- 後味の悪い話 その183
635 :本当にあった怖い名無し[]:2021/05/03(月) 01:25:10.76 ID:ZWZ8iyMf0 - >>634
ルーじゃないなら何なの? 大柴?
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637 :本当にあった怖い名無し[sage]:2021/05/03(月) 04:53:50.71 ID:ZWZ8iyMf0 - 円光で有名な島袋光年の漫画『トリコ』に登場する悪役の三虎(みどら)の話。
現実ではあり得ないような奇想天外な食材が存在するファンタジー風の世界が舞台。 何百年も昔、世界が滅びかねないような大戦争が長い間続いて、世界中で飢饉が起きたという時代があった。 三虎は、そんな狂った時代に生まれ落ちた。 彼が覚えている最初の記憶は、「殺されそうになった」ということと、「ひたすら腹が空いていた」ということ。 生まれてすぐに、大人達の手で「餌」として肉食の家畜の小屋へと放り込まれたのだ。 他の赤子達が無慈悲にも家畜に食われていく中、三虎だけは「天性の捕食者」としての才能を発揮し、家畜に食われないどころか、逆にメスの家畜から授乳されて生き長らえた。 その得意な出生と、食へ対する貪欲さから、三虎は忌み子として人々から怖れられて迫害された。 物心付いた頃には、本能の赴くままに他者から食糧を強奪して野生児のように生きるようになっていた。 しかし、戦争は激化の一途を辿り、世界は破壊され、食糧もどんどん尽きていく。 三虎は枯れ木を食べ、砂を食べるにまで追い込まれたところで、限界が来て行き倒れた。 そこへ、後に英雄として歴史に名を残す「アカシア」という冒険家の男と、そのパートナーである「フローゼ」という女性と、アカシアの二人の弟子が通りがかる。 フローゼは聖母のように心優しい女性であり、三虎を拾って介抱し、手料理を食べさせてあげた。 生まれて初めて他者から向けられた「敵意」以外のもの、温もり、優しさ、そして「施し」に、三虎はただただ泣きじゃくることしか出来なかった。 そのまま三虎はアカシアの三番目の弟子として引き取られ、旅に同行することになる。 母親のように優しいフローゼ、父親のように偉大なアカシア、兄のように頼もしい二人の兄弟子。 彼等と供にすごした日々は、三虎にとって「宝石」のように輝かしいものだった。
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638 :本当にあった怖い名無し[]:2021/05/03(月) 04:56:14.90 ID:ZWZ8iyMf0 - >>636
言い過ぎじゃね? たかだか互の主張がすれ違ってるだけだよ。どっちも半分正しいし半分間違ってる みんなで仲良く後味の悪いエロ漫画の話でもしようぜ
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639 :本当にあった怖い名無し[sage]:2021/05/03(月) 04:57:15.00 ID:ZWZ8iyMf0 - アカシアの旅の目的は「世界平和」であり、彼はそれを「美食」によって実現しようとしていた。
人間は美味しい物を食べれば、心が優しくなり、他者と喜びを分かち合い、争いなどしなくなるだろう。 アカシアはそんな思想のもとに、めっちゃ美味しいらしい「伝説の食材」を探し求めていた。 そしてついに伝説の食材の所在地を発見したアカシアは、実力不足な三人の弟子には待機させ、フローゼと二人で伝説の食材の入手へと向かった。 そして伝説の食材を手に帰ってきた時、アカシアは無事であったが、フローゼは今にも死にそうな程に衰弱していた。 アカシアは「安静にさえしていれば、フローゼの容態は安定する」と言って彼女の身を三人の弟子に任せると、戦争を終わらせるために、世界各国の指導者達に合いに行った。 アカシアはああ言っていたが、誰よりもフローゼを想う気持ちが強い三虎は、「このままではフローゼが死んでしまうのではないか?」と不安で仕方がなかった。 そしてフローゼを救いたいあまり、「死者をも甦らせる」と言われる希少な食材を手に入れるため、危険地帯へと飛び込んだ。 そこで伝説的な危険生物と遭遇し、瀕死の重傷を負わされることになるが、死ぬもの狂いで目的の食材を手に入れ、フローゼのもとへと血塗れで帰還した。 そして三虎は「生きて」と言いながらフローゼに食材を託すと、そのまま力尽きてしまう。 だが、聖母のような人格者であるフローゼが三虎を見殺しにする筈がなかった。 フローゼは自分も瀕死だというのにベッドから起き上がると、三虎の持ち帰った希少な食材を調理して、瀕死の三虎に処方した。 それによって三虎は一命を取り留めるが、代償にフローゼはそのまま息を引き取ってしまう。 三虎がフローゼを助けようとしてとった行動が、逆にフローゼの命を奪う結果となってしまったのだ。
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640 :本当にあった怖い名無し[sage]:2021/05/03(月) 04:59:32.38 ID:ZWZ8iyMf0 - 帰ってきたアカシアは、フローゼの墓前で涙を流し、三虎にこう語りかける。
「フローゼの死はお前のせいではない。これからは、フローゼの分も美味い物を食べろ」 そしてアカシアは何処かへと旅立って行き、消息を絶った。 戦争が終わったからと言って、すぐさま社会が復興したり、自然環境が再生したり、飢饉が無くなるわけではない。 残された弟子達の内の兄弟子二人は、飢えた人々に食料を配給したり、自然環境を再生させる活動を始めた。 だが、三虎だけはその慈善活動に加わらず、「死者を甦らせる」と言われる希少な食材を取って来ては、泣きながらフローゼの墓にかけるという行動を、くる日もくる日も繰り返し続けた。 三虎にとって世界なんてどうでも良く、ただフローゼさえ生きて笑ってくれていればそれで良かったのだ。 兄弟子二人の活躍によって世界が復興していき、人々が幸福を噛み締め始めた中で、三虎は世界を憎み始めた。 フローゼはこの世界を救って殉死した。フローゼを殺したのはこの世界に生きる愚かな人々だ。 なのに、フローゼが死んだ後の世界で、人々は美味しい物を食べて笑って生きている。 「この世界に存在する食材は全て、フローゼが食べるべき物だ。そしてアカシアは俺に言った、フローゼの分も美味い物を食べろと。だから俺は、全ての食材を独占する」 こうして三虎は闇に堕ち、兄弟子二人に宣戦布告して決別。 後に「食材の独占」を目的とする世界的な犯罪組織のボスと成ってしまうのであった。
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