- スーパー戦隊 バトルロワイアル
375 : ◆MGy4jd.pxY [sage]:2008/02/18(月) 13:23:53 ID:H1275nFJ0 - 遅くなりました。投下します。
少し長くなりますが、読んでいただければ幸いです
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376 :正義ノミカタ ◆MGy4jd.pxY [sage]:2008/02/18(月) 13:25:14 ID:H1275nFJ0 - 「次は、貴女の番ですよ。日向おぼろさん」
おぼろの背中をポンと叩いた。 『ロン』その男の禍々しい気配に、おぼろは反射的に目を閉じた。 もう一度、今度は強く背中を押され、門を一歩くぐった途端、一切の音と光が遮断された。 数秒?実際には、もっと短い時間を経た後、体を包む空気が変わった。 頬にあたる冷たい風、瞼の向こうの微かな光、先程までいた場所とは確かに違う空気。 ただ音だけは、まだ聞こえなかった。 静寂の中、自身の呼吸、鼓動がとても大きく感じた。 深く深く深呼吸した。そして、そっと目を開けた。 最初に見えたのは、黄色の点滅信号に照らされた、横断歩道の黒と白のストライプ。 立っている場所が、スクランブル交差点のど真ん中だと理解するのに数秒かかった。 見覚えの無い街並。五、六階建の古びたビル、ペンキの色あせた看板、市街地の外れなのか寂れた佇まい。 右、左、前方、ゆっくりと見渡し、ハッと弾かれたように、後を振り返った。 やはり、出て来たはずの門が無い。 (ワープ、したんか?) 体の感触を確かめるように、デイバックを両手でギュッと握り締めた。 力は入る。着ている着衣もさっきまでと同じだ。 紺色と青のグラデーションで彩られた長羽織と、夜目にも鮮やかな赤いパンツ。 自分自身に、何も変わった様子はない。 (瞬間的に私だけをこの場所へ飛ばす。シノビマシンの転送と同じ原理やろか?) 忍風館特忍課・第487期卒業生。 始まって以来の天才と呼ばれ、マシン開発を手掛けているおぼろにとって、転送装置自体たいした仕掛けでは無い。 だが、『退屈しのぎ』にしては、大掛かり過ぎるのが腑に落ちない。
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377 :正義ノミカタ ◆MGy4jd.pxY [sage]:2008/02/18(月) 13:26:04 ID:H1275nFJ0 - 大きな舞台に大勢の役者、全員に渡すデイパック。
そして、一人一人に着けられた、生死を司る金色の首輪。 おぼろは、そっと自分の首に着けられた首輪をなぞった。 そして、悪しき戦いを止めるべく勇敢に立向かい、家族の前で殺された男の事を思い出した。 (なんて惨い、これは絶対に許される事やない。だけど、それを見て笑っとった奴もおったな) 広間に居たのは数十名。ざっと見て五十名は居ただろう。 その中で確認できた知人は、おぼろが信頼する別名「千の顔を持つ男」天空忍者シュリケンジャー、そして…… (あいつ。フラビージョの奴も笑っとった。あの様子やったら『殺し合い』ヤル気満々てとこやな) 『殺し合い』その陰惨な響きにおぼろは思わず身を竦める。 可愛らしい見かけとは裏腹に、冷酷で残忍なフラビージョ。 ハリケンジャーの参謀とも言えるおぼろと鉢合わせでもすれば見逃す道理は無い。 悪寒と寒さが入交じりブルッと体が震えた。 「あ〜っ。あかんあかん。悪い想像したって始まらん。シュリケンジャーもおるし、他にもこの馬鹿げた殺し会いを阻止しようちゅう者は必ずおる筈や!」 冷静さを取り戻すには、まず落ち着ける場所の確保。 さて、どちらへ向かうか。 広い通りは人目につく可能性もある。 薄暗い路地の入り口は、ぱっくりと口を開けて獲物を待つ怪物のようで薄気味悪い。 何も最初に出会うのが悪人だとは限らない、逃げ場の少ない狭い裏路地よりは、大通りで見方を捜すのが得策だろう。 進路は決まった。 バックを肩へ掛け直し、交差点の向こうの大通りを目指す。 半分ほど渡りきった所で、横断歩道の先に、何かのシルエットが見えた。 大きな耳、丸い靴先、ミッキーマウスに良く似ている。
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378 :正義ノミカタ ◆MGy4jd.pxY [sage]:2008/02/18(月) 13:26:47 ID:H1275nFJ0 - いや、少しバランスが悪い。
あのシルエット、まさか。何となく胸騒ぎがする。 おぼろは立ち止まると、眉間に皺を寄せて目を凝らしてみた。 不意に、そのシルエットはスッと前に動き、首を傾げた。 「声が大きいわよ、おばかさん♪」 舌っ足らずな話し方、大きな二つのお団子頭。 蜂の複眼を模したゴーグル、そこからふわりと出ている白い4枚の羽。 宇宙コギャル定番の厚底ブーツ。 おぼろの前に現れたのは、暗黒七本槍・一の槍フラビージョだった。 (よりによってなんでフラビージョに一番先に出会うねん!) この際、気味が悪いなど言っていられない。 おぼろは180度方向転換し、薄暗い路地へ駆け込んだ。 雑居ビルの間を全力で走る。程なく道は左右に分かれていた。 後ろを振り返ると、フラビージョは焦った様子もなく、歩いて跡を付けてくる。 これなら逃げ切れるかも。進路は右か左か?躊躇し足が止まる。 そこへ突然、フラビージョが口から針を放った。 アスファルトに突き刺さる短剣に近い大きさの針。 擦りでもすれば、そう考えただけでゾッとした。 おぼろは針から逃れようと、左の路地へ飛び込んだ。 足が縺れバランスを崩し、ゴミ箱を蹴飛ばしながら、やっと体制を整えた。 しかし、顔を上げたその先は…… 「しまった。いきどまりや!」 入り込んだのは、よりによって袋小路だった。 追いついたフラビージョは「ブン、ブン、ブン♪」と楽しそうに口ずさみ勝ち誇った笑みを浮かべた。
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379 :正義ノミカタ ◆MGy4jd.pxY [sage]:2008/02/18(月) 13:27:39 ID:H1275nFJ0 - そしてハの字に伸ばした腕の袖口から、二本の長い槍を取り出しおぼろに狙いを定める。
「さっ宴を始めましょ。あんたが死んじゃえば、シノビマシンだって作れないんだからハリケンジャーなんて目じゃないもんね」 「やっぱり、あんたはこのバトルロワイアルに乗ったんやな」 「あったりまえじゃ〜ん、あたしは人が苦しむのがいっちばーん楽しいんだもん♪」 逃げ場は無い。もちろん身を隠す場所も無い。数メートル下がればそそり立つ壁が行く手を阻む。 フラビージョは右へ左へ槍を突き出し、おぼろの行く手を狭めながらゆっくりと確実に近付いて来る。 (どうする?ちょい待ち、殺し合いならバックに武器の一つでも入ってるかも) 目を逸らさず、じりじりと後ずさりしながら、デイパックの中を探る。 ペットボトル、食料、ペン、どれもこれも今の状況を打破するに得る物が無い。 その間も、フラビージョはバトンガールさながら槍を振り回し、どんどん間合いを詰める。 予測できるフラビージョの射程距離までは、五歩、四歩、三歩…… 「何もないんか!」 闇雲にバックの底をかき回すと、平たく丸い硬質の物が指先に触れた。 「これや!」 言うが早いか、おぼろはそれを力一杯投げ付けた。 アンダースローで放ったそれは回転しながら加速を増し、やりの隙間を抜けフラビージョの眉間に直撃した! 「あ痛っっ」 眉間を押さえて立ち止まったフラビージョの足下へ、チャリンと音を立てて転がった物。 それは、おぼろの開発した新しい『シノビメダル』だった。 すぐさまシノビメダルを拾い上げ、フラビージョの横を走り抜ける。
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381 :正義ノミカタ ◆MGy4jd.pxY [sage]:2008/02/18(月) 13:29:57 ID:H1275nFJ0 - が、やはりそう簡単にはいかない。
「も〜っ、あんたなんかマイナス300点!ドカン!!」 「うわっ!!」 フラビージョの怒声と共に、おぼろの足元が爆ぜた。 視界が急転した。 熱気を孕んだ爆風が、おぼろの体を宙へ舞い上げたのだ。 再び視界が回転する。 重力に従った体は、アスファルトに叩きつけられた。 全身へ走る鈍い痛み、口に広がる血の味、だがゆっくり味わっている暇は無い。 爆風の後を追い、炎がおぼろの前に迫っていた。 咄嗟に横に転がる。 間一髪で避けた物の、蛇の如く地を這う炎は、瞬く間におぼろとフラビージョを取り囲み、辺りを火の海と化した。 「……これが、ジャカンジャ上忍の実力」 よろよろと立ち上がったおぼろは、目の前の光景に愕然とする。 何一つ、そう、おぼろは戦いの事など何一つ分かっていなかったのだ。 現実に肌で感じる痛みも、渦を巻き立ち上ぼる黒煙と炎の熱さも、圧倒的に強い敵に立向かう事に、どれだけ勇気が必要なのかも…… いつもの『安全なモニター越し』とは違う。 今から実力を発揮した暗黒七本槍・一の槍フラビージョと戦うのは、ハリケンジャーでもシュリケンジャーでも無く自分だ。 戦う?そうじゃない、呆気なく殺されるだけだと実感した。 小刻みに体が揺れた。ガクガクと足が震えているのだ。 なさけない!足を押さえ、自分に心の中で喝を入れても、忍風館を卒業してから十数年、 頭脳はメカニックとして鍛えてきたが、なまった体は素直に言う事を聞かない。 周りは火の海、前には怒り狂ったフラビージョ、もう勝機は一片も見当たらない。
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382 :正義ノミカタ ◆MGy4jd.pxY [sage]:2008/02/18(月) 13:31:27 ID:H1275nFJ0 - おぼろの脳裏に三十数年の短い人生が甦る。
(絶体絶命や、おとうちゃん。ウエディングドレス見せてあげられへんで、ごめん) 泣き出しそうなおぼろの顔をフラビージョが嗤う。 フラビージョはきらりと瞳を輝かせ、二本の槍を掲げ構えた。 串刺にされるか、火の海で黒焦げになるか、恐怖に蹲った瞬間。 「女の娘がそんな物、振り回してちゃ危ないな」 「「えっ!?」」 おぼろとフラビージョの声が重なる。 いち早く顔を上げたおぼろは、フラビージョの背後のビルに人影を見つけた。 その手先から鍵付のワイヤーが伸びたかと思うと、同時に人影が飛び降りた。 飛び降りた人影が振り子の様にこちらに近づいてくる。 炎を掻き分け表れたのは、青いジャケットの青年。 青年の伸ばした手が、フラビージョの体を弾く。 次の瞬間、その手がおぼろを抱えた。 フワッと体が持ち上がった。 「まて〜〜」 弾かれてコマのようにくるくると回るフラビージョと、目の前にあったはずのアスファルトがぐんぐんと遠ざかる。 「えーーっっ!!なんやのこれーーーーー!!!!」 口から出た叫びを言い終える間もなく、三つ離れたビルの屋上まで体が移動していた。 助かった事がにわかに信じられず、おぼろはパンパンと頬を叩いてみた。 痛かった。生きている、もちろん夢ではない。 青いジャケットの青年が、自分を抱き抱えて助けたのだ。 包む様におぼろを抱く細いけれど均整の取れた筋肉の付いた腕。 背中に感じる鼓動。
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383 :正義ノミカタ ◆MGy4jd.pxY [sage]:2008/02/18(月) 13:32:15 ID:H1275nFJ0 - 恐る恐る顔を上げると、輝く月を背景にキラリと光る歯の青年が微笑みを返した。
「大丈夫ですか?僕はボウケンブルー、最上蒼太です。とりあえず、逃げた方が良さそうですね」 ビルの下から蒼太とおぼろを捜す声がする。 バチバチとピンクの稲妻を帯びた光球を空に放ち、フラビージョが諦め悪く息巻ていた。 【日向おぼろ@忍風戦隊ハリケンジャー】 [時間軸]:巻之三十、後 [現在地]:G-4都市 1日目 深夜 [状態]:全身に軽い火傷、打撲 [装備]:なし [道具]:シノビメダル@忍風戦隊ハリケンジャー、支給品一式 [思考] 第一行動方針:この青年はいったい? 第二行動方針:首輪を何とかする 備考:シノビメダルの詳細はまだわかりません。他のアイテムの有無は次の方にお任せします。 【フラビージョ@忍風戦隊ハリケンジャー】 [時間軸]:巻之十九、チューズーボ死後 [現在地]:G-4都市 1日目 深夜 [状態]:能力発揮中 [装備]:槍@忍風戦隊ハリケンジャー [道具]:不明 [思考] 第一行動方針:どこにいった? 第二行動方針:楽しそうなので戦いに乗った
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384 :正義ノミカタ ◆MGy4jd.pxY [sage]:2008/02/18(月) 13:32:44 ID:H1275nFJ0 - 【最上蒼太@轟轟戦隊ボウケンジャー】
[時間軸]:Task.3、後 [現在地]:G-4都市 1日目 深夜 [状態]:良好 [装備]:スコープショット@轟轟戦隊ボウケンジャー、以下不明 [道具]:不明 [思考] 第一行動方針:この女性(おぼろ)の保護 第二行動方針:安全な場所を捜す
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385 : ◆MGy4jd.pxY [sage]:2008/02/18(月) 13:35:34 ID:H1275nFJ0 - 以上です。矛盾、指摘、感想よろしくお願いします。
いきなりの長文、反省しています。 >>371 今回の破棄、残念でした。 次の予約楽しみにしています。
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386 : ◆MGy4jd.pxY [sage]:2008/02/18(月) 14:09:11 ID:H1275nFJ0 - 瞬く間に誤字発見。申し訳ありません。
>>377 >「あ〜っ。あかんあかん。悪い想像したって始まらん。シュリケンジャーもおるし、他にもこの馬鹿げた殺し会いを阻止しようちゅう者は必ずおる筈や!」 の殺し合いの箇所 >>379 >アンダースローで放ったそれは回転しながら加速を増し、やりの隙間を抜けフラビージョの眉間に直撃した! やりではなく槍 です。
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