- 【ダンガンロンパ】舞園さやかは真ヒロイン ステージ2【アイドル】
638 :名無しさん@お腹いっぱい。[sage]:2011/11/10(木) 01:38:27.60 ID:N8q1hmm/ - 「舞園さん…」
「だ、大丈夫です…ちょっと、疲れてて…すみません」 ぐしぐし、と、袖で瞳を擦る。 肌が傷つくから止めろといつもマネージャーに怒られるけど、今は。 今は、アイドルじゃない。 一人の女だ。 一人の女として、苗木君の前にいる。 関わっちゃいけない、という表現はオーバーだ。 跡が残るくらいに力強く涙を擦ると、少しだけ目の奥がさっぱりした。 明日からも彼に笑いかけるし、 明日からも彼をからかうし、 明日からも彼のことは、きっと大好きだ。 けれど。 この報われない恋愛を、私は諦める。 きっと、そういう運命なんだ。 私と苗木君は結ばれない。 今日という日までアピールを続けてきて、一向に報われなかったのがそもそも兆候だったのかもしれない。 「あーあ…なんか、疲れちゃった」 諦めの言葉と共に、ふ、と息を吐くと、一気に体中の力が抜けた。 力が抜けて、いつもよりも深く笑うことが出来た。 エスパーだから、だなんて、本気で言っているわけじゃない。 人よりちょっと直勘が鋭いのと、ちょっと感情の機微に敏いくらいだ。 だから、念力なんてないし、明日の天気もわからないし、相手が何を考えているかなんてわからない。 エスパーごっこは、もうお終いだ。 苗木君は、じっと私の顔を見ていた。 射抜くような、包み込むような目つきだった。
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639 :名無しさん@お腹いっぱい。[sage]:2011/11/10(木) 01:39:11.06 ID:N8q1hmm/ -
く、と苗木君の頬が歪む。 この表情は、―― いつもの癖で分析でもしそうになって、目を反らした。 瞳の中に苗木君を入れてしまうことすら、罪深いものに思えた。 瞳の端で、苗木君は立ち上がって、 「嫌だったら、逃げてね」 「え、」 私が言葉を返す前に、薄い布が頭から被せられた。 「ちょ、なえ、」 ぐい、と、優しくも力強い何かが、私の頭を引っ張る。 薄い布は、苗木君の着ていたパーカーだった。 何をされているんだろう。 不思議と、抵抗する気力は起きない。 「ゴメン…今だけは、考えてること読まれたくないんだ」 グサ、と、世界で一番好きな声が、胸に突き刺さった。 自分でわかっていたことなのに、彼の声で改めて聞くと、罪の意識が掻きたてられる。 痛みで思わず喘いでしまいそうになって、 その声が、自分の真上から響いたことに気が付いた。 ド、ド、温かくて硬い壁の奥から、リズムよく鼓動が響く。 えっと、これって、 苗木君の顔が私の頭の上にあって、目の前にあるのは多分苗木君の胸で、 じゃあ、私の肩をパーカー越しに包んでいるのはきっと苗木君の腕で、 私は、苗木君に抱かれているんだ。 ボボボ、と、再燃する心臓。 何度もスイッチのオン/オフを繰り返して疲れきっているはずなのに、今日一番の高鳴りだった。
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640 :名無しさん@お腹いっぱい。[sage]:2011/11/10(木) 01:39:47.53 ID:N8q1hmm/ -
「あ、の、なえぎ…くん…?」 口から出た声は、なんとも力なく震えていた。 私と彼の心臓の音の方が、まだ大きい。 いつもは私が彼をからかう、いじめる立場なので、彼の方からアクションを起こされた時は弱い。 苗木君以上に、私の方が焦ってしまうんだ。 「えっと…その、まずは…勝手にこんなことして、ごめん」 彼の声も、どことなく上ずっていて。 「い、いえ…私は、あの…嫌じゃないです…けど」 苗木君こそ、嫌じゃないのか。 私はあなたの考えを何でも見透かしてしまう、怖い魔女、嫌な女。 「あの、それと…その、体調悪かったのに、振り回してゴメン」 「そんな、私が言い出したのに…それに、私は楽しかったし…」 「…それでも、謝らないと気が済まなくて」 ど、ど、どど、ど、ど、 私の鼓動、苗木君の鼓動。 どちらが速くてどちらが大きいのか、全然わからない。 緊張してるんだ、お互いに。 だって、布一枚越しに、苗木君が私を抱きしめているんだから。 「あと、あの…怖いって言ったの、舞園さん気にしてるよね…ゴメン」 「な、」 エスパー? 「んで、分かっ…じゃなくて、全然気にしてな…あ、でも、ちょっとへこんだだけで…」 「分かるよ。舞園さんが笑った顔、いつもよりすごく…悲しそうだったから」
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641 :名無しさん@お腹いっぱい。[sage]:2011/11/10(木) 01:41:00.97 ID:N8q1hmm/ -
心臓がひと際、高く跳ねた。 「いつもの舞園さんの笑顔は、なんていうか…花が咲いているみたいな、綺麗で明るい感じだけど」 いつもの、私の。 苗木君、その言葉は。 『いつもの私の笑顔』をよく知っていないと言えない言葉だって、あなたは気づいていますか。 「さっきのは全然違うっていうか…何かをあきらめて、しょうがないか、って笑う感じで…上手く説明できないんだけど」 苗木君、その言葉が。 私の心臓をどんどん速めてしまっていること、あなたは気づいていますか。 「だから、なんか励ましたいというか…抱きしめたくなっちゃって。あ、でも、その、変な意味とかじゃなくって、えっと…」 あれ、嫌じゃない。 いつも、私が苗木君にしていることと同じなのに。 感情の機微に、表情や仕草に敏く目を光らせていること。 考えを読まれたのに、なぜだろう、すごく嬉しい… 「怖いのはホントだけど…嫌じゃないんだ、僕。舞園さんが僕の心を読むの」 「…は、はい」 「あ、でも…今みたいな時は、心読まれたら困る…かも。すっごく、ドキドキしてるから」 残念ながら、顔だけ隠しても緊張しているのは丸わかりだ。 あ、そっか。 彼の『怖い』という言葉を、 私は『嫌い』と混ぜてしまったんだ。 嫌じゃない、と苗木君は言った。 怖いけど、嫌じゃない。 ついさっき諦めたはずの、恋心。 まさか数分後に再び芽吹くなんて、思いもよらなかっただろう。 「…大丈夫ですよ、苗木君」
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642 :名無しさん@お腹いっぱい。[sage]:2011/11/10(木) 01:44:29.92 ID:N8q1hmm/ -
パーカーから、苗木君の匂いがする。 私を支えてくれた暖かい背中を、思い出した。 「私も、苗木君がエッチな目で私のことを見るの…怖いけど、嫌じゃないですから」 「ぶッ…そ、そういうのは、言わないで…」 硬い壁、彼の胸。その奥で、鼓動がいっそう速くなった。 ああ、暖かい。 女の幸せは、愛するよりも愛されること。 先輩が教えてくれた言葉を、今は理解できる。 これは、認めざるを得ない。 彼をからかったり、笑顔にさせたり、今日一日で色んな事を苗木君にしてきた。 色んな表情を見ることが出来たし、それはすごく幸せだったけれど。 腕に抱かれている、この暖かさは。 他の何物にも劣らない、至上の幸せだった。 パーカーを取り払って、生身で彼に抱きつきたかったけれど、止めておいた。 やっぱり、こんなに緩みきった顔は、苗木君には見せられない。 「…私のエスパーが、移っちゃったのかな」 「え?」 「どうして、いつもの笑顔と違うって気づいたんですか?」 「あ、そういうことか。…うーん、なんでだろ」 きっと、気が弱くても真っ直ぐな、優しい彼だから。 人一倍、誰かの不幸に敏感な彼だから。 諦めかけていた私を、助けてくれたんだ。 「…あーあ。苗木君、こうやってこれからも、私を甘やかしていくんですね」 「えっと…慰めただけ、だと思うんだけど…」 「もう遅いですよ。ただ慰めるだけなら、言葉だけでもよかったはずです」 「う、それは…」 「明日からは私、もっともっと苗木君に甘えて、からかって、」 ずっと、あなたのこと、好きであり続けるから。 「――覚悟してくださいね、苗木君」
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- 【ダンガンロンパ】舞園さやかは真ヒロイン ステージ2【アイドル】
643 :名無しさん@お腹いっぱい。[sage]:2011/11/10(木) 01:45:53.77 ID:N8q1hmm/ - ―――――
「舞園さん、あの」 「ルーズリーフは、私も忘れてしまって…ごめんなさい」 もうそろそろ慣れてもいい頃なのに、苗木君は初めての時と同じ反応。 目を丸くして、それから少しして、困ったように笑うのだ。 「…今更なんだけどさ。実は超高校級のアイドルじゃなくて、超高校級の超能力者だったりしない?」 「残念ながら、苗木君限定なので」 言いながら、ノート代わりになりそうなモノはないかと、鞄を開く。 「あ、大丈夫だよ。無かったらなんとか工夫するから」 「そんなわけにはいきません。また他の女の人のところに行かれたら、たまったもんじゃないですから」 「うぐ…そ、それはホントにゴメンって…」 あの日から、月日は過ぎて。 苗木君の背が私を越して、私の肩幅が苗木君よりも小さくなった頃。 私たち二人の関係は、一つの転機を迎えた。 その関係がどういう枠組みなのかは、一言では語り表せないというか。 言葉にしてしまうと、途端に嘘っぽくなってしまうというか。 正直なところ、私としても書き記すのは恥ずかしいというか。 ただ、思い切ってバッサリと切った私の髪を見てもらえば、なんとなく想像はついてしまうのだろう。 別に願を掛けていたわけでもないけれど、鋭いクラスメイトのうちの何人かは言葉をくれた。 「舞園さん、今日は、」 「ストップ。二人っきりの時は名前で呼んで、って…言いましたよね?」 「…舞園さんだって、さっき『苗木君』って言ってたよ」 「じゃ、今からお互いに名前で呼びましょう。ね、誠君」 躊躇いも見せずに微笑みかければ、いつものように苗木君は赤くなる。 幾度も繰り返したやり取りだけれど、飽きる気がしない。 いつまでだって私はあなたをからかうし、私はあなたに笑いかけるし、私はあなたを愛し続ける。 「さ、さや…」 「んー?」 「う、ぐ……さやか、さん」 「はい、よくできました。あと、私はいじめっ子体質じゃないですよ」 「……」 「そうですね。私が相手だと、気軽に浮気も出来ないですね」 「…まあ、する予定もないんだけどね」 エスパーごっこは、まだ続いている。
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- 【ダンガンロンパ】舞園さやかは真ヒロイン ステージ2【アイドル】
644 :名無しさん@お腹いっぱい。[sage]:2011/11/10(木) 01:46:38.44 ID:N8q1hmm/ - ようやく終わった…長すぎごめん
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- 【ダンガンロンパ】舞園さやかは真ヒロイン ステージ2【アイドル】
645 :名無しさん@お腹いっぱい。[sage]:2011/11/10(木) 01:48:46.54 ID:N8q1hmm/ - 急いでて書き忘れてた…
>>634 苗舞SS『エスパー』の続きでした 読んでくれた人、ありがとう
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- [ダンガンロンパ]霧切響子の正体はカップ麺の妖精Part6
392 :名無しさん@お腹いっぱい。[sage]:2011/11/10(木) 23:33:40.00 ID:N8q1hmm/ - 逆に考えるんだ
スカートめくりを仕掛けようと試みるのではなく なんらかの偶発的な要因が重なって、結果としてスカートをめくってしまうんだ 例えばスカートの紐がほつれていて、それがたまたま苗木君辺りの腕に絡みついてしまい 苗木君がふと手を挙げた拍子にスカートも上に引っ張られて御開帳、とか ぎゅうぎゅうの満員電車に、二人でくっついて乗っていたところ どんどん霧切さんのスカートがめくりあげられていくんだけど、混んでいるせいで上手く体を動かせず 密着したままスカートも戻せずに、ずっと間近でフルオープン、とか これなら霧切さんも予測はできないから、護身術で防がれることはないし 故意ではないということをちゃんと説明できれば、許してもらえるどころか照れギリさんも拝めて一石二鳥じゃないか
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