- 【ニコ生】かなたを語るべ☆54
615 :名無しさん@実況は禁止ですよ[sage]:2024/12/08(日) 17:03:55.63 ID:bx13CSQU0 - 熱が40度あった朝、上司は風邪ひとつひいたことなくて、「会社で倒れろ」という人だった。
片道1時間で二回乗り換えの通勤は、とてもじゃないけど無理だった。 ものすごく贅沢というか、薄給にはとんでもない無駄遣いなんだけど、駅に向かう途中でタクシー停めた。 行き先指定するも、既に意識朦朧。 「すみません、実は今日、とても体調が悪くて、会社に着くまでシートに横になってもいいでしょうか」 って聞いたんだ。 無口で眉毛の濃い、白髪混じりのスポーツ刈りの運転手さんは、バックミラー越しにこちらを見て、 「着いたら起こしますから、どうぞ」とだけ云った。 そうはいってもさ、眠れるわけもないんだけどさ。 でも気分的に少しはラクだったな。こうしてるだけで会社に着けるんだな、って。 で、気づいたんだ。 運転手さんは、もの凄く気をつけて、アクセルとブレーキを踏んで、シフト換えるにも、 できるだけショックのないように、そーっとそーっと操作してくれていた。 バックミラー越しに様子を確認してくれているのも、感じ取れた。(吐かれたら困るとかそういう感じじゃなくて) 頭は朦朧としてたけど、なんか、そこだけはすごくよく分かったんだ。 そろそろ着きますよ、と声を掛けられて、そっと運転してくださってありがとうございました、って云ったら、 いいえ、なんにもしてませんよ、って、やっぱり笑わないで云う。 自分、その時はホテルのレストラン勤務業だったんだけど、 そういう、なんでもかんでも儀礼的に用意された言葉やマニュアルで片づけられるもんじゃない、 なんていうかな、その時24才くらいだったけど、とても大事で渋いことを教わった気がした。 それから半年くらいたって、別の場所でまた同じ運転手さんのタクシーに乗れたとき、びっくりしたよ。 あのときは、って御礼云ったら「そんなこと、ありましたかねぇ」って、やっぱり笑わないで、 バックミラー越しに答えてた。
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616 :名無しさん@実況は禁止ですよ[sage]:2024/12/08(日) 17:05:09.91 ID:bx13CSQU0 - 「お年寄りを大切にしよう」なんていうのは昭和のキレイごとなのか。
きのうは社会と自分の意識の変化に気づかされる小さな事件があった。 電車の座席はほぼ埋まり、車内には立っている人がちらほらいる程度。 私の向かい側座席の前には男性1人、女性2人のハイキング帰りらしい高齢者が立っていた。 私に背中を向けているから時たま見える横顔で判断するしかないが、60代半ばぐらいか。 彼らの目の前の座席には若者2人と50代ぐらいの女性1人が座っている。若者は2人とも茶髪、1人はサングラスをしていた。 この人たちに気づいたのは、この高齢者組の男性が「最近の若い者は年寄りを立たせても平気なんだから」 「ちょっと前は罪悪感からか寝たふりをしたもんだが、最近じゃ寝たフリもしないからふてぶてしい」などと、 かなり大きな声で話しているのが耳に入ってきたからだ。どうも自分の前にいる若者に席を譲らせて女性2人を座らせたかったらしい。 ここまで嫌味っぽく言われると、まったく関係ない第三者の私だってちょっと気分が悪い。すっかり眠気が覚めてしまった。 反対側にいる私が席を譲れば、もう1人ぐらい誰か立ってくれるだろうと思って腰を浮かせかかった瞬間、サングラスの若者が口を開いた。 「あんたたちさぁ、山は歩けるのに電車では立てないの? それっておかしくない? 遊んできたんだろ? こっちはこれから仕事に行くところなんだよ。だいたいさぁ、俺みたいなヤツが土曜日も働いてあんたたちの年金を作ってやってるんだって分かってる? 俺があんたみたいなジジイになったら年金なんてもらえなくて、優雅に山登りなんてやっていられないんだよ。とにかく座りたかったらシルバーシートに行けよ」 細部の表現は覚えていないながら、こんな感じ。チャラチャラしているように見える若者の意外な発言に正直言ってビックリ仰天した。 「お年寄りに席を譲りましょう」とか「お年寄りを大切にしましょう」などというキレイごとを聞いて育ってきた世代の私にしても、彼の言っていることは正論に聞こえた。 あたしって壊れてきているのかな? 浮かせかかった腰を再び降ろしちゃったよ。3人の高齢者は凍りついたように黙りこくり、 次の駅で降りていった。ほかの車両に乗り換えたのかもしれない。
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617 :名無しさん@実況は禁止ですよ[sage]:2024/12/08(日) 17:07:33.82 ID:bx13CSQU0 - そんな事より1よ、ちょいと聞いてくれよ。スレとあんま関係ないけどさ。
このあいだ、近所の実験施設行ったんです。実験施設。 そしたらなんか人がいなくてピペットマンもなくてピペットマン使えないんです。 で、よく見たらなんか掲示が貼ってあって、ピペットマンは基本的に各自持参してもらう、 希望者には有料で貸し出す、1本につき1ヶ月1000円とか書いてあるんです。 もうね、アホかと。馬鹿かと。 お前らな、1000円如きで普段来てる実験施設に来るのやめんじゃねーよ、ボケが。 1000円だよ、1000円。 人が少ない中でもなんか学生連れとかはいるし。研究室総出で実験施設か。おめでてーな。 よーし先生4本頼んじゃうぞー、とか言ってるの。もう見てらんない。 お前らな、4000円やるからその部屋空けろと。 実験施設ってのはな、もっと殺伐としてるべきなんだよ。 前に借りてた奴といつ喧嘩が始まってもおかしくない、 汚染するかされるか、そんな雰囲気がいいんじゃねーか。女子供は、すっこんでろ。 で、やっと借りれたかと思ったら、前の奴が、Eppendorfの精度じゃないとなー、とか言ってるんです。 そこでまたぶち切れですよ。 あのな、エッペンドルフなんてきょうび流行んねーんだよ。ボケが。 得意げな顔して何が、Eppendorfの精度じゃないとなー、だ。 お前の実験には本当にエッペンドルフの精度が必要なのかと問いたい。問い詰めたい。小1時間問い詰めたい。 お前、Eppendorfの精度って言いたいだけちゃうんかと。 ピペット通の俺から言わせてもらえば今、ピペット通の間での最新流行はやっぱり、 ピペットマンP-10のデュアルポジションチップイジェクター付き、これだね。 ピペットマンP-10、P-100、P-1000に、チップはフィルター付きで。これが通の頼み方。 ピペットマンってのは頑丈でシンプル。そん代わりロック機能とかはない。これ。 で、それに安いバルクの汎用チップ。これ最強。 しかしこれでやると誤差が多くなるという危険も伴う、諸刃の剣。 素人にはお薦め出来ない。 まあお前らド素人は、エッペンドルフ純正セットでも使ってなさいってこった
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618 :名無しさん@実況は禁止ですよ[sage]:2024/12/08(日) 17:09:08.48 ID:bx13CSQU0 - 殷王朝の時代、当時の中国では「女性は家庭に」という概念はまだ確立されておらず、
男女の別なく力仕事や兵役に就き、共に同じ場で働いていた。 そのため、男女が兵役に就いている間に知り合うことも少なくはなかったが、 女性の兵士が男性の兵士に思いを告げる際に、野生の猪と虎を狩り、 これを渡して己の戦闘力と生活力を示すことによって 相手の気を引くという「猪虎霊渡(ちょこれいと)」と呼ばれる風習が存在した。 しかし、周辺の属国の人々は殷のこの奇異な風習を野蛮な物と見なし、 殷の出身者は「蛮恋多殷出夷(ばれんたいんでい)」と呼ばれ忌み嫌われることとなり、 そしてこの周辺国の殷王朝に対する嫌悪感が後の殷周革命の原動力となったと言われている。 そして現在、女性はかつてのように積極的に社会進出するようになり、 女性側から思いを告げる場面も多く見られるようになり、 ついには、特定の日には女性は男性にプレゼントを渡しながら告白しよう、 という風習が復活するまでとなった。 そしてこの日は、かつての殷王朝時代の女性兵士の呼び名にちなみ 「戦徒・蛮恋多院出夷(せんと・ばれんたいんでい)」と呼ばれるようになった。 ちなみに、女性が男性に渡す品の定番が「チョコレート」なのは 当時の風習「猪虎霊渡」からきているというのは言うまでもない。 民名書房刊「こんな風習いらない・慟哭編」より
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619 :名無しさん@実況は禁止ですよ[sage]:2024/12/08(日) 17:11:16.09 ID:bx13CSQU0 - 爪は人の健康状態の履歴だということを聞いたことがある。子どものころ、、爪に「月」とか「星」とかいう、点や縞が出ているといいことがある、という風に友人たちから聞いていたけど、実際は病気や不調の記録が爪に出ていたということだろうか。
まあ、実際、私はあまり病気とかしないんだけど。 「アキナは爪綺麗だね〜」 アパートの部屋に、久々に遊びにきた友人のユキが、飲み物をのっけた盆に添えた手の、私の指先を見て言った。 私はパソコンをいじったり小説を書いたりするので、爪は気になってくるとすぐに切って手入れをするほうだ。絵描きの友人もそうだが、彼女の場合、爪先にはよく絵の具がついている。私はそんなことはない……手の小指の横辺りがインクで汚れることはあるが。 「ユキはよく、他人の爪を見てるね……心理テストかなんか?」 「そうでもないんだけど」 彼女と小さなテーブルを挟んで向かい合い、私もじゅうたんの上に座った。そのとき、私は見た。彼女の爪は、普通でない色をしている。でも、絵の具がついてるとかいう訳じゃない。 「それ、ネイルアート?」 ユキは、ああこれ、と言って両手をテーブルの上に置いた。 彼女の両手の爪には、それぞれ別々の絵が描いてあった。それは、文字にも読めるが、どこかエキゾチックな抽象画にも見える。 なんにせよ、汚れた感じはしなかった。芸術的だと思う。 「綺麗だね」 私が素直に言うと、彼女は少し照れたように笑った。 「ありがとう。これ、私が描いたの」 「ほんとに? 店とかじゃないんだ」 「うん。こういう細かいのは得意なの。ね、アキナ、やってみない? 邪魔だったらあとで洗い流していいからさ」 「いいの?」 べつに流行やファッションに興味はなく、マニキュアもほとんどつけたことのない私だが、一度経験してみて悪いことはない。それにタダでやってくれるんだから、という貧乏根性もあった。 ユキはバッグから道具を取り出して、私の爪に色を塗り始めた。私はテーブルの上に手を押さえつけて、動かないようにする。 やがて五分ほどで、両手の爪が完成した。 「何か、文字みたいだね」 それは、ユキの爪に描かれているのと似ていた。だが、まったく同じではない。 自分の爪をまじまじと見つめる私に、彼女は笑っていた。 「まあ、おまじないみたいなものよ」 一体、どんなおまじないなのか。私はきいて見たが、彼女は「教えない」とおどけて言った。 それから、一時間くらいの間、私たちは談笑していた。大学のこととか、好きなテレビ番組のこととか、そんな他愛のない話だ。 楽しい時間はあっと言う間に過ぎて、ユキは席を立った。 「じゃ、また邪魔しに来るからね。そのときは、お菓子の用意よろしく」 「そっちも、たまにはお土産ちょうだい」 「そうねー、手作りのクッキーでも持ってくるよ。味は保証しないけど」 「楽しみにしてるよ。じゃあ、また」 私は、玄関で手を振ってユキを見送った。 残されたのは、私と、この爪の謎。 指を立てて眺め、逆に指先を下にしてみたり、前後左右から見てみた。でも、わからない。 文字に見えるってのは、おまじないに関係ないのかな。 溜め息をつきながら、手を組んで、壁に寄りかかって座る。その姿を、向かい側の壁に吊るされた大きな鏡が映した。 それを見て、私は気づく。 鏡を見ながら組んでいた指を徐々に解いて、左右の指が交互に重なるようにした。すると、十の爪に分散されていた文字のパーツが、意味のある文字列を形づくる。 それは、こう読めた。 『これからもよろしく』 私は苦笑して、鏡に向かって言った。 「こちらこそ、よろしく」 某お題用に書いたけど結局使わなかったのでこっちに。どことなくノンフィクションぽいがネイルアートはやったことがない。設定だけ半分過去の自分なのは、慣れない一人称だから自分の視点で書きたかったため?
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