- 今まで生きてきて凄く衝撃的だった体験
355 :リハビリ[]:2023/01/08(日) 02:56:13.08 ID:Pt84Vo7o0 - 4年前に大腿骨骨折で3ヶ月入院した。
リハビリ病院は脳梗塞の後遺症の麻痺患者が中心だった。あとは圧迫骨折の老人とか 痴呆症で車椅子のみっちゃんてのがいて、いつも銀髪を看護士に梳かされて ニコニコしているかわいいおばあさんだった。 しかし、それは昼間の姿であり、夜中には眼が覚めていて、 夜勤の看護士に何かを喚き続けているのだった。 食堂で皆が食事をしていると、おばさんが、昨日のみっちゃんすごかったねと。 あれは娘を叱っているつもりなのだそうだ。 あれが始まるとナースコールが集中する。看護士はなだめに廻る。 私も昼間、寝れないので鎮静剤を投与するとかしないのか、と看護士に問うた。 看護士は、歳を考えてと恐ろしい話を聞いたように答えた。 歳も歳なので、鎮静剤投与を繰り返すと命が持たないのだ。 それに気づくと少し反省はした。 3ヶ月も入院する私は、若くはないが、ここでは年下なのだ。 車椅子から始めて、ケージでガッコンガッコンと歩みを進める段階で、 この後、松葉杖で歩く練習をして、最後はステッキで歩けるようにして 退院となる。 麻痺患者はそのように回復はしないので、羨ましそうに見られることがあった。 私自身は今後再就職するのか、何で喰いつなぐのか、そればかりが心配だった。
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356 :リハビリ[sage]:2023/01/08(日) 03:24:05.42 ID:Pt84Vo7o0 - 入院費用は傷害保険で足りるどころか、個室を選べるほどなのだが、
退院後の先行きへの思いとは矛盾している。どうでも良いという気持ち。 義足を作って装着歩行の練習をする患者に付き添う家族の姿が眩しかった。 事故で脚を失っても、再起を願って車を運転できるようにするのだそうだ。 朝は6時過ぎにブラインドを上げられて、7時起床。 夜、うまく寝れていないので気分が悪かった。 前日の夕方、ブラインドを下ろそうとする時に、ベランダのない窓外を コンクリートづたいに歩く男性と眼があった。 薬のチェックに来た看護士に話すと、ここの建物の作りが古いので、そう したことをする人はいる、と言っていたが、怪談話の一種として信用はされ ていないようだった。 落下事故が起こったときの心配は、あまりされていないようだ。 犯人探しもめぼしがついていたのか、その後姿を見ることはなかった。 本当に怖かったのは、睡眠傷害の患者が脳梗塞の麻痺でリハビリをしており、 毎夜、恐怖にうなされて叫び声を上げることだった。 本人は寝付きが良いらしく、毎夜同じ時間にそれが始まって30分続く。 Webで調べると、恐怖の夢を見るのが特徴らしく、身体を動かすことができる 夢遊病の一種の様なもので、横で寝ている妻にプロレスの技を掛けて殺して しまったり、扇風機をぶん投げたりするという暴れ方をするのだそうだ。 ここの患者は身体が麻痺して車椅子なので襲われる心配がないのが幸いだった。
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357 :リハビリ[sage]:2023/01/08(日) 03:33:51.69 ID:Pt84Vo7o0 - なんでこんな時間に書きたくなったのか。
みっちゃんの本当の姿を知らせたくなったからだ。 ある夜、例によって、みっちゃんはナースセンタ脇に車椅子に座ったまま 放置されていた。 夜勤のナースは巡回に出ていたのか居なかった。 リハビリ病棟のナースコールは容体の急変とか緊急性がないことが多いのだ ろうが、これで良いのかと不審にも思う。人手不足だからだな。 私は松葉杖一本に慣れなかった。転んでまた再骨折する恐怖があったからだ が、その夜はトイレの後にナースセンタを通ってみっちゃんの様子を見たく なった。
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358 :リハビリ[sage]:2023/01/08(日) 03:54:26.73 ID:Pt84Vo7o0 - 電気を落とした廊下の非常灯づたいに食道へ歩くとナースセンターがある。
みっちゃんは暗い中にぽつんと車椅子に座っている。 ガチッガチッと松葉杖を鳴らす音に気づいて、うつむいていた顔を上げた。 ナースセンタで消さずに残した灯が彼女の瞳を照らして、不思議な輝きを与えた。 彼女は私の姿を見上げて、何かを呟いた。 笑っているようだった。 私は息子の年齢なのだろうとは思ったのだが、息子と思ってはいないのだった。 彼女が呟く内容が良く聞こえない。 私は声を掛けることはなく、黙って彼女の顔を見続けた。 長い時間観察したような気がする。人と人との交流ではない。 物言えぬ動物に相対したような気持ちになることに、自分の冷酷さを恥じた。
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359 :リハビリ[sage]:2023/01/08(日) 04:04:10.07 ID:Pt84Vo7o0 - 突然、彼女の表情が冷たく変わり
「おまえは〜じゃない」と言った。 彼女と真夜中に交流する気はないので、それを聞いて終りにしようと思った。 誰かじゃないと判ってくれたなら、責任も感じることはないのだ。 部屋に帰ろうとしたその背中に、 また一言があった。 「おまえは私を *******」 何を言われたのだろうか。ベッドに横になりながらそれだけが気になった。
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360 :リハビリ[sage]:2023/01/08(日) 04:14:24.43 ID:Pt84Vo7o0 - 翌朝、食堂はみっちゃんの噂で持ちきりだった。
歩けないはずの彼女が、車椅子から立ち上がり看護士に何かを喚いて掴み かかったのだそうだ。その後倒れて内科病棟に運ばれたそうなのだが、 その後の消息が判らないということらしい。 私は彼女から何を聞いたのだろうか。 怖くて、退院までみっちゃんのその後を聞くことはなかった。 オチがあれば面白いのだが、本当に知らないので何とも言えない。 つまらない話ですまん。
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