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955 :人間七七四年[sage]:2016/07/21(木) 00:27:49.69 ID:uZgz+BuU - 頼もしき家来の事
紀州南龍院(徳川頼宣)様は、ある日和歌山で御物見に入られ往来をご覧されたことがあった。 御出になられたとも知らずに御家中の者は大勢往来していた中で、 ある御家来が供侍、草履取り、挟み箱持ち、槍持ちを従えて通りかかった。 御側に居た者が 「あれがかの噂となっている男ですか。」 と笑ったのをお聴きになられた。 「どのような噂があるのか?」 と言われたので、御側の者共はやむを得ず話した。 「かの者は身の上が苦しいとのことです。そうなのですが他に取り計らい方もあるでしょうに 甚だ不束なことをしているのでございます。」 「どのようなことをしているのか?」 「かの者が召し連れています侍はかの者の次男でございます。 草履取り、挟み箱持ち、槍持ちはいずれも三男四男、あるいは世話をしています甥などです。」 「それは頼もしい家来である。予は大勢召し連れているが、かの家来に劣らぬ草履取り、槍持ちがいるかというと心もとない。 家計の苦しさは関係のない事だ。」 程なくかの者を御取り立てられて、子供も相応の役に付けられたそうだ。 (耳袋)
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