- 【霊感持ちの】シリーズ物総合スレ13【友人・知人】
359 :本当にあった怖い名無し[sage]:2010/07/06(火) 12:20:32 ID:pTDlpO3C0 - 突然だが俺は寒いのが苦手だ。
冷えたアパートに帰った時などうんざりしてしまう。 そんな俺に電話がかかってきた。 「もしもし、私メリーさん。今、あなたの後ろに居るの」 嘆息。すぐ後ろに人の気配がする。 「はーい伊三。今日は寒いからおでん持ってきたのよー」 金髪の美女が鍋を持ってニコニコしながら立っていた。 彼女の名は目理 メリー。俺のお袋である初代メリーさんだ。 「おふくろ……。だから来るなら前もって連絡しろって言ってあるだろ」 「連絡ならしたわよ。咲ちゃんに」 お袋がそういうと同時に、玄関からブザーの音が鳴る。 「せんぱーい! お邪魔しますねー」
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360 :本当にあった怖い名無し[sage]:2010/07/06(火) 12:20:37 ID:pTDlpO3C0 - ドアを開いて入ってきた咲は、口元に大きなマスクをはめている。
「外寒いし風邪も流行ってるからマスクつけてきちゃいました」 えへへ、と笑いながら真赤なコートを脱いでいく。 「……お前の部屋は俺の家の隣だろ! 何だその厚着!」 「いいじゃないですかー。それよりよかったー。私メリーさんのおでん好物なんですよ。 あ、コタツつけますねー」 勝手知ったる何とやらだ。ったく、ここは俺の部屋だっつーのに。 何だ。プライバシーもないのかちくしょう。 そう心の中で毒づいた俺は、再度なったブザーに腹を立てる。 「今度は誰だ!」 ずかずかと玄関に向かうと、赤と白の服に身を包んだ北欧人のジイサンが立っていた。 「えー、ここにメリーさんって女の子がいると聞いたんだが……」 「宛先間違いだ! 大体、あと18日程早い! 帰れ! でないとテメエのトナカイ道路交通法違反でしょっぴくぞ!」 俺の叫びに、いかんこりゃうっかりだった、いやはや失敬、と告げると、 男はアパートの階段をかんかんと降りていった。 「んもー、先輩ったら、サンタさんには優しくしなきゃだめですよ?」 「そうよー、プレゼントもらえないわよー」 「都市伝説がプレゼントを期待するな!」 俺は部屋の中の二人へ向かって叫んだ。 俺の名は目理伊三。今日は非番の妖怪刑事である。 なんにせよ、おふくろのおでんは美味かった。
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361 :本当にあった怖い名無し[sage]:2010/07/06(火) 12:22:09 ID:pTDlpO3C0 - >>347
メリーさんシリーズだから何の問題もないだろ 赤緑ばかり投下してるから赤緑専用スレと文句つけないくせに
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362 :本当にあった怖い名無し[sage]:2010/07/06(火) 12:22:13 ID:pTDlpO3C0 - 着信があったのは夜の11時過ぎだった。
由美は既に寝床に入っていた。枕元の携帯電話を手に取って開く。知らない固定電話の番号だ。 怪しく思いながらも、一つの予感が胸をかすめ、通話のボタンを押した。 「はい」 沈黙。細かな息遣いが伝わってくる。ややあってから声が聞こえた。 「わたしメリーさん。今ごみ捨て場にいるの」 それは女の子の声だった。呟くように小さく、尻すぼみだ。由美はその声を知っていた。 微かな予感が当たり、じわりと胸が締まるのを感じた。メリーさん――そしてそれはいきなりだったが、女の子がそんなことを言う理由には思い当たりがあった。 「宮田さんね」 由美は緊張を悟らせないように柔らかく呼び掛ける。続けて何かを言おうとしたが何を言えばいいのか分からなかった。 向こうの答えも返ってこない。由美は通話が切れてしまうことを恐れた。 「もしもし」 やはり返事はない。そして更に数秒待った後、突如として通話は切れた。 由美は一人取り残され、通話時間を表示するディスプレイを見つめた。 確かに彼女だった。由美はすぐに履歴からかけ直す。女の子がごみ捨て場と言ったことが怖かった。 不気味なのではなく、相手の身が心配なのだ。五回、六回、鳴っても出ない。 やがて、出られない状況だという旨の電子音が流れ、電話は切れた。それから二度かけたが結果は同じだった。 由美は着替え、外に出て車に乗り込む。満月の寒い夜だ。胸がざわついていた。 由美は「メリーさん」と呼ばれる都市伝説について知っている。彼女はどんな意味を込めて言ったのだろうか。エンジンの音が妙に落ち着いて聞こえ、歯がゆかった。
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363 :本当にあった怖い名無し[sage]:2010/07/06(火) 12:22:28 ID:pTDlpO3C0 - 春に大学を卒業した時、由美の胸にあったのは熱い理想だった。努力の甲斐あって4月から中学校の教員として働けることになっていた。
子どもたちの幸せに少しでも貢献できればいい。 もちろん伴に不安を持ち合わせてはいたが、それが由美の長年温め続けてきた希望の内容だった。 だが結局のところそれは幻想だったのだろうか。 勤め始めてから半年が過ぎ、由美は自身の甘さを痛感していた。初めの内は問題なく見えた。 専門は数学である。受け持った授業の中で騒ぐ生徒はいたが、それでも注意すればすぐに収まった。 ちょっかいを出してくる子はいたが、それも愛嬌のある可愛いものだった。変化は徐々に起きていった。 まず、注意してもすぐには騒ぎが収まらなくなった。 それから始業の時間が遅れるようになり、予定通りに単元を終わらせるのも難しくなった。 単元ごとに行うテストの結果は顕著に悪化した。それらは学年やクラスによって差はあったが、どこにも同じ傾向が見られたのだ。 これはやはり自分のやり方に問題があるのだ。由美は苦しかった。 梅雨の始まる時期に相談をした。 「それはあなたが若いからさ、きっと一緒に遊びたいのよ」 由美には恋人がいる。しかし彼には教師としての悩みは打ち明けるまいと決めていた。意地である。相談をしたのは職場の先輩だった。
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364 :本当にあった怖い名無し[sage]:2010/07/06(火) 12:22:43 ID:pTDlpO3C0 - 最も年齢の近い女の先輩は静江という名で、7つ違いである。専門は保健体育だ。
細身だが眉が力強い。授業中の声がとても大きく、男子生徒からメガホンというあだ名で呼ばれていた。 細かい勘定を嫌う豪快な性格で、由美が職場で頼りにしている人である。その先輩が日直の日に由美も一緒に残ったのだった。 「理想が高過ぎたんですかね。嘘に聞こえるかも知れないけど、わたしは子どもたちが幸せになってくれればいいと思っていました。 いえ、今だってそう思っています。だけど――」 由美はコーヒーカップを持つ手に力を入れた。静江のノートパソコンが低い唸り声を発している。 「わたし、中学の2年生までは数学って嫌いだったんです。 元々算数も苦手だったし、数学になってからはもっと難しくなったから。 でも3年生の時に素晴らしい先生に出会えて、その先生はもう五十を過ぎた男の先生だったんですけど、 すごく授業が分かりやすくて面白くて、それから好きになれたんです。わたしは彼らに何も教えてあげられない」 ふむ、と言って静江はコーヒーをすすった。 「まあ、何とも言えないわね。 第一あなたはまだ生まれたばっかりのオタマジャクシみたいなものだし、これからどうにだってできるじゃない」 「頭ではそう思うのですが」 「あなたね、笑ってくれちゃうかも知れないけど、わたしだって教師になりたての頃は悩んだのよ。 サボるやつはいるし、告白されたりはするしで」 由美は驚き、先輩の顔を見た。静江は笑っている。 「悪戯だったけどね。男の子の罰ゲームよ。しょうもない」 「何だか静江さんが話すと冗談みたいに聞こえます」由美は少し笑った。 「本当に悩んだのよ。下手すれば傷付けちゃうかもしれないから。 悪戯でよかったと思ったけど、まあ今だったら悩みもせず突っぱねちゃうだろうね。誰だって初めはそんなものよ。 むしろ人は理想について悩まなくなるに連れておばさんに近付いていくのよ。全く悩ましい」 由美は快活な静江の話を聞いていると、次第に元気が湧いてくるのを感じた。
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365 :本当にあった怖い名無し[sage]:2010/07/06(火) 12:23:00 ID:pTDlpO3C0 - それ以来、幾らか取り戻した熱意と新たに生まれた執念によって、由美は授業の遅れを取り戻していった。
そして定期テストまでには予定に追い付き、その結果もまずまずのものとなった。 生徒からは「分かりやすくなった」と言われることもあった。静江は「わたしのおかげね」と言って笑った。 由美は静江に感謝し、教師という立場が段々と身に着いてきているのを感じていた。 そして夏休みは無事に過ぎ、二学期になった。胸には一抹の不安があったが、由美は努めて明るく振る舞うことにした。 問題ない。授業は驚くほど楽に進み、軽い冗談だって言えるようになっていた。由美の胸は再び理想を温め始めた。 だが、問題は羽虫のように、思いがけない方向から突然にやってくることがある。 そしてその虫は時には長引く毒を持つ。先に言ってしまえば、それは生徒からの告白であった。 しかし静江の話していたものとは場合がまるで違ったのだった。
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366 :本当にあった怖い名無し[sage]:2010/07/06(火) 12:27:03 ID:pTDlpO3C0 - >>357
どこがだよww 数日に一回しか投下されないような過疎スレが生き返っただあ? とっとと専用ブログなりwikiなり作ってそこで信者ともども仲良く引きこもってろよ 数日に一度投下されるかされないかの過疎スレで雑談するわけでも考察するわけでもなく ただ乙とレスするだけのスレなんて要らない
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367 :本当にあった怖い名無し[sage]:2010/07/06(火) 12:27:31 ID:pTDlpO3C0 - だから俺がメリーさんシリーズ投下してやってんだ
ありがたく思えや
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368 :本当にあった怖い名無し[sage]:2010/07/06(火) 12:28:19 ID:pTDlpO3C0 - >>358
そこまであからさまにやっちゃったらまずいだろうにな 作家様の自演がないと悲惨だなこのスレ
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369 :本当にあった怖い名無し[sage]:2010/07/06(火) 12:28:33 ID:pTDlpO3C0 - 十月に入り空気は乾いた。
その日はいつにも増して素晴らしい晴天で、冷たい空気は清潔に匂い、青い空には洒落たアクセサリーのように弓形の月が浮かんでいた。 由美は駅から学校までの道を自転車で行くことにしている。 顔を上げその月を見ると、何だか妙に清々しい気持ちになり、ペダルを踏む足が軽くなった。 由美が行く道は途中に商店街を通る。 その規模は小さく、洋服店や書店や八百屋などが例の如く並んでいる。道は細いので自動車は入らない。 空を覆うアーケードの位置は低めで、よく晴れた日にもやや暗さがある。生徒の姿は少ない。 広い道を曲がり、陰に入った時である。その子はいた。 「おはようございます」 呟くように小さな声で挨拶をしたのは、声に似つかわしい小さな女の子であった。 シャッターの閉じている店の前に一人で立ち、由美の目をじっと見る。 着ている紺のブラウスは由美が勤める中学校の制服だ。手にはやはり準指定の黒い学生鞄を提げている。肩までの髪の毛は細く、幾分荒れが見られる。 頬がやせ、まだ他人を見る際の気遣い――遠慮や恥ずかしさなど――を覚えていないその顔は、中学生にしては随分と幼い。 由美は彼女のことをよく知っていた。 「おはよう」 由美は自転車を停めて明るい挨拶を返した。 「今日は早いのね。待ち合わせ?」 女の子はやはり小さな声で「ちがう」と言った。そして下を向き、靴で地面を軽く擦ると、再び顔を上げた。 「わたし好きです。先生のこと。付き合ってください」 唐突だった。由美は一瞬言葉の意味が掴めず「え?」と聞き返した。女の子は見つめ、返事を待っている。 由美は混乱し、冷たい膜のようなものが胸に被さるのを感じた。 頭には静江の話がちらりと思い浮かんだが、由美はその生徒がそんな冗談を言わないことはよく分かっていた。 今しなければならないのは、その子を傷付けないような返事だった。由美はゆっくりと丁寧に言う。
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370 :本当にあった怖い名無し[sage]:2010/07/06(火) 12:28:44 ID:pTDlpO3C0 - 「先生もあなたのこと好きよ。だけどね、あなたの言うようなことはできないの。
つまり付き合うのはっていう意味だけど。だって――」 しかし由美はその先を続けることができなかった。女の子の瞳に、明らかな落胆と悲しみの色が浮かんだからだ。 通り過ぎる他の生徒が挨拶をかけてきた。由美はそちらに元気な声で返事をするのも憚られた。逃げ出してしまいたかった。 そしておざなりな言葉で女の子の気持ちと、それから自分の気持ちをごまかすのは絶対に嫌だった。 「付き合うということについて、あなたがどんな風に考えているのかは分からないわ。 だけど、何にせよ、それは先生にとって負担になってしまうの。つまり、わたしの問題よ。 別に少しの負担だったらいいわ。大歓迎よ。でも、難しい障害はそこら中に転がっていて、だから、いけないのよ」 恐らく女の子は由美が何を言っているのか理解できなかっただろう。それは話している本人にもきちんと分かっていないのだ。 言葉は、確かな気持ちを伝えようとすればするほど糸屑のようにもつれ、結果としてひどく言い訳じみて耳に届くのであった。 由美も話している内に、ただ自分が面倒を抱え込みたくないだけなのではないかと思い始めた。 その理由だってあるにはあった。しかしそれが全部ではないのだ。 事情とは、それが単純に見えるか複雑に見えるかに関わらず、いつだって茨のように絡み合う無数の道を経て成り立っているものなのである。 現実は「カニが復讐の為にサルを懲らしめてめでたし」のようには楽にいかない。 だって、カニは原則的に雑食または肉食だ。修羅場である。
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371 :本当にあった怖い名無し[sage]:2010/07/06(火) 12:28:58 ID:pTDlpO3C0 - 由美は更に言葉を選ぼうとした。しかし何を言っても弁解になってしまうように思われた。
女の子の瞳には既に涙が浮かび、知らずに由美を追い詰めた。次に、わっと泣き出した。 「ごめん。ごめんなさい」 由美は強く抱き締めた。女の子はいよいよ声をあげて泣いた。由美も一緒に泣きたいような気がした。だが、できない。 結局その朝、二人は並んで学校まで歩いたのだった。女の子は話をしなかった。 由美が何か言っても返事はない。そのくせ一人で行こうとはしないのだった。由美は参った。 そして、授業の時には女の子は早退していた。由美は彼女のことが頭にちらつき、一日中集中できなかった。 教室の窓から空を見て、どうしてこんなに良い日にと思い、次にはそう思ったことを後悔した。 だが、不思議なことである。由美は辛い一方で、このことを秘密にしておきたいと感じていたのだった。 それは一つには女の子の気持ちを裏切りたくなかったからで、一つには由美自身にまだ幼さが残っていたからだった。 つまり、秘密の共有の楽しみである。由美は告白されたことが嬉しかったのだった。 そんな理由から、静江に心配の声をかけられた際にも、ひとまずは打ち明けないでおくことにした。
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372 :本当にあった怖い名無し[sage]:2010/07/06(火) 12:29:11 ID:pTDlpO3C0 - さて、女の子は由美が数学を教える一年生の生徒である。
由美は授業中、よく生徒に声をかけることにしている。解らない部分があるかどうかを聞くのだ。 学校が始まってすぐの頃、女の子はいつも首を横に振るだけだった。由美は特に気にしていなかった。 由美が初めてその子と話をしたのは、静江に相談するよりも前、一学期の中間テストが終わってからだった。 点数がひどく悪かったのだ。彼女は補習のために居残りをした。 「どうしてかしらね」 隣りの席に座り由美は言った。女の子はプリントに書き込む手を休めて由美を見た。 表情が掴みづらい。大きくて透き通った瞳が人形のようだ。 「宮田さん、いつもの小テストはけっこういいじゃない。どうして今度のはあんなに悪かったのかな。数学は嫌い?」由美は尋ねた。 「嫌いじゃない」と僅かに首を振って女の子は答えた。 「それじゃあ先生のことは?」 少し見つめてから、再び首を横に振った。由美は軽く頬を膨らませた。 補習の後、担任の教師に彼女のことを聞いてみた。担任は国語を教える四十代半ばの男で、眼鏡をかけ、脂気が多く人のいい顔をしている。 彼はバスケットボール部の顧問で体育館にいた。 コートでは十人ほどの男子部員が掛け声をかけながらドリブルとシュートの繰り返しをしている。 ボールは床を叩き、床は靴を鳴らす。体育館には他にバレーボール部とバドミントン部がいたが、彼らの作る音が一番響くようだった。
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373 :本当にあった怖い名無し[sage]:2010/07/06(火) 12:29:36 ID:pTDlpO3C0 - 「あの子は、気の毒なことです。母親が出て行ってしまったのですよ。つまり蒸発です。
小学校の担任からの報告ですが、今年の2月に、突然だと言っていました。今は父親と二人で暮らしていますよ」 国語教師は咳払いをすると大声で指示を出した。先程の練習にディフェンスがつけられた。 彼の話によると、女の子の両親は以前から仲が悪かったのだそうだ。 夫が妻に暴力を振っていたのが原因らしいが、それは噂だ。 事実なのは二つ――彼らは年の離れた夫婦だった(夫が年上だ)、そして夫は仕事が忙しく家にあまりいなかったということだ。 「だからもしも奥さんに逃げられたとしても、それは父親の方に非があるのは決まっています」というのは国語教師の意見だった。 更に女の子を苦しませたと思われるのは、弟のことである。 弟は母親が去る半年ほど前に生まれた。女の子はそれまで一人っ子で、母親を独占していたのだった。 弟と過ごした半年間を彼女がどう思っているのかは分らない。 だが、母親が連れて行ったのは弟で、恐らく彼女はそのことでも傷付いただろう。 「彼女はあまりしゃべらないでしょう。それは確かに口数は幾らか減ったそうですが、しかし以前からもそんな向きはあったのだそうです。 まあ、一概には言えませんな。本当にどれだけ悲しいかなんて、本人でなければ分からないものです」 話を聞いて、由美の胸は痛んだ。慈しみの欲望とでもいうものが生まれた。
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374 :本当にあった怖い名無し[sage]:2010/07/06(火) 12:29:53 ID:pTDlpO3C0 - 由美は恐らく自分が頼られているのだと思った。
テストで悪い点を取ったのは、補習に出たかったからではないだろうか。 この、一見突飛で、ややもすれば早計な自惚れになり兼ねない推察には、由美自身の「頼ってほしい」という願望が幾分干渉していた。 彼女も辛い時期だったのである。由美はどのようにその生徒と接するべきかを考えた。 それは他の問題――他の生徒たちの態度や授業の遅れなど――について悩むよりも、ずっと楽なことだった。 自分のやるべきことが分かるような気がしたし、それは由美にとって、マイナスをゼロに戻すことではなく、ゼロをプラスに変えることなのだ。 しかし、女の子が本当はどう思っているのかは分からない。 由美は授業中に声をかけ、難しい箇所についてきちんと聞こうと考えた。 中間テストのこともあったのでそれはやりやすく思われた。 しかし由美が作戦を行うまでもなく、既に隔ては融け始めていたのであった。つまり、次の授業の時に女の子の方から質問をしてきたのだ。 由美が声をかけると、彼女は首を振らずに問題を指差した。それはほんの些細な出来事だが由美はとてもうれしく感じたのだった。 それから2人は次第に慣れていった。 女の子は由美に対して幾らか口数が増え、やがては彼女の方から挨拶をしてくれるようになった。 笑顔は随分と増えた。そして同じ様に友人も増えたようだった。 もちろん由美もその生徒ばかりに構っていたわけではない。しかしそれらの変化は単純に喜ばしいことだった。 手助けができたのかは分らないが、由美は仄かな充実感を覚えた。学期末のテストは中々だった。
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375 :本当にあった怖い名無し[sage]:2010/07/06(火) 12:30:20 ID:pTDlpO3C0 - 夏休みが終わるとすぐに遠足があり、由美は引率した。主な内容は山登りだ。
生徒は班ごとだったが、教師は大体において各々自由なペースで登れた。由美はやはり引率していた静江と並んで歩いた。 「遠足って最高ね」と静江は言った。 「何て言うか、蘇るわ」 「静江さんは普段から元気じゃないですか」 「あらそう見える?そりゃうれしいわ。あなたは夏休みが明けてからはどう?」 「順調です。びっくりするくらい。宿題をやってこない子はいたけど居残りでやらせました」 「あなたも板についてきたものね。わたしよりずっと早いわ」 礫の多い山道は緩やかな傾斜で続いている。 右手は斜面に天然の広葉樹が生い茂り、左手は樹々の隙間から渓谷が覗く。谷底には川が流れる。 良質な緑柱石のように澄んだ色の水は、大岩を削り水飛沫を散らせながら、いつ終わることなく来ては行く。 その景色は美しく頼もしいが、少しずるいと由美は感じた。慣れない自然の前では細かい悩みなどつまらなく思えてしまうのだ。 「彼女も元気そうじゃない。あなたが心配してた子。さっき友だちと歩いていたわ」 「はい、安心しました。多分わたしはあんまり関係ないですけどね」由美はうふふと笑った。 昼食は中腹の開けた場所でとった。所々に起伏はあるが、手入れがされていて、大勢がまとまって座れる広さだ。 季節はまだ夏だと主張するように、枝葉は幻燈に似た陰を描き、虫は騒ぐ。 しかし陽の色には確かに黄味が増し、もう真夏の眩むような明るさは見られない。虫の声は減り、その調子には微かな焦りが混じって聞こえる。 今日は昨日を模倣しながらも、一月前とは大きく違った様相を纏うのだ。 子どもたちは日陰を選んで陣取った。焦げ茶の地面に色とりどりのビニルシートが敷かれる。樹々を縫い、虫に負けない笑い声が響く。
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376 :本当にあった怖い名無し[sage]:2010/07/06(火) 12:34:20 ID:pTDlpO3C0 - 女の子が話をしに来たのは由美が弁当を食べている最中だった。
近くに来て、何か言いたそうに由美を見た。そこには他の教師も数人いた。 「わたし?」と由美が聞くと、彼女は頷き、2人で話したいという旨を伝えた。 2人は太いケヤキの陰を選んだ。 「聞いてほしいことがあるんです」と、あまりはっきりとしない声で女の子は言った。 「うん」と由美は返事をしたが、女の子はその先が出てこないようだった。 下を向き、靴で土を撫でた。恐らく事前に言うことを考えてはいたのだろう。しかしその場になると、頭は言葉を巡らせるものの初めの一つを忘れてしまったようである。 由美は彼女が何とか話そうとしているのを感じ取っていた。そういったことは前からよくあったのだ。 だが多くの場合に話しかけるのは由美の方で、わざわざ彼女から話をしにやって来るというのはこれまでにないことだった。 由美は生徒からもらった信頼をうれしく思いながら、彼女の緊張がよく分かるような気がした。 片一方で厳しさの必要を感じつつも、ついその子に助けの手を伸ばしてしまうのだった。由美は誘導してやることにした。 「ひょっとするとお母さんか、それともお父さんのことかしら」と、了解しているという風に由美は聞いた。 女の子は下を見たまま同じ動作を繰り返していたが、やがて「お母さん」と呟いた。「そう」と由美は言った。「聞かせてほしいな」 女の子はぽつりぽつりと話し出した。 「お母さんは、わたしが小学校に行っている時に家を出ていきました。突然。帰ってきたらいなかったんです。 前の夜にお父さんとすごい喧嘩をしていて、きっとそのせいです。お母さんたちはよく喧嘩をしました。 お母さんに、どうして喧嘩をするのか聞いたことがあるけど、教えてくれませんでした。それで、先生――」 まことにたどたどしく、事が前後したり後から付け足されたりする部分はあったが、時間をかけて大体このような話をした。 そしてその終わりに呼び掛けてから言葉が続かなくなった。由美は待ったが、女の子は口の中でためらっていた。大事なことらしい。
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- 【霊感持ちの】シリーズ物総合スレ13【友人・知人】
377 :本当にあった怖い名無し[sage]:2010/07/06(火) 12:34:35 ID:pTDlpO3C0 - 「何かしら?」と由美は柔らかく問い掛けた。しかし言葉は出て来ない。
由美は今聞いておいた方がいいと考え、待ったが、女の子は口をつぐみ地面を擦るのみである。 そしてやがて「やっぱりいいです」と言った。由美は「そう」と言った。 「話しちゃった方が楽になるかも知れないわよ」。女の子は考えているようだった。 それが、言おうか言うまいかを考えているのか、話さなければ良かったと思っているのか、由美には分からなかった。 そして次の女の子の振る舞いに由美は少々びっくりした。 彼女は手を伸ばし、由美の手を握ったのだった。とても小さく、冷えた手だった。その行動にどんな意味があるのか分からなかった。 しかし由美はその小さな手から、彼女の不安や寂しさなどが伝わってくるような気がした。 由美は母親のような気持ちが湧いた。彼女を守ってやらなければならないと思い、手を握り返した。 結局、女の子はその先を言えなかった。 由美も強いて聞くことはしなかった。気がかりではあったが、聞くと何かが崩れてしまいそうな気もした。 ほとんど無意識だがそんな自己防衛の理由があったのも否めない。 「悩みがあったらいつでも話してね」と由美は言った。二人は手をつないだまま、皆が集まる方へと歩いた。
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- 24時間テレビが24時間心霊番組になったら 3
13 :本当にあった怖い名無し[]:2010/07/06(火) 14:39:16 ID:pTDlpO3C0 -
190 企画考えてみた sage New! 2009/09/02(水) 13:45:52 ID:zEbCaWf50 通し企画 ・全国にリポーターが散らばって怪談を集めてくる(行き当たりばったりが基本) グランドフィナーレで取れたて百物語開始 ・要所要所で五分程度の心霊ドラマを放送(新耳袋形式で出来れば百本w) ・怪談新時代ネットから生まれた怪談徹底解剖!(くねくね、時空のおっさん、自己責任等) ・マンガ夜話形式で心霊もの(映画編、マンガ編、小説編、怪談編、人物編) ・心霊どっきり(生じゃなくても良し) ・怖い物好きな芸能人座談会(かま騒ぎ的なフリートークもの) ・鳥居みゆきの放送できないコント解禁 前スレ(?)の奴だが、これは見たい。最後のは?だけどアクセントには良いかも 怪談座談会みたいなのはぜひ見てみたいね
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- 24時間テレビが24時間心霊番組になったら 3
14 :本当にあった怖い名無し[sage]:2010/07/06(火) 14:47:00 ID:pTDlpO3C0 - 民法では厳しいな
ネットだと縛りもゆるいし、向いてるっぽいんだけどまだそういう事できる体力あるところはないか・・ギャオあたりしか思い浮かばない
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- ☆★☆ ムー 9冊目 ☆★☆
861 :本当にあった怖い名無し[sage]:2010/07/06(火) 15:17:24 ID:pTDlpO3C0 - 十数年前の巻末あたりの予言特集に「日本は経済的に落ち込み中国が世界のトップになる」とかいう記事読んで吹いたもんだが、当たるもんだねえ
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- 【怪路】「超」怖い話Part41【怪福】
354 :本当にあった怖い名無し[sage]:2010/07/06(火) 16:00:12 ID:pTDlpO3C0 - 「超」怖いシリーズ
出すぎて中身の劣化が激しいな 実話怪談なのに創作丸出しとか多いし(看護師の奴とか特に) 怪福はそそるようなジャンルだから読むのが楽しみだが・・・・
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