- 後味の悪い話 その182
820 :本当にあった怖い名無し[sage]:2020/10/18(日) 15:49:03.88 ID:kFf/qyLH0 - (その2)
ある日、見たこともない大人達がやって来て、泣きわめく主人公を動物達から引き離し、どこかの部屋に 閉じ込めてしまった。 ガラス戸越しに主人公を見ながら会話する、医者らしき人物と憔悴した母親。 ここで、実は主人公が話しているのは人の言葉ではなく、「ワンワン」「キューンキューン」といった動物の 言葉であったことが読者に分かる。 医者「これは今までにあまり前例のないケースです。言葉だけが完全に動物のそれになるなんて。 もっと詳しい検査が必要かもしれない」 母親「私が悪いんでしょうか。いつまで経っても引っ込み思案の甘えん坊で、ちょっとはしっかりして ほしくて厳しく接しもしましたが」 医者「まあまあ、そう思い詰めないでください。こういうことは時間がかかるものですから」 たった一人、室内(たぶん、閉鎖病棟か何か)に閉じ込められた主人公。 ここには小鳥一羽飛んでくる窓さえないが、考える時間だけはたっぷりある。 それでも、人間の言葉だけはどうしても思い出せなかった。 犬木加奈子の漫画には、目を覆いたくなるほど残酷ないじめや虐待が登場する。 でも、この話の場合、母親はちょっと言い方キツめではあるけれど、主人公を虐待などしていない。 クラスメイト達も主人公をいじめたりせず、「今まであんまり話したことないよね。良かったら、 一緒に遊園地行かない?」と誘ったりもしている。 主人公があまりに引っ込み思案すぎて嫌がっていると勘違いされたが、それでも陰口を叩くでもなく、 「あんまり遊園地に興味ないか」「じゃあ、仕方ないね」と至って穏やかな態度。 また、悪魔も、いきなり主人公を動物語しか話せないようにしたのではなく、「人語と動物語の 両方を話せるようにしたが、主人公が動物と過ごす楽しさにのめり込むあまり、人語を忘れた」 ということが暗示されている。 強欲なあまり破滅する主人公が多いシリーズ中、何かが違えば平和に生きられたかもしれない主人公の末路が哀れだった。
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