- 葉巻・シガー総合スレ【その44】
3 :774mgさん[]:2022/12/18(日) 13:52:27.89 ID:DfwSr2CN - 玄人は輸送をはさむ国内販売や海外通販の葉巻じゃ満足できない
やっぱり現地の畑で千切りたてを巻いて乾燥しないようにジャングルで吸うのが一番だよな 蒸し暑さでだらだら汗をかきながら見たこともない鳥の奇声を聞きながら吸うフレッシュな葉巻 これこそが真のオーガニック野菜の楽しみ方なんだよ 初めて現地まで飛んだのはホンジュラスだった 現地コーディネーターは道中ギャングがいるかもしれないから危険だと止めてきたが俺は言ってやったね 命より大事なことがあるそれは葉巻を乾燥させないことだってね 無事に畑に着いてみれば原住民にハポンハポンと大歓迎されてホッとしたのを覚えている 朝露に濡れたタバコ葉をつまんでみると日本じゃお目にかかれないフレッシュネスだ 目を丸くする俺にボスらしい男がニヤリと頷いた OK食べごろのサインということか 俺は夢中でタバコ葉をむしった これでもかというくらい水分をたっぷり吸ったタバコ葉を巻いていく 巻き方はYoutubeで予習してある やや大ぶりのチャーチルサイズに仕上がった葉巻を持つ俺の手は震えていた 夢にまで見た完全ノンドライのフレッシュ葉巻 手近にあったジャングルに急いで駆け込み着火を試みる 葉巻の水分のせいかジャングルの湿度のせいかライターではなかなか火がつかない 業を煮やした俺はイワタニのジェットバーナーで強制的に着火した うっうまいっ! 世間じゃ個包装だボベダだ調湿だなどと騒いでいるがこの真のシガーに比べればナンセンスな議論だ やはり現地もぎたて無添加オーガニックが最速かつ最強だったのだ 俺の理論は間違っていなかった あまりの感動に自律神経がイカれた俺はそのままジャングルに野糞をして原住民のボスに叱られた
|
- 葉巻・シガー総合スレ【その44】
4 :774mgさん[]:2022/12/18(日) 13:53:09.69 ID:DfwSr2CN - つまりボベダや個包装だけでは不十分だと…そういうことですか?
絶望しきった俺に降りかかった答えは無情だった えぇ、残念ながら…そういうことになりますね 血色の悪い顔をした痩せぎすの男は眼鏡を少し持ち上げた 乾燥空気の質量に対する水蒸気の質量を一定に保つことが必要なのです いくらボベダで相対湿度を調整し個包装でなるべく空気に触れないようにしたとしても… 男は一息ついてから俺の目をまっすぐ見つめながら断罪した 水蒸気の密度が適切に保持されなければ実質的には乾燥状態あるいは過加湿になってしまうのです ば、ばかな!つたない英語でPlease Bovedaなどと指示を出していた俺はなんだったのだ 通販サイトの発送担当者に無用な仕事を押し付けていただけだというのか… いやインフレで俺の実質的な時給よりも稼いでいるアメリカの発送担当者の心配をしている場合ではない 問題は葉巻だ 命より大事なことは葉巻を乾燥させないこと、そして過加湿にしないこと つまり、結論から言うとどうすればいいんですか先生?! 絞りだされた俺の声はほとんど悲鳴に近いものだった
|
- 葉巻・シガー総合スレ【その44】
5 :774mgさん[]:2022/12/18(日) 13:53:44.49 ID:DfwSr2CN - 男は後ろ手でゆっくり俺の方に振り返った
逆光が男の右ほほの輪郭を優しく浮かび上がらせている 通説によれば温度20℃相対湿度69%が理想的な葉巻の環境です これがすべての葉巻に適応されるかどうかはさておき大きくは外れていないという前提で話を進めると… 1気圧における重量絶対湿度は10.1g/kg(DA)が理想ということになります しかし例えば夏のマイアミの気温を想像してみてください もしかしたら30℃を越えることがあるかもしれない そうなるとボベダで相対湿度が69%に保たれたとしても重量絶対湿度はなんと18.5g/kg(DA)と完全に過加湿になるのです… 俺は浅くなった呼吸であえぐようになんとか声を絞り出す つまり…例えば冬のアトランタを経由するようなクソ配送ルートの場合だと… 男はあくまでも冷静だった えぇ、仮に気温が0℃まで下がったとすれば重量絶対湿度はたった2.6g/kg(DA)でカサカサに乾燥するでしょうね 心なしか男の口の端が上がっている気がする バカにされているのだろうか いやバカにされても仕方がないこんな単純なことに気が付かなった俺のミスだ なにがPlease Bovedaだ!おれは…なんてことを…! 髪をかきむしりながら吠えた俺は、そこで新たなファクターに気が付いてしまった せ、先生…もしかして飛行機の気圧って… よくできましたと言わんばかりの微笑みを男は浮かべた ふふっ、そうですね飛行機は通常0.8気圧に設定されている つまり気圧は輸送中の半日ほど1013.25hpaから810.6hpaに下がるのです 仮に飛行機の荷室が葉巻の理想である20℃に設定されたとしても重量絶対湿度は12.6g/kg(DA)で過加湿になります 荷室の室温が低ければ… それ以上聞く必要はなかった 俺はあれだけ大事にしていたヒュミドールを蹴り飛ばしてホンジュラス行きのチケットを予約した
|
- 葉巻・シガー総合スレ【その44】
6 :774mgさん[]:2022/12/18(日) 13:54:04.97 ID:DfwSr2CN - ホンジュラスに行ってしまった可哀想な子羊はどうなってしまったのでしょうか
それはさておき私がさらに付け加えましょう 意外と知られていない事実ですが、33,000フィート上空を飛行する飛行機の中では地上とは比較できないほどの紫外線が飛び交っています 波長が長いために飛行機の隔壁程度では防げないのです つまり荷室にある葉巻も例外ではありません 常に紫外線を浴び続けた葉巻はどうなるでしょうか 一般的に葉巻は発酵によって熟成されていきますがその主役はご存じのように微生物です しかし、葉巻を発酵させる微生物が紫外線耐性をどの程度持っているかは定かではありません したがって、せっかく熟成してくれる微生物がほとんど死滅してしまう可能性もゼロではありません 以上を総合すると温湿度管理されたコンテナによる船舶輸送が葉巻にとっては理想的でしょう しかし、これは私のごく個人的な意見ですがあまり神経質になりすぎないほうが精神衛生上よいでしょうね ふふっ
|
- 葉巻・シガー総合スレ【その44】
7 :774mgさん[]:2022/12/18(日) 13:54:42.51 ID:DfwSr2CN - 思えば宇宙は生まれたてのころ水素だった
俺が今こうしてホンジュラスで吸っている葉巻に含まれる水も元を辿れば宇宙時刻が10^-4秒のころクォーク・ハドロン相転移によって誕生した水素を先祖とするものだ 138億年ともいわれる悠久の時を経てこうして葉巻の一部として俺の手元にあるのだ 俺の葉巻は燃えていた うまい 加熱された水分は地球の大気へと蒸発していく やがて海に帰り大循環の中を旅して何万年後ひょっとしたら何十万年後に地表に戻ってくるだろう そのとき俺を構成していた原子たちは何を構成しているだろうか もう一度巡り会うことがあるのだろうか ないかもしれない どちらにしろ俺には観測することもできない事象だ 大事なことは今ここ自分にあるのだ 俺が今ここで吸っている葉巻がうまければ十分だ それを忘れさえしなければ俺は上手くやっていけるだろう 明日日本に帰ろう …聖地に野糞をしたことはもう一回謝っておいたほうがいいだろうか 了
|