- 刑法の勉強法■57
714 :元ヴェテ参上[sage]:2018/11/16(金) 10:40:29.25 ID:oGHubcyT - >>713
再考します。 井田総論第2版レビュー試論(4)−正当防衛論 (4)対物防衛 井田は、対物防衛を否定しながら(303頁)、民法720条2項が「他人の物から生じた急迫の 危難を避けるためその物を損傷した場合」は損害賠償責任を負わないと規定していることから この規定を根拠に違法性阻却を認めている(防衛的緊急避難=304頁)。この見解は、法秩序 の統一性を認めることを前提にして、民法上適法な行為は刑法上も適法とされなければならな いことを根拠としている。しかし、民法720条2項の適用では問題は解決しないように思われる。 第1に、井田は「民法720条2項は、・・・刑法の緊急避と異なり、法益の均衡も補充性も要件 としていない」(303頁)とするが、オイラの知る限り、民法学説でも補充性と害の均衡を要求す る見解が有力である(平井、潮見など)。この点について、井田は「物から危険な事態が生じた とき、いわれのない危難に遭遇した人には、危険源となっているその物を損傷することより危難 から逃れることを可能にすべきであり、他方、物の所有者には、自己の物が他人に危険な事態 を生じさせた場合には、それが破壊されることもあるというリスクを負担させてよい」(303頁)と 説明する。しかし、井田は、刑法の正当防衛で補充性と害の均衡が必要ない理由を、前述の とおり、攻撃者の「帰責性」に基づく「法確証の利益」に求めており、それが井田が対物防衛を 否定する理由であったはずである。 刑法で認められない違法性阻却が民法であれば認められ、そしてそれが刑法に適用されると いうのは、奇妙ではないだろうか(佐伯仁志128頁) 第2に、正当防衛における正当化根拠として、「法確証の利益」という考え方をとるのであれば 「動物や倒れかかってくる大木に対して法確証の利益を説いても全く意味がない」(西田160頁) 法確証の利益説を採りながら、、違法性阻却を認めることは論理的に一貫しないと云わざるを得ない。
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