- 社会福祉公社技術部さくら板支所 第3分室
751 :蘇芳 ◆Ecz190JxdQ [sage]:2012/05/11(金) 14:29:33.46 ID:UxW6mQDzi - 条件付けと愛は似ている。
トリエラは一課の男の質問にそう答えたらしい。 トリエラらしくないロマンチックな答えのような、愛だと断言しないあたりがトリエラらしいような。 ヘンリエッタなら迷わず愛だと答えただろうに。 ジャンさんは一課の男とリコの面談に同席したらしい。 ヘンリエッタの場合はジョゼさんとシチリアに行った所に追いかけてこられたらしいから、多分ジョゼさんも同席したんだろう。 そうなると、一課にとって、義体のみで話が聞けたのはトリエラだけになる。 もしトリエラをモデルに義体像を想い描くのだとしたら、一課がわざわざ話を聴きにきたのは無駄になるな。 トリエラは条件付けが緩く、僕のいない場面なら担当官を呼び捨てする事もできる、特別な義体なのだから。 それを思うと、一課の男がかわいそうなような、何かに勝ったと誇りたいような、複雑な気分だ。 「ヒルシャーさん。 エルザ事件の報告書は私にコピーを頼めないから、ってオフィスを出てきたのに、何をにやけているんですか。 まだ翻訳があります。 私まで手伝ってるんですから、早く戻ってください」 切り口上でそれだけ言って、トリエラはオフィスに戻っていく。 小さな声で「この前の流星雨の誘惑に負けるんじゃなかったよ、翻訳がこんなにしょっちゅうあるなんて」と独り言を言いながら。 ああ、これが僕の日常だ。 きっと僕はまたにやけている。 トリエラにまた何か言われる前に、コピーを終わらせなくてはいけないのに。
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