- スーパー戦隊 バトルロワイアル Part2
272 :ミッションスタート!最高のアイテムを追え! ◆MGy4jd.pxY [sage]:2008/07/09(水) 21:45:33 ID:pk3D7anR0 - いつもながらの延長。誠に申し訳ありませんでした。
ただいまより投下します。
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273 :ミッションスタート!最高のアイテムを追え! ◆MGy4jd.pxY [sage]:2008/07/09(水) 21:46:58 ID:pk3D7anR0 - A―1エリア中央。そこにはメモの通り他の木と違う色、血のように赤い葉を付けた一本の木があった。
その木の下、不自然に盛られた枯葉の前で二人は顔を見合わせた。 「ここやな。ロンの姿が見当たらんけど……まさか?」 枯れ草に、とばかりに傍にあった枝で草むらを突く。 「僕が調べますよ。おぼろさんは休憩して下さい。女性にはキツいコースだったでしょう」 「そや、ほんまキッツイコースやったわ〜って……。休憩やったら蒼太くんが取るべきやで。うちは、ただ乗せて貰ってただけやし」 ニコッと笑っておぼろを座らせる蒼太。その笑顔が失笑なのか、それとも微笑なのかと、少し複雑な思いが胸を突く。 確かにキツいコースだった。スーパートライアル・エンデューロ・inA―1森と呼んでもいいくらい。 ツーリングなんて生易しい物には程遠い。 見渡す限りの自然林。その中にもちろん舗装された道路など無い。 ジェットコースターさながらのアップダウンコース、振り落とされないように必死で蒼太にしがみつくのがおぼろには精一杯。 『ひゃぁ〜』だの『ぎゃー』だの、女らしさ等とはかけ離れた叫び声を上げ続け、辿り着いた頃には、顔面蒼白で声を発するのもやっとだった。 我ながら百年の恋も冷めるわ、おぼろは苦笑いを浮かべる。 「帰りは飛ばす必要もありませんから、ゆっくり帰りましょう」 蒼太は山盛りの枯葉と積もる土を払いのけた。 そこには一畳程度大きさの所々錆び付いた扉があった。 「地下へ続く扉。入って来いって事ですね」 冷静でそっけない声と裏腹に、蒼太の表情は生き生きとして、まるで秘密基地へ急ぐ少年のようだった。 「この中でロンが待ってるちゅうんかな……」 蒼太はおぼろの言葉に頷き、鉄錆た円形の取手に手を掛け勢いよく引いた。 ギィーッと、錆び付いた音が鼓膜を震わせ、カビの臭いが鼻を掠める。 先を行く蒼太が、アクセルラーをライトがわりに奥を照らす。 二人は一段一段、足元を確かめ、ゆっくりと降りて行った。 十段、二十段、その先も階段は続く。 前後は闇に包まれ、閉塞感とカビの臭いで胸がいっぱいになる。 もう戻ろう、蒼太に切り出しかけた時、ライトの先で石造りの重厚な扉が二人を待ち構えていた。 「開けますよ」 蒼太が扉に手を掛け、おぼろは固唾を呑んで見守る。
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274 :ミッションスタート!最高のアイテムを追え! ◆MGy4jd.pxY [sage]:2008/07/09(水) 21:48:12 ID:pk3D7anR0 - この奥でロンが最高のアイテムを用意して待っている。
すぐ近くに、ロンがいる。 得体の知れないロン。殺し合いの為の最高のアイテム。 怖い。薄い胸を打つ心臓の音が速くなる。 蒼太は体重を乗せ重い扉を押し開けていく。 コゴッと重い音を立て扉が開いた。 おぼろはその先にある物を見るのが怖くて思わず目を閉じた。 扉の向こうは静寂に包まれている。 (……あれ?てっきりロンが「ようこそ」とか言うてくるかと思ったんやけど) おぼろの耳に飛び込んだのはロンの声ではなく、蒼太の怪訝な声。 「ここは……」 ようやく、おぼろは目を開け辺りを見回す。 広い部屋、縦横の長さは有に30メートル近くある。いや、部屋と言うには奇妙な空間。 扉の前に床は四畳程しか無く、その先は切り取られたように底が見えない闇の世界が広がっている。 部屋の中央に闇の中からテーブル状に台座が伸びており、台座の上にはストーンサークルのように石柱が数十本並ぶ。 石柱は赤褐色の一本だけを除き、後は墓石のように黒く磨かれていた。 こちらの床から台座までは、30センチ四方のブロック状に形の整った石が連なる。 部屋の反対側には、こちらと同じく石造りの扉と炎の灯る燭台がある。 向こうの扉まで行くには、ブロックを連ねた石橋を渡り、石柱の間を通り抜けるしか無い。 「何でしょう、あれ」 蒼太が頭上を指した。ひらひらと一枚の紙が落ちて来る。 二人は床の端まで走り寄り、紙を掴もうとした。その時…… ゴドンッ! 背後で足元を震わす音を立て扉が閉まった。 「何!何やの!」 おぼろは悲鳴を上げた。 だが蒼太は冷静だった。手にした紙にサッと目を通しおぼろに差し出す。
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275 :ミッションスタート!最高のアイテムを追え! ◆MGy4jd.pxY [sage]:2008/07/09(水) 21:49:34 ID:pk3D7anR0 - 「おぼろさん、これを」
そこにはメモと同じ筆跡で、こう書かれてあった。 ―――ようこそいらっしゃいました。ここに、あなたにふさわしい最高のアイテムをご用意しました。 私があなたの為に選んだアイテムです。 ですが、そのような素晴らしい物を、ただ渡したのではあまりにも不公平すぎると思いませんか? 最高のアイテムを手に入れるにあたり、あなたにはゲームをしていただきます。 ルールは至って簡単。あなたは駒の一つとなり、空所へ移動し他の駒を一つ飛び越し消す事が出来る。 ただし一度移動した場所へ戻る事は出来ず、後方へ移動は出来ない。 空所から通路を通り盤上を移動できるのは5秒間だけです。 5秒経って、空所中心のボタンを押さなければ、または通路にいた場合、あなたは駒と同じように盤上から消えて頂かなければなりません。 制限時間は、扉が閉まってから10分。 そしてゲームをクリアしなければ出口へは辿り着けません。 一つだけ色の違う駒、それを最後に飛び越えれば、最高のアイテムはあなたの物です――― おぼろはチェスのような盤の上に、所々乱立された駒を眺め溜息をついた。 「なぁ、蒼太くん。やっぱりやめとこ?」 怖気事いたおぼろは、精一杯可愛らしく言って見た。 「こんなもん、手詰まりになるように作ってあるに決まってる。消えて頂くやなんて、命賭けてまでやる必要ないわ。肝心のロンもおらんのやし」 蒼太は扉に手を当て、困ったような笑顔を作った。 「……残念ですけど。この扉、中からは開かないみたいです」 「え!そんならゲームをやるしかない、っちゅうわけ?」 「そうなりますね」 蒼太は手を差し出す。 「せやかて、こんな細いとこ……」 戻れないとあれば進むより他に道は無い。 ぶつくさ言いながらも、おぼろは慎重に足を進める。 おぼろの足元を気遣いながら蒼太が言った。
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276 :ミッションスタート!最高のアイテムを追え! ◆MGy4jd.pxY [sage]:2008/07/09(水) 21:50:59 ID:pk3D7anR0 - 「だけど、消えて頂きますと言うのは脅しじゃないかな?僕とおぼろさんの二人で命を賭けて競い合うなら解りますが……
ロンの狙いは、参加者に殺し合いをさせる事です。もしかしたら、狙いは他にあるかも知れませんね」 盤全体を縁どる通路は細く幅20センチ程だが、移動する為の通路幅は1メートルある。 十字に区切られたマスの大きさは一辺1.2メートルの正方形、移動するのに与えられた5秒は充分な時間。 「よっしゃ!いくで」 まず盤の下方に点在する駒を消すべく左端の空所へ進み、中心のボタンを踏み付ける。 ガコン!何かが落ちる音はしたもの得に何も変わらない。 だが、次に進むべく通路に出た時。 ボタンから亀裂が走り、床は扉のように開き外れ落ちた。 そして、二人が渡って来たブロックも手前から一つ、同じように闇に消えて行った。 「こう言う事……」 「ですね。一個進むごとに、一個退路が塞がれる。進むしか道は無い」 「……ほんま、嫌らしい仕掛けやな」 「ですね」 一手。二手。その後も順調に進み、駒は残り10個となった。 そして駒を一つ落とす度、出口へ続くブロックが一つ押し出される。 「……結構時間はかかったけど、わりかし順調やな」 扉が閉じてから既に7.8分経過している。 「急ごか?」 駆け出そうとした足がふらつき、よろけた身体を蒼太が支えてくれた。 「大丈夫ですか?おぼろさん、随分疲れているみたいですけど……」 「うん。まぁ、それはそうやねんけど。もう時間も無いしな」 「後は僕一人でやります。おぼろさんは出口に続くブロックの上で休んでいて下さい。どこへ動けはいいか、指示して貰えれば……」 正直、息も上がっていた。蒼太の申し出は有り難かった。 駒を落とす変わりに、向こうへ伸びるブロックは、随分出来上がっていたので落ちる心配は無い。 残り時間も少ない。自分が足手まといになるよりは…… おぼろは素直に頷いた。
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278 :ミッションスタート!最高のアイテムを追え! ◆MGy4jd.pxY [sage]:2008/07/09(水) 21:53:00 ID:pk3D7anR0 - 「ありがとう。じゃあ、うちは少し休ませて貰うわ。次はちょうど通路の前の空いた場所へ行けばいいし」
「了解しました。では」 蒼太に手を引かれおぼろは胸の中でカウントを取りながら出口へ向かう通路へ急ぐ。 5秒、4秒、3秒。 数えた所でおぼろは通路へ足を踏み入れる。 「蒼太さん、急いで」 手を離した時、通路の中心から一本の線がツーッと走った。 「え?」 蒼太の足元の床が真っ二つに開く。 足場を失った蒼太の身体が沈む。 咄嗟に伸ばしたおぼろの右手が蒼太の袖を掴み、間一髪で蒼太が握り返し、二人の手は繋がった。 おぼろは両足で通路を挟み、左手でへりを掴み身体を支える。 「なんで?まだ5秒経ってなかったやん。うちが休もうなんて思ったばっかりに、ごめんやで」 「ルール違反は許されないか。迂闊でした」 蒼太はポケットからアクセルラーを取り出そうと身体をよじった。 少し動かれただけでも、体が持って行かれそうになり腕が軋む。 滲み出る汗で手が滑る。 おぼろは再度腕に力を篭めた。 「頑張って!」 その時、おぼろの背後で声がした。 「その手を離しなさい。そうすれば、これはあなたに差し上げます。ほら、帰り道も作ってあげましょう」 その声を合図にしたかのように、盤の上の駒が轟然と一斉に下へ落ちた。 出口まで繋がった橋を、ロンが悠々と歩いてくる。 天空の花を燭台の明かりに翳し、水晶のようにキラキラと輝く光りを楽しみながら…… 「さぁ、その手を振り解きなさい。」 おぼろは答えなかった。ただ全力で、ありったけの力で蒼太を引き上げようとした。 「これは『天空の花』と言い伝えられてきた物。天空の花は10年に一度人間の愛を凍らせる秘宝。 人の心など、脆く弱い。愛を亡くした参加者たちは、我先にと殺しあうでしょう。 今、最上蒼太の手を離し、私の前で殺し合いに乗ったと証明すれば、これはあなたにお渡しします。 決心が着かないのであれば、他の誰かに渡すとしましょう。殺し合いに乗った誰かに……ね。 」
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279 :ミッションスタート!最高のアイテムを追え! ◆MGy4jd.pxY [sage]:2008/07/09(水) 21:54:46 ID:pk3D7anR0 - 蒼太はおぼろを見つめた。
「そんな物、殺し合いに乗るようなヤツに渡しちゃダメですよ。おぼろさん……」 言い終えた蒼太は、笑いながら握っていた手を離した。 最初におぼろに向けた笑顔と同じ笑顔で、彼の姿がどこまでも続く闇に取り込まれていく。 「あかん!蒼太く……!」 蒼太の名を言い終えない内に、床が扉のように閉じられ、蒼太は視界から消えた。 おぼろは元に戻った通路に突っ伏し、そのまま、息を吐くことさえ躊躇っていた。 握っていた蒼太の手の感触がまだ右手に残っている。 「では改めて、ようこそバトルロワイヤルの宴に……」 ロンが楽しげにおぼろに語りかける。 「どうしたのです?そんな悲しい顔をして。 最高のアイテムを求めて来たのでしょう」 天空の花を、そっと握らせた。 「罠かどうか確かめに来た、とでも言いたいのですか?いいえ、あなたは心の何処かで勝ち残りたいと思っていた。 だから最高のアイテムを求めて来たのです。ここに来るのを決めた時、心の奥底であなたは殺し合いに乗ったのです」 おぼろはうつろな眼をしたまま、首を横に振り否定の意を示す。 「認めたく無い。それは解ります。でもそれがあなたの本心なのですよ。そして、最上蒼太は殺し合いに乗ったあなたに、天空の花を託し落ちた」 蒼太の名を聞いた瞬間、おぼろの瞳から大粒の涙がこぼれた。 「今だ本当の愛を掴もうとしないおぼろさん。あなたの選択は正しいのです。愛など不必要なのです。 この天空の花、これこそ、あなたにとって最高のアイテム。 あなたは愚かな参加者たちの見物を楽しんだ後、止めを刺しに行けばいい。 さぁ、日向おぼろさん。日付が変わるまでに天空の花を持ってのJ−10エリア『叫びの塔』へ行くのです」 ダンッ! ロンの言葉を遮るように、おぼろは拳で床を叩き付けた。
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280 :ミッションスタート!最高のアイテムを追え! ◆MGy4jd.pxY [sage]:2008/07/09(水) 21:55:18 ID:pk3D7anR0 - 自分をこんな状況へ追い込んだロンに対する怒り、蒼太を助けられなかった自分への憤りを込め叩き付けた。
「いつまで、あほな事を喋ってんねん……うちは、そんな所いかへん」 (しっかりしいや) おぼろの後輩であるハリケンジャーたちに、何度も発破を掛けてきた。 その言葉を、今は自分の胸に刻む。 そして震える足を腕で抑え、立ち上がりロンを睨んだ。 たとえここで首輪を発動させられても、ロンに屈するのだけは嫌だった。 「首輪を外し、ここから脱出して、ロンを倒す。それが、うちらのミッション…… 蒼太くんが託した最後のミッション。 うちは、うちは絶対に完了させる!」 ロンは口元に手を当て、哀れみを含んだ眼差しをおぼろに向けた。 「首輪を外す、脱出、私を倒す?クックククッ。まぁ今の所、あなたはそう思っていた方が幸せでしょうね」 「どういう、意味や?」 「時機に、わかりますよ……」 金色のもやになり、ロンは掻き消えた。 おぼろは重い足取りで扉へと向かった。 扉を押し開け、地上へ続く階段へと進む。 「蒼太くん……」 振り返り、蒼太の名を一度だけ呼んだ。 声は空しく、深淵に吸い込まれた。 惨めに泣き崩れぬうちに、おぼろは階段を駆け上がる。 必ずミッションを完了させると心に硬く誓いながら……
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282 :ミッションスタート!最高のアイテムを追え! ◆MGy4jd.pxY [sage]:2008/07/09(水) 21:55:56 ID:pk3D7anR0 -
■ 「まったく、ほんまに冗談や無いでぇ!」 「落下途中でボウケンブルーに変身したんです。後はブロウナックルの風圧で落下を防いで……」 自分でもすごい剣幕だとは思う。 蒼太が困って、必死になだめようとしてくれているのも分かるが、今は止められなかった。 てっきりもうだめだと思っていたおぼろは、ひょっこり顔を出した蒼太に顎が外れるほど驚いた。 何事も無かったように、バリサンダーを走らせる蒼太の背で無事を喜び。 ほっとした後は、沸々と怒りが込み上げて来て、街の手前でバリサンダーを止めさせた。 そして今、二人は事の顛末を話しているのだ。 一頻り捲し立て、少しすっきりした所で、蒼太がバツ悪そうに切り返す。 「自分から接触して殺すつもりなら、最初からこんな殺し合いを仕組む必要はない。僕が手を離せば、あの場でおぼろさんに何かされる事は無いと確信していましたし… ああでもしないと、ね。天空の花を殺し合いに乗るような奴には渡せないでしょう?」 「それは、そうやったかもしれんけどな」 「落ちる前に笑ってたでしょう。一応合図のつもりだったんですよ」 「合図やったら、もっと解りやすくやってもらわな」 「すみません。おぼろさん」 「もし、変身するのが間に合えへんかったらどうするつもりやったん?」 「その事で、ちょっと……」 蒼太は崖を上がる最中、後一歩の所で強制的に変身前の姿に戻ったと言う。 そして、おぼろを助けたフック型のショットアンカーを使い、何とか上って来のだと。 「変身できる時間は、およそ10分。それが解っただけでも、収穫でしたよ」 「この首輪、そんな力も制限してるってわけやな。どこまでやらしい奴やねん!」 おぼろは怒り心頭だった。 「首輪を外す、脱出、私を倒す?クックククッ。まぁ今の所、あなたはそう思っていた方が幸せでしょうね。やて。うちがこんな首輪、絶対外したる!」 「おぼろさんに、そんな事を?」 蒼太の表情が微かに翳った。 「蒼太くん?」
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283 :ミッションスタート!最高のアイテムを追え! ◆MGy4jd.pxY [sage]:2008/07/09(水) 21:56:58 ID:pk3D7anR0 - 「いえ、なんでもありません」
そう言って、蒼太が見せたのは、悟られまいと作ったような笑顔だった。 「うちが出て行った後、なんかあったん?」 それ以上、追求して欲しくないのか、蒼太は聞こえていないようにおぼろがずっと握っていたままの天空の花に視線を移す。 「でも、信じられませんね。そんな綺麗な物が、愛を凍らせてしまうなんて」 おぼろは、改めて天空の花を良く見た。 儚い硝子細工のようで無造作にデイバックに突っ込む事が出来ず、つい包むように持っていた。 頭上に掲げクルクルと回す。月の光を反射して花びら一枚一枚が青く煌いた。 「J−10エリアの『叫びの塔』へ持って行けやて。愛を凍らせる、か。信じられないちゅうより信じたくないな」 フーッと長いため息を落とした。 その後ろで。 「信じられねぇ……信じたくねぇよな」 何者かの声が聞こえ、おぼろは蒼太と共にハッとそちらを振り返った。 「よぉ、ボウケンジャー」 蒼太は、何者だという不審に眉をひそめ身構えた。 「そんなに、苦労して手に入れた天空の花を、俺に奪われちまうなんてよ!」 ドン!地響きと共に振動波が地を走る。 「グッ!」 「うわっ!」 二人左右に弾かれた。 「くっそ!痛ってぇな〜」 痛いのはこっちや!と思いながら、おぼろは衝撃で飛ばされてしまった天空の花に手を伸ばす。 その男は蒼太の後ろにあるバリサンダーを見やりチッと舌打ちした。 蒼太はスコープショットを構える。 「悪いな。今は相手にしてやれねえんだよ!愛を凍らせた後で、ゆっくり遊んでやるぜ」
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