- 【妄想を】CCさくらSSスレ【垂れ流せ】
214 :無能物書き[]:2019/03/21(木) 23:36:16.03 ID:HRCjl+bE0 - 苺鈴ちゃん好きすぎる。ということで苺鈴回。
カードキャプターさくらSS「魔法の終わる日」 第20話 さくらと苺鈴の素敵な魔法 「ちょっと、重いわよ、もう片方の手もあげなさい!」 「・・・え?」 さくらは右手を誰かに捕まれ、空中にぶら下がっている。その手の先は霧に隠れ、 誰なのかは分からない。ちょうどその手の上に濃い雲がかかっているかのように。 さくらは言われるまま左手も上げる。と同時にその左手もばしっ、とつかまれる、 「はぁーーっ!」 気合一閃、さくらはそのまま一気に持ち上げられ、雲の中へ。霧をすり抜けると そこは昨日さくらが下りてきた階段と、その上には白黒の通路、時の回廊。 そして、さくらを引き上げたのは、彼女も良く知る人物。 「苺鈴ちゃん!」 苺鈴は階段の踊り場でヒザをつき、ふぅっ、と一息つくと、きっ、とさくらを睨み、叱る。 「ちょっと!何やってんのよ、こんなトコで折れてる場合じゃないでしょ!」 「え・・・あ。」 さくらはぱちくり、とまばたきして苺鈴を見る。そしてふるふると震えながら、涙目になっていく。 「どうしたの?」 苺鈴の言葉にかまわず、がばぁっ、と抱き着くさくら。 「よかったぁー、苺鈴ちゃんはいつもの苺鈴ちゃんだよぉー」 「え、え?ええーっ!?」 「ふーん、みんなが貴方を好きな世界、ねぇ。」 「うん・・・」 時の回廊を歩きながら話す二人。先を行く苺鈴の背中を追いかけ、とぼとぼと付いて行く。 「みんな、おかしくなっちゃった。それに、小狼君が・・・」 うつむいて涙声で話すさくら。二人は先に歩いている、時の回廊を未来へ。 つまり、この先の時代に李小狼はいない、どこまで進んでも。
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215 :無能物書き[sage]:2019/03/21(木) 23:37:00.83 ID:HRCjl+bE0 - 「私、苺鈴ちゃんがうらやましい。魔法なんてなくても、しっかりしてて、カッコよくって。」
独白するように、聞いてほしいように、さくらは呟く。 「なんで魔法なんて使えたんだろう、こんな力が無ければ、こんなことにならなかったのに。」 と、くるっ、と振り向き、さくらを見る苺鈴。凛とした目で。 「贅沢よ、それ。」 「え・・・?」 苺鈴は語る。魔法の一族である李家に生まれ、魔力を持たない苺鈴がどれだけ肩身の狭い 想いをしてきたか。 小狼の婚約者として彼と並び立つ資格のない自分を、どれほど嘆いたか。 「だから体を鍛えたのよ。魔力なんて無くても負けないくらい強くなろう、って。」 しかしクロウ・カード集めの時、彼女は自分の努力が徒労であったことを思い知る。 さくらと小狼のカード争奪戦に割って入ることはできず、ソングのカードの時は知世にすら 後れを取った。シュートのカードの時に至っては自分の不注意で小狼を傷つけてしまった。 「でもでも、ツインのカードの時はうまくいったじゃない。」 さくらのフォローに、苺鈴は冷めた返事を返す。 「あれは同じ武術を学んでただけよ、正直ウェイの門下生なら誰でもできるわ。」 「そんな、こと・・・」 「さくらは『私にしかできないことがある』って言った。小狼は『お前がいて迷惑なことは無い』 って言った。」 そこで言葉を区切り、一度目を伏せてから、顔を上げて言う。 「それは、『持ってる人』の言う事よ!」 さくらはその表情に、胸を矢で貫かれたような、ずきり、とした痛みを覚えた。
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216 :無能物書き[sage]:2019/03/21(木) 23:37:33.21 ID:HRCjl+bE0 - 「『持ってる人』に言われても、そんなの慰めでしか無いわ。私がクロウ・カード集めの時
さくらにも小狼にも負けずにカードを手に入れられた時があった?」 言葉に詰まるさくらに、苺鈴はこう続ける。 「さっき何て言った?私が羨ましい、ですって!?私はずっと昔から思ってたわよ! さくらが羨ましいって!魔力を持つあなたが、あのヌイグルミ(ケロ)に選ばれたさくらが!」 そう吐き捨てる苺鈴。言葉を紡ぐたびに感情的になっていく気持ちを抑えられずに、叫ぶ。 「あんたは特別なのよ!カードに受け入れられ、小狼に受け入れられ、皆に受け入れられる。 それを自覚しなさいっ!!」 苺鈴の叫びがさくらの胸に響く。さくらはいつか小狼が話してくれた言葉を思い出す。 −特別な力を持つって言うのは、そういう事なんだ− 特別な力、それは他人に劣等感を感じさせる、否応なしに。 普通なら『仕方ない』と諦めることも出来ただろう。しかし魔法の一族に生まれながら それを持たない、その悔しさを努力で埋めようと頑張ってきた苺鈴にとって、その心は、矜持は、 さくらが思う以上に傷ついていたのだ。 「私・・・どうすれば、いいの?」 顔を伏せたままさくらが呟く。自分の魔力が人を魅了し、人を傷つける。 そんなさくらに苺鈴は声のトーンを下げて、語る。
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217 :無能物書き[sage]:2019/03/21(木) 23:38:05.47 ID:HRCjl+bE0 - 「ねぇ、ライト兄弟って知ってる?」
「ほぇ?う、うん。初めて飛行機で空を飛んだ人、だよね。」 「じゃあ、オットー・リリエンタールは?」 さくらはふるふると首を振る。 「フランツ・ライヒェルトとか、イスマーイール・ブン・ハンマード・ジャウハリーは?」 全然知らないよ、と言った表情で苺鈴を見つめるさくら。 「今言った人、みんな天才よ。当時のトップクラスのね。そして、空を飛ぶことを夢見て・・・」 「それで?」 「落っこちて死んじゃったの。」 えっ、という顔で驚くさくら。 「ライト兄弟が飛行機っていう機械にしがみついて空を飛ぶまで、他にも多くの天才や偉人たちが 命を落としたのよ。そんな空を飛ぶ、っていう行為を魔法使はいかにもたやすくやっちゃう。 これだけでも、自分がいかに『持ってる』人間か理解できるでしょ?」 さくらは痛切する。初めてフライのカードを封印し、ケロに勧められるまま空を飛んだ。 さくらカードに変える時は杖の羽から背中に羽を移した。クリアカード『フライト』では 蝶のように空を舞い、ミラーでコピーして小狼すら一緒に飛んだ。 全ては『特別な』ことだ。人間は飛べない、自分の力では決して。心から『空を飛びたい』と 思う人にとってそれはあまりに理不尽で、差別的で、屈辱的な能力。 魔力に選ばれた一握りの人間だけが成し得る、理不尽で不公平な奇跡。 「李家に伝わる家訓の一つなの。自分がいかに特別な人間か理解するためのいい実例だ、って。 もっとも、私には必要なかったけどね。」 そう言ってペロッと舌を出す苺鈴。 「大事なのは、あなたがその力とどう付き合っていくのか、真剣に考える事。 ただダダ洩れにしてるだけじゃ、そりゃあちこちおかしくなっちゃうでしょ!」
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218 :無能物書き[sage]:2019/03/21(木) 23:38:33.59 ID:HRCjl+bE0 - その苺鈴の言葉に、さくらは呆然として顔を上げる。
「じゃあ・・・そうすれば未来を、変えられるの?」 「さぁね。」 背を向け、そっけなく言う苺鈴。そもそも魔力の無い苺鈴に、この魔法で超えてきた未来が 不変なのかそうでないのかなんて分かるはずがない。 「でもね、私だったら諦めないわ。」 「え?」 「私には魔力が無い、だから空は飛べない。だったら空を飛ぶより速く走って、彼らより早く 目的地についてみせるわ。」 さくらの心に、苺鈴の思いが染み渡る。どんな理不尽にも諦めない、その強い心が。 「さくらはどうなの?諦めてこの未来を受け入れる?それとも・・・」 振り向いて言う苺鈴に、さくらの目の前が開ける。そうだ、私の前にどんな困難にもめげずに 挑める人間がいる。手本にするべき、指針となるべき友達が。 「苺鈴ちゃん、ありがとう。私、やってみる。小狼君も、秋穂ちゃんも、そして私も助けられる世界を。」 もう迷いはない、やるべきこと。それを成し、帰る。 −絶対、だいじょうぶだよ−
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219 :無能物書き[]:2019/03/21(木) 23:39:05.52 ID:HRCjl+bE0 - 詩之本家、砕け散った『夢の杖』の周りに駆け寄り、全員が驚きの表情を見せる。
「これは・・・」 エリオルが嘆く。と、その上に浮いていたクリアカード『フューチャー』が、その輝きを失い 1枚のカードに戻って、ひらりと床に落ちる。 「大変なことになりました。」 目の前の現実に愕然としながら、エリオルは続ける。 「どういうことだ!」 桃矢が問う。杖が失われ、カードが発動を終えたことが、最悪の結末を予感させる。 「このままでは、さくらさんは・・・二人は戻ってこられません。」 「何ですって!?」 驚きの言葉を上げる苺鈴、他の全員も悪い予感を隠せない。 「どうすればいい?」 小狼の問いに、しばし考え込んで答えるエリオル。 「誰かが未来に行って、連れ戻すしかありません。」 「未来へ・・・どうやって?」 小狼の問いにエリオルが返す。 「まず、さくらカードを元に戻します、準備を!」 小狼は一度アパートに戻り、さくらカードの精霊が宿るクマのぬいぐるみを取ってくる。 雪兎は再びユエに戻り、預かっていたさくらカードの「原紙」ともいえる透明なカードを持ってくる。 再び詩之本家、床にカードを並べ、小狼が精霊を一気に開放する。 「あまたの精霊たちよ、汝らのあるべき姿に戻れ、さくらカードっ!」 エリオルが杖で精霊たちを照らす、それにこたえて精霊たちは、それぞれのカードに戻っていく。
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220 :無能物書き[sage]:2019/03/21(木) 23:39:42.66 ID:HRCjl+bE0 - 「ふぅ。」
「くっ・・・」 膨大な魔力を使ったエリオルと小狼は、その場にへたり込む。 「それで、これからどーするんや!さくらカードに未来にいくカードなんかないで。」 そのケロの質問に答えたのは、エリオルではなく観月だった。 「でも、その反対の能力を持つカードならあるわ。」 「そらまぁ・・・リターン(戻)ならあるけど、過去に行ってもしゃあないやろ!逆や逆!」 そこまで聞いて、あ!という表情でエリオルを見る小狼。 「ミラー(鏡)のカードか!」 分身を生む、光を跳ね返す等、さまざまな鏡の能力を持つミラーのカード。 その能力を応用して、過去に戻るリターンの能力を反転させ、未来に送ることが狙いだ。 「しかし・・・」 果たして本当にそんなことが可能なのか、仮にできるとしても、ミラーを使う者、リターンを使う者 そしておそらく時間を制御するためタイム(時)のカードも必要となるだろう、それを使う者も。 いずれのカードも相当な魔力が必要となる。言うまでもなく、ケルベロス、ユエ、スピネル、そして ルビー・ムーンの4人は自分でカードを使うことは出来ない。まして今、エリオルと小狼は膨大な魔力を 消費したばかりだ。 「リターンは私と歌帆が担当します。」 エリオルの言葉に頷く歌帆。膨大な魔力を必要とするリターンは、今のエリオル一人ではきついらしい。 「タイムは・・・相性の良い李小狼、いけますか?」 その問いに小狼は力強く頷く。さくらを助けるため、出来ることは何だってやる決意だ。 「あとはミラー・・・」 そう言って、桃矢の方を見るエリオル。 「さくらさんのお兄さん、お願いします。」
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221 :無能物書き[sage]:2019/03/21(木) 23:40:11.74 ID:HRCjl+bE0 - 「えっ!俺?」
驚く桃矢にこくりと頷く。 「あなたとミラーには何か『縁』を感じます。ユエ、彼のサポートを。」 「分かった。」 そう言ってミラーのカードを広い、桃矢に渡す。 赤いリボンが巻かれた少女の図柄を見て、やれやれと息をつく。 それぞれがカードを持ち、向かい合って立つ。 「で、誰が未来に行くんや?」 そのケロの言葉に全員が硬直する、その人選が抜けていた。 本来ならリターンを使う二人が行くのだろうが、これはさくら達を『呼び戻す』ための時間飛翔だ。 リターンのカードはさくら達を引き戻すためにも使い続ける必要がある。 人間でないケロ、ユエ、スピネル、ルビー、そしてモモはカードで飛ぶことは出来ない、となると・・・ 全員が注目する、知世と苺鈴に。 「じゃあ私が・・・」 いそいそとビデオを用意する知世に、苺鈴が平手でツッコミを入れる。 「大道寺さんはダメ!財閥の令状が帰ってこられなくなったらオオゴトでしょうに。」 「ですけど・・・」 「私はいいの、これで結構自由な立場だし。それに・・・他にも理由はあるしね。」 桃矢の手の中でミラーのカードが発動する。桃矢の背中にはユエが付き、体内の魔力の流れを 調整している、かつて桃矢の力を受け継いだユエだからこそ出来るサポート。 具現化したミラーは、桃矢を見て少し嬉しそうに微笑んだ後、正面のリターンのカードと、 それを使うエリオル達に向き直る。 次に歌帆がリターンを発動、ミラーはそれを鏡に映し出す。その正反対の能力を持つカードとして。 そしてエリオルがその鏡に映ったさくらカード『フューチャー』に手をかざす。小狼もまた 時間制御のため、カードに剣を突き立て、発動させる。
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222 :無能物書き[sage]:2019/03/21(木) 23:40:47.32 ID:HRCjl+bE0 - 「フューチャー!」
「タイム!」 3枚のカードの真ん中にいる苺鈴が、3方からの魔力を受け、うっすらと消えていく。 それを見た知世が苺鈴に叫ぶ。 「苺鈴ちゃん!」 振り向く苺鈴、知世はその顔を見て言葉を続ける。 「他の理由って、いったい何ですの!」 親友の言葉に、苺鈴は手を挙げて返す、消える直前に。 「ずっとさくらに言いたいことがあったのよ、じゃあ、行ってくるわね!」
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