- 【源泉の感情】平岡公威・三島由紀夫の詩♭♯♪
272 :名無しさん@お腹いっぱい。[]:2011/06/09(木) 22:38:47.38 ID:fPngA8PM - 大神々社への参籠は八月下旬と決め、その後、広島へ一寸伺ひ、そのあと、汽車で、(飛行機はイヤなので)、
熊本八代へゆき、神風連のことをしらべたい、などと、夏のをはりの旅をいろいろと計画してをります。いづれ、 間近になつて旅程がはつきりいたしましたら、御連絡申上げます。 「英霊の声」は文壇では冷たいあしらひで、かれらの右顧左眄(うこさべん)ぶりがよく見えます。 天皇の神聖は、伊藤博文の憲法にはじまるといふ亀井勝一郎説を、山本健吉氏まで信じてゐるのは情けないことです。 それで一そう神風連に興味を持ちました。神風連には、一番本質的な何かがある、と予感してゐます。 三島由紀夫 昭和41年6月10日、清水文雄への書簡より
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- 【源泉の感情】平岡公威・三島由紀夫の詩♭♯♪
273 :名無しさん@お腹いっぱい。[]:2011/06/09(木) 22:42:21.66 ID:fPngA8PM - 「豊饒の海」は終りつつありますが、「これが終つたら……」といふ言葉を、家族にも出版社にも、禁句にさせてゐます。
小生にとつては、これが終ることが世界の終りに他ならないからです。カンボジアのバイヨン大寺院のことを、 かつて「癩王のテラス」といふ芝居に書きましたが、この小説こそ私にとつてのバイヨンでした。書いたあとで、 一知半解の連中から、とやかく批評されることに小生は耐へられません。又、他の連中の好加減な小説と、 一ト並べされることにも耐へられません。いはば増上慢の限りでありませうが……。 それはさうと、昨今の政治情勢は、小生がもし二十五歳であつて、政治的関心があつたら、気が狂ふだらう、 と思はれます。偽善、欺瞞の甚だしきもの。そしてこの見かけの平和の裡に、癌症状は着々進行し、失ったら 二度と取り返しのつかぬ「日本」は、無視され軽んぜられ、蹂躙され、一日一日影が薄くなつてゆきます。 三島由紀夫 昭和45年11月17日、清水文雄への書簡より
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274 :名無しさん@お腹いっぱい。[]:2011/06/09(木) 22:42:52.92 ID:fPngA8PM - 戦後の「日本」が、小生には、可哀想な若い未亡人のやうに思はれてゐました。良人といふ権威に去られ、よるべなく
身をひそめて生きてゐる未亡人のやうに。下品な比喩ですが、彼女はまだ若かつたから、日本の男が誰か一人立上れば、 彼女をもう一度女にしてやることができたのでした。しかし、口さきばかり巧い、彼女の財産を狙ふ男ばかり 周囲にあらはれ、つひに誰一人、彼女を再び女にしてやる男が現はれることなく、彼女は年を取つてゆきます。 彼女が老いてゆく、衰へてゆく、皺だらけになつてゆく、私にはとてもそれが見てゐられません。 このごろ外人に会ふたびに、すぐ「日本はどうなつて行くのだ?日本はなくなつてしまふではないか」と心配さうに 訊かれます。日本人から同じことを訊かれたことはたえてありません。「これでいいぢゃないか、結構ぢゃないか、 角を立てずに、まあまあ」さういふのが利口な大人のやることで、日本中が利口な大人になつてしまひました。 三島由紀夫 昭和45年11月17日、清水文雄への書簡より
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275 :名無しさん@お腹いっぱい。[]:2011/06/09(木) 22:43:20.31 ID:fPngA8PM - スウェーデンはロシアに敗れて百五十年、つひに国民精神を回復することなく、いやらしい、富んだ、
文化的創造力の皆無な、偽善の国になりました。 この間もベトナム残虐行為査問会(ストックホルム)で、繃帯をした汚ないベトナム農民が証言台に立ち、 犬をつれた、いい洋服の中年のスウェーデン人たちがこれを傾聴してゐるのに、違和感を感じる、と書いてゐる人が ゐましたが、日本が歩みつつある道は、正に、「犬を連れた、いい洋服の中年男で、外国の反戦運動に手を貸す 『良心的』な男」の道です。 どの社会分野にも、責任観念の旺盛な日本人はなくなり、デレッとし、ダラッとしてゐます。 三島由紀夫 昭和45年11月17日、清水文雄への書簡より
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