- 戦国ちょっと悪い話42 [転載禁止]©2ch.net
116 :人間七七四年[sage]:2015/07/29(水) 08:02:34.34 ID:K7P2fOJq - おくりびと
天正年間の事、酒田の東禅寺義長は内陸の最上義光の支援を得、大宝寺義氏に続き大宝寺義興を倒し、その継養子大宝寺義勝(本庄千勝丸)を越後へと駆逐した 酒田・大宝寺・尾浦・田河・余目と庄内一円を手に入れた義長に対し義光は 先の寒河江の大江氏攻めにより最上家に降った大江家旧臣の外交役で長崎城主の中山朝正を補佐として庄内に派遣し 東禅寺義長・勝正兄弟と中山朝正の合議により諸事が執り行われる様になった しかし庄内にはかつての同僚の東禅寺の一人勝ちと山形からの中山朝正の派遣を快く感じない者があり 「東禅寺の風下にはいられない。いっそ越後の上杉にこの地の政事を任せてはどうか」と旧大宝寺派の国人たちは春日山に密使を送った 上杉方ではこの知らせを大いに喜び、本庄繁長を大将に数千の兵が国境を越え出羽へと侵攻を開始した 上杉軍の出兵を知った中山朝正は急ぎ山形へと援軍を要請 最上義光は草鬼虎助(草苅虎之助)を援軍の先発として六十里越道から庄内へ向かわせ 義光自らも近習や馬廻りばかりを召し連れ後詰としての用意を図った 虎之助は大宝寺南方の尾浦城に着くとすぐさま軍評定を開いた 虎之助「こたびのいくさは急ないくさの上に敵は大軍でその上地下人ですら上杉に靡く者も出ている様です これからも城の内外にも敵に合力する兵が出るやも知れません 篭城をして味方の中からいつ裏切り者が出るかを不安視するよりは、いっそ城外で上杉相手に短期決戦を臨んだ方が良いのではないでしょうか? 城内にいては思い切って戦う事も叶わなければ、用意も不十分な小城では持ち応える事も難しいでしょう 速やかに売って出、名を万代に残しましょう! しかし城には味方の妻子もおり、このままでは女や子が上杉兵に捕らえられる危険もあり、これは誰かれの妻よ子よと晒し者にされる可能性があるのは後ろ髪を引かれる様でいくさをするにも集中できません」 軍議に加わっていた氏家守棟の子氏家光棟がこれに意見を申し出た 光棟「中山様が城の女子供を連れ山形へ送り届けてはいけませんか?」 中山朝正はこれを聞いて激怒した 朝正「わしは庄内の政の補佐を殿(最上義光)から命ぜられてきた訳だが、事態が難儀になったからといって庄内を離れ城の女房子供を連れて去ったなら、庄内や上杉の人々は『朝正は女子供をダシに逃げた卑怯者臆病者だ』と嘲られるだろう そんな世にも恥ずかしい事できるものか!」 光棟「庄内ですら地下人が反旗を翻しております きっと山形への道中にも野伏せりや人さらい、野党(夜盗)を組む者が現れましょう」 虎之助「中山殿、落ち着いて聞いてくだされ 東禅寺勝正さまはこの尾浦城の主です 私と光棟は加勢を命じられてここに来ました 中山殿は政の補佐役でしたので我々とは訳も立場も異なります また城には名のある人たちの一門の女子供がたくさんおります これを敵から捕われずに山形に届けられるのは中山殿しかいらっしゃらないのです いくさで討ち死にするよりも、義光公への忠義であり、いくさよりも大変な重要な役目です それなのに嘲り云々と言われるのは中山殿らしくない物言い。ですから諸人のためまた誠の忠節を示すために一刻も早く妻子らを山形へと届けてくだされ」 朝正は肩を落とし「時間がないのは承知。そちらの意見に従います」と応えると城内の妻子らを集め その後勝正や虎之助の方へ戻ると声を発っした 朝正「いいかいいか、けして死に急ぐな。女子らを山形に届けたらわしは必ずここに戻って来る」
|
- 戦国ちょっと悪い話42 [転載禁止]©2ch.net
117 :人間七七四年[sage]:2015/07/29(水) 08:22:37.10 ID:K7P2fOJq - 中山朝正一行が月山の高所を過ぎ湯殿山付近の峠を越えたところ、野伏せりや野武士らがあちこちから攻め掛かって来た
朝正は部下の兵たちに「ここで戦えば乱戦となり、女子が一人でもさらわれる事があれば末代までの恥と心得よ!女房たちを先に急がせよ。山険の道は狭い一本道だ 敵は一手にしか攻められぬ故、急げ急げ」 野党共は朝正一行を追いかけて来たが、朝正の言う通り山道は先に行く程断崖の一本道しかなかったので 朝正はこの様子を見て号令を発っした 朝正「頃合いぞ!ねりひばりにせん!」 朝正が大薙刀を振り回し敵に突っ込み、部下たちも朝正に遅れてはなるかと突っ込んだ 野党らは斬り捨てられ、或いは谷底にまくり落とされ、残った者は蜘蛛の子を散らす様に逃げて行った 朝正「深追いはするな!目的を見失うでない!」 朝正は人数をまとめ、やがて無事に山形へ到達する事が出来た 「義光物語」 尾浦に残った東禅寺勝正と草苅虎之助、氏家光棟は千安十五里ヶ原の地の露となり 庄内では最上派の国人の池田盛周や阿部某らが気勢を挙げていたが やがて一人二人と討たれ ついに庄内は上杉軍の支配する所となった
|
- 戦国ちょっと悪い話42 [転載禁止]©2ch.net
118 :人間七七四年[sage]:2015/07/29(水) 08:28:03.54 ID:K7P2fOJq - ×朝正は部下の兵たちに「ここで戦えば乱戦となり、女子が一人でもさらわれる事があれば末代までの恥と心得よ!女房たちを先に急がせよ。山険の道は狭い一本道だ
敵は一手にしか攻められぬ故、急げ急げ」 ○朝正は部下の兵たちに「ここで戦えば乱戦となり、女子が一人でもさらわれる事があれば末代までの恥と心得よ!女房たちを先に急がせよ。山険の道は狭い一本道だ 敵は一手にしか攻められぬ故、急げ急げ」と発破を掛けた
|
- 戦国ちょっと悪い話42 [転載禁止]©2ch.net
119 :人間七七四年[sage]:2015/07/29(水) 08:38:03.44 ID:K7P2fOJq - ×光棟「中山様が城の女子供を連れ山形へ送り届けてはいけませんか?」
○光棟「中山様が城の女子供を連れ山形へ送り届けては頂けませんか?」
|