- 戦国ちょっといい話29
965 :人間七七四年[sage]:2011/12/10(土) 18:17:54.50 ID:zanXQKqT - 谷出羽(衛友)、稲葉内匠(正成)、池田輝政の重臣・丹羽山城(助兵衛)、増田長盛の家臣・渡辺勘兵衛、
福島正則の家臣・可児才蔵と辻小作、そして石田三成の客将・中黒道随は、身分や年齢を超えて交際しており、 互いに武勇に励むことを誓い、『天下七兄弟』と称した。 慶長5年(1600)9月、関が原の戦いにおいて、道随は石田隊として槍を振るったが、深田に馬を踏み入れてしまった。 「もはやこれまで」と覚悟を決めた道随は、味方が次々と落ち行く中、ただ一人踏み止まり、押し寄せる雑兵を さんざんに蹴散らしまくった。 福島隊にあってこれを見ていた辻小作は、可児才蔵に呼びかけた。 「おい、才蔵よ。道随ならば良い手柄となろう。やるぞ!」 「薄情な事を言うな!我らの仲ではないか。助けてやれい。」 「むう。生け捕りにせんと思うたが、お主がそう言うなら・・・おーい、道随よ!日頃のよしみじゃ、助けるぞ。 これにつかまれ!」 道随のもとに馬を寄せた小作は、槍の柄を道随に突き出した。 「小作よ、何のマネじゃ。この期に及んで助かろうとは思わん。自害するゆえ、見届けよ。」 「なんじゃ。だまし討ちにするとでも思っとるのか?我らの間で、何をたばかる事があろうか。天地神明にかけて お主を助けるぞ!」 ここまで言われて道随も槍の柄をつかみ、それを小作主従が引っ張り上げ、二人は連れ立って福島陣に戻った。 先に戻っていた才蔵は、道随の顔を見て喜んだ。 「やあ、良く生きとったな!」 「何とか引っ張り上げて来たぞ。やれやれ、骨が折れたわい。」小作は、具足を全て脱ぎ捨て大の字になった。 「・・・『武装も解いておらぬ先刻までの敵を前に、何という侮ったる振る舞いか!』 腹が煮えくり返ったワシは、槍を構えかけたが、命を救ってもろうた恩を思い、見逃してやったわ。」 のちに井伊家に仕えた道随は、若者たちを前に関が原のことを振り返り、そう言って笑ったという。 (常山紀談より)
|
|