- 【霊感持ちの】シリーズ物総合スレ17【友人・知人】
573 :Aの友人 ◆NBTf.k/kK8s5 [sage]:2011/06/10(金) 04:37:25.88 ID:er4H0hUP0 - おはようございます、朝の投下します 四円の人いつもありがとう
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574 :Aの友人 ◆NBTf.k/kK8s5 [sage]:2011/06/10(金) 04:38:44.99 ID:er4H0hUP0 - 休日の繁華街は多くの人で賑わって、通り過ぎる人たちは
みんな楽しそうに見えた。C子のマンションは、 そんな人ごみをかき分けて走って行った先にある。 C子の部屋の玄関チャイムを押しながら俺は叫んだ。 「C子、俺だ。開けてくれ」 ガチャリと鍵を開ける音がして、 ドアを開けて俺を迎えたのは、金髪に近い髪をまとめた、 挑戦的な瞳と、突き出した唇の派手な女。ピンク色のプーマのジャージ上下を着ていた。 C子の姉だった。 「入りなよ」 C子の姉は突き刺さるような長い睫毛の目で俺を一瞥すると、 あごをしゃくって、つっけんどんに言った。 「ビールでいい?」 冷蔵庫から缶ビールを取り出し、C子の姉は足で冷蔵庫を閉めた。 「いいです、C子はどこですか」 C子の姉は、とりあえず床に座っていた俺の前に自分も腰を下ろし、 あぐらをかいた。足にはC子と同じ色のペディキュアが塗ってあった。 そして俺の目の前にも缶ビールを乱暴に置いた。 「C子なら今日は実家に帰ってるよ」 姉はそう言うとプルタブを開け、ズルズルとビールをすすった。
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575 :Aの友人 ◆NBTf.k/kK8s5 [sage]:2011/06/10(金) 04:42:09.72 ID:er4H0hUP0 - 「…そう、ですか。じゃあ俺はこれで」
「待ちなよ。C子がなんかやったんでしょ。C子のことは、私が謝るよ」 ビールの缶から口を離さず、ちっとも悪びれない様子でC子の姉は言った。 バサバサと音がしそうな太く長い睫毛を瞬きさせる。 「ねえ、待ってよ。C子は、オニーサンのこと、すごく好きだよ。 ただ、あの子はかわいそうな子なの。 C子が妊娠と中絶を繰り返したのは、あたしのためなの。 そしてC子がおかしくなったのは、あたしのせい」 「…どういうことですか」 立ち上がろうとしていた俺を、姉は手をヒラヒラ上下に振って座れと制した。 俺は再び腰を下ろした。 「もうない」呟くと、C子の姉は空になったビール缶を脇に置き あぐらをかいたままユラユラ体を揺らして、それから自分の腹を両手で押さえて言った。 「すっごくちっちゃいときにね、激しい姉妹けんかをしてさ。 C子が私のお腹を思い切り蹴ったの。 蹴ったっていうか、テーブルかなにかに上って、寝ていたあたしのお腹に落ちたんだよね。 子供の体重でも、打ち所が悪かったみたいで。あたしは病院行き。 あたしの体はもう、命を作ることができなくなった」 姉は、俺の目の前にあるビールを体を伸ばして取ると、 タブを開けて喉を鳴らして飲んだ。喉が上下に動いた。ぷはー、と息をついて続けた。
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576 :Aの友人 ◆NBTf.k/kK8s5 [sage]:2011/06/10(金) 04:46:33.97 ID:er4H0hUP0 - 「C子が高校に入った頃、すごくいい彼氏が出来たってはしゃいでてさ。
あたしはそんとき、むしゃくしゃしちゃって。こうやってC子は幸せになるんだなって C子に夢見る前に夢を奪われたあたしはどうなるの?って思ったら、悔しくて。 したらね、はしゃいでるC子に、お姉ちゃんもうすぐ誕生日だね。何が欲しい?って聞かれたの。 あたしは、子供を作りたいって答えた。」 C子は元々、真面目過ぎる程に真面目な女の子だった。幼心に、自分が姉にしたことを よく覚えていたから、誰に対してもびくついていたが、優しい子に育った。 だが姉の一言がきっかけでC子の精神はおかしくなっていった。 C子は「子供を姉にプレゼントしたい」という一心で、手当たり次第に出会った男性と寝た。
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577 :Aの友人 ◆NBTf.k/kK8s5 [sage]:2011/06/10(金) 04:49:24.10 ID:er4H0hUP0 - 当時の恋人ーーEは、C子の誘いには乗らず、C子を何度も説得した。
C子の妊娠がわかったとき、2人の交際を知っていた母親はEを疑った。 「E君に無理矢理レイプされた」とC子は母に言った。それが担任の耳に入ったとき、 偶然、上級生の男子生徒がラブホテル街でケンカをして補導された。 そのとき一緒にいたのはC子だった。Eの疑いは晴れたが、C子とEは別れ、 C子はますます自分を傷つけるかのように、男の欲望の前に体を投げ出した。 母親はC子を部屋に閉じ込めたが、 姉はC子がすることをわかっていながら、C子の部屋の鍵を開けた。 C子が妊娠するたび、母親が堕ろしたくないと泣き叫ぶC子の腕を掴んで 病院へ引きずって行った。 「C子は真面目ないい子。私のC子はいい子」 姉が最後に見たC子の母親は、繰り返しそう呟いていたそうだ。 母親はC子が高2の秋に首を吊って自殺した。 そして、度重なる中絶で、C子のまだ未成熟だった体には大きな負担がかかっていた。
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578 :Aの友人 ◆NBTf.k/kK8s5 [sage]:2011/06/10(金) 04:50:54.77 ID:er4H0hUP0 - C子には生理が来なくなった。大学に入ってからも、月のものはなかった。
そんなある日、トイレに入っていたC子が、「お姉ちゃん!」と叫びバタバタと出てきて 姉に、血液の付着した下着を、目を輝かせて広げて見せた。 「私、また赤ちゃん産める体になったみたい!俺君と出会ったからだと思うの!」 俺と付き合うようになってから、C子は姉にこう言っていたそうだ。 「こんなにだめな私なのに、俺君はすごく大事にしてくれるの。 エッチも全然迫ってこないし。私、E君のことがあってから、 真剣に私を好きになってくれる人って、もう現れないと思ってたの。 だから俺君と出会えて、すごく嬉しい。絶対嫌われたくない。絶対。 絶対。絶対。絶対。絶対」 「俺には、重いです」 ここまで聞いての正直な気持ちを言って俺は姉に頭を下げた。
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579 :Aの友人 ◆NBTf.k/kK8s5 [sage]:2011/06/10(金) 04:55:02.48 ID:er4H0hUP0 - 姉は、そうだよね、と寂しそうに笑った。俺は「すみません」と繰り返した。
何がすまないのか、よくわかっていなかったが頭を下げた。 C子を助けられなくてすみません、C子を手放してすみません、だろうか。 俺はC子のマンションを後にした。もう2度と訪れることもないだろう。 繁華街を、何度も人にぶつかりそうになりながら フラフラとした足取りでようやく抜けて、駅に向かった。 たぶん、全部、嫌な夢だったんだ。C子はおかしい。異常だ。そう思った。 アパートに着いて携帯を見ると、母親からの着信で埋め尽くされていた。 折り返してみると、1コールですぐ母が出た。 母は病院を飛び出した俺をさんざん叱ったが、すぐに帰って来いと言った。 「うん、教科書とか必要なものだけとりあえず持って、電車もまだ間に合うし、 家に帰るよ。引っ越しは…大家さんもそれがいいって?そっか。じゃあまたあとで」 母親との電話を切り、俺は荷物をまとめてアパートを出た。 アパートの影から、誰かに見られているような気配がしたが、 俺にはもう振り返る元気もなかった、
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580 :Aの友人 ◆NBTf.k/kK8s5 [sage]:2011/06/10(金) 04:58:26.87 ID:er4H0hUP0 - それから数日は平穏だった。
アパートは引き払うことに母が決めて、 出張中の父が戻ってきたら、父の車を使って まとめて引っ越ししようという話になった。 バイトは、遠くなるからやめるという連絡をした。 4月から1人で築いたものが、全部ほぐれて無くなっていく。 今までより2時間も家を早く出て、大学に行く生活が始まった。 講義を聞いて、また電車に乗って家へ帰る。それだけの生活。 サークルには何となく顔を出せないでいた。 C子の姿を大学で見かけることはなかった。 そんなある朝のことだった。ただでさえ友達の少ない俺の、 しばらく鳴っていなかった携帯のバイブが鳴った。 090で始まるが、知らない番号からだった。 「はい」 「俺君?C子だよ。今駅に向かって歩いてるところ。 37分発の電車に乗れそう。俺君は今日来るの?」
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581 :Aの友人 ◆NBTf.k/kK8s5 [sage]:2011/06/10(金) 05:04:46.13 ID:er4H0hUP0 - 俺は息を飲んだ。こめかみのあたりに、脂汗が滲んだ。
電話の向こうで、明るい声が不思議そうに俺の名を呼び続ける。 「俺君?俺君?俺君?」 俺は声を振り絞って言った。 「しばらく、電話とかやめてくれ。会いたくないんだ」 死刑執行のボタンを押すような気持ちで、通話終了のキーを押した。 いつもジーンズに入れている携帯を、バッグに放り込んだ。 その日も学校にC子は来ていなかった。 夜。俺は部屋で漫画を読んでいた。バッグの中から、ヴーヴーと くぐもった音が聞こえた。今度は別の知らない番号から電話がかかってきていた。 恐る恐る俺は携帯を耳に当てた。 「俺君、あたし。C子の姉なんだけど。今日ね、C子が自殺未遂したの。 今は家に戻ってきてるから、会ってくれない?お願い」
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582 :Aの友人 ◆NBTf.k/kK8s5 [sage]:2011/06/10(金) 05:07:22.09 ID:er4H0hUP0 - 「入って」
数日ぶりに見るC子の姉は、いつものように派手な化粧をしていたが 前会ったときより心なしか少しやつれて見えた。 姉は電気を消してある奥の部屋のドアをうすく開き、 唇に人差し指を当てながら声を落として言った。 「C子、さっき寝ついたとこなんだ。ずっと俺君の名前を呼んで暴れてて…。 わざわざ来てもらったのに、悪いね」 「…いえ、いいんです」 お茶を入れてくれるというので、俺は素直にダイニングテーブルの椅子に座った。 緑茶の入った、ベージュとピンクの水玉のマグカップが置かれた。 これはたぶんC子の物だ。 姉が時計を見て、立ち上がった。 「腹へってない?コンビニで夜食買ってきたんだ。 せっかくここまで来てもらったし、ごちそうするよ」 買い置きのコンビニ飯にごちそうも何もないだろうと思ったが、 急いで来たせいで腹も少し減っていたので、俺は「食べます」と言った。
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583 :Aの友人 ◆NBTf.k/kK8s5 [sage]:2011/06/10(金) 05:08:48.74 ID:er4H0hUP0 - 姉は冷蔵庫から、セブンの冷やしラーメンととろろ蕎麦を出して
テーブルに置いた。そして俺の前にとろろ蕎麦をずいと押して言った。 「俺君、とろろ蕎麦大好きだもんね」 俺は立ち上がり、C子の姉の髪を掴んだ。不意を突かれた姉は 俺を振りほどこうと一瞬腕をばたつかせて藻掻いたが 髪を留めていたピンはあっけなく外れ、 金色の髪がばさりと床に落ち、広がった。 俺の目の前にいるのは、 顔の造作がわからなくなるくらいの派手な化粧をしているが まぎれもなく、C子だった。
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- 【霊感持ちの】シリーズ物総合スレ17【友人・知人】
584 :Aの友人 ◆NBTf.k/kK8s5 [sage]:2011/06/10(金) 05:10:20.21 ID:er4H0hUP0 - 「C子…なんでこんなことを」
呆気に取られる俺を、ギラギラとした化粧を施した目で睨みつけ、 C子はテーブルに置いてあったナプキン入れの陶器を 俺の頭めがけて思い切り振り下ろした。 変な白鳥と花の絵が書いてある、ババくさいデザインの陶器だ。 初めてC子の部屋に入ったときから、ババくさいと気になっていた。 そんなことを冷静に考えていたはずだったが、 フローリングの床に打ち付けられた頬に、摩擦の熱い痛みが走った。 俺の意識はそこでブラックアウトした。
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- 【霊感持ちの】シリーズ物総合スレ17【友人・知人】
585 :Aの友人 ◆NBTf.k/kK8s5 [sage]:2011/06/10(金) 05:11:54.38 ID:er4H0hUP0 - 区切りがいいので朝はここまでにします。
霊感持ちの友人Aを活躍させるところまで投下しないと テンプレどころか本当にスレチで終わってしまうので、 もう少しだけおつきあいください。
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- 【霊感持ちの】シリーズ物総合スレ17【友人・知人】
596 :Aの友人 ◆NBTf.k/kK8s5 [sage]:2011/06/10(金) 19:20:24.08 ID:er4H0hUP0 - 仮名をつけてもよかったけど
そうすると妙に小説みたくなっちゃう気がして、 書いてる自分も違和感あるのでイニシャルにしてます。 とりあえず他にも「なんかこの話、読みたくないな」って感じる人は トリNGに入れといてください。 「嫌だな、好みじゃないなって感じるものは、それがどんな理不尽だったり 単純な理由でも、お前にとってやっぱ良くないものだから、 自分の中に取り込まないようにしろ」って 俺が色々巻き込まれるたびに、友人Aが言ってた。
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- 【霊感持ちの】シリーズ物総合スレ17【友人・知人】
597 :Aの友人 ◆NBTf.k/kK8s5 [sage]:2011/06/10(金) 19:21:40.27 ID:er4H0hUP0 - それに、自分の書き込みをざっと流し読みながら帰ってきたんだけど
(確かに細切れててよみづらいのに読んでくれてる人ありがとう) 体験をはしょらず細かく細かく思い出しながらゆっくり書くことで、 Aが抑えてくれた「C子の念」というものが、俺を通して、 また違う形で生まれ直して、この場所から滲み出てる気がする。 ネットってのはそれが不特定多数の人に簡単に拡散できちゃうから怖いね。 体験談をネットで発表したって言ったらAはめちゃくちゃ怒ると思う。 俺もなんで今書こうと思ったんだろう?何かあるのかな。なんか寒気してきた。 馴れ合いどころか、ある意味無差別テロみたいなものだよな。 今すぐ出かけなきゃいけないんで、夜のぶんは11時くらいに まとめて投下になりそうです。取り急ぎ。ではまたのちほど。
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- 【霊感持ちの】シリーズ物総合スレ17【友人・知人】
599 :Aの友人 ◆NBTf.k/kK8s5 [sage]:2011/06/10(金) 19:34:59.28 ID:er4H0hUP0 - 昨日の晩あたりから本当にちょっとおかしいんだ。
後日っていうか今リアルタイムで感じてる話。 感応しやすい人が何も無きゃいいんだけど。では家を出ますノシ
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- 【霊感持ちの】シリーズ物総合スレ17【友人・知人】
630 :Aの友人 ◆NBTf.k/kK8s5 [sage]:2011/06/10(金) 23:11:33.22 ID:er4H0hUP0 - 夜のぶん投下します。
今夜は応援が来てくれたから実況スレには行かなくて済むかも。 さっきビビって変なこと書いて、すいません。
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- 【霊感持ちの】シリーズ物総合スレ17【友人・知人】
631 :Aの友人 ◆NBTf.k/kK8s5 [sage]:2011/06/10(金) 23:13:00.63 ID:er4H0hUP0 - 気がつくと俺は床にあおむけで寝ていた。
「…っ」 体を起こそうとした途端、前頭部がズキズキと痛んだ。 触ってみると、額の生え際のあたりが腫れてタンコブになっている。 意識を失う前の直前の記憶。C子に殴られた瞬間を鮮明に思い出した。 幸い出血は無かったようだが、頭なんて殴られたら 命が危ない場所だ。ドラマなんかでも灰皿を凶器にして 殺人をしたりしているのだから本当に生きててよかった。そう思うと同時に、 何の躊躇もなく鈍器を俺の頭に振り下ろしたC子を 恐ろしく思った。実際にC子は俺を殺してもいいと思っているんだろう。 C子は頭がおかしい。ぞわりと、床につけたままの背中の肌が泡立った。 俺はまだC子の部屋にいるようだった。逃げよう。頭が痛むが、体を起こした。 「俺君おはよう」 俺の背後にあったダイニングチェアーに、 先ほどの金髪のカツラを落としたときの格好のままでC子が座っていた。 椅子から伸ばした足をぶらぶらとさせ、カップアイスを手に持ち 木製のスプーンを舐めながら俺を見下ろしていた。 カツラが無い以外は化粧もジャージも「C子の姉」のままだが、 その声も表情もC子でしかなかった。これならカツラを被っていても、 俺だってすぐC子の姉の正体を見破ることが出来たはずだ。
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- 【霊感持ちの】シリーズ物総合スレ17【友人・知人】
633 :Aの友人 ◆NBTf.k/kK8s5 [sage]:2011/06/10(金) 23:15:16.62 ID:er4H0hUP0 - 「C子」
「えへー、まだ夜だよぉ」 俺を遮るようにC子が言った。 「…C子、マジで頭が痛いんだ。病院に行っていいか」 「……」C子はスプーンをまた口にくわえた。 「わかった、自分で救急車を呼ぶ…」 俺は体をねじり、尻ポケットにあるはずの携帯に手を伸ばした。 しかしポケットには何もなかった。 「かわいそぅ」 C子が俺の傍らへしゃがみこみ、 持っていたアイスを俺の額につけた。鈍い痛みが脳に走る。 俺はC子を払いのけて、勢い良く立ち上がった。C子の手からはアイスが飛び、 C子の体がごろんと壁にぶつかった。頭がくらくらとして、少し吐き気がしたが、 C子が壁際に転がっているのを確認して、とにかく一刻も早く部屋を出ることにした。 勢い良く立ったせいか、怪我のせいか目が回ってしまったので、 壁に手をつきながら、玄関へノロノロと向かった。 するとC子が俺の背後から叫んだ。 「俺君、待って。助けて。おねがい」 振り向くと、顔を歪ませてマスカラが溶けて黒い涙を流したC子が しゃくりあげながら、床を這いつくばっていた。
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- 【霊感持ちの】シリーズ物総合スレ17【友人・知人】
634 :Aの友人 ◆NBTf.k/kK8s5 [sage]:2011/06/10(金) 23:17:12.00 ID:er4H0hUP0 - 「俺君にひどいことしたのは私じゃないの。
俺君を好きなC子は、今ここにいるC子だよ。私を見て。助けて俺君」 当時は「メンヘラ」っていう言葉もメジャーではなかった気がするので 俺はC子は二重人格なのではないかと思った。だが、俺はC子から目をそらし 鎖型のドアチェーンに手をかけ、外に出ようとした。 「俺くぅううん!!」 ガッ!と両足を掴まれた。 俺の右足に、真っ黒い涙を流したC子がへばりついて、両手で抱え込んでいる。 …両足? 俺は左足を見た。 うっ血した斑点だらけの皮膚をした、頭のでかい赤ん坊のような… 四つ足の何かが俺の足を掴んでいた。そしてゆっくりその顔をあげようとした。 「ひっ」
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- 【霊感持ちの】シリーズ物総合スレ17【友人・知人】
635 :Aの友人 ◆NBTf.k/kK8s5 [sage]:2011/06/10(金) 23:19:13.14 ID:er4H0hUP0 - 俺は目をそらして、ドアに向き直った。そして目を何度も何度もしばたかせた。
見間違いだと思ったのだ。 だって俺は起きてるし、これは現実だし、こんなもの見たことがないし。 玄関はサーモンピンクのペンキが塗られた鉄製のドアで、靴箱の上には消臭剤が置いてあって そこにはプラスチックの靴べらがかけてあって、茶色の玄関タイル、女性ものの靴が並んでる。 鎖のチェーン。1回下までさげて外すやつ。普通の光景じゃないか。全然普通じゃないか。 手がガタガタ震えだした。俺はドアチェーンの小さな金具を持ち、下へさげようとした。 その腕をC子が掴んだ。 「俺君、私じゃないの。私を助けて」 C子の顔がすぐ隣に迫っていた。溶けた化粧でドロドロに汚れた無表情のC子の顔は、 左目のつけまつげが斜めになって、眼球に入り込んでいたが瞬きもせず俺を見ていた。 ぐぐっ。俺のTシャツが左下へ引っ張られて伸びた。 肉付きのよい、小さな丸い拳が俺のTシャツを握っていた。 そしてその手は、俺の脇腹を痛いくらいの力で掴んで、ゆっくり這い上がってくる。
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637 :Aの友人 ◆NBTf.k/kK8s5 [sage]:2011/06/10(金) 23:20:31.45 ID:er4H0hUP0 - 俺はとうとうそいつの顔を見てしまった。
ぶよぶよとした肉づきのいい顔の真ん中に、黒くて、乾いた穴がぽっかりと開いていた。 あたしを産んで C子の声なのか、誰の声なのかわからないが頭にその言葉が響いた。 「あっ、あ、あ」俺は泣いていた。膝の関節が震えのせいで、何度もずれて、 俺の体はカクカクと上下に動いていた。
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639 :Aの友人 ◆NBTf.k/kK8s5 [sage]:2011/06/10(金) 23:25:46.24 ID:er4H0hUP0 - そいつの顔に開いた大きな穴から、
どす黒くて、とろりとした血が糸を引きながら溢れ始めた。 粘性のある血は俺のジーンズの布を滑り、じっとりと染み込んで行く。 俺の脇腹を掴む小さな手は、どんどんどんどん、力を込めていき、 腹の肉がちぎられるんじゃないかと思うくらいの痛みが余計に俺を焦らせた。 「た、助けて。たすけて」 俺は震えながらも鉄の冷たいドアに必死でへばりつき、 C子に掴まれた腕を必死で伸ばしてやっとの思いでチェーンを外した。 ドアの鍵を開け、倒れ込むようにして外に飛び出した。 腰が抜けて立てなかったので四つん這いになって、廊下をひたすら、エレベーターのほうへ進んだ。 「あああ、あああ、あああ」 誰かに気付いてほしくてなのか、頭が混乱しているせいなのか、とにかく俺は呻きながら 必死に手を動かして、ほふく前進のようにして重い体を引き摺った。 ジーンズの尻ポケットで、携帯のバイブが鳴った。そうだ!携帯があったんだ。
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650 :Aの友人 ◆NBTf.k/kK8s5 [sage]:2011/06/10(金) 23:38:25.56 ID:er4H0hUP0 - 俺は携帯を取り出して、通話相手も確認せず耳にあてた。
「おーい、いま大丈夫?」 聞こえて来たのは、Aの声だった。 「A、助けてくれ、A!!」俺は叫んだ。 「うん、やっぱり大丈夫じゃないよなあ。お前今どこにいるんだ」 「○○にある、C子のマンション… C子っていうのは、俺の彼女で…おかしいんだ。殺される」 「よぉし、落ち着け」 「A、助けてくれ、たすけて」 俺はしゃくりあげて過呼吸になりつつも、友達の名前を繰り返した。 涙で携帯がびしょぬれになり、熱を持った液晶画面で火傷しそうな程だった。 だがAは落ち着いた声で、俺を諭すようにのんびり言った。 「いいかぁー、これは現実じゃない。現実じゃないんだ」
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- 【霊感持ちの】シリーズ物総合スレ17【友人・知人】
653 :Aの友人 ◆NBTf.k/kK8s5 [sage]:2011/06/10(金) 23:40:08.00 ID:er4H0hUP0 - …は?
「…なんだよ、だったらいいって俺だって思ってるよ! でも実際、死にかけてるんだ!!」 頭にカッと血が上って俺は叫んだ。Aは俺が何か冗談を言っていると勘違いしたんだ。 今這いつくばっている廊下のコンクリートの冷たさや、たまに腕に当たる小石の痛み、 C子の部屋の恐ろしい化け物。信じたくないけど、全部現実だ。 「わかったよ。今行くから、ちょっと待ってろ」 「A!おい…」 Aは通話を切った。俺は携帯をまたポケットに突っ込み、 這いずってエレベーターの前に辿り着いた。 エレベーターは来ていない。必死で体を伸ばして、ボタンを押した。 ウィーン、とエレベーターが動き出す機械音がした。 助かるんだ。そう思った。
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656 :Aの友人 ◆NBTf.k/kK8s5 [sage]:2011/06/10(金) 23:41:28.18 ID:er4H0hUP0 - 途中でさるになってしまった。>>638ごめんよ。
2分以内に再投稿するとひっかかるのかな。 切りのいいとこで終わります。 支援ありがとう。友達が泊まりに来てるので 明日は朝来れるかわからないけど、 どちらにせよ明日で全部完結しますんで もうしばらくおつきあい願います。
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