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名無しより愛をこめて
オリジナル仮面ライダー投稿スレ
もう新たに平成ライダー視聴するの止めないか
☆お前達が考えた龍騎のライダー教えれXII☆

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オリジナル仮面ライダー投稿スレ
62 :名無しより愛をこめて[sage]:2009/09/27(日) 17:10:27 ID:Y39GWnR40
>>60
違う
かまたまよりもぶっかけ。
かまタマも醤油をかける。これは汁とみなすべきだろう。
もう新たに平成ライダー視聴するの止めないか
12 :名無しより愛をこめて[]:2009/09/27(日) 17:13:40 ID:Y39GWnR40
DVD借りて見ることも
視聴するに含まれるんじゃないのかね。
☆お前達が考えた龍騎のライダー教えれXII☆
808 :名無しより愛をこめて[sage]:2009/09/27(日) 17:18:45 ID:Y39GWnR40
仮面ライダーザルク 第1話

『俺は、あの日までこの日常がずっと続くものだと思っていた』
まだ冷気著しい空気に曙光さす中、一人の青いジャージ姿の少年が白い息を吐きなが
ら土手を走っていた。
 東京と千葉県の境を流れる江戸川の土手はかなり整備されていて、ジョギングコース
として最適だ。事実、何人か……元気な老人や壮年の男性、夫婦者などとすれ違ったり
もし、顔見知りなのだろう、挨拶を交わしたりした。
 少年はもうかなり走りこんでいるらしくかなりの汗をかいていたが、まだまだ余力を
残しているようだ。ややあって市川橋の下まで来ると、そこでゆっくりとストレッチを
始めた。「ん、ふうっ」
 全身を伸ばし、筋肉をほぐしてやると若い体はすぐに応えてバネか何かのような手ご
たえを感じさせた。
 それから足を少し開いた状態で軽く構え、息を整えて……いきなり、 シュッ!
 ……右ストレートを繰り出した。
 空気を切り裂く小気味良い音が響き、びっくりしたのか小鳥が何羽か飛び立った。
「フンッ! ハッ! トゥッ!」
 左のフック気味のパンチから更にキック、その体のひねりを利用したの右のエルボー
……どうやらこの少年、格闘技をやっているらしい。空手でもやっているのだろうか?
 だが、しばらくして構え方が変わった。足を更に広げ、ぐっと低い姿勢になったのだ。
 拳は握り締めずに、軽く……指を曲げただけの状態。見ようによっては獲物に襲い掛
かる直前の猫のような姿勢である。ひゅっ少年の左腕が消えた。──いや、鋭く……
引っ掻くように振るったのだ。直後。ばしっ!叩かれた空気が破裂して、すごい音がした。
 それから先は更にすごい。右腕も左腕同様に消え、連続して破裂音が上がるのだ。あ
たかもそこにサンドバックがあるかのように。
 脚の方は脱力しているように見えるのだけれど、しかしゆらゆらと確実に鼓動を刻ん
で、手の指の先まで的確に力が乗るよう緻密なコントロールがなされていた。
 ひときわ大きく破裂音が上がると同時に少年は両腕を完全に脱力させて、ふう、と大
きく息をついた。「相変わらずねえ」ぱちぱち、と拍手する音と一緒にそんな声がした。
 少し高めの声、歌うような調子。それだけで相手が分かったらしく、少年は振り返り
もせずに声を返した
☆お前達が考えた龍騎のライダー教えれXII☆
809 :名無しより愛をこめて[sage]:2009/09/27(日) 17:26:49 ID:Y39GWnR40
仮面ライダーザルク 第1話 (2)
「花音、そのあきれたような言い方はよしてくれよ」
「だって、あきれる意外にどんな反応すればいいって言うのよ」
 応えながら少年に近づいてきたのは、彼同様に学校指定らしい青いジャージ姿の同年
輩と見えるなかなかかわいい少女だった。
 切れ長の瞳に黒味の強い瞳。けれどもきつさを感じさせないのは柔らかい笑顔をずっ
と浮かべているからだろうか。
 もみあげ部分だけ少し長くして、残りを肩の辺りで切り揃えたストレートの黒髪がか
すかな風に揺れ、頬の辺りにかかったひと房を彼女の白く繊細な指が払う。
 小ぶりにまとめられた形のいいあごも、いわゆる桜唇と呼ばれる薄いピンク色の唇も、
全てが彼女の愛らしさを強調するかのようだ。
「はい、タオル。それにしても脩一郎、最近更に強くなってない?」
 脩一郎と呼ばれた少年はタオルを受け取りながら笑顔で応えた。
「え、花音もそう思うか?」「思うも何も、むちゃくちゃよ」
 ちょっと眉をひそめながらも笑顔の花音に、脩一郎はぽりぽり頬を掻いた。
「第一、最近組み手で本気出したこと無いじゃない」「……分かるのか?」
「何年アンタの幼馴染やってると思うのよ」
 言われて苦笑してしまう脩一郎だった。正木脩一郎と三島花音。
 二人は生まれた病院から通った保育園、小学、中学、高校とずっと腐れ縁の続く間柄
であった。家も隣同士、両親同士が近所でも仲がいいと評判で、おかげで脩一郎と花音
は半ば以上公認のカップルであった。
 それは学校でも同様で、片割れがいない状態を想像するほうが難しいほどであった。
おかげで脩一郎は悪友たちから「何であんなかわいい幼馴染がいるんだ、コノヤロウ」
などと、時たまふざけ半分で首を絞められる。
 もっともそれは花音の方も同様で、素材がよいのかきりっと引き締まった脩一郎は特
に見栄えがよく、その彼とセットになっていることをよく友達にうらやましがられてい
たりするのだから、まあ似たりよったりといったところであろうか。
「まあ、わたしも似たようなものなんだけどね」
 肩をすくめ、花音は足元の石を拾った。
 一見すると無造作な動きだが、しかしその光景に脩一郎ははっと息を呑む。
「……重くないか?」
☆お前達が考えた龍騎のライダー教えれXII☆
810 :名無しより愛をこめて[sage]:2009/09/27(日) 17:29:38 ID:Y39GWnR40
仮面ライダーザルク 第1話 (3)
「んー、あんまり。ねえ、成長期って言っても……普通じゃ無いかな、これって」
 首をかしげながら言う花音に脩一郎は応えなかった。彼女の手の中にある石はちょっ
とした猫くらいはあって、相当重いはずの代物だったのだから。「いつからだ?」
「何が?」「急に強くなってきたの」市川橋を千葉県側へ渡る途中。
 軽く走りながら訊ねる脩一郎に花音はうーん、と上を向いて一言。
「そうね……。アレかな」「アレって何だよ」
 思わず振り返った視線の先、花音の頭の上をかすめて虫が一匹飛んでいった。
 冬のこんな時期に? トンボに見えたが……一瞬目を奪われかけた脩一郎は、花音の
声に我に返って視線を彼女の方に戻した。「お、女の子に言わせないでよ!」
 真っ赤になっている。どういうことか分からず、脩一郎は首をかしげた。
「あ、アレと言ったらアレよ! お赤飯!」
「……? 何かめでたいことが?」「まさか……せつなちゃんまだなの?」
 逆に聞き返してくる花音に、脩一郎はますます訳が分からなくなってえっ? と訊き
返した。それに花音はちょっと額を押さえてから意を決して口を開いた。
「……初潮よ! 初めての月の物! アレが来てからなんだか力が強くなってきたみた
いなの」
 力だけじゃないわよ、足速くなってきたの。何なら試してみる?そう聞く花音に脩一郎はにっと笑った。
 何言ってるんだ、それは俺だって同じなんだぞ、と。
「よーい……」「スタート!」 互いに声を掛け合って、疾走を開始する。
 並の自転車より、速い。突然の疾風に、犬の散歩をしていた老人がびっくりして振り
返ったほどだ。 風がびゅうびゅう、はるか後ろへと流れていく。
 二人は若い四肢を更に速く、更に強く振った。朝の光の中、家へ向かって。
『あの時俺たちは自分の体に何が起きてるかなんて、本当に分かっちゃいなかったんだ。
もし分かっていたら、あんなに能天気に笑いあってなんかいなかっただろうな。ただ、
二人して笑いながら帰って、朝ごはんを食べてから学校に向かった。それが奇妙にはっ
きりと思い返される……。失って久しいのに変だな。もう二度と戻らないものだからこ
そ、余計そう思うのかもしれない
☆お前達が考えた龍騎のライダー教えれXII☆
811 :名無しより愛をこめて[sage]:2009/09/27(日) 17:32:01 ID:Y39GWnR40
仮面ライダーザルク 第1話 (4)
「お帰り、脩一郎、花音ちゃん」
 玄関でニコニコ笑っているのは脩一郎の母の美沙慧(みさえ)さんだ。
 二児の母とはにわかには信じがたいほど若々しい人で、手先の器用さを生かして手芸
教室の先生をしている。教室は隣近所の主婦たちのみならず、先生目当てで集まる男性
も結構多いらしい。
「花音ちゃんとこはご両親とも急な所用で出かけちゃったんだって。寧音ちゃんももう
来てるし、食べていきなさいな」
「あ、はい、ありがとうございます」ペコっとお辞儀する花音に、美沙慧はあっはっはと笑った。
「他人行儀な事はいらないわよ。いずれわたしの娘になるんだからさ」
「母さんっ!」 思わず叫び声をあげてしまう脩一郎。
 そう、この母親はいつもこうなのだ。息子と友達の娘が将来結婚するものと決め付け
ているふしがある。そのたびに真っ赤になってしまう花音や狼狽する脩一郎を見て楽し
んでいるのだ。
「脩一郎、もう一線越えちゃった? ま、あんたたちの年齢では別に珍しくもなんとも
無いけどね、でも男として避妊はきちんと──」「何の話だよ、何のっ!? まだしてないって!」
 思わず応えてから脩一郎はしまったと口を押さえた。
 母は、そういう細かいセリフから、それこそ事細かく推察するのが趣味なのだ。
 いったい何回そうやって『推察』されてからかわれたことか。
「ほほーう、『まだ』ってことは、いずれする気はあるって訳ね? それともBまでは
もうとっくに終わってるってことかしら?」
「だ────っ!! 普通親ならそういうことを禁止するもんだろうが!」
「何言ってんの。禁止しようがするまいが、やっちゃう時はやっちゃうもんなのよ。だ
ったら責任あるやり方をきちんと教えるのが親としての務めってもんでしょうが」
 そんな言いあいをしながら家に入ると、ぷんといい香りがした。
 ふわふわに炊かれた胚芽米混じりのご飯に、シメジやネギ、油揚げの入った味噌汁。
それに熱々のベーコンエッグの千切りサラダ添えが既にテーブルに並んでいた。
 トマトが綺麗に切り分けられた皿もある。
 食卓には既に脩一郎の父である修輔と中学2年生の妹のせつな、そしてもう一人、紫
音にそっくりな小柄な少女がついていた。

☆お前達が考えた龍騎のライダー教えれXII☆
812 :名無しより愛をこめて[sage]:2009/09/27(日) 17:35:51 ID:Y39GWnR40
仮面ライダーザルク 第1話 (5)
 妹の寧音だ。こうして姉妹が並び立つと本当に似ていると思わざるを得ない。
寧音があと1年も成長すれば、ほとんど見分けがつかないのではないだろうか。
 寧音はせつなとも仲がよく、学校でもいつも一緒にいるらしい。一緒に帰ってきた互
いの兄姉たちをさかなに、笑い転げながらおしゃべりに余念がないようだ。
 こうしてみると顔立ちは少々違うものの、せつなと寧音が姉妹のようにも見えてくる。
「ほら、さっさとシャワーを浴びてきなさいな。何なら一緒に浴びてきたら?」
「だから、そういう笑えない冗談はよしてくれよ、母さん!」
「何言ってるのよこの子は。ちょっと前までは一緒に喜んでお風呂に入ってたくせに」
「もう何年も前の話だろ、それは!」
「あら、母さんにとってはついこないだよ」
 『いつもの』親子漫才に、花音はあははと笑いながらペコリとお辞儀した。
「じゃ、お風呂場お借りします」
「ああ、好きなように使ってね」
 顔を上げた花音はすぐに早足で風呂場へと消えたが、そのほんの一瞬、彼女の頬が紅
潮していたのに気づいて脩一郎は心臓の鼓動が一瞬跳ね上がるのを覚えていた。
花音はすぐに出てきた。
 彼女は朝シャンとかそういうのはあまりやらない主義なのである。洗う時はさっと洗
ってさっと流す。これで美しい黒髪を維持しているのだから不思議だ。
 この間本人に訊いたところによると、シャワーのお湯やドライヤーに消費されるエネ
ルギーの事を考えると馬鹿みたいに使っていられないのだそうだ。その代わり、時間を
あまりかけないなりに丁寧に洗って、丁寧に水を切るように心がけているらしい。
 そういうわけで、上がってきた花音の髪からはシャンプーとリンスのいい香りが彼女
自身の洗い流されきらなかった甘い体臭とミックスされて香り、まだ濡れている髪がい
やが上にも色気を感じさせた。
 互いに17歳。大人の行為に興味が無いと言ったら嘘になるが、花音に『女』を感じ
つつある脩一郎は割れ鐘のように鳴る心臓の音を聞かれはしないかと内心汗だくである。
 ──彼女の意志を尊重し、無理やり襲ったりはすまいと心に決めている──というの
はタテマエで、本音では襲いたいけど嫌われたくないから我慢している、のであった。

 
☆お前達が考えた龍騎のライダー教えれXII☆
813 :名無しより愛をこめて[sage]:2009/09/27(日) 17:42:04 ID:Y39GWnR40
仮面ライダーザルク 第1話 ()
『これ以上、匂いを嗅いでたら……ヤバイ!』
 ずきり、と心臓とは別のところが男の生理現象に従って脈動するのを感じて慌てて風
呂場へと飛び込んでいった脩一郎だが、すぐにおのれの浅はかさを呪う羽目になった。
『うわ、濃い……』
 つい今しがたまで彼女が入っていた所なのだ。
 シャワーでも流しきれなかった彼女の匂いが残っている。脩一郎はいささか肩を落と
しつつも頬を真っ赤に染めてシャワーを手に取り、思い切り冷たい水を出して頭からか
ぶった……。「行ってきまーす」
 朝食を済ませて脩一郎はガレージからバイクを引き出しながら家に声をかけた。
 マシンはカワサキZX750のライムグリーンにエボニーというカラーリングのものである。
 「お兄ちゃん、待ってよぉ」
 ばたばたと階段を駆け下りる音がして、すぐにせつなが顔を見せた。しかしバイクに
つけられたサイドカーがまだ空なのを見て、安心したらしくほうっと息をつきながら落
ち着いて靴を直している。
「愛しの小太郎が乗せてってくれるんじゃないのか?」
「先輩と待ち合わせてるのはいつもセブンイレブンの前だもん」
 そこまでは乗せてってよ、といそいそとサイドカーに乗り込むせつなに、おいおいそ
こは……と言い掛けて脩一郎は結局黙った。サイドミラーごしに三島姉妹が隣の家から
出てくるのが見えたからだ。『そこは花音の指定席だ』
 そう言ってかっこつけたいのだが、残念ながら気恥ずかしさが先に立ってできない。
せつなも寧音もそれは気づいているらしく、わざとやるのだ……さっさと走ってきてサ
イドカーに乗り込んでしまうのである。
「あらあら、わたしはどこに座ればいいのかしら?」
 毎朝の事ながら花音がぜんぜん困ったふうでなくそう言うと、脩一郎がちょっとふて
くされたような顔で、毎朝の習慣のようになっているセリフを吐く。
「しょうがねえから俺の後ろに座れよ。落ちないようにしっかりつかまってろよ」
「……うん」
 その様子を見ながらせつなと寧音がくすくす笑いあっている。
 まんざらでもないくせに、とか背中に柔らかいのが当たって気持ちいいくせにとか好
き勝手な事を言っているのだ。

☆お前達が考えた龍騎のライダー教えれXII☆
814 :名無しより愛をこめて[sage]:2009/09/27(日) 17:44:20 ID:Y39GWnR40
仮面ライダーザルク 第1話 (7)
せつなが付き合っている先輩、平小太郎はコンビニの前でいつものように待っ
ていた。マウンテンバイクを脇に、スポーツバッグを肩からかけて、こざっぱりした雰
囲気のするなかなかかっこいい少年だ。
 せつなはこの先輩の主催しているBMXサークルのマネージャーをしていて、その縁で
付き合うようになったらしい。
 彼は今年3月いっぱいで中学校を卒業する。4月からは脩一郎と花音の通う高校に
来ることになっている。「寧音はまだ付き合ってる人はいないの?」
 せつなが小太郎の方へと嬉々として走って行くのを見送りながら、花音が妹に笑いか
けた。すると寧音はちょっと複雑そうな笑みを一つ浮かべただけで、
「今は……まだ……」
「そお? おんなじ顔してる姉が言うのもなんだけど、あんた可愛いんだからボーイフ
レンドできててもいいと思うんだけど」
「うん、そうかも。でもわたし、今のところは」
 なんだか言葉を濁している……脩一郎はその理由を知っているので、なんとなく後ろ
めたいような気がしながらも黙っていた。
 何しろ寧音が好きな男を知っているのだ。
 いや、知っているも何も……この間のバレンタインデーの時に、寧音に本命チョコを
渡されて告白されたのは……他ならぬ自分自身なのだから。
『分かってるの。お姉ちゃんと付き合ってるって。でもこれだけは覚えておいて欲しく
って……。わたしも、お兄ちゃんが好きだって事』
『寧音ちゃん……』
 手の中に押し付けられた、綺麗な包装のハート型。明らかに手作りのそれを、花音に
対してどう言い訳しながら作ったのだろうかと思いつつ……花音に見つからないうちに
と慌てて『腹の中に処分』しまったのである。
 その後で花音にもしっかり本命チョコをもらって笑っていたのだ。
 我ながらなんとまあ、いい性格をしていることか!
教室はいつものように喧騒に包まれていた。よう、しゅーちゃん!」
 脩一郎が戸を開けて入るなり声がかかった。
 悪友の一人、宮田健児だ。かなりの女好きの男だが妙に憎めない。というのも本人が
言っているほどナンパに成功しているわけでなく、そうした失敗談を開けっぴろげにし
ゃべったりして笑いを誘っているからだ。
☆お前達が考えた龍騎のライダー教えれXII☆
816 :名無しより愛をこめて[sage]:2009/09/27(日) 20:09:24 ID:Y39GWnR40
仮面ライダーザルク 第1話 (8)

 ごくたまに成功することもあり、そういう時は男だけで数人集まって、ひそひそ声で
聞き入ったりしているのだ。もっともそんなのは本当に数える程度で、たいていは『昨
日また失敗しちまってよー』と笑っている。
いつもの挨拶代わりになっているやり取りの後、健児はするすると近づいてくるなり
「まだだ。ご期待に添えなくて悪かったな」
 ちぇー、早くしろよな、俺たちゃお前の武勇談を心待ちにしてるんだからよ、とわざ
とらしく肩をすくめ、すぐに笑いながら逃げ出す健児。直後、花音が健児のいた辺りを
かばんで薙ぎ払った。
 そこから顔を真っ赤にして……返す刃で脩一郎の頭をはたく花音。
「毎朝の事だけど……やめてよね」「あ、ああ」
 応えながらも、『もしも』と思う脩一郎。
 もしも……花音とする事したとしたら……。その翌朝、ここで話すだろうか? 俺が?
いや、それ以前に花音が顔を真っ赤にしながら男全員をしばき倒すような気がする。
 その光景が目に浮かぶような気がして、思わず苦笑してしまう脩一郎だった。
いつものように授業も終わると部活の時間だ(ちなみに脩一郎のもっとも好きな国語
は今日は無かった)。花音は脩一郎が部長をやっている空手部のマネージャーだが、今
日は早めに帰る事になっていた。
 終業間際に家から電話があったのだ。なにやら家族で大事な話があるらしい。そうい
う事情では仕方ない。毎日花音をサイドカーに乗せて帰るのを楽しみにしている脩一郎
はしかし、『しょうがないさ』と彼女を送り出したのである。
 じゃ、先に帰るねと一回振り向いて手を振りながら花音は笑った。
『今にして思えば、あれが幸せそうな花音を見た最後だったな……』
部活もメニューを消化して終わった。来週には現在の3年生が卒業するので、送別試
合が組まれる事になっている。そのため、いつもより少し遅くまで練習があったのだ。
「先輩を送り出すのに、失礼な試合内容じゃいけないからな」
 部長として部員たちに檄を飛ばし……最後に柔軟体操をしてから終了を告げると、部
員たちはああ、終わった終わったと喜んでシャワーを浴びに我先にと走り出した。
 
☆お前達が考えた龍騎のライダー教えれXII☆
817 :名無しより愛をこめて[sage]:2009/09/27(日) 20:11:58 ID:Y39GWnR40
仮面ライダーザルク 第1話 (9)
 脩一郎はいつも部員たちがみな支度を終えてから自分の身支度をし、武道館の戸締り
をして帰る事にしている。今日もやはりそうするつもりで、部員たちの喧騒を背に胡坐
をかいてしばし瞑想に入った。
 いつもだったらすぐにもあたりはしんとし、雑音が一切入らなくなる。そうして無念
無想の境地に至り、心を落ち着けることができるのだ……が。
『……?』妙に、胸が騒いだ。
 精神を統一しようとしても、何か心に引っかかっているかのようでうまくいかない。
『何だというんだ?』
 目を開いて周りを確認してみると、もうとっくに部員は全員下校してしまったらしく
物音一つしない。閉めたカーテンの向こうはすっかり暗くなっているらしく、さっきま
で見えた外の木立の陰も闇色の中に隠れてしまっている。
 もうだいぶ遅いことだし、帰るとしようか。
 ……脩一郎はなんとなく嫌な気分を味わいながらも身仕舞いをして鍵を確認し、守衛
室に鍵を返却してからバイクにまたがった。
 花音は家族と一緒に食卓を囲んでいる頃じゃないだろうか……。
 そう思いながらも、何故か気が急く。そういう時に限って時が流れるのが遅く感じら
れる……その例に漏れず、脩一郎もいつもの倍くらいかかって家についたような気がし
ていた。実際にはいつもより速いくらいだったのだが……しかし。
「な……」 いつもより遅かったと……そう感じてしまってもおかしくは無かっただろう。
何故なら、家が紅蓮の炎に包まれていたのだから。
父はリストラされて4ヶ月、職探しをしていたもののなかなか新しい職場を見つけら
れず、いつも日のあるうちに帰ってきていた。
 母は1丁目の小さな公民館で毎日手芸教室を開いているが、3時には終わって早々に
帰っている。
 せつなは部活があったはずだが、しかし高校の隣にある中学にはもう人気が無かった。
とっくに帰っていた筈だ。家族が全員、家にいた筈なのだ。
脩一郎はバイクから飛び降りるや半狂乱になって家へと駆け出した。それを、横から
がっしと止めようとする者たちがある。「脩一郎君……!? 正木さんとこの脩一郎君!?」
 耳元で爆ぜる大声にはじかれるように降り返ると、4丁目の班長をやっている田中の
奥さんだった。
 
☆お前達が考えた龍騎のライダー教えれXII☆
818 :名無しより愛をこめて[sage]:2009/09/27(日) 20:14:29 ID:Y39GWnR40
仮面ライダーザルク 第1話 (9)

脩一郎の体にしがみついたのはその息子で、脩一郎とも顔なじみで二つ年上の達也兄
さんだったのだが、今の脩一郎にはそこまで気づく余裕は無かった。
「父さんは!? 母さんは!? せつなは無事なんですかっ!?」
 とたんにうろたえたような顔をする田中の奥さん。
「……! 見当たらないん、ですか……!?」
 一瞬体から力が抜ける。それを感じたのか達也が力を抜いて……その瞬間、脩一郎の
体はバネにはじかれたかのように翻り、家へと突っ込んでいた。
「ば、馬鹿野郎!! 戻って来い────っ!!」達也が叫ぶ声ももう届かなかった。
燃えている。
 元は居間だった場所が激しく、燃えている。
 父が愛用していた、握りの先に卵型の人形のついた孫の手が燃えている。
 母の手製の……美しい刺繍を施されていたカーテンはもう跡形も無い。
 その思い出を焼き尽くす焔の中に動かない人間────の体『だった』モノ。
『何だよ、これ……』
 ハンカチを口に当てて低い姿勢を保ちながら、脩一郎は眼前の光景に声も無かった。
……声を失わざるを、得なかった。
 何をどうすればこうなるのかというほど、バラバラになった死体が転がっている。ま
るで屠殺場の牛のようだ。それが両親の死体だとしばらくは分からなかったほどだ。
 やがて血の海の中に二人の驚愕に目を見張ったままの顔を見つけてからも、頭がそれ
を受け入れるのを拒否していた。
 ……けれども、一番受け入れがたかったのは────せつなの姿だった。
 明らかに彼女は絶命している。それはそうだ。どんな人間だって、頭を半分吹っ飛ば
されたように失って生きていられる筈が無い。
 けれども、その事実より、何よりも……脩一郎はそれが妹だと、妹が命を失った姿だ
と認められなかった。『嘘だ』ようやく、それだけを思った。
『何だよ、これは……たちの悪いいたずらか? え? 人間じゃない死体がどうしてせつなの顔をしているんだ……』
 人間じゃない。そう、せつなの首から下は人間外の物へと変貌していた。
 よく甘えて兄の腕にしがみついていた細い腕は昆虫の脚のようになって、手の代わり
に紅い液体にまみれたいかにも切れ味鋭そうなキザキザ付きの鎌が一つ突き出している。
 
☆お前達が考えた龍騎のライダー教えれXII☆
819 :名無しより愛をこめて[sage]:2009/09/27(日) 20:16:17 ID:Y39GWnR40
仮面ライダーザルク 第1話 (10)

 服を突き破って何本もの蟲の脚らしきものが不規則に伸びている。小さい時はおにい
ちゃんおにいちゃんと叫びながら走り寄ってきた足も昆虫のそれを思わせる形状に変貌
していた。
 破れた服の間から見える胴体には蛇腹状の物が見え、最近膨らみを増したなと思って
いた胸の辺りも、昆虫の足の付け根に見られる胸の膨らんだ部分みたいな形に変わって
しまっている。『いったい何が起きたんだ』
 頭がくらっと揺らぐのを覚えながら、脩一郎はようやくそれだけを思った。
 思って……すぐに思考を停止させてしまう。「な……っ!?」
 手が。自分の手が、人間の手じゃなくなっている。「馬鹿な!」
 しかし、何度目を凝らしてみても、事実は変わらなかった。
 関節の場所は人間だった時と変わらないが、全体的に外骨格のようなモノで覆われて
いる。視線を再度せつなの死体の方へと向けてよく観察すると、鎌状になっているのは
右手だけと知れた。そして左手は……。「同じ……!?」
 見比べれば見比べるほどそっくりだ。
 色は脩一郎が金属的な青なのに対してせつなのは黄色がかっていて違うのだが。
 全てが歪んで見える。
あまりにも信じられないことが立て続けに起こったことで、めまいを起こしたのだ。
全てがぐらり、と斜めに流れていくその片隅に……男が一人立っている。
『まさか、こいつが……』この事態を引き起こしたのか、と思考するより前に……男の手刀が脩一郎の首筋に入
っていた。正確な一撃。ヒトの意識を確実に眠らせる、手際のいい一撃だった。
──全てが、暗転した。



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