- ジャパン・エンジニアーズって何 3
709 :名無しさん@どっと混む[sage]:2010/12/18(土) 00:00:47 ID:xY8cVbkH0 - 主張だって──?
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710 :名無しさん@どっと混む[sage]:2010/12/18(土) 00:01:56 ID:xY8cVbkH0 - デューイは凄まじい勢いで、ここ数時間の記憶を手繰り寄せた。
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711 :名無しさん@どっと混む[sage]:2010/12/18(土) 00:05:21 ID:xY8cVbkH0 - 「ルールはこうだ」
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712 :名無しさん@どっと混む[sage]:2010/12/18(土) 00:06:29 ID:xY8cVbkH0 - トマスの声の微妙な変化を感じて、デューイは彼を見た。案の定、トマスの顔から笑みが消えていた。
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713 :名無しさん@どっと混む[sage]:2010/12/18(土) 00:07:38 ID:xY8cVbkH0 - 「実に単純明快だよ。今から僕は10数える。数え終われば僕は君を撃つ。君が助かりたければ、その前に僕を撃てばいい。わかったね。では──1」
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714 :名無しさん@どっと混む[sage]:2010/12/18(土) 00:08:47 ID:xY8cVbkH0 - 「馬鹿な!」
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715 :名無しさん@どっと混む[sage]:2010/12/18(土) 00:09:56 ID:xY8cVbkH0 - デューイは立ち上がって叫んだ。
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716 :名無しさん@どっと混む[sage]:2010/12/18(土) 00:11:05 ID:xY8cVbkH0 - 「お前は自分の言ってることが分かっているのか。自分のやっていることが」
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717 :名無しさん@どっと混む[sage]:2010/12/18(土) 00:12:14 ID:xY8cVbkH0 - 「2」
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718 :名無しさん@どっと混む[sage]:2010/12/18(土) 00:13:23 ID:xY8cVbkH0 - 「とにかく俺は、お前を殺すつもりも、お前に殺されるつもりもない」
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719 :名無しさん@どっと混む[sage]:2010/12/18(土) 00:14:32 ID:xY8cVbkH0 - デューイは努めて混乱を押さえてそう言うと、テーブルに背を向け出口を目指した。
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720 :名無しさん@どっと混む[sage]:2010/12/18(土) 00:15:41 ID:xY8cVbkH0 - なんでこんな馬鹿なことになったんだ。大体みんなはどこに行った? マスターですらいないじゃないか。それに、くそ! どうして出口が、こんなに遠い……。
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721 :名無しさん@どっと混む[sage]:2010/12/18(土) 00:16:50 ID:xY8cVbkH0 - 「3!」 トマスの鋭い声がデューイの背中を突いた。
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722 :名無しさん@どっと混む[sage]:2010/12/18(土) 00:17:59 ID:xY8cVbkH0 - 「悪いがね、さっきのルールに少し加えさせてもらうよ。戦場離脱は認めない。君がドアに手をかければ、その時点で僕は撃つ」
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723 :名無しさん@どっと混む[sage]:2010/12/18(土) 00:19:08 ID:xY8cVbkH0 - デューイはゆっくりと振り返った。
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724 :名無しさん@どっと混む[sage]:2010/12/18(土) 00:20:17 ID:xY8cVbkH0 - 「4」
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725 :名無しさん@どっと混む[sage]:2010/12/18(土) 00:21:26 ID:xY8cVbkH0 - こいつは狂ってやがる──デューイは思った。
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726 :名無しさん@どっと混む[sage]:2010/12/18(土) 00:22:35 ID:xY8cVbkH0 - だが……だが、本気だ!
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727 :名無しさん@どっと混む[sage]:2010/12/18(土) 00:23:43 ID:xY8cVbkH0 - 「お前は、一体?」
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728 :名無しさん@どっと混む[sage]:2010/12/18(土) 00:24:52 ID:xY8cVbkH0 - 「5」 トマスはその薄い唇だけに笑みを浮かべて言った。
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729 :名無しさん@どっと混む[sage]:2010/12/18(土) 00:26:00 ID:xY8cVbkH0 - 「神だよ。デューイ」
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730 :名無しさん@どっと混む[sage]:2010/12/18(土) 00:27:08 ID:xY8cVbkH0 - 「ああ……」
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731 :名無しさん@どっと混む[sage]:2010/12/18(土) 00:28:16 ID:xY8cVbkH0 - デューイは乾いた呻き声を上げた。
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732 :名無しさん@どっと混む[sage]:2010/12/18(土) 00:29:24 ID:xY8cVbkH0 - ああ、そうか。あのことなんだ! 必要とあらば、神のごとく人を審判できるか──あれだ!
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733 :名無しさん@どっと混む[sage]:2010/12/18(土) 00:30:32 ID:xY8cVbkH0 - 「6」
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734 :名無しさん@どっと混む[sage]:2010/12/18(土) 00:31:40 ID:xY8cVbkH0 - 人間は平等だ。その価値は等しく、その命の重さもまた同じだ。しかし、果たして本当にそうだろうか? もし、この宇宙に原因不明の死病が蔓延し、それから逃れるワクチンがわずか100人分だけあるとしたら──。
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735 :名無しさん@どっと混む[sage]:2010/12/18(土) 00:32:48 ID:xY8cVbkH0 - 「7」
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736 :名無しさん@どっと混む[sage]:2010/12/18(土) 00:35:04 ID:xY8cVbkH0 - 「そしてたぶん」 不意にトマスが言った。
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737 :名無しさん@どっと混む[sage]:2010/12/18(土) 00:36:12 ID:xY8cVbkH0 - 「地位のない者より地位のある者が選ばれるだろう。その地位が、その人間の努力と才能だけによるものではないにも関わらずね」
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738 :名無しさん@どっと混む[sage]:2010/12/18(土) 00:37:21 ID:xY8cVbkH0 - そこでトマスは目を伏せた。
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739 :名無しさん@どっと混む[sage]:2010/12/18(土) 00:38:30 ID:xY8cVbkH0 - 「8」
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740 :名無しさん@どっと混む[sage]:2010/12/18(土) 00:40:47 ID:xY8cVbkH0 - 「9」
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741 :名無しさん@どっと混む[sage]:2010/12/18(土) 00:41:55 ID:xY8cVbkH0 - 俺は分からないと言った。その時になってみないと、何とも……。
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742 :名無しさん@どっと混む[sage]:2010/12/18(土) 00:43:03 ID:xY8cVbkH0 - デューイはふらふらと、トマスのいるテーブルの方へ足を踏み出した。
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743 :名無しさん@どっと混む[sage]:2010/12/18(土) 00:44:11 ID:xY8cVbkH0 - ただ、俺は神にはなれないだろうと言った。そして、俺だけではなく何人も、そうトマスも、神になることは無理だと言った。そう、主張した。
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744 :名無しさん@どっと混む[sage]:2010/12/18(土) 00:45:19 ID:xY8cVbkH0 - 「…………」
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745 :名無しさん@どっと混む[sage]:2010/12/18(土) 00:46:27 ID:xY8cVbkH0 - デューイはトマスの唇が今一度、静かに開かれようとするのを見て取った。
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746 :名無しさん@どっと混む[sage]:2010/12/18(土) 00:47:35 ID:xY8cVbkH0 - ──俺か? トマスか?──
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747 :名無しさん@どっと混む[sage]:2010/12/18(土) 00:48:43 ID:xY8cVbkH0 - トマスの唇がゆっくり開くのに合わせて、彼の右手の指先が微かに、しかし確実な動きを施した。
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748 :名無しさん@どっと混む[sage]:2010/12/18(土) 00:49:51 ID:xY8cVbkH0 - ──俺か? トマスか?──
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749 :名無しさん@どっと混む[sage]:2010/12/18(土) 00:50:59 ID:xY8cVbkH0 - トマスは顔に満面の笑みを湛えた。
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750 :名無しさん@どっと混む[sage]:2010/12/18(土) 00:52:07 ID:xY8cVbkH0 - ──俺か? それとも──
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751 :名無しさん@どっと混む[sage]:2010/12/18(土) 00:53:16 ID:xY8cVbkH0 - 「10!」
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752 :名無しさん@どっと混む[sage]:2010/12/18(土) 00:54:25 ID:xY8cVbkH0 - その言葉が響きとなって空気を震わすのを待たず、空間を青白い光が引き裂き、そして、塵が舞った。
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753 :名無しさん@どっと混む[sage]:2010/12/18(土) 00:55:34 ID:xY8cVbkH0 - 惑星イオス探査船、アフロディーテに乗り込んだ瞬間、デューイは少なからずの興奮と緊張を覚えた。宇宙に出るのはもう十数回目だが、今度の航海は彼が全指揮権をとる。つまり、艦長としては初めての航海となるのだ。
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754 :名無しさん@どっと混む[sage]:2010/12/18(土) 00:56:43 ID:xY8cVbkH0 - 「航路においても惑星イオスにおいても、さしあたって特筆すべき問題はないがね」
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755 :名無しさん@どっと混む[sage]:2010/12/18(土) 00:57:52 ID:xY8cVbkH0 - 塵になったはずの上官の言葉と笑顔を、デューイは回想した。
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756 :名無しさん@どっと混む[sage]:2010/12/18(土) 00:59:01 ID:xY8cVbkH0 - 「それでも宇宙は地球より、危険を伴う場所なんだ」
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757 :名無しさん@どっと混む[sage]:2010/12/18(土) 01:00:10 ID:xY8cVbkH0 - 「分かってるよ、トマス。 要するに、生き残ることが絶対だと言いたいんだろう? それが正義だと――」
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758 :名無しさん@どっと混む[sage]:2010/12/18(土) 01:01:19 ID:xY8cVbkH0 - デューイはコックピットのシートに深く体を沈めた。
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