- 【なのは】田村ゆかり×水樹奈々【フェイト】
114 :聖夜に会えない二人の聖夜 ◆c2XLMIXF3I [sage]:2007/12/28(金) 00:33:31 ID:qyQLDkao0 - ID:2j6xj+fT0です。
とりあえずまとまったので投下しますねー
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115 :聖夜に会えない二人の聖夜 ◆c2XLMIXF3I [sage]:2007/12/28(金) 00:34:59 ID:qyQLDkao0 - 「はい、お疲れ」
「お疲れでーす」 「お疲れ様ー」 ラジオの収録が終わり、簡単な事後処理も終わり口々にスタッフ皆がねぎらいを口に出し始めたところで、私は台本を閉じて一つ伸びをした。 伸びをしながら薄められた目に飛び込んできたのは一緒にこのラジオのパーソナリティを務める団長、奈々さんが一心不乱にかばんに荷物を押し込んでいる姿だった。 今回は珍しく来たゲストにもらった荷物もあったし、ライブ中ということもあって荷物は少なくないはずだ。 なのに、奈々さんは半ば押し込むようにして愛用の小さめのバッグに全てを押し込み、私やスタッフの皆にこう言った。 「美里、お疲れっ、次回も遅刻するなよっ、またね!! じゃ、お疲れ様で〜す」 語尾に♪でもつきそうなご機嫌ボイスを発して奈々さんはスタジオを飛び出していった。 なんだか少し、モヤモヤした。わかってる。これはジェラシー。 奈々さんにあんな笑顔を、あんな弾んだ声を出させる相手に対する――今回のゲストに対する――嫉妬。 自分でも理解はしてる。奈々さんは可愛いし、CDを出せば並居るJ-POPのアーティストを抑えてオリコンに入ってしまうような人。 すでに大御所と呼んでもおかしくない功績を挙げてしまってる人。 そう、芸人で言うならかうすぼたん。それに比べて私は若いOSAMUといったところか。 某人型機動兵器で言うならなんていうかもうフリーダム。運命じゃないほうの。それに比べて私は……ゾック? そんな他愛ないことを考えながら、スタッフにさっきの奈々さんのご機嫌ボイスは録音できてるかを確認した。 「送りましたよ」なんて聞こえてきた声と一緒に私の携帯に送られてきたメールに添付されていたファイルを開く。 『美里、お疲れっ、遅刻するなよっ!!』 そのファイルを流れるように明日のアラームに登録して私はそのスタッフと親指を立てあった。
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116 :聖夜に会えない二人の聖夜 ◆c2XLMIXF3I [sage]:2007/12/28(金) 00:35:52 ID:qyQLDkao0 -
そこは小さな喫茶店。タクシーを拾って少し走って路地を入ったところにある隠れ場的な店。 ゆかりさんと散策していたときに見つけたお店。 少し路地を入らないと見つからない、という地理条件から私たちはこのお店を結構待ち合わせや散策の休憩に使っていた。 時期柄なのかクリスマスリースのかかった木のドアをくぐると、そこには女の子同士の連れ合いが一組談笑していて、近所のおじさんが新聞を広げていた。店の中に目線を走らせたマスターが「いらっしゃい」と声をかけてくれた。 お世辞にも広いとは言い切れない店の中に目当ての姿を見つけられなかった私はマスターにその旨を尋ねた。 「あら、ゆかりさんならすぐ戻るって言って出て行きましたよ」 「あ、そうなんですか」 そう聞いた私はなんだか肩透かしを食らった気になって、『せっかく急いで来たのに』とか、『急用なのかな』なんて考えながらテーブルの一つに腰掛けた。 荷物を置いて、テーブルにぐてーっと寝そべったところで耳元でカチャッと音がした。 見るとマスターがいつもと同じ紅茶をテーブルに持ってきてくれたところだった。 「それじゃごゆっくり」なんて言いながらマスターはカウンターに戻っていった。 正直なところ、紅茶に救われた。いつもの紅茶の香りが心を落ち着けてくれた。だから、すぐに戻ってくるなら待ってればいいや、なんて気になった。 落ち着いてくると回りも冷静に見えるようになってきて、隣のテーブルの二人の会話も聞き流す程度には聞こえてきたり。
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117 :聖夜に会えない二人の聖夜 ◆c2XLMIXF3I [sage]:2007/12/28(金) 00:47:30 ID:qyQLDkao0 - 「いや、ゆっこ悪いね。付き合ってもらっちゃって」
「いいよいいよ、なっさんが頼みごとしてくるの珍しいもん」 「香奈子、喜んでくれるといいなぁ……」 「……それで、やっぱりさ、言うの?」 「え?……うん、言うよ、伝える。ちゃんと好きだって伝えたい」 「そっか……なっさんの、バカ……」 「うん?なんだって?」 「ううん、上手くいくといいねっ」 ………なんだか聞いちゃいけない気がして私は意識を紅茶に向けた。 そして何事もなく数分が過ぎて、落ち着いた心がまた少しざわついてきた頃だった。 店の扉が開き、私は弾かれるようにそちらに目をやった。 ゆかりさんだったら意地悪してやろうかな、なんて考えていたけど、それはつまり彼女が来てくれなければ成り立たないような妄想でしかなかったわけで。 「遅くなりました、芹穂さん」 この喫茶店の店員さんが買出しを済ませて帰ってきたところだった。 あ、まただ。時々襲ってくる出口のない不安。本当にゆかりさんは来るのか、とか本当に私たちの関係変わったんだろうか、なんて考えてしまうことがたまにある。 思考がグルグル回り始めるのを感じて私はテーブルに突っ伏した。
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119 :聖夜に会えない二人の聖夜 ◆c2XLMIXF3I [sage]:2007/12/28(金) 01:13:46 ID:qyQLDkao0 - 「ん……」
私が目覚めて一番先に目の前にあったのは、一番大好きな人の笑顔だった。 「おはよ、奈々ちゃん」 ……あれ? 「ゆ、ゆゆゆゆかりさんっ!?なっ、なんでウチに……!!」 と、そこまで言って気がついた。ここ、喫茶店だ。それを思い出すと同時に眠ってしまう前の気持ちまで思い出してしまい、再燃した不安を押しのける様にゆかりさんの体を引き寄せた。 「ゆかりさん……」 「あれ、どしたの奈々ちゃん、子供みたいだよ」 ごめんなさい、少しだけこのままで―― 声にはならなかったそんな気持ちもゆかりさんはお見通しだったのか、そのまま背中を叩いてくれていた。 そしてしばらくして落ち着いた私を放したゆかりさんは、私の向かいに座り、紅茶を啜っていた。 そんな沈黙が心地良く流れる中、ふとゆかりさんがその口を開いた。 「そんなにゆかりは奈々ちゃんに気持ちを示せていないのかな」
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120 :聖夜に会えない二人の聖夜 ◆c2XLMIXF3I [sage]:2007/12/28(金) 01:14:32 ID:qyQLDkao0 - それは楔のような言葉だった。その言葉を否定するのは簡単だった。そうすれば、ゆかりさんは、そうかな、なんて笑いながらいつものように笑ってくれるんだと思う。
だけど、私はイヤだった。ゆかりさんのことをいつも考えていたい。でも、考えれば考えるほど会いたくなる、触れたくなる、寂しくなる。 もう、これ以上の我慢は――できなかった。それに、いつも言われていた。奈々ちゃんは、人のことを考えすぎるね、って。 「……ゆかりさんの気持ちは、どうだっていいです。私は、寂しい、です……ゆかりさんがいつもそばにいて欲しいです」 精一杯暴走した、精一杯に人のことを考えない台詞にキョトン、としたゆかりさんは、 大笑いを始めた。 「あははははは!! 奈々ちゃんがワガママだー、奈々ちゃんがグレたー!!」 大笑いするゆかりさんに、それを見て自分の言った意味を理解して赤面してうつむく私。 店の中の視線は私たちに全て注がれていた。 ある程度笑って落ち着いたのか、ゆかりさんは急に神妙な面持ちになって言った。
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121 :聖夜に会えない二人の聖夜 ◆c2XLMIXF3I [sage]:2007/12/28(金) 01:18:38 ID:qyQLDkao0 - 当たり前の答えだった。ゆかりさんだって自分だって仕事もある。お互い以外の付き合いだってある。
いつもそばに、なんていうのは不可能だ。それでも、落胆している自分がいた。どんな答えを期待していたのかはわからないけど、確かに肯定を期待していた部分も私の中にあったんだ。 「だから、ゆかりとしては、こうしたい」 そう言ってゆかりさんは私の手を取って、一つはまっていた指輪を取って、自分の指にはめた。 そして、足元に置かれた鞄から小さな紺色の箱を取り出した。 「ホントはクリスマスに渡したかったんだけど、お互い仕事っぽいしね?」 ゆかりさんは箱を開けてその中の金属の環を取り出し、私の左手の薬指にはめた。 まあ、ゆかりと奈々ちゃんにとっては今日が聖夜ってことで。 そう照れながら言うゆかりさんと手を触れ合わせながら、私は自分の気持ちを再確認した。 「不安にさせたのはゆかりだしね、ちょっと仕事とかこの時期わかりにくくなるからさ、会えるうちに渡したかったんだよね」 「それでこれを買いに行ってたんですか?」 ゆかりさんはその問いに頷き、口を耳元に寄せてこう言った。 「これで名実ともにゆかりは奈々ちゃんのもの、だよ」 なんて。
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122 :聖夜に会えない二人の聖夜 ◆c2XLMIXF3I [sage]:2007/12/28(金) 01:32:50 ID:qyQLDkao0 - 以上。
きれいに終わってない、とか構成が、とかいろいろ言われそうですが、即興でまとめるの苦手なのでご勘弁を。 基本、ゆかり×奈々←美里ですが、美里はすでにあきらめの境地というか、悟りを啓いているので静かに奈々さんを観察して自分を慰める日々を送っております。 途中までゆかりさん出てこない上に、出てきてからの展開速すぎな気もしますが、まぁ、ゆかりさんなのでおkかな、と。
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