トップページ > オカルト > 2006年12月07日 > XngbECxDO

書き込み時間帯一覧

時間01234567891011121314151617181920212223Total
書き込み数0000000000000000008000008



使用した名前一覧書き込んだスレッド一覧
20改めハタチ私メリーさん【六人目の犠牲者】

書き込みレス一覧

私メリーさん【六人目の犠牲者】
38 :20改めハタチ[sage]:2006/12/07(木) 18:07:01 ID:XngbECxDO
 「俺が、お前を殺す……?」
 「ええ、そう」
 メリーは嬉しそうに微笑んだままだ。だが、俺は急激に気分が落ち着いて、というか白けてきた。
 「……馬鹿らしい。自殺ならよそでやれ」
 俺はそう言って話を切り上げようとした。
 「自分で死ぬことが出来れば、苦労はしないの」
 彼女は俺の左手を、ぐい、と引き寄せてきた。
私メリーさん【六人目の犠牲者】
39 :20改めハタチ[sage]:2006/12/07(木) 18:09:03 ID:XngbECxDO
 あまりの力の強さにも驚いたが、それよりももっと驚いたのは、彼女の手の感触。
 固い。その白い手袋の下から伝わってくる指の感触は、まるで棒きれを押し付けられたかのように固い。
 そして彼女は、俺が驚いているうちに、左手の甲を自らの右頬に押し付けた。そこで俺はまた驚くことになる。
 固い。彼女の白い柔らかそうな頬までもが、指と同じように固く、そして何より驚いたのは、その冷たさ。ひやりとして、手から熱を奪い去って行く。まるで白の大理石でも触っているかのような感触。
 ――気味が悪い
 俺が反射的にメリーの手を振りほどくと、彼女は少しだけ悲しそうな顔をした
 「……何なんだ、おまえは」
 左手を右手で擦りながら聞くと、彼女はおもむろに自分の右手の手袋を外し、俺の鼻先に突きつけてきた。
 俺の目に映された手。小さな、細くて華奢な指。だが、そこには無ければならないもの。指紋の類が一切無く、つるりとして光を反射していた。関節の継ぎ目は節くれだち、映画に出てくる中世の騎士の甲冑の継ぎ目にも似ていた。
 「私は、人形よ。お人形さん」
私メリーさん【六人目の犠牲者】
40 :20改めハタチ[sage]:2006/12/07(木) 18:12:05 ID:XngbECxDO
 「昔々、あるところにとても偉い人が住んでいました。偉い人は何体かの人形を作りました。その人形は不思議なことに皆、自分で意思を持って、動いて。まるで人間のようでした。
 しかし人間と違うところがありました。それは、死ぬことが出来ないのです。人形たちは、長い間、数え切れないほどの苦しみを味わい続けて、それでも死ぬことが出来ません。
 だけど、実は人形たちには死ぬ方法が一つだけ用意されていました。それは誰かに殺してもらうこと。
 ただ、それが誰でも良いわけではないのです。たくさんの人の中から、自分を殺してくれる人を探さなくてはなりません。
 人形たちは、自分を殺してくれる人を捜し求めてあちこちへ散っていきました。そのうちの一体は、日本という国へ流れてきました」
 彼女は、子供におとぎ話を語る老婆のように、ゆっくりと話した。
 「……その内の一体が、お前、か?」
 「そう。察しがいい」
 俺の問いに、メリーはにこりと微笑んだ。
 「……馬鹿げている」
 「否定するの?」
私メリーさん【六人目の犠牲者】
41 :20改めハタチ[sage]:2006/12/07(木) 18:16:19 ID:XngbECxDO
 彼女は赤い瞳で俺を覗き込んできた。
 「目の前にある本当の事を、否定するの?」
 幼い見た目とは裏腹に、鋭い事を言ってきた。
 目の前に突き出された手は、無機質な輝きを持って、俺に言葉ではない何かで訴えかけてきた。
 「……しない。しないさ」
 俺はゆっくりと首を横に振った。
 「で? それで? 俺はお前をどうやって壊せばいい?」
 俺が聞くと彼女は、ああ、と言って俺に手の平を見せてきた。
 「今は無理よ。今のあなたに私は殺せない。その内、その時が来るから。それまで待って」
 随分と軽いノリだ。
 「ところで、早速で悪いんだけど」
 メリーはすっ、と一歩後ろへ下がった。
 「あなた、そこにいると死ぬよ?」
私メリーさん【六人目の犠牲者】
42 :20改めハタチ[sage]:2006/12/07(木) 18:21:31 ID:XngbECxDO
 「……は? 何を言って――」
 突然の、あまりにも現実味の無い発言に、香澄は嘲笑して左の頬を吊り上げかけた。

 しかし、直後に割れて散った窓ガラス、その破片の間を縫って飛びすさんできた物体によって、その動作は中断させられる。
 テーブルの上、パスタの隣。香澄の目の前に刺さったのは、一振りのナイフ。鈍色に輝く刀身が、目を見開いた香澄の姿を映し出す。
 「来たか」
 呟くように、そう言ったメリーは、先程までの優雅さも、内包する幼さも既に、そこに持ち合わせていなかった。
 ただ代わりに。見開かれた目に感情の色は無く、その顔にさえ何も映さず。本当に、ただの人形であるかのような、まっさらな表情で、窓の外を睨みつけていた。
 「香澄、よく聞いて」
 不測の事態に硬直する香澄に向かって、メリーは目を合わさずに、母親が子をいなすようにして言う。
 「あなたは私と『繋がって』しまった。これは仕方の無いこと。あなたはこれから一生、『こんな事態』に付きまとわれる」
 「……なんだ、と?」
私メリーさん【六人目の犠牲者】
43 :20改めハタチ[sage]:2006/12/07(木) 18:23:13 ID:XngbECxDO
 香澄は把握し切れない状況の中で、喉元からひねり出すようにして声を出す。
 「いい? 香澄。もし、あなたが平穏な生活を望むなら、誓いなさい」
 彼女は、一言ひとことを噛み切るようにして、言った。
 「しかるべき時、私を、必ず、殺すと」
 「……もし、断ったら」
 呻くような彼の声が、風の吹き込む室内に響く。
 「さっきも言ったように、この先ずっと誰かに命を狙われ続ける。もう、あなたに残された道は二つしかないの。死んで楽になるか、生きて開放されるか」
 「……」
 「さあ、選んで。時間が無い」
 暫く、彼は沈黙を続けた。が、
 「誓う」
 今にも消え入りそうな声で、彼女に告げた。
 「それしか道が無いと言うのなら――」
 今度は、まっすぐに見据えた目で、しっかりと彼女に聞こえるように、告げた。
 「誓ってやる」
 「そう。分かった」
 それだけ聞くと彼女は、薄く微笑んだ。
 「あなたがそう言うのなら、私は」
 そこまで彼女が言ったとき、割れた窓の外から五本のナイフが飛び込んできた。
 「あなたを守る。全力で」
私メリーさん【六人目の犠牲者】
44 :20改めハタチ[sage]:2006/12/07(木) 18:26:20 ID:XngbECxDO
 彼女はさっと手をかざすと、その平を窓の外へと向けて、微妙に上下させた。
 どかどかっ、と硬質な物体同士がぶつかり合う音が聞こえ、そして静寂が訪れた。
 開かれた彼女の手の平。その五本の指の腹にはナイフが浅く突き刺さっていた。
「……私のために、ね?」
私メリーさん【六人目の犠牲者】
45 :20改めハタチ[sage]:2006/12/07(木) 18:31:30 ID:XngbECxDO
今日はここまでです

前回、私の書いたつたない文章に感想をくれた方々、どうもありがとうございます

ところで、これからも小説を書き続けてもおk?


※このページは、『2ちゃんねる』の書き込みを基に自動生成したものです。オリジナルはリンク先の2ちゃんねるの書き込みです。
※このサイトでオリジナルの書き込みについては対応できません。
※何か問題のある場合はメールをしてください。対応します。