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仮面ライダーが絆で兄弟! 1/9 (ワッチョイ ffe5-DbHY)
仮面ライダーが絆で兄弟! 2/9 (ワッチョイ ffe5-DbHY)
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名無しより愛をこめて (ワッチョイ ffe5-DbHY)
歴代ライダー主人公が兄弟だったら 43

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歴代ライダー主人公が兄弟だったら 43
708 :仮面ライダーが絆で兄弟! 1/9 (ワッチョイ ffe5-DbHY)[sage]:2019/09/16(月) 00:15:03.92 ID:3CREmTol0
・兄弟は絆 ・変身音声の簡略化 ・マギアと戦闘描写有 ・時系列は多分2〜3話の間くらい

「ご自宅に到着しました」

或人社長。いついつ何時に迎えに来ますので。
社長秘書を名乗るイズは用件を一方的に述べてから、深いお辞儀をした。――これはそのまま解散になる流れだ。或人は片手を上げ、軽いノリでひらひらと泳がせる。

「お疲れ! またな」
「はい。お疲れ様でした或人様」イズは視線を動かし「来客の方がいるようですね。それでは私はこれで失礼します」と言い、車に乗り込んだ。去るのを見送ってからはたと気付く。

来客? 或人は遅れて視線の終点を追った。
或人が住んでいる1階の部屋の前に、ラフな格好をした……見たところ少年が立っていた。少年はチャイムを何度か押しながら、その度に耳を傾けて中の動向を確認している。
「おーい!」或人はひとり暮らしなので、当然誰か出て来ることはない。間に合ってよかった。「オレに用か?」

「……!」
「オレで間違いないよな?」

こちらの声に気付いた少年が、安い塗料で彩られた手すりから身を乗り出した。
或人は慌てて駆け寄りキャッチの態勢に入る……が、彼が落ちることはなく。物理的に距離が縮まったことで、両者はお互いを頭のてっぺんから足のつま先まで見た。

端正な顔立ちをした子だ。モデル業でもやっているのだろうか。それが少年の第一印象。しかし、一体誰だろう。同い年ではない……はずだ。輪郭には幼さが残っており、成人しているようには見えない。

諸々のおかげで高くなった位置から或人を見下ろしたまま、少年が笑う。

「俺は常磐ソウゴ。君が仮面ライダーゼロワンの飛電或人で間違いないよね?」
「…………お前、何者?」
歴代ライダー主人公が兄弟だったら 43
709 :仮面ライダーが絆で兄弟! 2/9 (ワッチョイ ffe5-DbHY)[sage]:2019/09/16(月) 00:15:55.62 ID:3CREmTol0
ソウゴは眉を寄せた或人にすこし困ったように笑ってから、廊下に足を付けた。事前に戦兎と会っていた(※ハードルが地に落ちていたともいう)ソウゴとは違い、或人からすれば全てが初めてなのだ。
パーソナルスペースは大事にしなければ。安っぽい物だが、落下防止の手すりがあってよかった。これで物理的な距離が取れる……。
と、そんなことをソウゴと名乗った少年が考えているとは露知らず。
或人はまだ公式発表はおろか、極一部しか知らない『ゼロワン』をただの少年が『知っている』ことに不信感を滲ませていた。

「俺も仮面ライダーなんだよね!」

まぁ、とびっきりの爆弾がその直後に降ってきて、跡形もなく消し去っていったのだが。

「……え?」
「か・め・ん・ライダー! 一緒でしょ? だからさ、或人と話しに来たってわけ」
「……君が、仮面ライダー……? 飛電ドライバーは社長じゃないと使えねぇはずじゃ」
「へぇ! そっちのはそうなんだ?」

ソウゴはどこからか、液晶画面の付いた白い珍妙な機械と、手のひらに収まるほどの丸い物体を差し出した。或人は2つとも素直に受けとる。どちらも初めて触るものだ。見た目よりズッシリ感はない。
――あ。この丸いやつがどっちかにはまる……のか?

「それが俺のドライバーね。全然違うでしょ?」
「マジで? へぇオレのと――って、えぇ!? 渡しちゃダメだろこんな」
「えー?」

大事なもの、と言いたかった。

「預かってた方が無力化できて怖くないでしょ?」
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710 :仮面ライダーが絆で兄弟! 3/9 (ワッチョイ ffe5-DbHY)[sage]:2019/09/16(月) 00:16:51.89 ID:3CREmTol0
……とても戦士には見えない華奢な体躯だ。でも暗に、捻れるぞ。可能にする道具だぞと言っていて、或人本人も解っている……とソウゴは考えたのかもしれない。
が、或人が自覚したのは言われてからである。途端に両手に持った2つが重くのしかかった気がした。

殺生与奪ができる一式。それを持たされている。自らを弱者にしてまで。
何故? 当たり前だ――これから生まれるだろう警戒心を先に破壊するためだ。
何故? 決まってる――話に来たと言っていた。それを円滑にするためだ。

ソウゴはニッコニコだ。それが余計に底知れなさを醸し出していた。ここで或人が自衛だと言って壊しても、ソウゴは怒りはしないだろう。むしろ喜びそうな気配さえあった。

――この子が社長……いやもっと上、政治家とか。そういうトップを目指すとしたら、いいところまで上り詰めるだろう。或人は頭の片隅で思う。大器の片鱗を見た。

「……返す」
「いいの?」
「いいも何も。こんなことしなくたって……話、聞くって。こういうのは対等じゃねぇの?」

きょとんとした顔をされている……。何故。こちらが動揺したのも束の間。「かっこいいね」――眩しそうに細められた瞳の奥は、初対面の人間に向けるには不釣り合いな慈しみがあった。

…………

「うお、すっごい。彼らがヒューマノイズだ? すみませんアイスティー1つ!」
「オレはお冷で……」

或人の住居から徒歩圏内にあるカフェエリアに移動する間に、ソウゴの瞳は何度輝いたのだろう。迷わずテラス席を選んだソウゴに付いていく。或人は着席しながら眉間のしわを伸ばした。

「ノイズじゃなくて、ギアだし……」

ぴたり。ヒューマギアを数えていた指が止まり、ふらふらと目元を覆った。「普通に間違えちゃった……」めちゃくちゃ恥ずかしそうだ。或人は喉の奥で唸る。――本当にさっきの子と同一人物なのだろうか。
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711 :仮面ライダーが絆で兄弟! 4/9 (ワッチョイ ffe5-DbHY)[sage]:2019/09/16(月) 00:18:05.94 ID:3CREmTol0
その手が流れるように自身の髪を梳いた。「ごめん。話に来たのにね」雰囲気がガラリと変わり、落ち着いたものになる。知らないうちに背筋が伸びた。

「俺がここに来たのは、或人が仮面ライダーになったから」
「……うん」
「ライダーって面白いんだよ。俺含めて21人いるんだけど、みんな『兄弟』の間柄になるんだ」
「ちょ、ちょちょちょっと待って。兄弟!?」

曰く。
仮面ライダーという存在に成ると、歴戦の戦士たちと絆で繋がった『兄弟』となる。
家には歴代のライダーが総勢21名おり、助け合いながら共に暮らしている。

「――だから、仮面ライダーになった或人を迎えに来たってわけね」
「え、えぇ〜〜……?」
「ここまではいい?」
「いい、けど……にわかには信じられないっていうか」
「みんなそうだと思うよ」
「ソウゴ……も、そうだったのか?」
「俺は違ったけどね!」
「違うのかよっ!」
『お待たせしました。ミルクティーとお冷です』
「ありがと! ……でも無理強いはしないよ。拒否されたからって下手な干渉もしない」

もう何がなんだか……。或人はキャパシティーオーバーで頭を抱えることになった。
『ただ兄弟であること』は忘れないでほしい――と、言われても。忘れられるかよっ! ツッコミは脳内で行った。口から発する元気がなかった。

「オレを連れて帰れなかったら罰則……とか……――って! 行きたくねぇとかじゃなくて」
「あっはは! ないない! 心配しなくていいよ」

でも。と、ソウゴは前置きした。これは個人的な話だけど。
結露のついたグラスの輪郭をなぞる。カランカラン、カラリ。氷が音を立てて揺れた。
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712 :仮面ライダーが絆で兄弟! 5/9 (ワッチョイ ffe5-DbHY)[sage]:2019/09/16(月) 00:19:23.50 ID:3CREmTol0
「兄弟は――俺たちは。きっと、或人の夢の力になるよ」

自信と、確信を得た声色だった。或人は呼吸を忘れてソウゴの凪いだ瞳を見る。

――夢。
或人の夢は、笑いで頂点を取ることだ。それは有名になりたい、お金が欲しいといった欲で構成されてはない。頂点を取れるということは、人の笑顔がついてくること。突き詰めれば手段に過ぎないのだろう。

最初に弁解した通り、(しどろもどろになってしまった。嘘くさく思われてないだろうか)行きたくない訳ではない。興味はある。
しかし、仮面ライダーであるその兄弟たちは、或人のことをどう思うのだろう。ほとんど巻き込まれて成ってしまった自分を、歓迎するだろうか。
(ああ、でもこれは……ソウゴが来たんだから、心配いらないのか)

だったら自分は? 彼らのことをどう思うのだろう。こんな生半可な気持ちで、果たして溶け込めるだろうか――。或人はウンウン唸って考えて、表情が曇る。どうも考えがプラスの方向に纏まらない。

「なぁ、ソウゴの……ライダーの兄弟って、どんな」

女性の甲高い悲鳴が聞こえた。
直後、爆発音が一帯に轟いた。或人とソウゴはすぐさま席を立って周囲を見渡す。現場だろうエリアから黒煙が上がっていた。近い。

『探しタカッタカ〜!』『スイカアームズ ッコダマ!』

「行こう!」
「えぇ今の何……っそ、そうだな!」
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713 :仮面ライダーが絆で兄弟! 6/9 (ワッチョイ ffe5-DbHY)[sage]:2019/09/16(月) 00:20:23.94 ID:3CREmTol0
逃げる人々とは逆の方向を走りながら現場に到着した2人は、暴走したヒューマギアによる惨状に立ち尽くした。

「って、数がっ……!」
「多いね」

しかもタチが悪いことに、善良なヒューマギアが異常機を確保しようと果敢に近づくおかげで、負のループが完成している。――主犯となるマギアもいないのに、これか。ソウゴは視線を鋭くする。
ざっと数えたときでさえ30人のお仕事ヒューマギアがいたのだ。ぐずぐずしていると奥からコック型だの清掃員型だの更に出てくるだろう。被害が拡大することは明白だった。
或人がゼロワンドライバーを取り出した――そのとき。

「或人様!」
「イズ……!」
「所要のため、近くに。或人『社長』、忘れたのですか」

忘れたのか。正体がバレてはならない。感情のない瞳が訴える。ここは人が多すぎる。或人は奥歯をすり潰さんとするほどの力を込めたが、こんなことをしたって状況は変わらない。

「――っ、ソウゴ! とりあえず隠れろ!」
「何言ってるの。俺、仮面ライダーだよ?」

兄弟の戦いに手を出さないという誓約はある。――が、或人は変身するために手順を踏まなければならない。ここで動けるのはソウゴだけだ。それなら緊急事態だろう。……多分。きっと。
ここで民を――ヒューマギアの被害も。見過ごせるほど、ソウゴは機械仕掛けをただの物品とは見れないのだ。

イズに連れられて後方に隠れる或人を横目で見送って、ソウゴはドライバーを装着する。

「みんな。力を貸して」
『グランドジオウ!』
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714 :仮面ライダーが絆で兄弟! 7/9 (ワッチョイ ffe5-DbHY)[sage]:2019/09/16(月) 00:21:49.87 ID:3CREmTol0
金色の吹雪が舞う。
この場にいた何もかもが、ポーズをとるソウゴに釘付けになった。
妙ちくりんな音楽と共に流れる声が、その場を支配していく。ソウゴの周囲から銅像が迫り上がり――剥がれた。

「変身!」

あれは、仮面ライダーの群集だ。脳裏に叩き込まれた映像を、或人は不思議と理解できた。彼の兄弟。
見た目の全員違うライダーを身に纏いながら、ソウゴは堂々と君臨していた。

『クウガ』『アギト』『龍騎』『555』『剣』「人々の避難を!」
『響鬼』『カブト』『電王』『キバ』『ディケイド』「動けない人の保護を!」
『W』『オーズ』『フォーゼ』『ウィザード』『鎧武』「耳にヘッドホン付けた人を引き剥がして!」
『ドライブ』『ゴースト』『エグゼイド』『ビルド』「暴れてる機械を一カ所に!」

圧巻の一言に尽きた。金色の扉から次々に出ては的確に動いていく仮面ライダーたち。ソウゴを含めた全員の息はぴったりだった。
イズの瞳が絶えず青色に光る。「あれは……何でしょう」抑揚はない、はずの声に、何かが混ざる。

「この世の技術では到底作れないものが幾つか混ざっています。先ほどの来客の方は一体」
「仮面ライダーの先輩だよ」『ZeroOne Driver!』

――兄弟は。俺たちは、きっと、或人の夢の力になるよ。
――アルト……夢に向かって――

ソウゴの言葉。それから、大切にしている父の言葉がリフレインした。
仮面ライダーだという兄弟に会ってみたい。会って、話がしてみたい。或人の抱いた一抹の不安は、彼らの圧倒的な存在感の前にどこかへ吹っ飛んでいた。

――夢に向かって――――とべ。

『Jump!』
『Authorize』
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715 :仮面ライダーが絆で兄弟! 8/9 (ワッチョイ ffe5-DbHY)[sage]:2019/09/16(月) 00:23:02.97 ID:3CREmTol0
「変身!」

『A jump to the sky turns to a riderkick』

変身が完了した直後に、機械でできた赤色の鳥がゼロワンの周りを旋回した。あのときは訊けなかったが、ソウゴが事前に仕込んでいたものだ。
(後にサーチホークと知る)上に乗った緑色の機械――スイカアームズから、マギアの本元が暴走している映像が流された。
近所に住んでいる或人はすぐに立地が解った。衛星ゼアからの受信で、彼のライダー名を知る。

「ソ……いや、『ジオウ』! 悪ぃ、そっち任せた!」
「わかった! 『ゼロワン』、気を付けてね!」

ほぼ事態の終息した戦場に、20人のライダーが並び立った。一カ所に集められ、ギチギチと地に伏してなお動く機械仕掛けに、ソウゴは仮面の中で目を閉じる。せめてもの弔いだ。

「……じゃあ一気にいこうか」
『オール20! タイムブレイク!』

20人のライダーに次々と一撃を食らい、全て爆発四散した。

――――――

「ソウゴ、ごめん! それで本当に助かった!」
「いいよ。大きな被害にならなくてよかった」

或人はなお深いお辞儀と、謝礼を述べる。とても嬉しいのだが、それよりも斜め後ろに控えているイズの視線が気になる……というか居た堪れない。弱った。そろそろA.I.M.Sも来るだろう。
或人はともかく、ソウゴはバレれば搾り上げられるかもしれない。まだ兄の総司に証拠隠滅の依頼をしていないのだが……(と思って、仮にもヒーローがこの発想は酷いなぁと遠い目をした)。

「オレ、決心がついたんだ。それにもお礼がしたい」
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716 :仮面ライダーが絆で兄弟! 9/9 (ワッチョイ ffe5-DbHY)[sage]:2019/09/16(月) 00:24:41.04 ID:3CREmTol0
「――じゃあ」
「うん。……いろいろと、ごめんな」
「ううん。考えてくれたんでしょ? だから俺、嬉しいんだ――帰ってみよう或人兄」

ほっとした顔と向かい合っていた。きっと自分は、同じ顔をしているに違いない。どれだけ不安だったのだろうと、口には出さなかったが――2人は肩を竦めていた。

「あ、そうだ。ねぇ、あれ何て言ってるの?」
「……アレ?」
「あの英語!」
「ああ、アレか! さぁオレもわかんねぇ!」

或人が考える素振りもなくあっけらかんと言うので、ソウゴは大口を開けて笑った。
それを見て或人は目を細める。あれだけ圧倒的な力を持った戦士も、笑えば年相応の子だ。これから弟になるのかと、或人は夕暮れに染まってきた空気に包まれて思った。
ほとんどひとりで育った――そもそも父親がヒューマギアだった自分に、まさかこんな兄弟ができるとは。

「全員仮面ライダーって、ホント凄ぇな。――ハッ! 兄弟は、最強だい! はいっ或人じゃ〜〜〜ナイト!」
「今のは、兄弟の『キョウ』と、最強だいの」
「あーーお願いだからギャグを説明しないでーー!!」

ソウゴは隣で行われている漫才にひとしきり笑ったあと、ふと天を仰いだ。
まだ日は高く、綺麗に色付いている。まるで門出を祝っているようだ。

これから賑やかになる気がする。ソウゴは確信をもって小さく笑い、仲のいい2人の掛け合いを聴き続けた。
歴代ライダー主人公が兄弟だったら 43
717 :名無しより愛をこめて (ワッチョイ ffe5-DbHY)[sage]:2019/09/16(月) 00:30:32.82 ID:3CREmTol0
※ミルクティーの代金は後でちゃんとごめんなさいしてから支払いました。

以下言い訳。
今更お出迎えを書く暴挙。ソウゴ→或人を書きたくてつい……。
反省も多いが(呼び出す人選に意味を持たせようとして結果パンクした)楽しかった。
本題そっちのけで平成令和ジェネレーションズみたいな話になったけど。あと毛利ソウゴは難しい。

(夢に向かって飛べ、と言われた或人の初期プログライズキーの言葉が『ジャンプ』と『ウィング』なのいいな…と書いてて気付いた)


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