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本当にあった怖い名無し
エビ天イカ天マグロ天の三貫盛り1280円 ◆mGggJUNq.A
お前らが笑ったコピペを貼れ in オカルト板 第17章
【小説】ZOMBIE ゾンビ その22【創作】

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【小説】ZOMBIE ゾンビ その22【創作】
63 :エビ天イカ天マグロ天の三貫盛り1280円 ◆mGggJUNq.A [sage]:2008/06/02(月) 07:05:31 ID:pDxKrYNg0
biohazard unknown 〜Live to Sacrifice〜
第十二話投下(9レスのつもり)
【小説】ZOMBIE ゾンビ その22【創作】
64 :エビ天イカ天マグロ天の三貫盛り1280円 ◆mGggJUNq.A [sage]:2008/06/02(月) 07:06:12 ID:pDxKrYNg0
第十二話──『勝者と敗者』

 side-A
「〈ククク、面白い。よもや六年前の旧ウイルスの出来損ないがここまでやってくれるとは。──良いだろう、お前には元部下として名誉をくれてやるッ! こいつの戦闘データを収集するというな、タルタロス!!〉」

 窓の外の光景を呆然と眺めていた私の眼下では興奮気味に英語で喋る男性の声が響いていた。
 そしてその声に反応するように、ヘリコプターの側にいた黒い外套に身を包んだスキンヘッドの男性が大きめの声で言う。

「〈了解したマスター。速やかに標的を抹消する〉」

 機械音声のような抑揚のない声だった。
 タルタロスと呼ばれた男性は壁際に吹き飛ばされた怪物の方へ体を方向転換すると、ゆっくりとした足取りで歩き出す。
 自信満々だけど……正直、私にはあの人が怪物に勝てるとは少しも思わなかった。
 怪物の体格はもはやワゴン車くらいの大きさだった。それに丸太のような腕が四本、その全てに恐竜の牙のような鋭い爪がある。
 対してあの人の体格は身長は良くて二メートル前後、筋肉だってコートの上から見ても良く鍛えたボディビルダーくらいしかなさそうだ。
 人間の中ならずば抜けているのだろうけど、絶対に常軌を逸した怪物に対抗できるスペックじゃなかった。

 また先ほどの人たちみたいに無惨に殺されてしまうんじゃないか──でも下にいる人の自信も気になり、目が離せない。

 怪物はと言えば、まだ襲いかかる気配は見せず、猫が威嚇をするときみたいに唸り声を上げながら体勢を低く低く落としていた。
 きっと戦闘は一瞬で始まる。それはその場にいた誰もが無意識的に理解していたと思う。
 必要以上に緊張感が長続きし、だからこそ焦れてしまった私はそれをした。結果的にそれが後の展開で有利に働いた幸運だった。

 本当に何気ない無意識の行動。視線を怪物たちから離し、見渡せる範囲の状況を把握しようと目線だけで中庭を一巡する。
 そして私は気づいた。
 怪物たちの他に誰かいるのは知っていたけど、流し見程度しかしていなかったため、それが誰か判ったときは心臓が止まりそうだった。

 この第二病棟の正面に位置する第五病棟付近には──ずっと探し求めていたパパがいた。
【小説】ZOMBIE ゾンビ その22【創作】
65 :エビ天イカ天マグロ天の三貫盛り1280円 ◆mGggJUNq.A [sage]:2008/06/02(月) 07:06:48 ID:pDxKrYNg0
 side-B
 黒コートのハゲ男は化け物に向けて悠々と歩みを進めていく。
 動物的な威嚇行動を取っている化け物に比べてその姿はまるで隙だらけのような気がしたが、どこか弱者対強者の図を彷彿とさせた。
 だが、あんなガタイの良いだけの男が化け物に敵うとは到底思えない。何か……とっておきの武器でも持っているのか。

「!」

 そんなことを思っていた刹那、化け物が動いた。何の予備動作もなく地を蹴り砕き、矢のような速度でハゲに突っ込んでいく。
 だが、それに対しハゲの取った行動は攻撃でも防御でもなく──ただ変なポーズをしただけだった。
 例えるならそれは、危害を加えられそうになった人間が反射的に防御しようとして両腕を前にかざしたときのような情けない格好。
 グラサンの自信満々そうな語気から強いのかと思っていたが、まさか反射的な防御をするので精一杯だったのか。
 漫画ならそうはいかないお約束。そんなことすら忘れ、一瞬後のハゲの末路を思い描いていたおれの目に、その光景が焼きついた。

 どずん、という重く腹に響くような衝撃音。それと同時にハゲは数センチ動いただけで化け物の体当たりを難なく食い止めていた。

 ありえない。受け止めること自体凄いことだが、信じられないのはそんな瑣末なことじゃなかった。
 化け物は四本の腕全てを駆使して襲い掛かったにも関わらず、ハゲはそれを腕二本のみで防ぎ切っていたのだ。
 左手で化け物の右上手の手首を掴み、同時に腕の角度を調節して右下手すらも押さえている。
 右腕ではなんと、指の間に爪を全て挟んで止め、肘で左下手の攻撃を防いでいた。

 心なしか悔しそうに聞こえる唸り声を上げていた化け物は攻撃を全て受け止められたと悟るや、胸部の口をガバリと開く。
 だが。
 そのときには既に化け物の体は宙に浮いていた。
 ほぼ垂直に突き上げられた脚。ハゲのキックが化け物の口を強烈に蹴り上げていた。
 銃弾さえ跳ね返す甲皮もさすがに口内までは及んでいなかったようで、胸の口の中に足を突き刺された化け物は大量に吐血する。
 しかしハゲの攻撃は終わっておらず、そのまま化け物を踵落としで地に叩きつけると、大きく足を振り上げ──その頭部を踏み砕いた。
【小説】ZOMBIE ゾンビ その22【創作】
66 :エビ天イカ天マグロ天の三貫盛り1280円 ◆mGggJUNq.A [sage]:2008/06/02(月) 07:11:23 ID:pDxKrYNg0
 なんでこう次から次へと圧倒的な力を持った奴が出てくるんだ……? 現実はインフレの酷い少年戦闘漫画じゃねえっつうんだよ。
 化け物は確かにアサルトライフルの銃弾を弾いていた。その強度は頭にだってあったはずだ。
 それなのにハゲは化け物の顔を易々と──ではないのかもしれないが──ダンプに轢き殺されたカエルの如くペチャンコにしていた。
 しかもそれだけでは飽き足らず、踏み抜いた地面(舗装されたコンクリ)すら粉々に砕いてしまっていて衝撃の凄まじさを物語っていた。

 ハゲはつまらなそうに「フン」と鼻を鳴らすと、足を引き抜いて仕事を完遂したと言わんばかりに即座に背を向ける。
 その側にはいつの間にかグラサンが来ていた。
 グラサンはおれたちの方に歩きながら一度軽くハゲの胸を小突き、何かを言う。
 そして奴が数歩歩いた瞬間、化け物の巨大な遠吠えが周囲に響き渡り──ハゲは背中から四本の腕で胴体を串刺しにされていた。

 頭を潰しても生きてんのか……!?
 グラサンは動揺した様子もなくニヤリと笑う。まるでこうなることを知っていたかのように。
 視線を移せば、串刺しにされていたハゲは死ぬ様子も痛がる様子もなく、英語で何かを呟くと冷静にコートをちぎった。
 そして苦しそうな呻き声を出した後、両手を一度クロスさせ、それを思いきり広げる。その手から巨大な爪と剣のようなものを生やして。

 こうして化け物とハゲの第二ラウンドが始まった。おれと親父さんにとってはもうそれを見ている状況ではなくなっていたが。
 戦いを始めた化け物たちをバックに、おれたちの目の前に来たグラサンは余裕の笑みを見せる。
 おれはただ呆然として見入っていて愚かにも逃げ忘れていただけだが、親父さんが逃げなかったのは何か理由があるような気がした。

 グラサンは親父さんに何か言いながら残る左手を突き出す。きっとそのペンダントをよこせ、とでも言ってるんだろう。
 おれは……気づかれていないことを祈りつつ、タイミングを見計らっていた。
 親父さんはグラサンへと近寄っていき、そしてペンダントを渡そうとして──突然懐からルガーを抜いてグラサンの顔へ向けて撃った。

 おれはその瞬間に第四病棟へと向けて走り出す。
【小説】ZOMBIE ゾンビ その22【創作】
67 :エビ天イカ天マグロ天の三貫盛り1280円 ◆mGggJUNq.A [sage]:2008/06/02(月) 07:12:10 ID:pDxKrYNg0
 おれの手にはハンカチで包まれた小さな試験管と新品の注射器が握られていた。
 さっきの化け物共の戦いのどさくさの最中で、おれやグラサンがそっちに気を取られている間に親父さんに渡されたものだった。
 最初はおれにグラサンへ渡せと言ってるのかと思った。でも、それなら親父さんがペンダントを持っているのはおかしい。
 そう考えたとき、ようやくおれはその意図を理解した。
 今のペンダントは空だ。それをグラサンに渡せばどうなるか。ならばきっと、自分がグラサンを押さえるからその間に逃げろ、と。

 だからおれは逃げた。第五病棟ではなく第四病棟に。
 おれの当面のミッションは妨害されることなく少女に注射を打つこと。
 グラサンに少女の存在は知られていない。それを活かし、ひとまずどこかに身を隠してグラサンをやり過ごした後、少女の元へ向かう。
 ない頭を絞って必死に考えた策だった。
 親父さんが手ぶらだと知れば、おれを追いかけるのに気を取られ、銃を持たない状態では殺している暇はないだろうことも計算済みだ。

 おれは振り返らない。
 もしも計算違いで親父さんが殺されたとしても。もうグラサンが背後に迫っていたのだとしても。
 ただただ無心でひたすらに足を動かし地を駆けた。
 建物に入れば後はどうにでもなる。五十メートルもないんだ、十秒あれば良い。もう後半分、ああ、でももう少しがもどかしいッ……!

 二十メートル……十五メートル……十メ、

「disappointed」

 視界が霞むほど全速力で駆けていた。だから驚く余裕も目の前に迫った物を認識する余裕も、当然それを回避する余裕もなかった。
 突然顔面に何かがぶつかり、訳も分からないまま走る方向とは正反対に吹っ飛ばされる。
 そして全身を地面に打ちつけ衝撃が収まった途端、顔に信じられない激痛が走り、おれは情けない呻き声を上げながらのたうち回った。
【小説】ZOMBIE ゾンビ その22【創作】
68 :エビ天イカ天マグロ天の三貫盛り1280円 ◆mGggJUNq.A [sage]:2008/06/02(月) 07:14:43 ID:pDxKrYNg0
「うぅああぁいぎぃぃっ……!」

 なんだこれ、もはや痛いなんてもんじゃない、顔の骨が折れてるかもしれなかった。……いや、首が折れなかっただけマシなのか。
 感情が高ぶっているわけでもないのに涙が止まらず、痛みに歯を食いしばるのに精一杯で動いたり考えたりする余裕すらなかった。
 だから目の前に足が近づいてきても気づくことはなく。首を鷲掴みにされてようやくおれはグラサンにやられたのだということを悟った。

「がっ、い、あああぁぁ……!」

 顔の痛みだけでお腹いっぱいだっていうのに呼吸をさせるつもりもないくらいの圧迫感が首をしめつけ、体が宙に浮く。
 苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しいッ!!
 全体重の負荷が首に掛かるというとんでもない苦痛。声もまともに出ず、息すらもできない。意識は今にもブラックアウトしそうだった。

 パニックの最中で、霞んだおれの目にはニヤリと笑いを浮かべるグラサンの姿が映る。
 初めて人間の笑いが怖いと思った。グラサンの存在自体が死と同義であるかのように一挙一動に気が狂いそうなほどの恐怖を感じる。
 もう抵抗しないから、言うことはなんでも聞くから止めてください、と声を大にして言いたかった。
 しかし声らしい声はやはり出ず、言ったとしても相手には言葉が通じない。今のおれはもはや失禁していてもおかしくないレベルだった。

「────」

 グラサンが何かを喋っている。でも英語なんて全然分からない。
 それ以前に、もう脳に酸素と血が行ってなくて……抵抗する力も思考力も体中から抜け落ち、何もかもがおぼろげになり始めていた。
 そのとき、軽い発砲音と弾が金属に当たるような音が聞こえる。
 失いかけた意識の中で見た光景は、親父さんの撃った弾をグラサンが折れた片腕で弾き返したところだった。
 はは……本当に人間じゃねえやこいつ。……もう、目の前が暗い……周りの音が聞こえない……痛みもなくて、少し気持ち良い……。
 そしてくらやみのなかでおれのいしきは、

「あああああぁぁぁぁぁ!」
【小説】ZOMBIE ゾンビ その22【創作】
69 :エビ天イカ天マグロ天の三貫盛り1280円 ◆mGggJUNq.A [sage]:2008/06/02(月) 07:16:27 ID:pDxKrYNg0
 side-A
 こんな絶望的な状況で心の中ではどこか諦めていたのかもしれない。
 だからパパの姿を目にしたときは嬉しくて痛みさえ忘れてしまっていた。爆弾を抱えたまま出来うる限りの全速力で階段を下りていく。

 そして、第二病棟一階の扉から外に出た私は目の前の光景を見た。
 中庭では怪物二匹が死闘を繰り広げていた。さっき私を切り裂いた怪物に、どこから湧いたのか人型に近い怪物が襲い掛かっている。
 優勢なのは人型に近い方だった。というより、ほぼ一方的にいたぶっていると言った方が良いかもしれない。
 怪物は腕を全て切られ(きっと人型の剣みたいな爪で切られたんだろう)、体中から生えた触手で何とか応戦している状況である。
 人型は遊んでいるのか知らないけど、とどめを刺そうと思えば刺せるように見えるのに、わざとじわじわと削っていっている感じだった。

 暫し怪物たちのやり取りに目を奪われていた私は、ハッとなってパパの方を見る。

「……!」

 さっき見たときとはまるで状況が一変していた。
 左腕が捻じ曲がったパパは地面に倒れており、視線の先では黒服の人が見知らぬ青年の首を締め上げていた。

「〈黄色猿の小僧ではこの程度か。素質があればタイラントの素体にでも使ってやろうかと思っていたが……見込み違いだったようだ〉」

 結構遠いはずなのに黒服の人の声が聞こえる。
 どうやらあの人はさっき私が二階にいるときに下で喋っていた人らしい。まさかパパの敵だったなんて……。
 そういえば自衛隊はどこ行ったの……? パパたちが襲われてるのにどこにも隊員らしき人がいない。もしかしてみんな怪物に……?

 状況がまったく呑み込めずに呆然としていると、ふいにパパが黒い人に向けて拳銃を撃った。
 けれど黒い人は片手でその銃弾を弾いてしまう。

「〈ウイルスを手に入れるのが目的なんだろう……!? ならば少年を殺す必要は無いはずだ……!〉」
「〈ふん、どうやら日本にい過ぎて感覚が麻痺したらしいな。邪魔な芽は摘んでおくに限る。そんな事すら忘れたか〉」
「〈くッ……!〉」
「〈……いや、遠回しな命乞いだったか。汲み取れなくて済まなかったな。今になってようやくウイルスよりも我が身が可愛くなったか?〉」
【小説】ZOMBIE ゾンビ その22【創作】
70 :エビ天イカ天マグロ天の三貫盛り1280円 ◆mGggJUNq.A [sage]:2008/06/02(月) 07:18:23 ID:pDxKrYNg0
「…………」
「〈まあ安心しろ。何もしなくてもこの小僧はもうじき死ぬ。そしてお前も殺す。そこで小僧が死ぬところを見ているが良い〉」

 こ、殺すって……!? やだ、せっかく見つけたのにパパが殺されるなんて嫌だ……!
 その前に、あの青年が殺されるところも見たくない。他人でも自分の前で人が殺されるのは耐えられなかった。
 だから私は──言葉は話せなくても、声が出る今叫ぶことは出来るから。注意を逸らそうと思って無我夢中で叫んでいた。

 中庭にいた全員がこっちを向く。
 その中には怪物もいたが、戦うのに忙しかったのかすぐに視線を戻す。私に注目しているのは黒服の人とパパだけになった。
 パパが信じられないものでも見るかのような目で私を見る。口がパクパクと動いていた。
 黒服の人も私に目を向けていたけど、青年を離そうとはしなかった。どうにかならないかと焦り考え、私は持っていた物に気づく。

 私は必死に爆弾を頭上に掲げ、また抱える。言葉が話せない上に片手では、これくらいのアピールしか出来なかった。
 それがパパや黒服の人に伝わったかは分からない。でも黒服の人はそれを見た瞬間、青年を投げ捨てサングラスを上げ直した。

「げぇがはッゲホゴホッがぁッ……か、ぁ……」

 壁に叩きつけられた青年は凄い咳をする。良かった、生きてるみたい。

「〈これまた面倒な事になったものだ。あれはお前の娘か、ハリー?〉」
「〈そ、そんな事よりもあの爆弾はなんだウェスカー!? なんでアリスがあんな物を持ってるッ!? お前まさかこの病院を……!〉」
「〈流石の私でもアレの爆発に巻き込まれれば死んでしまうな。タルタロスならば生き残るだろうが……それでは意味がない〉」
「〈質問に答えろウェスカー!〉」
「〈……フ。新ウイルスによる実験体共は証拠を隠滅する必要もないが、それ以外は塵も残すわけにはいかなくてね〉」
「〈なッ……!〉」
「〈G≠フ生命力は凄まじい。ここでタルタロスが殺しても細胞が残っているだけで安心は出来ないのだよ。悪く思わないでくれ〉」

 パパは悔しそうな顔で歯軋りをする。

「〈まあ、元はと言えばお前が私の部下を誘惑さえしなければ爆破せずとも済んだのだ。自業自得だと思え〉」
【小説】ZOMBIE ゾンビ その22【創作】
71 :エビ天イカ天マグロ天の三貫盛り1280円 ◆mGggJUNq.A [sage]:2008/06/02(月) 07:20:12 ID:pDxKrYNg0
「〈く……〉」

 パパの反論がなくなると、ウェスカーという人は腕時計に目を向け、そして怪物に向かって叫んだ。

「〈そろそろ時間だタルタロス。遊んでいないでそいつを始末しろ〉」
「〈了解したマスター〉」

 怪物対怪物の勝負はもはや人型が圧倒的だった。もう一匹の怪物は四肢と頭をもがれ、私が最初に見た肉塊よりも酷かった。
 人型は右腕の剣を振り上げると、ピクピクして抵抗の意思さえ見せなくなった怪物に容赦なく振り下ろす。
 怪物の胴体はあっさりと四等分に切断され、そしてついに痙攣さえもしなくなり……体細胞がドロドロと溶け始める。

「〈どうだった、G生物は?〉」
「〈兵器としては使い物にならない。個の生物として見ても完全に失敗作だと判断する。よって取るに足らない存在だ〉」
「〈フ、そうか。やはり天才の傑作も時の流れには勝てはしない、か〉」

 黒い外套の人と同じ名前で呼ばれた怪物は私やパパには目もくれずにヘリコプターに乗り込んでいく。
 そしてウェスカーという人も……と思われたが、何かを思い出したかのようにくるりと振り返ると、パパに近寄っていった。

「〈な、なんだ……? まさか私を殺していくつもりか……!?〉」
「〈いや。忘れ物を思い出してね〉」
「〈な、何を、言っている……?〉」
「〈白を切るつもりか? お前の下らん小細工など私が見抜けていないとでも思っていたのか〉」
「……!」
「〈小僧に持たせたのが本物だろうと偽物だろうと関係ないのだよ。要するに両方奪って行けば良いのだからな。そうだろうハリー?〉」
【小説】ZOMBIE ゾンビ その22【創作】
72 :エビ天イカ天マグロ天の三貫盛り1280円 ◆mGggJUNq.A [sage]:2008/06/02(月) 07:24:39 ID:pDxKrYNg0
 パパは今までに見せたことのないくらい絶望的な表情をしていた。

「〈頼むッ!! これだけは、これだけは勘弁してくれッ……! これはウイルスなんかじゃないんだ。た、ただのワクチンなんだよ……!〉」
「〈ほう〉」
「〈これがないと、娘が、娘が死んでしまうんだ……だから、頼む、この通りだ……!〉」

 パパは土下座する。外人にそんなのが通用するとは思えないのに。
 案の定ウェスカーという人も首を傾げたが、体勢から懇願の表現だろうと察したのか、

「〈お前は今ここで殺されるのと、それを奪われるの──どちらが良い?〉」

 そんな意地の悪い質問をした。

「〈…………私は、私は今ここで死んでも構わない。だからこれだけはどうか……見逃してほしい〉」
「〈……解った。良いだろう〉」

 そう言うと、ウェスカーという人は安心しきった表情で顔を上げたパパに歩み寄り──その顔を蹴り上げた。
 吹っ飛んで倒れたパパの首を踏みつけると、その間に懐や上着のポケットに手を入れ、小さなビンを取り出す。そしてまたパパを蹴る。
 ゴロゴロと転がって倒れたパパは、ウェスカーという人の持っている物を見て情けない声を上げた。

「〈そ、それはッ……! 話が、話が違うッ……!!〉」
「〈お前の命は特別に助けてやろう。感謝するんだな〉」

 そしてヘリコプターへと乗り込んでいく。プロペラが回転を始め、飛び立っていくヘリからラウドスピーカーでまた声が聞こえ、

『〈一分のつもりだったが約束は守らねばな。──五分だ。その間に好きに生き延びるが良い〉』

 あざ笑うような不快な高笑いと共に自衛隊の物のはずだった大型ヘリコプターは空の彼方へと消えていった。爆弾のカウントを残して。
【小説】ZOMBIE ゾンビ その22【創作】
73 :エビ天イカ天マグロ天の三貫盛り1280円 ◆mGggJUNq.A [sage]:2008/06/02(月) 07:30:41 ID:pDxKrYNg0
第十二話終了
主人公側が物凄く情けないことになってるなぁ。男も親父もヘタレすぎる
しかし現実的な展開として圧倒的な力の差のある化け物を目の前にしたら
創作物のように格好良く、かつ絶望的な状況から起死回生は難しそうな気がするし

創作なんだから別に良いじゃん、と自分でも思うが
妙なところでリアリティを求める性格の結果、俺の物語はこういう展開になった
読んでいる側からすれば主人公組みが雑魚過ぎてイライラにしかならないかもしれないけど(汗

一応次でこの物語はラストになると思う
少し早いけど、読んでくれた皆々様、感想をくれた、応援してくれた方々には最大級の感謝の気持ちを込めて、ありがとう!
拙過ぎる物語だったけど、暇つぶし程度にでもなっていれば嬉しいな
お前らが笑ったコピペを貼れ in オカルト板 第17章
360 :本当にあった怖い名無し[sage]:2008/06/02(月) 14:12:14 ID:pDxKrYNg0
さすがオカ板ですな


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