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名無しでGO!
北海道&東日本パス PART50

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北海道&東日本パス PART50
978 :名無しでGO![sage]:2021/01/06(水) 12:41:06.90 ID:mtfu4B9n
むかし、あるところに一人の若者がおったと。
 若者は畑仕事のあいまに駄賃(だちん)働きするほどの働き者だったと。
 ある日、若者が駄賃働きで隣(となり)村へ荷(に)を運んで、帰りに空荷(からに)の馬に乗って山裾(やますそ)の野っ原にさしかかったら、ちょうどお日さまが山蔭(やまかげ)に沈(しず)もうとして、空も野もあたり一面、まっ赤に染めたと。
 「ほう、今日は格別(かくべつ)きれいな夕焼けじゃ」
と、見とれながら、なおも馬を進めて行ったら、野っ原の道の行手(ゆくて)に、見たことのない娘(むすめ)が一人、たたずんでおった。
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979 :名無しでGO![sage]:2021/01/06(水) 12:42:03.47 ID:mtfu4B9n
 若者は、こんな広い野っ原のまん中で、今にも日が暮れようとしているのに、どうしたことじゃ、と不思議(ふしぎ)がって馬を停(と)めた。
 「こんなところで、若い女の身一人、一体何しておるんじゃ」
 若者が声をかけると、娘はうつむいていた顔をあげて、恥(は)ずかしそうに若者を見た。娘の顔に夕日が映えて、そりゃあきれいだったと。
 「何というあてもなく、この夕景色(ゆうげしき)を楽しんでおりました」
 「日が暮れてしもうたらどうする。早う家に帰らにゃ」
 そう言われて、娘はまたうつむいて、首を横にふった。
 「わたしには、家はございません。親も死んでしもうておりません。ひとりぽっちでございます」
 若者はこの娘がいとしくなったと。
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980 :名無しでGO![sage]:2021/01/06(水) 12:43:53.48 ID:mtfu4B9n
むかし、あるところに一人の貧乏(びんぼう)な男があったと。
 ある日の晩方(ばんかた)、男が畑仕事をあがって、山道を帰っていたら、うしろでもうひとつ足音がして、それが山の畑のあたりから、ずうっとついてくるふうだ。気味悪くなってふりかえったら、いとしげな若(わか)い娘(むすめ)がにこっと微笑(ほほえ)んだと。
 「お、お前(め)ぇ、誰(だれ)だぁ。こんな山道になんでいるんだぁ」
 「おら、旅のもんだが、もう暗くなったすけ、今夜(こんにゃ)はお前(め)のどこに泊(と)めてもらいたいと思うて、あとをついてきた」
 「そうだったか。おらとこはおら一人で、ごっつおも無いが、それでいいけや(よかったら)泊まるがいい」
 娘は男と一緒(いっしょ)に帰って、泊めてもらった。
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981 :名無しでGO![sage]:2021/01/06(水) 12:44:33.17 ID:mtfu4B9n
次の朝になって、男は、娘が旅立っていくのかなと思っていたら、そんな気配はこれっぽっちもなくて、はきそうじにふきそうじ。洗濯(せんたく)に破(やぶ)れた着物のつくろいと、休む暇(ひま)も無いほど、くるくると働いてくれるのだと。そうやって、もう一晩泊まり、また一晩泊まりしたと。


 「お前、いく晩泊まっても旅立つふうでもないが、どういうつもりだ」
 「あい、お前はかかも無いげだが、おらをお前のかかにしてもらいたいが、どうだろう」
 「か、かか……にか」
 「あい」
 「かか…かぁ。おらとこは見たとおり、何にも無い貧乏者だ。ありがたいけど、かかにはできん」
 「なんでぇ」
 「お、お前みてぇないとしげな娘がおらのかかなんて、に、似(に)合わねぇ」
 「そんげなことは無(ね)ぇ、かかにして呉(く)れぇ」
 「ほ、ほんとにいいのか」
 「あい」
 「そうせば、かかになってくれや」
 こうして二人は夫婦(めおと)になったと。そして、そのうちに男の子が生まれた。
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982 :名無しでGO![sage]:2021/01/06(水) 12:45:36.49 ID:mtfu4B9n
その子が二つか三つになった頃(ころ)、ある朝早くに、男が、
 「おらは田んぼを打ちに行くすけ、お前は、後から子供を連れて、朝飯と昼飯を持って来てくれや」
というて、山へ仕事に出掛(でか)けたと。
 かかが男の子に着物(べべ)を着せ替(か)えさせていたら、
 「かか、しっぽ。かか、しっぽ」
とびっくりしていうた。

 かか、からだをじゃがませたひょうしに、つい尻尾(しっぽ)を出してしまったと。かかは、
 「おらが狐(きつね)だってことが判(わか)ってしもたすけ、もうこの家にはおられん。お前はここで、じっとしとれよ」
というて、山へ帰ってしもたと。
 一方、山では男がいくら待ってもかかが来ん。腹(はら)がへって家へ帰って来たと。子供が泣いているのに、かかがおらん。
 「かか、どこ行ったぁ」
ときいたら、
 「かか、しっぽあった」
というた。
 男はびっくりしたと。
 「そうか、かかは狐であったか」
というて、悲しんだと。
かかがいなくなった家んなかは、さっぷうけいで風が吹(ふ)いているみたいだと。
 それでも男は一人で田んぼ仕事をして、いよいよ明日は田植えをいう日になった。
北海道&東日本パス PART50
983 :名無しでGO![sage]:2021/01/06(水) 12:47:25.81 ID:mtfu4B9n
 むかし、あったけど。
 狢(むじな)と狐(きつね)が、道でばったり会ったと。
 「狐どん、狐どん、ひさしぶりじゃのう」
 「これはこれは狢どん。本当にひさしぶりじゃ」
というているうちに、狐が、
 「どうじゃ、狢どん。二人で化けくらべをしまいか」
というと、狢も、
 「それはおもしろい。ひとつ、化けくらべをするか」
というた。それで、まずはじめに、狐がお宮さんの前で化けて見せることになった。

 しばらくして、狢が約束のお宮さんの前に行くと、道の真中(まんなか)に、うまそうなまんじゅうが落ちている。
<これはうまそうなまんじゅうじゃわい>
と思うて、あたりをキョロキョロ見回し、誰(だれ)もいないと分かると、まんじゅうをさっと拾って、パクリと口の中に入れた。


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