- 戦国ちょっといい話24
197 :人間七七四年[sage]:2011/01/11(火) 12:58:19 ID:aHs1UwMd -
>>173 やる夫真田で紹介されてないエピだな!? 承知した!! 二話連投でいくよ〜〜〜。 天正十二年正月、北条氏配下の白井長尾氏では、真田家に対しての夜襲を計画して いた。 徳川家と和睦を結んで一年余り。沼田開城が和睦条件の一つだったにも係わらず、 未だに沼田城を明け渡そうとしない真田家に対する示威行動が目的だと思われる。 が、元々この攻撃の立案者は長尾家でも北条家でもなかった。 天正十年の戦争の際、真田家から寝返った上州国人衆、林太郎左衛門、吉野太郎右 衛門、井上金太夫の三人である。 三人曰く、 「沼田近くの戸鹿野郷には金持ちが多い。ここを夜討ちして、たんまりと金を頂こ うじゃないか」 「戸鹿野は勇者と名高い高橋右馬允の領地だし、奴等に赤っ恥をかかせてやれるぜ」 との事で、家中の侍達を口説いて回った。 元々はこのように、家中の末端から出た、押し込み強盗のような計画だったのだが、 最終的に集まったのは実に百三十人と言うから、この時点では白井長尾氏を挙げて の計画になっていたようである。 元真田家中で地理に詳しい三人を案内人として、百三十人の強盗団は闇に紛れて戸 鹿野郷に潜入する。 ……彼等の渡った後、秘かに川にかかる橋を外してしまう人影の存在も知らずに。
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198 :人間七七四年[sage]:2011/01/11(火) 12:59:12 ID:aHs1UwMd -
ひっそりと静まり返る戸鹿野郷。 流石に静か過ぎやしないかと不審に思う者が出始めた頃、建物の陰、木々の陰から わらわらと現れる真田兵。 「待ち伏せ!?」 「計画が漏れていただと!?」 「見ろ!橋も外されているぞ!!」 混乱する白井勢百三十人……いや、百三十人の中でたった三人だけは平然とした顔 をしている。 「いや、漏れたって言うか、元々お前等を殺す為に計画した事だし」 「俺達、真田家に帰参する事にしたんだ。手土産になってくれない?」 「あ、村の外には高橋殿だけじゃなくて金子殿の手勢も控えてるから、逃げ道はな いよ?」 そう言うのはこの計画の発起人、林、吉野、井上の三人であった。 そう、真田vs北条の戦いで、真田家に未来はないと見て、家名存続の為に北条家 に身を投じた三人であったが、真田家はこの難局を潜り抜けた。 こうなると真田家に帰参したいが、ただ帰りたいと言っても許してもらえないだろ う。 沼田国人衆の中心人物である高橋右馬允、金子美濃守に秘かに相談したのである。 二人は真田昌幸に三名が帰参したがっている事、手土産の手柄を立てる為に計略を 考えている事を報告。 昌幸から「金子、高橋と相談して良い様に計らえ」との許可を貰う。 高橋右馬允は予め戸鹿野郷に帰って、迎撃の準備を整えていたのである。 周到に準備された迎撃によって、あっと言う間に強盗団は壊滅。 橋を外された川を渡りきった、水練の達人が数人逃げ切ったのみで、残る百二十人 余りは全て討ち取られたのだという。 真冬の夜中に、群馬の山あいで水泳なんて、そりゃ死ぬわ。討たれた方が楽に死ね るかも知れんぞ。(^^; ちなみにこの功で三人は真田家帰参を認められ、高橋さんは加増されたという事で す。……え?金子さん?さて、どなたでしたかな?
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199 :人間七七四年[sage]:2011/01/11(火) 13:03:11 ID:aHs1UwMd -
徳川家と真田家が戦った第一次上田合戦の際の話。 真田家の家臣に深井某という者がいた。 この深井某、一日に三度手柄を立て、その全ての手柄に感状を賜ったという程の武 勇の主として知られていた。 真田軍の仕掛けるゲリラ戦によって徳川軍が総崩れになった時の事。 「待てぇ〜〜いっ!」 逃げて行く敵の中に、立派な身なりの武士を見つけた深井、「良き敵を見つけた」 とばかりに追いすがる。 「待て待てぇ〜〜〜〜!!」 総崩れの徳川軍の中、一人踏み止まって戦う馬鹿などそうそう居ない。勿論逃げる。 追う深井。 逃げる、追う。逃げる、追う。どこまで逃げても、どこまでも追う。 しかし、遂には追いつき、深井はまた一つ、兜首を討ち取る事に成功した。 「まったく往生際の悪い奴だぜ、一体どこまで逃げるんだか。なぁ、皆もそう思わ んか?」 深井は周囲にいる筈の味方を見回し、苦笑を浮かべて言った。 が、何か様子がおかしい。 「いやぁ、俺等としては、お前がどこまで追いかけてくるのか、そっちの方が気に なるなぁ」 右を見る。左を見る。も一度右。 敵。敵。……やっぱり敵。 後ろを見る……川。 「あ、あれ……? ここ……どこ?」 「敵陣」
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200 :人間七七四年[sage]:2011/01/11(火) 13:04:08 ID:aHs1UwMd -
そう、敵を追いかける事に夢中になった深井、川を渡って敵陣の奥深くまで単騎で 侵入してしまったのだ。 勿論、味方は川端で追撃を止めている。 制止する味方の声さえ、彼は聞いておらず、自分が川を渡った事すら、気付いてい なかったのだ。 「うっそ、俺、ヤバくね?」 いつの間にやら、三百人の敵兵に取り囲まれてしまったのである。 「……なんでウチの連中はこうも調子に乗る奴ばかりなんだ」 その報告を聞いた真田昌幸は頭を抱えた。 「しかし、深井が手柄を立てたのは間違いない事。ねんごろに弔って、遺族には見 舞金を贈りましょう」 悲しめばいいのか、怒ればいいのか、苦笑まじりの表情で、信幸も言った。 それを見た家臣、言いづらそうに口を開く。 「そ、それが……非常に言い辛いのですが……」 この深井某、なんと生きていた。 三百人に囲まれた状況で、包囲を突破し、川を渡って味方の陣地に帰還したのであ る。 「ど、どうやって……?」 さしもの昌幸、信幸も口を開けて呆れている。 「い、いえ……本人の話では、『一生懸命頑張った』と。対岸から見ていた者の話 では、『鬼神の様な暴れっぷりだった』との事ですが……」 そう、何の計略もなく、ただただ夢中で敵中突破してしまったのである。 しかも、帰ってきた時には、かすり傷一つ負っていなかったと言う。 「そ、そうか……天晴れな事だな……うん……」 深井某は昌幸からお褒めの言葉を受け、更には真田の名字まで賜った。 その後は真田但馬守と名乗ったと言う。 いや、これ、叱っても良い様な気がするよ?(笑) でも、これを叱ったら矢沢さんも叱らなきゃいけないような気もするからなぁ。 流石の矢沢さんも三百倍の敵とは戦った事ないだろうけど。(^^;
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203 :人間七七四年[sage]:2011/01/11(火) 15:05:51 ID:aHs1UwMd - >>202
伝わっていないのではなく、私が読んだ『加沢平左衛門覚書』には、深井三●となっ ており、どうやら原本の文字が潰れるか虫食いかで読めない状態だったようです。 そのため、名前不祥という事で「某」としたのは私の判断です。 試しにググッてみたら深井三弥という人が昌幸の配下にいたらしいので、この人がそ うなのではないかと思われます。 でも、三弥の後も深井氏はそのまま続いてるみたいなんだよなぁ。真田氏を名乗らず に。 三弥の長男が真田、次男が深井氏を継いだって事なのかなぁ?詳しくはちょっと判ら ないです。
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