- 【エロ】山形先生Part5【オカルト】
171 :作者 ◆gby2MQSCmY [sage]:2006/11/02(木) 00:40:56 ID:NKd9C/Qa0 - おーまとめサイトに『おまけ』として掲載されてる!
ただ画像は適当に探したもので無断転載にあたるので、あると面白いんだけど 消させて頂きました。 わざわざ載せてくれたのにすまんです。 まとめサイト更新してくれてる人って何人もいるの?仕事早いよなぁ…。 びっくりする…。。
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- 【エロ】山形先生Part5【オカルト】
172 :作者 ◆gby2MQSCmY [sage]:2006/11/02(木) 19:12:54 ID:NKd9C/Qa0 - さてここらで怖い話でもするか。
福岡ユウコは髪を後ろにくくって、ジャージ姿で疾走していた。ジャージと いっても最新の、スタイリッシュなものである。 つづく
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173 :作者 ◆gby2MQSCmY [sage]:2006/11/02(木) 19:19:04 ID:NKd9C/Qa0 - 右手に折れれば自宅のマンションへ向かうところを彼女は
一瞬スピードを緩めて左に向かった。 駅の方向である。 軽子沢中学から止まることなく、かなりの速度である。吐く 息が白い。 しかし目的の『枡や』の赤提灯はその光を消していた。しかし、 入り口の戸の擦りガラスからは暖かな灯が漏れている。 何となく様子を伺うと、中に客はいるようで、赤提灯の電球が 切れたか、付け忘れたかしたのだろうと彼女は引き戸を開いた。 「いらっしゃーい」 いつもの店長とは違う声で出迎えられる。アルバイトの青年が 厨房に入って、焼き鳥を焼いていた。客もいつもより少ない。 店長の具合でも悪いのだろうかと思っていると、見覚えのある 背中がカウンターにあった。 山形ユウジロウである。彼女は、ユウジロウの隣に腰を降ろした。 つづく
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174 :作者 ◆gby2MQSCmY [sage]:2006/11/02(木) 19:35:12 ID:NKd9C/Qa0 - 「お疲れ様です」
「萌え…」 「いきなりですか」 悪戯っぽくユウジロウが笑うと、ユウコも笑った。 「お飲み物は?」 「あー…カルピスサワー。氷抜きで。あとししゃも焼いてくれる?それからタコわさ!」 「はーい」 いつもの店長の調子と違うので何か別の店に来てしまったような違和感が ある。それは、店長が不在だからというだけではなく、店全体の雰囲気もどこと なくおかしいのだ。 「…」 ユウジロウはカウンターに肘をついて、左手にグラスを持ち、手首だけ動かして、 ちびちびとよく冷えたチャミスルをやっている。竹炭で濾過されたそれは、くせの 少ない韓国焼酎である。 つづく
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175 :作者 ◆gby2MQSCmY [sage]:2006/11/02(木) 19:42:32 ID:NKd9C/Qa0 - つまみはない。ただちびりちびりと酒だけを飲んでいる。
何人か常連の姿もあったが、みんなそれぞれ飲み方も、 食べ方も遠慮がちで、もう肴を食べ尽くしているのに何も 追加するふうでもなく、手酌でやっている者もいる。 それでも、新しい客や、あまり見かけない客からは色々と 注文が出て賑やかではある。 少ないアルバイトの子たちが世話しなく働いていた。 なるほど、とユウコは思う。店長がいないので、今日はアルバイト 店員だけで切り盛りせねばならず、不慣れであれやこれや色々と 注文すると、店員が手一杯になってしまうので常連たちはそれを 気遣って遠慮しているのだ。 それにしてもどこかおとなしい風情はどうだろう。店長がいないだけで こんなにも空気が変わるものだろうか。 少しぬるいカルピスサワーを一口飲むと、ユウジロウを見た。 さっきの『萌え』は何だったのだろう。何となく、無理矢理、いつも通りの 自分をアピールする為にいったような気がする。 つづく
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177 :作者 ◆gby2MQSCmY [sage]:2006/11/02(木) 19:51:33 ID:NKd9C/Qa0 - 「今日、店長は…?」
遠慮がちに聞くとユウジロウはちらりとユウコを一瞥して、カウンターに 置いたままの右手で、ちょいちょいと店の奥を指差した。 見るとそちらは奥座敷だ。(第四十九夜 『現実態』 参照) 敗北者の席。今日の負け犬の座。そして明日は負けまいと誓うところ。 驚いたことに、そこに店長はいた。こげ茶色のスーツに身を包んでいるが 間違いなく店長だ。 彼の向かいには、ガーゼ地の浴衣を着た、いかにも不健康そうな女がいて、 酒の相手をしている。 店長はたまにふと笑ったり、ひどく哀しそうな顔をしたりしながら、酒を飲んで いた。身体をこわしているのか、女は酒も飲まずただ、少し疲れたように身を 斜めにして、小さく微笑んでいる。 歳の頃からすれば店長と同い年程度、直感で、店長の妻ではないかと思った。 ますますもって異常である。店長がアルバイトに店を任せきりにして、奥座敷で 寂しく酒を飲んでいるのだ。 常連達がおとなしくしているのは彼のせいでもあったのか。 つづく
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178 :作者 ◆gby2MQSCmY [sage]:2006/11/02(木) 20:01:43 ID:NKd9C/Qa0 - 福岡ユウコは、少しさっぱりしているというか、女性らしくないというか、
人の気持ちに疎い部分がある。その点では木下サエに少し似ている かもしれない。 株か何かで大損でもしたのだろうと、鼻につんとくるタコわさを口にした。 店長の作るそれよりわさびがきつかった。 「国士無双ある?」 「冷で?」 「思いっきり熱くして」 「はーい」 グラスの底に残った何滴かのチャミスルを、思い切りあごを上げて、グラスを 真っ逆さまにして飲み干すユウジロウにユウコはししゃもを勧めた。 「一本食べます?」 「あぁ、どうも」 「今日はみんなおとなしいですね」 「うん」 「店長、何かあったんですか?」 つづく
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179 :作者 ◆gby2MQSCmY [sage]:2006/11/02(木) 20:08:12 ID:NKd9C/Qa0 - 小声で聞くユウコにユウジロウは苦く焦げたししゃもの頭を
かじりながら言った。 「キスしてくれたら教えるよ」 頬にユウコのくちびるがが触れた。ユウジロウは特に驚いた様子も見せず、 ただしてやられたというように、苦笑いをした。 「約束ですよ」 「お待ち!」 持てないほど熱い国士無双がカウンターに置かれると、ユウジロウは、店員に 手があいた時でいいから、と告げておでんを適当に二人分頼んだ。 「店長がもともと赤坂の料亭で職人やってたのは知ってる?」 「腕がよかったみたいね」 「まだ店長が赤坂で働いているとき、奥さんが妊娠した」 ちらりとユウコは奥座敷を見た。やはりあれが店長の妻なのか。 つづく
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180 :作者 ◆gby2MQSCmY [sage]:2006/11/02(木) 20:15:27 ID:NKd9C/Qa0 - 「聞いた話だから、正確じゃないかもしれないけどさ、料亭ってのは
予約制だろ?」 「へー…そうなんだ。行ったことないからわかんないや」 「俺だって行ったことないよ」 熱い国士無双のおちょうしを、おしぼりで包むようにして上品に持ち上げると ユウコは酌をしてやる。ユウジロウは少し照れくさかった。 「だから時間が読みやすいというか…しにかくまぁ、奥さんが出産する時には ちゃんと立ち会えるように、料亭の方で配慮してくれたみたいなんだよ」 「うんうん」 二人が会話をしているので、気を使ったのか、店員は何も言わずおでんの器と 取り皿をそっとカウンターに置いた。ユウジロウは喋りながら礼をするように右手を 軽く上げた。 「早産らしくてね。急に陣痛が始まった。あ、おでん適当に食べて」 「あ…ありがとう頂きます」 つづく
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181 :作者 ◆gby2MQSCmY [sage]:2006/11/02(木) 20:21:50 ID:NKd9C/Qa0 - 「奥さん自分で救急車呼んで、病院に行ったんだ」
「店長は?」 「まさか早産だとは思わないから働いてたんだと。ところがトラブルが起こった」 「トラブル…?」 よく味の沁みた大根に少しからしをつけて、ユウコは口に運んだ。 「何でも大事な常連さんの予約が入ってたらしいんだけど、食材が入って こなかったとか…」 国士無双を煽り、半分溶けてしまったような昆布を頬張る。ユウコはまた一杯 注いでやった。自分の酒がなくなったので、レモンサワーを追加すると、 ユウジロウが何やら落ち着かない。 多分煙草が吸いたいのだろうと思いユウコは何も言わずそっと灰皿を滑らせた。 「あぁ、すいません」 「どぞ…」 ラッキーストライクの煙をこれでもかと吸い込み、一気に吐き出す。煙は厨房まで 届いて、換気扇に吸い込まれた。 つづく
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182 :作者 ◆gby2MQSCmY [sage]:2006/11/02(木) 20:31:37 ID:NKd9C/Qa0 - 「店長は目が利くから、慌てて食材を探しに行った。高級料亭だからね。
それなりの素材じゃなきゃだめだ」 「でも赤坂ってそんなにお店ないよね…?」 「うん。ホテルの厨房に駆け込んでまで食材探したらしい」 「すご…」 「そんな時だよ。料亭に電話があった。奥さんが病人に運ばれて、産まれ そうだって」 「えー!」 「携帯もポケベルもなくて、連絡の取りようがない…」 また氷抜きと頼むのを忘れてしまったと、思いつつ、ユウコは汗をかいたグラスの 冷えたレモンサワーを喉をこくんと鳴らして一口飲んだ。 「随分経ってから店長は戻ってきた。食材を持ってね。魚だか何だったか。ところが もう時間はぎりぎりだった」 「ぎりぎりってどっちが?」 どっち。料亭の客の予約か、妻の出産か。 つづく
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183 :作者 ◆gby2MQSCmY [sage]:2006/11/02(木) 20:36:59 ID:NKd9C/Qa0 - 「どっちも…かな。仲間はみんな病院に行ってやれと言ってくれた
そうだよ。でも職人が一人減ればそれだけ準備も遅くなる」 「…」 「どうせ間に合わないと思ったんだろうな。店長は仕事を選んだ」 「…仕事…」 「きっちり仕事を終わらせた店長は、慌てて病院に行った」 そこまで言うと、ユウジロウはそろそろ程よくぬるくなった国士無双を 手酌で、三杯、連続で飲み、おでんのこんにゃくを口に放り込んだ。 咀嚼の時間がまどろっこしい。 ユウコは次の言葉を待った。 「死産だった」 「!」 つづく
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184 :作者 ◆gby2MQSCmY [sage]:2006/11/02(木) 20:43:45 ID:NKd9C/Qa0 - 「別に誰が悪いわけじゃない。悪いとすれば運が悪かっただけだ。
だけどそういうわけにもいかんのかな。店長は自分を責めて、 奥さんも自分を責めた」 「奥さんは心労で病気がちになって、寝たきりってわけではないけど、 床を蒸す、っていうのかな…」 「『床に伏す』です」 「ああ、そうか。さすが国語の先生」 少し酔ったのか赤くなった顔でユウジロウは恥ずかしそうに乾いた笑顔を 見せた。 「それで店長、決めたんだ。料亭をやめて、ここに店を出そうってね。ここなら 通勤しないで済む」 枡やは一階が店舗スペースだが二階は居住スペースになっていて、店長は この店の二階で暮らしている。それは福岡ユウコも知っていた。 つづく
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185 :作者 ◆gby2MQSCmY [sage]:2006/11/02(木) 20:51:46 ID:NKd9C/Qa0 - 「奥さんの面倒を見ながらってことね?」
「うん。そう。一時は奥さんも店を手伝えるぐらいになったんだけど やっぱり調子は良くなかったみたいで」 国士無双の最後の一杯をちびちびやっているユウジロウから目を 反らし、奥座敷の店長を見る。相手の女性。ガーゼ地の浴衣。 まだ奥さんの調子はよくないんだ。だからあんな恰好で…。 もう熟年夫婦といって差し支えない年齢に至っている。もう子は求められ ないだろう。二人の寂しげな様子はそういうことか。 ユウコはレモンサワーを少し多めに飲んだ。いつもよりすっぱく感じた。 「だから、毎年今日になると、店長、奥座敷に引っ込んで一人で呑むんだよ。 奥さんの、命日にね」 終
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188 :作者 ◆gby2MQSCmY [sage]:2006/11/02(木) 21:19:52 ID:NKd9C/Qa0 - >>186
最近バカ話ばかりだからね…。こういうのもやっとかんと…。 書いててちょっと辛いですけどね。もともと悲劇は苦手です。 >>187 かなりごまかしたつもりなんだけどなぁ。悔しいね。俺が 推理小説書けないのもそのへん。構成下手なのかな…。 バレるのよね^^;; 読んでくれてありがとう。
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