- 【源泉の感情】平岡公威・三島由紀夫の詩♭♯♪
341 :名無しさん@お腹いっぱい。[]:2011/12/12(月) 15:29:20.64 ID:tO92Ep3u - 「悲しき賤女(はしため)の唄」
終りなき、 悲しきつとめ、 女中奉公。 来りしは、 十九の春ぞ 六年(むとせ)の昔。 味気なく、 うつろに暮し、 我が青春(はる)逝きぬ。 さむざむと、 両手に握る、 冷たき帚。 雑巾は、 汚なくぬれて、 小竹の竿に。 夕焼に、 我が面(おも)映えて、 すゝきはそよぐ。 ふるさとの、 夕べを思ふ、 はした女の身を。 夕映よ、 行きて告ぐれよ、 老ふ父母(かぞいろ)に。 思ひはす、 故郷の野山 秋は去りにし。
|
- 【源泉の感情】平岡公威・三島由紀夫の詩♭♯♪
342 :名無しさん@お腹いっぱい。[]:2011/12/12(月) 15:30:24.43 ID:tO92Ep3u - ひゞわれし
濡れ手にさはる 霜の冷たさ。 はく、いぶき、 煙となりて、 真白く消えぬ。 庭さきを、 通へるみちの、 あはれ、冷たき。 朝霜の、 こほりかたまり 朝陽にとけぬ。 とけぬれど、 ぬかるみ激し、 人行きなやむ。 さてやそれ、 我がぬかるみの 心に似たり。 あさけぶり、 古里こひし、 なつかしの色。 あさぞらに、 立ち上る白、 我が眼は痛し。 物いはぬ、 福寿の萌葱(もよぎ) 我あたゝかし。
|
- 【源泉の感情】平岡公威・三島由紀夫の詩♭♯♪
343 :名無しさん@お腹いっぱい。[]:2011/12/12(月) 15:31:30.89 ID:tO92Ep3u - 都より、
既に去(い)ぬれど、 我が里迎ふ。 はつはるぞ、 旗ひるがへる 門松が上に。 あなうれし、 しばしの休暇(いとま) いかに用ひん。 さと向けて、 はせ、はするなり。 黒き列車は。 村々は かすかに見えぬ、 粉雪の彼方。 我うれし、 激しき音に、 列車は入りぬ。 小さき駅、 その小さくとも 我がふるさとぞ。 家に続く 粉雪の道の 行く果てに、 かぞいろいます 小さきやは、 ほのぼのと、 浮び出でたり。 平岡公威(三島由紀夫)12歳の詩「悲しき賤女(はしため)の唄」
|