トップページ > オカルト > 2011年07月19日 > BbnkMxRy0

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本当にあった怖い名無し
∧∧山にまつわる怖い・不思議な話Part56∧∧

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∧∧山にまつわる怖い・不思議な話Part56∧∧
102 :本当にあった怖い名無し[sage]:2011/07/19(火) 21:10:26.95 ID:BbnkMxRy0
少し長くなるけど、分割して書いていいかい?


∧∧山にまつわる怖い・不思議な話Part56∧∧
105 :本当にあった怖い名無し[sage]:2011/07/19(火) 21:35:30.32 ID:BbnkMxRy0
これは俺が2年前実際に体験したこと。
大学時代の友人A・Tと3人でG県の山間部に1泊2日でフロードバイクツーリングに
出かけたんだ。俺はまだ独身だが、他の2人は結婚して子供もいる。家庭もちで
バイクに乗り続けるというのは家族がよっぽどでないとかなかなか難しく、
今までに何度も誘っていたのだがなかなかスケジュールが合わず、気づいたらお互いもう
40に手が届こうという年齢に。
たまにメールをすれば「3人でまた走りたいな」なんてバイクの話題は出ていたが、
このままでは「またいつか…」みたいな社交辞令で終わりそうだったので、
今回は俺が強引に2人のスケジュールを合わせてやっと実現した旅だった。

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106 :本当にあった怖い名無し[sage]:2011/07/19(火) 21:39:32.01 ID:BbnkMxRy0
102です
久しぶりに気心の知れた仲間とのツーリングという事もあって気分は最高だった。
最近3人目の娘が生まれたAはこの日のために新調したウェアで自慢げに自分の
よき父ぶりを話していたり、3人の中でも一番腕のいいエースライダーだったTは
手入れを欠かさない自慢の愛車に久しぶりに火を入れる事ができご満悦な表情。
俺はというと3人の中では一番バイク経験が浅く、いつも2人に強引に誘われて
走っている時も2人に付いて行くだけで必死という感じだったが、今では俺が一番
バイクに乗る時間が取れるというのは皮肉と言えば皮肉だった。

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107 :本当にあった怖い名無し[sage]:2011/07/19(火) 21:42:03.79 ID:BbnkMxRy0
102です
お互い仕事を抱えた身だし、本格的に山へ入る事も久しぶりな事。
そのため最初は「久しぶりのバイクだから」とか、「最近腰が痛いから無理はできないよ」なんて
やけに年寄りじみた事を言い合っていた俺たちだったが、最後のコンビニを出発して
段々と山に分け入り未舗装道路を小一時間ほど走破した頃にはバイクの勘も少しずつ戻り、
3人でモトクロスレースに参戦していた時の興奮や思い出に包まれ知らず知らず
アクセルを開ける手にも力が入っていった。
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108 :本当にあった怖い名無し[sage]:2011/07/19(火) 21:46:55.23 ID:BbnkMxRy0
102です
その時走っていたG県とN県の県境を走る林道は日頃の仕事や些細なストレスを完全に
忘れさせるだけの迫力と魅力があり、初秋の晴天にも恵まれた俺たちは、
時間を忘れて枝分かれする何本もの大小の林道を夢中で散策していた。
しかし楽しい時間はあっという間に過ぎ去り、まもなく日没の気配。
20歳代の頻繁にツーリングに出かけていた頃だったら慌てないように
早めにテントの設営地点を探して日が傾いた時にはテントサイドで
酒を飲みながら夕食作りに取り掛かっている頃だが、今回はやっと互いの仕事や
家庭の事情を調整したツーリング…
そんな事情もあってか他の2人も時間が惜しく、なかなかスロットルを戻す気にはなれなかった。

∧∧山にまつわる怖い・不思議な話Part56∧∧
109 :本当にあった怖い名無し[sage]:2011/07/19(火) 21:54:23.90 ID:BbnkMxRy0
102です
地図で確かめてはいないのでハッキリとした場所はわからないが、標高や周りの山並みから想像するに
わずかにN県に入ったあたりと思われる場所に差し掛かった時には、西の空は
残照を残すのみとなり辺りは暗くなり始めていた。
こうなると路肩の視界も急速に曖昧になる。折り合い悪く路面も
ガレ始めた(路面が土ではなく拳大の石で覆われた路面の事)ため、
ライディングテクニックが未熟な俺は軽い恐怖を感じていた。
しかし強引に2人を誘った立場もあり、さすがに俺から泣き言を言い出すのも
憚れたが実はこのとき他の2人も切り上げるタイミングを見計らっていたらしく、
程なく先頭を走っていたエースライダーのTがクラクションを3回鳴らして
停止の合図を出したときは正直ホッとしたのを覚えている。
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110 :本当にあった怖い名無し[sage]:2011/07/19(火) 21:58:50.67 ID:BbnkMxRy0
102です
連投ですみませんでした。
もしよければもう少しカキコしようと思いますがどうでしょうか。
レスが無ければまた明日のこのくらいの時間にまた来ます。
∧∧山にまつわる怖い・不思議な話Part56∧∧
113 :本当にあった怖い名無し[sage]:2011/07/19(火) 22:07:20.14 ID:BbnkMxRy0
102です
レスありがとうございます。
もう少し書き込みします。

懐中電灯で地図を確認するとメインルートと山頂に向かって延びるピストン林道(道が途中で無くなっており入ったら戻らなければならない林道)
の入り口と思われる分岐場所だった。ここで場所が曖昧なのは辺りの地形が薄暗くてわかり辛くなっていたのと、
ピストン林道らしい細い筋があるのだが地図には載っておらず、似たような地形だと多分ここだろうという位にしか
判らなかったからだ。メインルートは谷間に向かう下り道でまだまだこの先ガレ場が続きそうな雰囲気、
一方のピストン林道はゆるやかに山頂に向かう登り路だが土と小石の締まった路面に変わっており
地図には載っていないが滝の様なサラサラという水音も幽かにしていた。
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114 :本当にあった怖い名無し[sage]:2011/07/19(火) 22:08:56.90 ID:BbnkMxRy0
102です

下りのガレ場はフロントタイアを取られたら即転倒につながるため神経を使うし、路肩が曖昧になっている
ガードレール無しの下りをタラタラ走るよりは少し登っても締まった路面を安全に走り、
開けた場所があればすぐテントを設営する方が安全だろうというのが3人の共通意見だった。
またよく見るとこの分岐点には小さな石柱が建っており地図には載っていないが昔は人の往来があった路かもしれない、
たまに山中にある夏の降雨がある時だけできる小さな沢があるかもしれない。そうこう考えている間にも辺りはどんどん
夕闇に包まれておりもはや地図は役には立たない。
薄暗くなった山の中でバイクのヘッドライトだけを頼りに俺たちは登りのピストン林道に入っていった。


∧∧山にまつわる怖い・不思議な話Part56∧∧
115 :本当にあった怖い名無し[sage]:2011/07/19(火) 22:11:35.72 ID:BbnkMxRy0
102です

この時俺は少し違和感みたいなものを感じていた。視界がやたら霞む感じがするからだ。
古いゴーグルを使っていると表面に細かい傷が付いて、ナイトランの時によく霞む事はあるが、
今感じているのはそれとは少し異質な感じがしていた。
妙に周りの景色が判りづらい感じと言ったらいいのだろうか。
暗くなっていたので当たり前だと思われるかもしれないが本当に真っ暗だとヘッドライトに映し出される景色は
スポットライトの様に陰影が強調されてむしろクッキリと見える事が多いのだがここは違った。
また止まって確認していないのでなんとも言えないが辺りに生えている木々の植性も
微妙に違っている様だった。
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116 :本当にあった怖い名無し[sage]:2011/07/19(火) 22:13:02.40 ID:BbnkMxRy0
102です

今まであったのは常緑の針葉樹だったのに比べてこの林道に入った途端に落葉種
の広葉樹に変化していたからだ。路面に落ちている落葉も先ほどのメインルートと比較すると
広葉になっており、少しきついコーナーになると葉っぱに乗るのかリアタイアが滑る様な挙動
を感じる。後で話し合ったところ、不思議な事に3人が3人ともこの林道に入った時に少し
違和感を感じていたらしい。少なからず感じる違和感の中を慎重に走っていたこの時に、
俺たち3人にアクシデントが2つ発生した。
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117 :本当にあった怖い名無し[sage]:2011/07/19(火) 22:20:16.05 ID:BbnkMxRy0
102です

先頭を走っていたTが何でもない右コーナーの入り口で転倒をしたのだ。
3人の中で一番ライディングテクニックに秀でているTが転倒するのは非常に珍しい事だった。
常に先頭を走るTはレースではなく後ろに仲間がいるツーリングの時は絶対に無理はしない、
後続を巻き込む様な転倒を先頭のライダーは起こしてはいけないと常々言っていたそのTが
平凡なコーナーに差し掛かった途端に転倒したのだ。

これは珍しいアクシデントだが、ここで後続していたAにもアクシデントが発生した。
ヘッドライトが突然消えたのだ。舗装路を走るマシンにはあまり起こらないが未舗装
のダートを走るオフロードマシンは振動が激しいため、時々ヘッドライトの線が切れたり
ソケットの接触不良が起きてライトが消える事がある。
転倒とヘッドライト消滅・この2つがほぼ同時に発生したのだ。
∧∧山にまつわる怖い・不思議な話Part56∧∧
118 :本当にあった怖い名無し[sage]:2011/07/19(火) 22:23:37.57 ID:BbnkMxRy0
102です

先頭を走っていたTは「何が起きたのか全く判らなかった、絶対に枯葉に乗ってコケたんじゃない。
まるでオイル面に乗った様にというか…とにかく何の衝撃もなくやられた、
気が付いた時は転倒アングルでもう立て直す事は諦めたよ。
綺麗にこける事ができただけでもラッキーだ。旅先で怪我しちゃったら面倒だからな。
それにしても…」と納得できかねる表情で転倒したバイクを起こした。

ヘッドライトと左右のバックミラーが割れており、バックミラーステーが
あらぬ方向を向いている他はバイクにもライダーにも大きなダメージが無かったのは
Tの言うように不幸中の幸いではあった。
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119 :本当にあった怖い名無し[sage]:2011/07/19(火) 22:26:07.91 ID:BbnkMxRy0
102です

リアタイアが滑る事はオフロードを走っている時はよくあるのだが、
ライダーに怪我は無いのにヘッドライトと両側のバックミラーまで割れるというのは
レアな現象だと言えた。それにヘッドライトが割れたのは以降の夜間自走をかなり
制限される事を意味していた。
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120 :本当にあった怖い名無し[sage]:2011/07/19(火) 22:28:20.12 ID:BbnkMxRy0
102です

そして後続のAはというとヘッドライトが消えて突然前が真っ暗になった事から
最初は自分が転倒したのかと思ったらしい。

ハンドルに衝撃を感じてTが消えたのがほぼ同時だったからだ。
何とかパニックブレーキでフロントタイアがロックする寸前で停車に成功したので
もらいゴケをせずに済んだと笑って話していたが、消えたヘッドライトを懐中電灯で
確認したAの表情はにわかに硬くなった。
Tが巻き上げた飛び石でヘッドライトが割れたと思っていたAだったが、ヘッドライトの
カバー自体には異常がないのに中の電球だけが粉々に砕けていたからだ。

走行中の振動でソケットが緩み、電球が中で踊ったために割れたのだろうとAは結論づけたが、
これまた不可解なアクシデントに首を捻っていた。
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121 :本当にあった怖い名無し[sage]:2011/07/19(火) 22:32:33.15 ID:BbnkMxRy0
102です

3台中2台のバイクのヘッドライトが切れた状態でこのまま走るのはさらに
危険が増すため俺たちはここら辺でテントを設営できる場所を探して
そこに泊まろうという事になった。

この場合で一番戦闘能力が高いのはTだがヘッドライトが壊れていて自走できないし、
俺のバイクを貸しても良かったが転倒したばかりで無理はさせられない。

同様にAのバイクもヘッドライトが点かないため自走はできない。
よって斥候は必然的に一番未熟な俺が行く事になった。
腕に自信がないためもうすっかり暗くなった夕闇の単独林道走行に不安を
感じずにはいられない。それにこの林道はただでさえ違和感を感じているのも
その不安に拍車をかけていた。
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122 :本当にあった怖い名無し[sage]:2011/07/19(火) 22:41:35.75 ID:BbnkMxRy0
102です。

突然植性の違うエリアというだけでなく、何とも表現できない違和感。
沢の音は林道の入り口と比べるとやや大きくなった印象を受けるが
まだ滝は姿を見せない。

相変わらず辺りは妙に霞むような雰囲気…そんな中俺は一人テントを設営できる
スペースを求めて荷物を二人に預けてバイクで走り出した。

この後俺はこの二人とはまた違う現象に見舞われる事となる。

連投ですみません。
もう少し続けてもよいですか。





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127 :本当にあった怖い名無し[sage]:2011/07/19(火) 22:46:30.84 ID:BbnkMxRy0
102です

都合の良い場所に出る事ができたら良いのだが、あまり遠くなる様なら諦めて
戻り、転倒現場で気分が悪いがテントを張ろうと思って出発したが、コーナーを
3つ4つ曲がったところで突然周囲の山肌が迫ってきたかと思うと林道はそこで
途絶えており、木々が開けた広場の様な場所に出る事ができた。

当初の予想通り林道は突き当たりで袋小路になっているが、そのドンつきが
5メートル程の落差がある小さな滝になっており、小さな滝つぼといったら大げさだが
水溜りのようになっている所がある。

その滝つぼの脇に過去は鮮やかな朱色で彩られていたのであろう小さな祠のような
木製の建立物があり、滝つぼを放射状に囲む様に周囲が約15メートルほどの広場が
広がっていた。
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128 :本当にあった怖い名無し[sage]:2011/07/19(火) 22:48:16.17 ID:BbnkMxRy0
102です

水辺だというのに周囲の広場は固く締まった土と草で覆われている事もあり、
そこはまるで昔話に出てくる様な奇跡のような場所だった。

流れ出た水は小さな短い沢を作り、林道の脇に流れ落ちているがその先の水面
は見えない。
ひょっとすると岩の間に流れ込み伏水流となってメインの林道の辺りまで
流れているのではと想像もできた。
こんなにすばらしい場所が開けているのになぜ地図に載っていなかったのだろうと
疑問に思ったりもしたが、おそらくは地図の読み間違いだろうとそのときは納得した。


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129 :本当にあった怖い名無し[sage]:2011/07/19(火) 22:50:09.33 ID:BbnkMxRy0
102です

ヘルメット越しに名前もわからない秋の虫たちが短い生を盛大に謳歌している。
格好のテント設営地が見つかった事で俺は気分がよくなり、さらに
木々の植性の違いもこの水流が関係しているのではないかと思えてきた事もあって、
先ほどから感じる違和感や不安もやや和らいでいだ。

これは早速戻って二人に教えてやらねばと思い、広場の出口である今来た林道の
方向に車体を方向転換してアクセルを開けようとした。

ヘッドライトが映し出した周囲から切り取られた景色の中、来たときには
気づかなかったが鮮やかな朱色に塗り上げられた鳥居が居立しているのに
初めて気がついた。
あれっ、あんなものがあったっけな?と思ったその時だった。

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130 :本当にあった怖い名無し[sage]:2011/07/19(火) 22:53:33.34 ID:BbnkMxRy0
102です

規則的にアイドリングしていたバイクのエンジンが突然不規則になったかと思った
次の瞬間に止まってしまったのだ。
一瞬何が起きたのかが判らず思考停止状態になってしまった。
そして猛烈な不安感に襲われた。

周囲は月明かりもなく真っ暗。
聞こえるのは滝を流れ落ちる水の音と虫の声そしてヘルメットの中で妙に大きく
聞こえる自分の呼吸音だけ。
エンストしただけならばヘッドライトは点燈したままになるはずなのだが、
この時は違った。ヘッドライトはおろか計器類のバックライトもことごとく
消えてしまっていた。

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131 :本当にあった怖い名無し[sage]:2011/07/19(火) 22:56:28.27 ID:BbnkMxRy0
102です

周りが真っ暗になった怖さと自分の呼吸音の大きさでパニックになりそうだったが
現実的な思考にフォーカスをあてて必死に原因を考える事で何とかパニックを
回避する事に集中した。
全てブラックアウトしたことから最初はイグニッションキーを間違えてOFFに
回してしまったのかと思ったがキーはONになったまま動いていない。

次に考えられる事はガス欠だが、たとえ未舗装の林道はアスファルトと比べて
燃費は落ちるとはいえ走行距離からガス欠は少々考えづらい。
車体サイドにあるガソリンコックがブーツに当たって閉じられる事も考えられたが
コックは通常の位置でOFFにはなっていない。

突然エンジンが停止してヘッドライトを含む計器類のバックライトまでもが
消えた事からしてあと考えられることはヒューズなどの電装トラブルだが、
沢渡りや雨などで車体が濡れた訳でもない事から電装トラブルも可能性は低い。

∧∧山にまつわる怖い・不思議な話Part56∧∧
132 :本当にあった怖い名無し[sage]:2011/07/19(火) 23:03:26.87 ID:BbnkMxRy0
102です

全ての可能性を頭の中でシュミレートしてみた結果は原因不明…
ここでまた先ほどからの違和感が再び襲い掛かってきた。
ここは何かがおかしい!

この時視界を制限して呼吸音を強調させるヘルメットがとてもわずらわしく
感じた俺はヘルメットを脱ぎ、バイクから降りて打開策を考えようとした。
バイク用グローブを外すのももどかしくあご紐を外し、やっとの事で
ヘルメットを脱ぎ、バックミラーにヘルメットを掛けようとしたとき、
先ほどまでヘルメットをかぶっていた時でさえ聞こえていた滝の音がすっと
遠ざかり、それに呼応するかの様に秋の虫の声も急速に途絶えていった。

何か濃密な空間が突然バイクの周りに発生したような…それとも逆に俺が
入り込んでしまったかの様な感覚。聞こえるのは自分の呼吸音のみになった…

夕闇の中、突然訪れた息苦しいほどの静寂。
この時間は一瞬だったのかもう少し時間が経ったかは判らない。
とにかく心が押しつぶされそうになったその時、
それが起きた…

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133 :本当にあった怖い名無し[sage]:2011/07/19(火) 23:06:08.97 ID:BbnkMxRy0
102です

ギシッ…

突然背中の産毛が総毛立ち、バイクのリアサスペンションが大きく沈んだ。
まるで誰かが後ろに跨ったか乗ったかの様にバイクがリア側に傾いだのだ。

人智を超えた何かが俺の背後で起きていると本能が直感した。ハンドルで
車体を支えないと横に倒れてしまいそうになる。

しかし、もう恐怖で動けなかった。
背中の鳥肌が全身に回る。何かの呪縛にあったかの様にヘルメットを
掛けようとした姿勢から体を動かす事ができない。いや、振り向いた途端に
何かの均衡が壊れてしまいそうな恐怖に身がすくんでしまっていたのかもしれない。
ただできる事といえば必死に両脚で車体を支えるのみ。

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134 :本当にあった怖い名無し[sage]:2011/07/19(火) 23:08:24.83 ID:BbnkMxRy0
102です

背中は相変わらず総毛立ち、悪寒すら覚えるのに額からは脂汗が滝のように
落ちてくる。
車体は依然としてリアに重量物を積んだように傾いでいる。
その時本能的に、いや意図的に視線を外していたが…

耐えられなくなり、俺はヘルメットを掛けようとしていた
右のバックミラーの中を…後ろを見てしまった…

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135 :本当にあった怖い名無し[sage]:2011/07/19(火) 23:10:35.30 ID:BbnkMxRy0
口腔内で短く発せられた悲鳴。
意思とは裏腹に凝視してしまう。
黒く切り取られた空間。
鏡に映った左右逆の世界。
そこに映し出されていたのは
無数の鬼火だった。

幽玄に漂う大小無数の鬼火がバックミラーに映る視界一杯に浮かんでいた。
普通なら真っ暗闇で見えるはずはない、しかし鏡に映し出された空間には
滝つぼを中心としてその側にある祠が先ほどとは違い鮮やかな朱色で
はっきり映し出されていた。
そこは暗闇のなかを鬼火が照らし出した先ほど見た広場だった。

∧∧山にまつわる怖い・不思議な話Part56∧∧
136 :本当にあった怖い名無し[sage]:2011/07/19(火) 23:15:15.85 ID:BbnkMxRy0
まさに息を呑む情景に心を奪われた俺は完全に自失していた。
そして息苦しいほどの静寂に支配されていたこの空間に…
さっきまで途絶えていた虫の声に代わりにいつの間にか聞こえてきたのは
静かな鈴の音色だった。

遠くから近くから距離感が曖昧になっているが確かに鈴の音が聞こえる。
それにかぶさる様に性別は判らないが低く一定の音程で祝詞のような声も聞こえている。

言葉の意味はわからないが不思議と聞いている者の魂をひきつける様な
一種の波動のような物を感じる声だった。それが空間から耳へ、大地から両脚へ
直接伝わってくるような感覚だった。厳かな、そして秘めやかな祝詞に耳を傾けていると
段々と言葉の意味が直接頭の中に響いてきた。

断片的だが俺が聞き取れた内容はこうだった。

∧∧山にまつわる怖い・不思議な話Part56∧∧
137 :本当にあった怖い名無し[sage]:2011/07/19(火) 23:18:42.73 ID:BbnkMxRy0
「彼(か)の地を乱すな…彼の地を清めよ…彼の地を鎮めよ…」
後は鈴の音が響いてよく聞き取れなかったが祝詞の内容から
この地に祭られている何かを鎮めるための鎮魂の唱の様に感じた。

それは決して不快な音色ではなく、深く体に心に染む込む様な
音色だったとうっすらとではあるがではあるが記憶している。

∧∧山にまつわる怖い・不思議な話Part56∧∧
141 :本当にあった怖い名無し[sage]:2011/07/19(火) 23:35:41.70 ID:BbnkMxRy0
102です。
連投での板汚し
すみませんでした。




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