- 【霊感持ちの】シリーズ物総合スレ5【友人・知人】
516 :赤緑 ◆kJAS6iN932 [sage]:2008/09/17(水) 09:28:37 ID:TUAZD5IU0 - [出会い]
1/12 時刻は11:00、目覚ましの音で目が覚める。 今日の講義は3限と4限だ。今から準備して、大学行って、お昼食べて・・・うん、バッチリだ。 古乃羽でも捕まえてお昼を一緒に食べようと思い、携帯を取り出すが、止めておく。 そうだ、今はきっと「大事な時期」ね。 古乃羽はなんと、雨月君と付き合い出した。 デートをした、なんて話は聞かないけど、電話とメールでよく連絡を取っているらしい。 古乃羽を取られたようでなんだか寂しい気もするが、仕方ない。 ここは一歩引いて、付き合い始めのこの時期を大切に過ごしてもらおう、という私。 なんて健気なんだろう。今度古乃羽に言って、何か奢らせよう。 雨月君、これで彼女を振ろうものなら許さないんだから・・・。 結局家でお昼を済ませて、大学へ向かうことにした。
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517 :赤緑 ◆kJAS6iN932 [sage]:2008/09/17(水) 09:32:04 ID:TUAZD5IU0 - 2/12
キャンパス内を歩いていると、何人かが挨拶をしてくる。 まだ2年だが、我ながら知り合いが多い。 初対面でも普通に話しかけてしまうので、たまに引かれることもあるが、 大抵の人は打ち解けて、親しくしてくれる。 挨拶しつつ歩いていると、普段ここでは見慣れない人がそこにいた。 子供だ。 小さな女の子が道の脇に立っている。なんでこんなところに・・・? 周りを歩いている人も、なんだろう?と首を傾げるが、そのまま通り過ぎて行ってしまう。 まったく・・・。明らかに場違いで、困っているかも知れないのに。 周りの目は無視して、話し掛けてみることにした。 私「ねぇ、どうしたの?誰か探しているの?」 女の子は自分の胸くらいの背の高さ。 中腰になって話し掛けると、女の子が顔を上げ、目が合った。
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518 :赤緑 ◆kJAS6iN932 [sage]:2008/09/17(水) 09:37:34 ID:TUAZD5IU0 - 3/12
その瞬間、ハッとした。この子・・・すごく綺麗だ。 ただ可愛いだけじゃなく、美人だ。軽くだがお化粧もしているみたいで、魅力的な顔をしている。 女の子「・・・」 女の子は何も答えず、少し首を傾げ、大きな目でじっとこちらを見つめてくる。 白い肌に真っ白なワンピース。どことなく良い香りもする。 この子は将来、どんな女性になるだろう。末恐ろしいというかなんというか・・・。 今のままでも、そこら辺の男だったらイチコロかもしれない。変な趣味が無くても。 私「私、美加、って言うの。あなたは何ていうお名前?」 しゃがみ込んで女の子より目線を下にする。 女の子は答えてくれた。 女の子「わたし、優理」 私「ゆうりちゃん、ね。可愛いお名前ね」 優理「ありがとう」 ニッコリ微笑んでお礼を言ってくる。 なんて可愛いのだろう。思わず抱きしめたくなる。
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519 :赤緑 ◆kJAS6iN932 [sage]:2008/09/17(水) 09:46:47 ID:TUAZD5IU0 - 4/12
私「誰かを探しているのかな?それとも、誰かを待っているの?」 優理「・・・・・・」 答えず、ただじっとこちらを見つめてくる。 困ったな・・・あ、そうだ。 私「ゆうりちゃん、上のお名前は何ていうの?」 優理「・・・・・・源川」 みなかわ、か。知り合いには居ない。後で事務にでも行って探してもらおうかな。 本来なら講義の始まる時間だが、今日はパスだ。今はこの子を一人にしておけない。 私「ゆうりちゃん、ここで誰か待っているんじゃなければ、お姉ちゃんとお茶飲みに行かない?」 言ってから気付いた。お茶って・・・。この子くらいの年齢ならジュースで誘うべきだ。 それに何かこれって・・・誘拐とか思われそう。 優理「うん!行くー」 こちらの思いとは関係なく、いい返事が返ってきた。 ラウンジに行こう、と私が手を伸ばすと、彼女は軽く握り返してくれた。 なぜか冷たいイメージがあったが、普通の暖かい、小さな手だった。
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520 :赤緑 ◆kJAS6iN932 [sage]:2008/09/17(水) 09:51:24 ID:TUAZD5IU0 - 5/12
構内のラウンジに着き、オレンジジュースを2つ買って席に座った。 少女は向かい合って座って、嬉しそうにジュースを飲んでおり、 カバンに常備しているスナック菓子を出したら喜んで食べてくれた。 名前はどんな字を書くのか聞いてみると、「源川 優理」と綺麗な字で私の手帳に書いてくれ、年齢を聞くと、9歳だと教えてくれた。 私もフルネームを教える。 「神尾美加」。上から読んでも下から読んでも、カミオミカ、というと、面白そうに笑ってくれた。 どこかの教授の子供かと思い、聞いてみる。 私「優理ちゃん、パパかママと一緒に来たの?」 優理「・・・優理ね、パパもママもいないの」 うわ、しまった。いきなり失敗だ。 私「あぁ・・・ごめんね。変なこと聞いちゃった」 優理「ううん。平気だよ」 じゃあ、ここには何で来たのだろう?兄か姉でもいるのかな?と思ったが、 これ以上肉親関係で質問するのはどうも気まずい。 優理「お姉ちゃん、あのね・・・」 私「なぁに?おかわり?」 優理「んーん、だいじょうぶ。ありがとう。あのね、優理のお友達になってくれる?」 うーん、なんて可愛いいのだろう。礼儀正しいし、育ちが良いのだろうか。 私「もちろん。私も優理ちゃんのお友達になりたいな」 と言うと、優理ちゃんの顔がパッと明るくなり、最高の笑顔を見せてくれた。
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521 :赤緑 ◆kJAS6iN932 [sage]:2008/09/17(水) 09:56:26 ID:TUAZD5IU0 - 6/12
優理「嬉しい!よろしくね、お姉ちゃん」 私「こちらこそ、優理ちゃん」 こちらまで笑顔になる。いいなぁ、この子。 優理「お姉ちゃんに、私の一番のお友達、紹介するね」 優理ちゃんはそう言うと、手に持っていた熊のヌイグルミを見せてくれ・・・あれ? 手に・・・持っていたっけ?さっきまで手ぶらだったような・・・? 優理「この子ね、ラットって言うの。男の子よ。挨拶しなさい、ラット」 優理ちゃんはヌイグルミの頭をペコリと下げる。 ラット、って確かネズミだったような気もするけど、まぁいいか。 それと、ラットと聞いて頭に浮かんだフレーズは、何故か「解剖」だった。ヤダヤダ・・・。 私「よろしくね、ラット君。優理ちゃん、可愛いお友達がいるのね」 優理「うん。この子ね、ママがくれたの」 今は亡き母親の、形見のヌイグルミ・・・なんだかウルッときた。 私「そうなんだー。すごく可愛いね」 よく見てみると、確かに可愛い。全長30センチくらいの熊のヌイグルミ。 洋服はお手製だろうか?毛並みもきちんとお手入れがされているようだ。
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522 :赤緑 ◆kJAS6iN932 [sage]:2008/09/17(水) 10:04:43 ID:TUAZD5IU0 - 7/12
それからしばらく、ラット君のお家のお話や、お国(どこかの王子様らしい)の話となった。 微笑ましい、とはまさにこのことだろうな。 しかしそんな時間を邪魔する2人組がやってきた。 女「きゃーー、なにそれーーーかわいいーーー」 ラウンジに来たカップル。その女性の方がヌイグルミを見つけ、大きな声を出して近づいてきた。 別にそれだけなら構わないのだが、その子はテーブルの上に座ってお菓子を食べていた(設定の)ラット君を勝手に持ち上げ、抱きかかえた。 私「あ、こら、ちょっと・・・」 女「ねぇ〜これ、これ欲しいー買って〜」 相手の男に向かって謎のおねだりをしている。売り物じゃないっての。 男「んー、熊かぁ、いいね〜」 男は優理ちゃんを見つけ、交渉してくる。 男「これ、君のかな?ちょっとさ、売ってくれない?2000円出すよ」 優理「・・・私の大事なお友達なの」 男「じゃ、3000円でどう?子供には大金だろ?あんまりケチるなって、な」 優理「・・・・・・」 先ほどまでニコニコしていた優理ちゃんの顔が曇る。 頭にきた。ガツンと言ってやろうと思い席を立・・・と、そのとき。
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523 :赤緑 ◆kJAS6iN932 [sage]:2008/09/17(水) 10:10:46 ID:TUAZD5IU0 - 8/12
女「いたっ!」 ヌイグルミを抱えていた女の子が声を上げて、ラット君を床に落としてしまった。 見ると、女の子の手から少し血が滲んでいる。 女「いったぁ〜・・・ちょっとー、針出てたわよ!?」 優理ちゃんは急いで椅子を降り、落ちたラット君を抱きかかえて、また椅子に戻ってくる。 女「検針もしてないの?いらない!そんな不良品」 男「おいおい、これで金取ろうって、信じられねぇな」 ムカッ 私「誰も売るなんて言ってないでしょ?勝手に取り上げて、そんな言い方しないでよ!」 女「何よ、うるさいわね。いいよ、もう、いこ?」 男「ん、あぁ。まったく、詐欺かよ」 一体どういう頭の構造なのか・・・怒りを通り越して、嘆かわしい。 去っていったおバカ2人は放っておいて、優理ちゃんを慰めないと。 私「優理ちゃん、気にしないでね。あんなの・・・」 優理「うん、大丈夫・・・。お姉ちゃん、ありがとう」 優理ちゃんは落とされたラット君の埃を払い、身だしなみを整えていた。 出ていた、という針が気になったが、優理ちゃんは平気みたいだ。 やがて綺麗になったラット君を見つめ、優理ちゃんはしばらく何事か考えているようだったが、突然こう言ってきた。 優理「お姉ちゃん、あのね・・・」 私「なぁに?」 優理「優理のお家に、遊びに来てくれない?」
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524 :赤緑 ◆kJAS6iN932 [sage]:2008/09/17(水) 10:20:05 ID:TUAZD5IU0 - 9/12
私「え・・・」 いきなりのお誘い。優理ちゃんは私をじっと見つめてくる。 優理「お家に、来て・・・ね?」 見つめてくる・・・なんて綺麗な目だろう。吸い込まれそうだ・・・。 私「・・・うん」 断る理由なんてあるだろうか。こんな可愛い子の誘いを断るなんて。 優理ちゃんは嬉しそうに微笑んだ。なんて愛くるしい笑顔だろう。 私は席を立ち、手を引かれて歩き出す。手・・・優理ちゃんの手は冷たく、とても大きく感じる。 なんだろうこの感じ・・・。周りの景色が霞んでいき、ぼやけてくる。 子供に手を引かれる女子大生。少しおかしな構図だけど、誰もこちらを見ない。 自分の存在が希薄で、まるでここには居ないかのよう・・・。 ふわふわ、と・・・このまま着いていけば、いいのかな・・・ どこまでも・・・一緒に・・・ ・・・・・・ ・・・
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525 :赤緑 ◆kJAS6iN932 [sage]:2008/09/17(水) 10:39:04 ID:TUAZD5IU0 - 10/12
声「美加!」 私「・・・ん」 声「どこにいくの?美加!」 私「・・・ん?」 ハッと気付く、と・・・そこはラウンジを出たところだった。 声の主は・・・古乃羽だ。 私「あれ、古乃羽・・・おはよう」 古乃羽「おはよう、って・・・今何していたの?一人?」 私「ん?一人じゃないよ?ねぇ、優理ちゃん・・・あれ?」 優理ちゃんが居ない。 古乃羽「ゆうりちゃん、って誰?」 私「今まで中で一緒に・・・」 辺りを見渡しても居ない。と、ラウンジの中を見てみる。 さっきまで座っていたテーブルに、ジュースのグラスが2つ。確かに居たんだ。 お手洗いにでも行ったのかな・・・? 古乃羽「もう・・・大丈夫?寝ぼけてない?また講義サボったでしょ」 私「あー・・・バレタ?」 古乃羽「・・・もう。私、4限あるから行くね。美加もちゃんと出ないとダメだよ?」 そうか、もう4限が始まる時間か。 私「あい、古乃羽の仰るとおり、ちゃんと勉学に励みます」 古乃羽「一緒に進級できないと、イヤだからね・・・?」 私「うん。分かった、ごめん。ちゃんと出るよ」
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526 :赤緑 ◆kJAS6iN932 [sage]:2008/09/17(水) 10:48:20 ID:TUAZD5IU0 - 11/12
がんばってね、と言って古乃羽は次の教室に向かっていった。 えーっと、私はどこだったっけな・・・?頭が少しボーっとする。 優理「お姉ちゃん」 私「わっ・・・、優理ちゃん。どこ行ってたの?」 突然優理ちゃんが現れた。 優理「今の女の人、お姉ちゃんのお友達?」 私「うん、古乃羽って言うの。とーっても良い子よ」 優理「ふーん・・・」 優理ちゃんは古乃羽の後姿を目で追っている。 優理「変わった人だね」 私「ん?そう、分かる?私の昔からの、大好きなお友達よ」 優理「見えるんだ・・・」 私「見える・・・?」 優理「・・・・・・」 優理ちゃんは何か考えているようだ。 優理「お姉ちゃん、これ、あげる」 そう言うと、私の手に何かを渡してくれた。それは小さい、綺麗な石の付いたキーホルダーだった。 優理「それね、翡翠(ヒスイ)って言うの」 私「へぇ・・・翡翠かぁ。綺麗ね。これ、私にくれるの?」 優理「うん。お友達のしるし」 私「ありがとう、大事にするね」 っと、ただ貰うだけじゃ何なので、私も何かあげることにする。
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527 :赤緑 ◆kJAS6iN932 [sage]:2008/09/17(水) 10:59:30 ID:TUAZD5IU0 - 12/12
確か、あれが・・・カバンを探って・・・あった。 私「じゃあ、優理ちゃんにはこれ、あげるね」 優理「?」 彼女の手にそれを渡す。 中学のときに買った、ペンギンの付いた小さなキーホルダー。 お気に入りでずっと使っていたやつだ。大切に持っていたので、目立った汚れも無い。 優理「わぁ・・・可愛い!」 私「ふふーん、そうでしょう。ペンギンさん、可愛がってあげてね」 優理「ありがとう!ペンギンさん、よろしくね」 優理ちゃんはそう言うと、ニッコリ微笑んだ。 優理「優理、もう帰るね。お姉ちゃん、お勉強するんでしょ?」 私「あ、うん。ごめんね、もっと遊んでいたいんだけど」 優理「ううん。楽しかった。ジュースとお菓子、ごちそうさまでした」 ペコリと頭を下げる。 私「いえいえ。じゃあね、優理ちゃん、またね。ラット君もまた会いましょう」 私は優理ちゃんとラット君に手を振る。 優理「うん。また会いにくるね。バイバイ、お姉ちゃん」 そう言って手を振ると、優理ちゃんは大学の正門の方に駆けていった。 あれ?結局、何をしに来たんだろう・・・ ただ構内に入って来ちゃっただけだったのかな? ふと腕時計を見ると、4限開始の時間だった。 私は優理ちゃんに貰ったキーホルダーをカバンに入れ、急いで教室に向かった。 一度、正門の方を振り返ってみたが、優理ちゃんの姿はすでに無かった。
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