- ばあちゃるカプ妄想総合スレ part8 [無断転載禁止] [無断転載禁止]©bbspink.com
437 :ほのぼのえっちさん[]:2020/01/06(月) 23:07:58.40 ID:oTLjw+sR0 - 微かに感じる甘い香りに、輝夜月は眉を顰めた。
「……ただいま」 白髪の大男が、くたびれたスーツに身を包んで玄関のたたきに立っている。見るからに疲労困憊、という風体で、風でも吹けば倒れてしまいそうな、弱々しさすらあった。 否、実際、背中でも押されれば此の男は顔からフローリングとキスしに向かうだろう。重度のワーカホリック体質は、月が彼と再び結ばれてからも変化することは無かった。 ――否、実際には残業も仕事の持ち帰りもしなくなっては居るのだが、月から見ればそう大した変化では無い。定時退社。此れくらいはしてほしい、と常々思っている。 そんな愛しの夫を支えるように抱き止める、というのが月の日課であったのだが、今日の彼女は其れをしようとしない。何時もされていることをしようとしない、というのは流石におかしい。彼は口を開く。 「――あれ、どしたんすか月ちゃん。体調悪いんすか?」 「……馬刺しくん」 結婚前の呼び名で呼ばれた。男はびくり、と身体を硬直させた。身体に伸し掛かる疲労も自宅に辿り着いたことで覚えた安堵もすべて吹っ飛んだ。彼女がそう自分を呼ぶ時は、大抵はお怒りである。 男は妻に怒られることが苦手だった。別に彼が恐妻家であるわけではない。単純に、愛する人に怒られるのが嫌なだけだ。 「なに、此の香り」 「……香り?」 言われて鼻を動かすが、特に変わった香りは感じない。首を傾げる男に、月は少しだけ睨むように顔を近づけて、 「"女物のボディーソープ"の香り」男の肩が大きく跳ねた。「……ウチには無いよね、此の香りのボディーソープ?」 白い歯をきらりと輝かせて、月は詰問する。笑顔だ。否、目が笑っていない。尖った犬歯と併せて、原始的な恐怖を男は覚える。 「……"愛してる"って、"大好き"って、さんざんさんざん言っておいて、いざくっついたら此れ? 此の仕打ちか?」 乾いた笑いを漏らしながら、月は男を抱きしめた。否、締め上げた。めしめし、と人体から聞こえてはならない音が聞こえだす。男は悲鳴をあげた。 「い、いでででで?! ちょ、ちょいちょいちょい、ストップ、ストップ!」 「煩い浮気者ぉおおおおおおおおお!」 「マジンガー?! いやいやいや、落ち着いて、落ち着いて話を訊いてってば月ちゃん!」 「言い訳か?! 言い訳だろそうなんだろ馬刺しィ!」 「愛してるのは月ちゃんだってば、本当本当!」 「……嘘だったら食べるぞ馬刺しくん」 「嘘なわけ無いじゃないっすか」 「……ホントだ」 「……何処触って判断したんすかねぇ?」 「……スケベ」 「――」 「え、あ、待って、待っ――」 「……いたい」 「すんません」 「……ご飯、用意してたのに」 「すんません」 「……ごめんね、めんどくさい女で」 「……おれもめんどくさい男ですから」 「……」 「愛してます、月ちゃん」 「ばーか、愛してる」
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