- 【ダンガンロンパ】霧切響子の正体は???の嫁Part4
613 :名無しさん@お腹いっぱい。[sage]:2011/06/15(水) 01:08:14.24 ID:tobofXn7 - 少しばかり駄文をば
「お待たせしました」 目の前に置かれた広口のガラスの器に、私はほんの少しだけ胸を躍らせる。 勿論、テーブルの向かいに座る彼には、それと知られないように。 偶然通りがかった喫茶店の店先に「かき氷はじめました」と記された看板を見つけたのは苗木君だった。 日本の夏の風物詩であるところのそれは、幼い頃から海外で過ごすことの多かった私にとってあまり馴染みのない食べ物で、 それだけに興味を惹かれるものがあった私は、迷わず一服することを彼に提案したのだ。 鮮やかな青色のシロップに染められた雪山の一角をさくりとスプーンで掬いとり、口に運ぶ。 柑橘系の甘い香りと、サイダーに似た淡い酸味。 軽く目を閉じ、舌の上で氷の粒が溶けていく感触に意識を傾ける。 梅雨が明けてからというもの日に日に暑さが増していることもあり、身体の内から涼やかになる感覚がとても心地良い。 ささやかな幸福感に浸りながら、私は瞼を開く。 と、向かいの彼がこちらを見つめているのに気付いた。 「どうかした?」 「ん、いや。随分美味しそうに食べるんだなあって」 氷の山をしゃくしゃくと崩しつつ、苗木君が応える。 「そう? 日本のかき氷は久し振りだから、少し感動していたのかも」 「そっか、海外長かったんだもんね。ブルーハワイ好きなの?」 「特別好きというわけでもないわ。何となく選んだだけよ」 本当のところは、かき氷と言えばイチゴ、レモン、それにメロンくらいしか食べたことのない私には、この青色が物珍しかったというのが理由だったりする。 が、なんとなく気恥ずかしくてそれは口にしない。 「ふうん。でも、似合ってるよ。霧切さんにブルーハワイ」 「……よく分からないわ。ハワイなんて柄でもないと自分でも思うのだけれど」 「いや、澄んだ海の色ってさ、霧切さんに似合うなって思ったんだ」 彼のことだから気取ったつもりもなく、きっと素で言っているのだろう。 そうと分かっているものだから、私は尚更どきりとさせられてしまい、それを隠すのに苦労させられる。 そしてそんな時には、私は決まって彼をからかうような言葉で誤魔化してみせる。 意趣返しというわけではないのだが。 「あなたって、時々平気で恥ずかしいことを言うわよね」 「うっ……ひどいなあ」 「そんな顔をしないで。まあ、一応ありがとうと言っておくわ」 苗木君はいつもの如く子犬のような困り顔を返す。 この表情が可愛らしくて、私は彼をからかうのをなかなか止めることができない。
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