- 【エロ】山形先生Part6【オカルト】
279 :作者 ◆gby2MQSCmY [sage]:2006/12/09(土) 00:13:46 ID:ajIJITk50 - はしごに、猿のような木製の人形がへばりついている。
老人が指を離すとかたかたと音を立てながら猿ははしごを 下る。それだけのおもちゃだった。 「こんなのは、いらない?」 自分に聞いてくる。少しぼけているのかもしれない。そう考えると 余計に憐れだった。 「僕は、いらないです」 「そうだなぁ」 すると老人は懐から次から次へと、おもちゃを出してくる。ミニカーや プラモデル、民芸品と言ってもよさそうな木製のおもちゃまで。 しかし不思議なのはどう懐にそれらをしまっていたのかという点だ。 異常な量だった。トオルは少々相手が不気味に思えてきた。それとも 何か手品のような仕掛けがあって、からかっているのだろうか。 つづく
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280 :作者 ◆gby2MQSCmY [sage]:2006/12/09(土) 00:19:36 ID:ajIJITk50 - トオルがしばらくその光景を眺めていた。
老人は何か物を出すたびに、これはいるか、これはどうだと 聞いてくるのでいちいちそれを断りながら。 冷たい風が吹く。トオルは一度ぶると震えた。 「ああ。寒いのにつき合わせて悪かったねぇ…」 老人が微笑みながら懐から出したのは、湯気の立つ暖かい 紙コップ入りのココアだった。 「あったまるよ」 「…!」 やはり手品らしい。それにしてもよくできたものだ。トオルは 思わずココアを受け取っていた。 しまった。つい手に取ってしまった。飲まなくてはならない だろう…どうしたものか…そもそも飲めるのだろうか…。 トオルはとりあえず一口舐めてみた。熱いほどのココアだ。 いい香りと適度な甘さがあり、ほんのりと苦いが、カカオの 苦味だろう。無味の毒というのがあるのかどうかは分からないが 今一口飲んだ限りでは全くのココアそのものだった。 つづく
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281 :作者 ◆gby2MQSCmY [sage]:2006/12/09(土) 00:26:12 ID:ajIJITk50 - 「色々出てきてすごいですね。マジックをやられるん
ですか?」 何とかココアを飲まずに済ますには話しかけるのが よさそうだった。苦手だが危機回避の為にはやむを 得ない。 「マジック…?…手品、か。あはは。違うよ。本当は 秘密なんだけどねぇ。まぁいいか。私はね、サンタだよ」 「…あは…」 笑うに笑えない冗談だった。 「クリスマスに間に合わせるつもりで来たのだけれど… 随分遅れてしまった…仕事にならないな…困ったもんだ…」 また溜息。彼は独り言のようにぶつぶつと話し始めた。 親などからクリスマスプレゼントをもらっている子供は彼の 仕事の対象外で、彼の仕事の相手はあくまでクリスマス プレゼントをイブの晩ぎりぎりになってももらえなかった 子供たちだそうだ。 つづく
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282 :作者 ◆gby2MQSCmY [sage]:2006/12/09(土) 00:31:47 ID:ajIJITk50 - しかし日本の子供は最近は特に大事にされて何かしらの
プレゼントを大概もらっている。 そのため随分と仕事は減ったそうだ。 しかしそれでも、彼のプレゼントを待っている子供はいる。 しかし彼のプレゼントでは今時の子供は喜ばないらしい。 「…おもちゃ屋から仕入れてるわけじゃあないからねぇ…。 手作りなんだよ」 「手作り…」 「今さっき色々出しただろ?あれがそうさ。ただ最近はテレビ ゲームとか、携帯電話とか、複雑な物を欲しがる子が多くて…。 作れんのだよ…」 自称サンタによれば懐には何も入っていない。彼が手を突っ込み、 念じることでその場で作成するのだという。よって機械などの複雑な ものは作れないらしい。 頭の少しぼけてしまった老人の話しにしては妙に具体的で、矛盾する 点もない。 トオルは何となく右手の手袋を外して、老人に握手を求めた。 つづく
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283 :作者 ◆gby2MQSCmY [sage]:2006/12/09(土) 00:43:56 ID:ajIJITk50 - もともとおじいちゃん子だったせいか、老人の相手は得意だし、
老人が好きでもある。握手を求めることは気安かった。 「…霧原トオル君だったかな…。触ると心が読まれてしまうん だってね…」 トオルは手を引いた。自己紹介などした覚えはない。老人に 見覚えもない。近所の人でたまたま名前を知っているという ことはあるかもしれないが、右手の力のことは一部の人間しか しらない。 「あはは…驚かんでもいい。子供のことなら何でも知っとるよ」 「…でも僕が何が欲しいか、プレゼントをもらっているかどうかは 分からなかったですよね…?」 「心を読むわけじゃない…。行動を見てるんだ」 彼は普段どこにいるのか、全ての子供の行動を観察しているらしい。 しかしただ行動を見ているだけで心に何を思っているかまでは 分からない。 「…だから、プレゼントは何が欲しいと書いて枕元にでも置いておいて くれると助かるんだがねぇ…」 当然トオルが何ももらっていないのは知っていたが、何が欲しかったのか 聞いてみたくてとりあえずクリスマスプレゼントはもらったか、というところ から話し始めたそうだ。もらっていないと答えることは既に知っていた。 つづく
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284 :作者 ◆gby2MQSCmY [sage]:2006/12/09(土) 00:48:58 ID:ajIJITk50 - 辻褄はあう。
「…じゃあもし、僕が、三十六色のクレヨンが 欲しいと言ったら出せるんですか?」 「…」 無言で自称サンタは言われたままのものを出した。 これは手品ではないだろう。こちらが何を要求するか 彼は予想できないのだから。 「じゃあこのココアも…?」 「うん。食べ物なんかは簡単だよ」 「…チーズバーガー」 「…ほれ」 にこにこと笑いながら、チーズバーガーを出す。暖かで やはり食べられるもののようだ。トオルはとりあえずココアと チーズバーガーを口にしながら自称サンタの隣りに座った。 つづく
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285 :作者 ◆gby2MQSCmY [sage]:2006/12/09(土) 00:54:36 ID:ajIJITk50 - かれは何処から来たのかという質問には答えなかった。
しかしサンタの仕事については色々と教えてくれた。 昔は随分と活躍したそうだ。 本当は日本にクリスマスという風習が入ってくる前から 彼は当然いたらしい。 しかしクリスマスという風習がなければ、子供がクリスマスに 何か物を欲しがるということもなく、当然枕元に靴下をぶら 下げておいたり、サンタ宛の手紙を書いたりすることもなく、 何が欲しいやら分からないので無視するほかなかったそうだ。 ちなみに特に彼の存在は宗教的なものではないという。 「キリスト教って感じがしますけど…」 「…そんなに深い関係はないよ。そもそもイエスの誕生日が クリスマスだと言われておるが、実際は無関係だよ」 「そうなんですか…」 「もっとも私の存在を広めてくれたのはキリスト教だがね」 そういって自称サンタは笑った。 つづく
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286 :作者 ◆gby2MQSCmY [sage]:2006/12/09(土) 01:03:16 ID:ajIJITk50 - 「…そろそろ引退だなぁ…子供が喜ばんものを
あげても仕方がない…」 「…」 貧しい国ではまだかなり活躍しているサンタがいるそうだが 地域ごとに担当が違うと彼はいう。今トオルが話しているのは 日本担当のサンタだ。 ちなみに一部アメリカやイギリスのサンタは失業した者も多い らしい。 「…サンタが失業ってどうなるんですか…?」 「忘れ去られた古い神様と一緒だよ。神様が一番怖いのは 何だと思う?」 人が畏れる神が恐れること。トオルは何だろうと思った。 「信仰する人を失うことさ。誰も信仰しない、誰も拝んでくれない、 みんなが忘れてしまったら、神は神として存在できなくなって しまう。神様も結局人の心に依存してるんだよ」 「そんなもんですか…」 「誰も信じてない、名前さえ知らない神様がいるかいないか、 議論ができるかい?存在の有無の議論さえできない」 つづく
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289 :作者 ◆gby2MQSCmY [sage]:2006/12/09(土) 01:07:10 ID:ajIJITk50 - 「だから、消えてなくなる。だけ」
自称サンタは両手で軽く拳を作って、指をぱっと広げた。 ただ顔は何を儚むわけでもなく、笑っていた。 「それだけ幸せな子供が増えたということだよ」 「…」 「もっとも私がクリスマスに間に合わなかったのでは しょうがないけれどねぇ…。随分遅刻してしまった…」 「…サンタさんはクリスマス以外に働いたらいけないん ですか?」 「いけないことはないけれど…」 「欲しいものがあるんです」 「…テレビゲームは無理だよ」 「違います」 つづく
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290 :作者 ◆gby2MQSCmY [sage]:2006/12/09(土) 01:10:58 ID:ajIJITk50 - 「見たいものがあるんです」
「見たい…?」 「はい。誰にお願いしてもきっと無理です。サンタさんに ならできるかもと思ってました」 「なんだい?」 「目一杯星を降らせて下さい」 「星?」 「はい。雪みたいに。たくさんの星」 「…星…難しいなぁ…。星ってどんなものだい?まさか隕石と いうわけではないだろう?」 目一杯隕石が落ちてきたら日本中がパニックになる。怪我人も 多く出るに違いない。 つづく
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291 :作者 ◆gby2MQSCmY [sage]:2006/12/09(土) 01:29:03 ID:ajIJITk50 - トオルは事細かにサンタに注文を述べた。
「…めちゃくちゃな注文だなぁ…」 「お願いします。是非」 「…最後の仕事になるかもしれん。気合を入れるかな…」 嬉しそうに微笑むと自称サンタはいずこかに消えた。 その日、明け方まで異常気象が日本を襲った。 大量のもみじまんじゅうが降ったのである。目撃者多数。 しかもできたて焼きたての暖かなもので、食べると大変 美味であった。 不思議なことにゆったりと、ひらひらと正にもみじの木の葉の ごとく舞い落ちるそれは、手に取ることはできたが地面につくと ふと、粉雪のように消えてしまい地を汚すこともない。また手に 取ると重さがあるが頭などにぶつかってもやはり雪のように 痛くもかゆくもない。 もみじまんじゅう。確かに星型である。そうか。星はもみじ まんじゅうの味なのかとトオルは妙に納得し、騒ぎが広まり次々に 消えていた明かりが灯って、マンションのベランダや玄関の外に人が 飛び出してくる様子を満足気に見ていた。もみじまんじゅうを頬張り ながら。 終
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292 :作者 ◆gby2MQSCmY [sage]:2006/12/09(土) 01:31:16 ID:ajIJITk50 - 終了時点でスレ番555であります。GoGoGo!ですな。
おめでたいです^^
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295 :作者 ◆gby2MQSCmY [sage]:2006/12/09(土) 02:18:50 ID:ajIJITk50 - >>293
ありがとう^^ROMの方も多いのかなあ。 ずっと読んでくれてるんですね。 嬉しいです。どうもありがとう^^ 携帯からじゃ大変ですよね。読んでくれる だけで嬉しいです。 ブログなんかだとカウンター回せるし、今何人の人が 見ています的な仕掛けもできるんでしょうけど、単に スレッドだとレスがないと見てるんだか見てないんだか わからない。 初めの頃はかなり不安だったんですけど、最近は 慣れたかな…。荒れるよりいいかなぁと。 ともあれどうもでした。またよかったらレス下さい。 時間に余裕がある時にでも^^ >>294 そです^^こちらではコテ名乗ってらっしゃらないので 表立っては表記しなかったんですが。こっち見てる 人って100%あっちも見てるのかなぁ。 本物は食べたことない。ってか本物とか偽物ってあるの? メーカーとか。東京には多分同じようにして作る人形焼と いうお菓子があります。人の形ですが、形が違うだけで 同じような感じです。またもみじまんじゅうもスーパーなどで 普通に売られていますが製造元はこちらのメーカー…。 俺は東京だけど修学旅行は京都奈良、北海道だったよー。
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