた。
こんな田舎になんでそんな人がいるんだろうと不思議には思ったけどね。

その後、居間でお茶を飲みながら、じいちゃんとばあちゃんにさっき見た不思議な人物のことを話した。
「さっき、大きなノッポを見たよ。大きな男が女装してたのかなあ」と言っても「へぇ〜」くらいしか言わなかったけど、
「垣根より背が高かった。帽子を被っていて『あぽぽぽ』とか変な声出してたし」と言ったとたん、
二人の動きが止ったんだよね。いや、本当にぴたりと止った。

その後、「いつ見た」「どこで見た」「垣根よりどのくらい高かった」と、じいちゃんが怒ったような顔で質問を浴びせてきた。
じいちゃんの気迫に押されながらもそれに答えると、急に黙り込んで廊下にある電話まで行き、どこかに電話をかけだした。引き戸が閉じられていたため、何を話しているのかは良く分からなかった。
ばあちゃんはうつむいて心なしか震えているように見えた。

じいちゃんは電話を終えたのか、戻ってくると、
「今日は泊まっていけ。いや、今日は帰すわけには行かなくなった」と言った。
――おれ、何かとんでもなく悪いことをしてしまったんだろうか。
と必死に考えたが、何も思い当たらない。あのノッポだって、自分から見に行ったわけじゃなく、あちらから現れたわけだし。

そして、「ばあさん、後頼む。俺はKさんを迎えに行って来る」と言い残し、慌ただしく軽トラックでどこかに出かけて行った。
☆★馬場の名言★☆
184 :お前名無しだろ[]:2011/10/29(土) 01:25:01.94 ID:7ZfouL1b0
ばあちゃんに恐る恐る尋ねてみると、
「馬場に魅入られてしまったようだよ。じいちゃんが何とかしてくれる。
お前は何も心配しなくていいから」と震えた声で言った。
「え? 馬場って何?」
それからばあちゃんは、じいちゃんが戻って来るまでぽつりぽつりと話してくれた。

いつの頃からかこの辺りには「馬場」という厄介なものがいる。
馬場は大きなノッポの姿をしている。名前の通り八尺ほどの背丈があり、
「あぼぉ」と男のような声で変な笑い方をする。
人によって、喪服を着た姿だったり、留袖だったり、野良着姿だったりと見え方が違うが、
異常に背が高いことと頭に何か載せていること、それに気味悪い笑い声は共通している。
葉巻をくわえている姿を見た人もいるそうだ。
昔、旅人に憑いて来たという噂もあるが、定かではない。
この地区(今は○市の一部であるが、昔は×村、今で言う「大字」にあたる区分)に地蔵によって
封印されていて、よそへは行くことが無い。
馬場に魅入られると、数日のうちに取り殺されてしまう。
最後に馬場の被害が出たのは十五年ほど前だという。

これは後から聞いたことではあるが、馬場はなぜか決まった道しか移動しないので、
村境の東西南北の四ヶ所に地蔵菩薩を祭って馬場を封印したらしい。
つまり馬場はこの村の外に出られないようになっていた。
理由はわからないが、ずっと昔に、周辺の村と何らかの協定を結んで、他の村に馬場が移動できないようにしたようだ。
馬場をこの村が引きうけることを条件に、水利権を優先するとか、毎年娘を嫁入りさせるとかそんな類の取引だったようだ。
馬場の被害は数年から十数年に一度くらいなので、昔の人はそこそこ有利な協定を結べれば良しと思ったのだろうか。
☆★馬場の名言★☆
185 :お前名無しだろ[]:2011/10/29(土) 01:31:13.48 ID:7ZfouL1b0
とか、そんなことを聞かされても、おれ的には(゚Д゚ )ハァ?って感じ。
おいおい村の迷信ってパネェなとか、そんな風にしか思えなかった。当然だよね。
そのうち、じいちゃんが一人の老婆を連れて戻ってきた。

「えらいことになったのう。今はこれを持ってなさい」
Kさんという老婆はそう言って、お札をくれた。
それから、じいちゃんと一緒に二階へ上がり、しばらく何やらやっていた。
ばあちゃんはそのまま一緒にいて、トイレに行くときも付いてきて、
トイレドアを完全に閉めさせてくれなかった。
ここにきてはじめて、「これってヤバくね?…」と思うようになってきた。

しばらくして二階に上がらされ、一室に入れられた。
そこは窓が全部新聞紙で目張りされ、その上にお札が貼られており、四隅には盛塩が置かれていた。
お香が焚かれていてなんか葬式みたいだな、と思った。
また、木でできた箱状のものがあり(祭壇などと呼べるものではない)、その上に小さな仏像が乗っていた。
あと、どこから持ってきたのか「おまる」が二つも用意されていた。
えっ? トイレに行かずにこれで用を済ませろってこと? シャレになんねえよ・・・

「もうすぐ日が暮れる。いいか、明日の朝までここから出てはいかん。
俺もばあさんもな、お前を呼ぶこともなければ、お前に話しかけることもない。
そうだな、明日朝の七時になるまでは絶対ここから出るな。
七時になったらお前から出ろ。家には連絡しておく」

と、じいちゃんが真顔で言うものだから、黙って頷く以外なかった。
「今言われたことは良く守りなさい。お札も肌身離さずな。何かおきたら仏様の前でお願いしなさい」
とKさんにも言われた。
☆★馬場の名言★☆
186 :お前名無しだろ[]:2011/10/29(土) 01:37:43.04 ID:7ZfouL1b0
テレビは見てもいいと言われていたので、他にすることもないし、
点けてはいたけど、見ていても上の空で何も目に入らない。
生まれて初めて感じる恐怖だった。
家中が静まりかえって、じわじわ音のない圧力が全身にのしかかってくるようだった。
部屋に閉じ込められるときにばあちゃんがおにぎりやお菓子をくれたけど、
食べる気もおこらず、放置したまま布団に包まってひたすらガクブルしていた。

そんな状態でもいつのまにか眠っていたようで、目が覚めたときには、
何だか忘れたが深夜番組が映っていて、自分の時計を見たら、午前二時過ぎだった。

なんか嫌な時間に起きたなあなんて思っていると、窓ガラスをコツコツと叩く音が聞こえた。
小石なんかをぶつけているんじゃなくて、手で軽く叩くような音だったと思う。
心臓がバクバクしてきた。
風のせいでそんな音がでているのか、誰かが本当に叩いているのかは判断がつかなかったが、
必死に風のせいだ、と思い込んで無視した。
落ち着こうとお茶を一口飲んだが、やっぱり怖くて、テレビの音を大きくして無理やりテレビを見ていた。

そんなとき、じいちゃんの声が聞こえた。
「おーい、大丈夫か。怖けりゃ無理せんでいいぞ」
思わずドアに近づいたが、じいちゃんの言葉をすぐに思い出した。
また声がする。
「どうした、こっちに来てもええぞ」

じいちゃんの声に限りなく似ているけど、あれはじいちゃんの声じゃない。
どうしてか分からんけど、そんな気がして、そしてそう思ったと同時に全身に鳥肌が立った。

じいちゃんの真似をしているこいつは何者だ?

ふと、隅の盛り塩を見ると、上のほうが黒く変色していた。
☆★馬場の名言★☆
187 :お前名無しだろ[]:2011/10/29(土) 01:44:51.63 ID:7ZfouL1b0
一目散に仏像の前に座ると、お札を握り締め「助けてください助けてください」と必死にお祈りをはじめた。
仏様に真剣に祈るなんてこの時が生まれて初めてだった。

そのとき、

「あぽぽっぽ、あぽ、あぽぽ…」

あの声が聞こえ、窓ガラスがトントン、トントンと鳴り出した。
手が震えて、額から汗が流れた。「おれ、マジで死ぬかもしれない・・・」

そこまで背が高くないことは分かっていたが、アレが下から手を伸ばして
窓ガラスを叩いている光景が浮かんで仕方が無かった。
もうできることは、仏像に祈ることだけだった。

とてつもなく長い一夜に感じたが、それでも朝は来るもので、
つけっぱなしのテレビがいつの間にか朝のニュースをやっていた。
画面表示される時間は確か七時十三分ぐらいだった。
いつの間にか、眠っていたのか気を失っていたのか。
ガラスを叩く音も、あの声も気づかないうちに止んでいた。
盛り塩は火で焦がしたようにさらに黒く変色していた。

念のため、自分の時計を見たところはぼ同じ時刻だったので、
恐る恐るドアを開けると、そこには心配そうな顔をしたばあちゃんとKさんがいた。
ばあちゃんが、よかった、よかったと涙を流してくれた。

下に降りると、親父も来ていた。真剣な顔をしていて一言も口をきかなかった。
じいちゃんが外から顔を出して「早く車に乗れ」と促し、庭に出てみると、
どこから持ってきたのか、見慣れないワンボックスのバンが一台あった。
そして、庭に何人かの男たちがいた。
☆★馬場の名言★☆
188 :お前名無しだろ[]:2011/10/29(土) 01:48:44.88 ID:7ZfouL1b0
ワンボックスは九人乗りで、中列の真ん中に座らされ、助手席にKさんが座り、
庭にいた男たちもすべて乗り込んだ。
おれを中心にして周りを取り囲むように人が座っている形になった。

「大変なことになったな。気になるかもしれないが、これからは目を閉じて下を向いていろ。
俺たちには何も見えんが、お前には見えてしまうだろうからな。いいと言うまで我慢して目を開けるなよ」
右隣に座った五十歳くらいのオジさんがそう言った。

そして、じいちゃんの運転する軽トラが先頭、次が自分が乗っているバン、
後に親父が運転する乗用車という車列で走り出した。
車列はかなりゆっくりとしたスピードで進んだ。おそらく二十キロも出ていなかったんじゃあるまいか。

間もなくKさんが、「ここがふんばりどころだ」と呟くと、何やら念仏のようなものを唱え始めた。

「あぽっぽぽ、あぽ、あぽっ、あぽぽぽ…」

またあの声が聞こえてきた。
Kさんからもらったお札を握り締め、言われたとおりに目を閉じ、下を向いていたが、
なぜか薄目をあけて外を少しだけ見てしまった。

目に入ったのは白っぽいネグリジェ。それが車に合わせ移動していた。
あの大股で付いてきているのか。
頭はウインドウの外にあって見えない。しかし、車内を覗き込もうとしたのか、
頭を下げる仕草を始めた。

無意識に「ヒッ」と声を出す。
「見るな!」と隣のオジさんが声を荒げる。

慌てて目をぎゅっとつぶり、さらに強くお札を握り締めた。
☆★馬場の名言★☆
189 :お前名無しだろ[]:2011/10/29(土) 01:53:35.19 ID:7ZfouL1b0
コツ、コツ、コツ。車のウインドウを叩く音が車内に響く。

周りに乗っている人も短く「エッ」とか「ンン」とか声を出す。
アレは見えなくても、声は聞こえなくても、音は聞こえてしまうようだ。
Kさんの念仏に力が入る。
やがて、声と音が途切れたと思ったとき、Kさんが「うまく抜けた」と声をあげた。
それまで黙っていた周りを囲む男たちも「よかったなあ」と安堵の声を出した。
厳しい顔つきだった男たちが一斉に笑顔になった。
おれは安心感で涙が出そうになった。
窓の外のなんでもない風景がキラキラ輝いて見えた。

やがて車は道の広い所で止り、親父の車に移された。
親父とじいちゃんが他の男たちに頭を下げているとき、Kさんが「お札を見せてみろや」と近寄ってきた。
無意識にまだ握り締めていたお札を見ると、全体が黒っぽくなっていた。
Kさんは「もう大丈夫だと思うがな、念のためしばらくの間はこれを持っていなさい」と新しいお札をくれた。

その後は親父と二人で自宅へ戻った。
バイクは後日じいちゃんと近所の人が届けてくれた。
親父も馬場のことは知っていたようで、子供の頃、友達のひとりが魅入られて命を落としたということを話してくれた。
魅入られたため、急いで引っ越した人も知っているという。

バンに乗った男たちは、すべてじいちゃんの一族に関係がある人で、
つまりは極々薄いながらも自分と血縁関係にある人たちだそうだ。
前を走ったじいちゃん、後ろを走った親父も当然血のつながりはあるわけで、
少しでも馬場の目をごまかすために、あのようなことをしたのだという。
親父の兄弟(伯父)は一晩でこちらに来られなかったため、
血縁は薄くてもすぐに集まる人に来てもらったようだ。
☆★馬場の名言★☆
190 :お前名無しだろ[]:2011/10/29(土) 01:57:11.60 ID:7ZfouL1b0
それでも流石に七人もの男が今の今、というわけにはいかなく、
また夜より昼のほうが安全と思われたため、一晩部屋に閉じ込められたのである。
最悪の場合、じいちゃんか親父が身代わりになる覚悟だったとか。

そして、二度とあそこには行かないようにと念を押された。

家に戻ってから、じいちゃんと電話で話したとき、あの夜に声をかけたかと聞いたが、
そんなことはしていないと断言された。
――やっぱりあれは…
と思ったら、改めて背筋が寒くなった。

馬場の被害には成人前の若い人間、それも子供が遭うことが多いということだ。
まだ子供や若年の人間が極度の不安な状態にあるとき、身内の声であのようなことを言われれば、
つい心を許してしまうのだろう。

それから十年経って、あのことも忘れがちになったとき、洒落にならない後日談ができてしまった。

「馬場を封じている地蔵様が誰かに壊されてしまった。それもお前の家に通じる道のものがな」

と、ばあちゃんから電話があった。
(じいちゃんは二年前に亡くなっていて、当然ながら葬式にも行かせてもらえなかった。
じいちゃんも起き上がれなくなってからは絶対来させるなと言っていたという)

すでに成人した自分の前に馬場は現れないだろう、と自分に言い聞かせつつも、かなり心配な自分がいる。
「あぽぽぽ…」という、あの声が聞こえてきたらと思うと…


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