- 【エロ】山形先生Part6【オカルト】
299 :作者 ◆gby2MQSCmY [sage]:2006/12/10(日) 01:20:15 ID:GLDaiPXG0 - さてここらで怖い話でもするか。
成人の日である。その為『枡や』は少し早めに暖簾を出し、提灯を 灯したが、それほど客が増えるとは思えなかった。 つづく
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300 :作者 ◆gby2MQSCmY [sage]:2006/12/10(日) 01:30:22 ID:GLDaiPXG0 - 毎年のことだが、大体若い、まだ酒を習慣的に飲むことのない
若者は、こんな常連ばかりの居酒屋へは来ない。 大体がもっと小洒落たバーや、気安く入りやすいチェーン経営の 酒場へ行く。 勤め人にしろ学生にしろ、大概の者は既に飲酒を違法ながら経験 しているので、成人式だからといって特別に酒を飲みに来る者も 減っている。 ファミリーレストランでわいわいと集まってビールの一杯でも飲んで 満足する者も多い。 成人式などというのはむしろ、公的な同窓会に近いのかもしれない。 下手をすれば何十人と集合してしまう若者を収容するだけのスペースも 『枡や』にはなかった。 祝日でもあるので、普段来るサラリーマンたちも来ない。 暇であった。 しばらくすると鉄工所所長、テッちゃんこと、群馬泰三が職場の若い衆を 連れ立ってやってきた。 つづく
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301 :作者 ◆gby2MQSCmY [sage]:2006/12/10(日) 01:40:01 ID:GLDaiPXG0 - 「らっしぇい」
「よぉ親父。今日はこいつらの成人式なんだ」 「あぁ。そうですかい。おめでとうござい」 連れてこられた二人の男はぺこりと頭を気恥ずかしそうに 下げた。 毎年のことだが、泰三の鉄工所は地方の中卒者や高卒者を 多く雇っていた。その為の寮として、一棟のアパートも会社で 所有している。 彼らは地方から出てきて、こちらに住所を移しているので、 成人式は北武蔵野市で開催するものに出席するわけだが、 地元の人間ではないので、多少寂しい思いをしなくてはならな かった。 泰三はそんな若者を毎年こうして『枡や』に連れてくるのだ。 とはいえ、何度か見かけた顔である。成人になったからといって 初めて酒を飲むというふうでもない。既に何度か店に来て酒を 飲んでいる。 そうか。あの客はまだ未成年だったのかと改めて店長は思う。 かといって責めるわけでもなく、自戒するわけでもない。無理をして 急性アルコール中毒にでもなってしまうような飲み方をすれば別だが 肉体的に成人していれば、見た目が大人と対して変わらなければ、 たしなむ程度に飲むことは問題ではないだろうと店長自身思っている。 つづく
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302 :作者 ◆gby2MQSCmY [sage]:2006/12/10(日) 01:54:12 ID:GLDaiPXG0 - 店長自身、中学を卒業してすぐに料亭で働き始めたが、
十五、六歳だというのに付き合いでよく飲まされたもの だった。 店長はよく冷えたビールを店長と二人の新成人、出して やった。店の中は暖かなのでビールも悪くない。店の おごりである。 ちらほらと客はあったがやはり暇だった。 しばらくすると、大江戸俊三が戸を開けた。 「らっしゃい」 大江戸はカウンターに座り、おしぼりでごしごしとよく日に焼けた 顔をこすりながら冷えた日本酒を頼んだ。 「いやー親父、今日は参っちゃったよー」 「何かあった?ケンちゃん」 土建業を営んでいるので、ケンちゃんである。彼に日本酒を出しながら 店長が聞いた。 つづく
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303 :作者 ◆gby2MQSCmY [sage]:2006/12/10(日) 01:59:42 ID:GLDaiPXG0 - 「殿宝町の、汚ぇアパート、知ってる?」
「デンポウ町の…?」 「ほら、二丁目のさ。昔、谷岡ミートって肉屋のあった 手前」 「よく分からねぇな…」 「そう?とにかくあったんだよ。ボロいアパート。風見荘 なんて名前だけ立派でさ」 「へぇ」 「今日そこ、ぶっ壊してきたんだ」 土建業とはいえ、最近は建てる仕事よりも壊す仕事の方が多く、 儲けも大きいというのでほとんど解体屋である。 「あれ!あそこブッ壊しちゃったの?」 現場仕事の癖なのか、声の大きい大江戸の声を、群馬が聞き つけた。 つづく
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304 :作者 ◆gby2MQSCmY [sage]:2006/12/10(日) 02:06:43 ID:GLDaiPXG0 - 「おぅよ。大家の爺さんが死んでさ。あすこは地主だろ?」
「岡田さんか?」 「そうよ。で相続税の関係で、アパート潰して、土地売ることに したらしいのよ。息子が」 「岡田の旦那、大事にしてたのになあ」 「最近はそんなのばっかだぜ。先祖代々の土地を守る、なんて 感覚ありゃあしねぇんだよ」 タバコ、峰に火を点け、日本酒を一息に飲むと更に追加して 大江戸は続けた。 「んでよ、場所が場所で、ユンボ(ショベルカー)も入れねぇ 細い路地の奥だろ?困っちまってさぁ。結局人海戦術よ。若ぇの 連れて、ハンマーでボッコンボッコンぶっ壊した。正月から やってんだ。急ぐって言うから」 つづく
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305 :作者 ◆gby2MQSCmY [sage]:2006/12/10(日) 02:12:02 ID:GLDaiPXG0 - 「大変だ…」
「いやもう難儀したよ。普通なら重機入れて一発だろ?現場の 下見もしねぇで仕事請けちゃいかんなぁ…でよ、あすこは三階 建てで、周りは住宅、正月早々あんまり荒っぽいこともできねぇ から、上から順ぐりに壊してったわけさ。そしたらよ、出やがった」 「何が?」 「…死体」 「!」 「現場ぁ止まっちまったよ。参ったなぁ」 「おい、死体って何だよ?」 「壁に埋もれてたんだよ。死体が」 「壁に?」 「壁ハツッたら(壊したら)出てきたんだから」 つづく
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306 :作者 ◆gby2MQSCmY [sage]:2006/12/10(日) 02:17:43 ID:GLDaiPXG0 - 「じゃあ何か、アパートが建った時から埋め込まれてたって
ことかい?」 もう鉄工所の若い連中は無視して群馬は大江戸の話に 興味を示している。店長もカウンターから身を乗り出して 聞いていた。 「いや、それがよー。あのアパートはもう築三十以上は経ってん だ。警察呼んだんだけど、出てきた死体は新しいってんだな」 「…三十年以上前の遺体だったらもう骨でしょうに…」 「いや、ちゃあんと、男か女かも分かったぐらいよ」 「おいおい、どうなってんだよ?壁は普通だったのかい?」 「おぅよ。別段、そこだけ新しく塗りなおしたとか、そんなふうでも なかったって言うぜ。でもな、他にも出てきたんだ。骨」 「…他にも?」 「何体もあったのよ。どれがどの骨だかはわからねぇけど、 頭の骨なら分かるから、それだけでも十個近くあった」 「…同じ壁から?」 つづく
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307 :作者 ◆gby2MQSCmY [sage]:2006/12/10(日) 02:23:09 ID:GLDaiPXG0 - 「そうそう。同じ壁から…」
「おっかねぇ…」 群馬は焼酎を頼み、店長は思い出したようにそれを用意した。 ついでに俺もと、大江戸が頼む。 と、群馬が連れてきていた今日成人式を迎える男が口を開いた。 「あの、それって、二〇三号室と、二〇五号室の間の壁じゃ ないですか…?」 言われて、大江戸はしばらく難しい顔をして、無精ひげでざら ついてあごをさすりながら、指で空を何度も叩いた。 「ひぃふぅみぃ…階段から見て、三つ目の部屋と四つ目の部屋の 間の壁だ。うん。間違いねぇ」 「…二〇三号室と、二〇五号室の間だ…」 「なんだい。知ってるのか。お前?」 「はい。俺、そこ住んでましたから」 「…!」 つづく
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308 :作者 ◆gby2MQSCmY [sage]:2006/12/10(日) 02:30:47 ID:GLDaiPXG0 - 彼は青森から上京して、群馬の経営する鉄工所に
入った。二年前のことだ。 その時、会社の寮はいっぱいで、仕方なく他に 住居を求めて、大江戸が解体したというマンションに 去年の初めまで住んでいたと言う。 ところが、寮に住んでいた一人の男が結婚するにあたり、 退寮したので、すぐにその古いアパートを引き払って 入れ代わりで寮に入った。 「あぁ。あいつが結婚した後にか…」 基本的に寮のことなど仕事と直接関わらない部分は事務の 人間や妻に任せきりで、泰三はその辺りの事情をよく知らない。 「俺は、一階に住んでたんですけど…」 大江戸が続けた。 「うん。住んでる人間は去年の中頃までに全員、追っ払っちまった らしい。ところが、だ…。警察の人の話じゃ出てきた死体が新らし すぎると言うんだなぁ…」 「おい、もうちょっと説明してくれよ」 つづく
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309 :作者 ◆gby2MQSCmY [sage]:2006/12/10(日) 02:38:05 ID:GLDaiPXG0 - 「うん。テッちゃんトコのそのあんちゃんが、出てったのが
去年の頭だろ?ちょうど同じ頃だよ。岡田の爺さんが死んだ。 で、財産分与が色々とあって、相続税の話があって、 アパートを売ることになったのが去年の中頃。その時に岡田の 息子がアパートの住人を追い払っちまった」 「邪魔だもんな」 「うん。それでウチに仕事の依頼が来て、早く壊してくれって 言うんで正月からぶっ壊してる。で、死体が出てきた。だけんど、 去年の半ばから、正月までは誰もいねぇわけよ。無人アパートだ」 「うんうん」 「出てきた死体は、せいぜい死後二ヶ月ぐらいじゃねぇかって」 「…じゃあ誰もいないアパートに忍びこんで、壁に穴開けて、 死体を埋め込んじまったんだな?」 「いや、だから、壁は古いまんまなんだよ。それにアパートは半年の 間きちんと管理されてた。何か悪い連中の溜まり場にでもなって、 火事にでもなったら大変だからって岡田の息子は毎日のように 見回りしてたそうだ」 「じゃあおかしいじゃねぇかよ」 「そうだ。おかしいんだ」 つづく
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310 :作者 ◆gby2MQSCmY [sage]:2006/12/10(日) 02:45:47 ID:GLDaiPXG0 - 群馬と大江戸、店長が無言で考え込んでいると、例の
アパートに住んでいたという若者が口を開いた。 「俺が住んでる時からあのアパートには変な噂があったん です。大家の岡野さんが、縁起を担ぐ人で、一階も二階も 三階も、四号室がないんです」 「…?」 「一〇三号室の隣は、一〇五号室なんです」 「…それが?」 「でも変な噂があって、二〇四号室があるっていう。本当はないん ですよ。二〇三の隣は二〇五だから。でもたまに若い連中が夜 来るんですよ。噂を聞いて。 ポロいアパートだから、みんな誰も住んでないと思って来るのか 何なのか、こっちは次の日仕事だってのに、夜中にワイワイやら れて…一度我慢できなくて、飛び出していったんです。迷惑だから 余り騒がないでほしいって。 そしたら素直に謝ってくれて。でも色々な奴らが来るから、聞いたん ですよ。何で来るのか。 噂になってたみたいなんです。二〇四号室。昼間はそんな部屋は ないけど、夜中のある時間になると現れるって…。それで、心霊 スポット見物みたいな…。そんな感じでみんな見に来てたみたい なんです」 つづく
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311 :作者 ◆gby2MQSCmY [sage]:2006/12/10(日) 02:57:10 ID:GLDaiPXG0 - 「それから気になって、俺は一階なんだけど、二階に上がって
見に行ったことがあるんです。 そしたらある日、あったんですよ。二〇四が…」 吹くはずもない冷たい風が『枡や』の中に吹いた。 「確かに見たんです。ドア、開けたら開きました。空き部屋でした。 ガランとして。何もなくて。怖くなったんで、そのままドア閉めて 入らなかったけど…。 俺は一〇三号室に住んでました。部屋の間取りは全部同じですから、 音で分かるんです。二〇三号室のドアが開く音は真上から聞こえます。 その隣の二〇五のドアが開く音は、風呂場の向こうの方、一〇五の方 から聞こえます。 でも、一度だけ、中途半端な所から音が聞こえたんです。ドアの開け 閉めする音。ちょうど俺の部屋と、一〇五の中間ぐらいの天井から。 噂だと、二〇四号室、入った人間は絶対に出られないって後から 聞きました。やっぱり別の肝試しに来たグループの人から。 みんなが部屋、引き払ってから、来た人いるんじゃないですか? 二〇四号室に…」 店長は、何も言わず暖房の設定温度を二度、上げた。 終
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313 :作者 ◆gby2MQSCmY [sage]:2006/12/10(日) 03:12:21 ID:GLDaiPXG0 - >>312
うぉ!この時間にライブ参加者さんが…。 読んでくれてありがとです^^ なんかキャラクターもヘッタクレもないから 感想のつけようがないね^^;; でも怖がらそうと思って書いたので怖がって くれたら本望です^^ ちょっと、方言を出したので分からない部分も あるのかな…『おっかない』ってわからないですか? 『怖い』という意味です。。他の地方の方には通じない ことがあったので一応…。 余り特殊な言葉は余り使わないでしたが、?なトコ あったら質問して下さい。
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