- : 【エロ】山形先生Part4【オカルト】
526 :作者 ◆gby2MQSCmY [sage]:2006/10/16(月) 00:07:34 ID:UkB9bn8C0 - さてここらで怖い話でもするか。
鬼塚ケンシロウは十二畳の広いワンルームマンションで一人、 苦手なパソコンのキーボードを叩いていた。 つづく
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527 :作者 ◆gby2MQSCmY [sage]:2006/10/16(月) 00:21:02 ID:UkB9bn8C0 - 未だwindows98を使っている。それだに満足に使いこなせていないのだった。
久しぶりにインターネットにつなぎ、彼は、検索サイトに『自殺』というキーワードを 入力していた。 両手の人差し指をゆっくり、丁寧に使って。 一時は無法地帯などと呼ばれ、様々な情報が飛び交っていたが、今となっては それほど凄まじい情報に容易にたどりつくことはできず、彼は溜息を漏らしていた。 新聞には確かに、銃が密売されていた、法に触れる薬物が売買されていた、自殺者が ネット上で集って集団自殺をしたという事件が掲載されてはいるが、実際にそういった 情報にたどりつくには、ある程度のタイミング、そして運が必要である。 彼は、一緒に死んでくれる仲間を探していた。 文部科学省の役人が学校に訪れている時に謎のテロ集団に襲撃されね校長室を占拠 された上に、生徒は皆避難したにも関わらず、自分だけは翌朝まで縛られ、校長室の 床に転がっていたのだ。 ただでさえ、不祥事を起こして、給料を差し止められている最中だというのに。 その上、異動願いは不受理となった。軽子沢中学に残れというのだ。 58歳。童貞。彼は絶望の淵で、死を選択した。 しかしこのまま孤独に死ぬのも嫌だった。 つづく
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528 :作者 ◆gby2MQSCmY [sage]:2006/10/16(月) 00:32:48 ID:UkB9bn8C0 - 何時間経っただろうか。あるサイトに行き当たった。やはり自殺志願者を
募る掲示板だった。 今までも幾つかそういったサイトは見たが、既に廃れているのか、最後の 書き込みがもう一年も前のものだったり、色々と荒らされ、滅茶苦茶な 書き込みばかりが並んでいたりと、ろくなものがなかった。 ひどいものになると、自殺志願の若い女性に対しては、死ぬ前にやらせろだの、 簡単に死ねる薬を販売します。先払いでお願いしますなどと、振込先の口座番号 までもが載っていることもあった。恐らくそんなところに注文を出したところで金を むしり取られるだけだろう。 またどうせ似たようなものだろうと掲示板に入ると、妙な表現だがなかなか盛況で、 一緒に死にましょうと仲間を募るもの、また止める者、さまざまな書き込みが毎日の ようになされている。 その中でも、定年退職と同時に妻に逃げられ、生きる希望も収入も失い、死にたいと いう、六十台の男の書き込みが気になった。 相手が少し年上だが同世代である。彼は自動車も所有しており、既に練炭など準備は できているという。適当に気が済むまで、関東近県をドライブでもして、最期の想い出と して、死にましょう、とあった。ただクルマの制限人数の関係で、募集は四名までの 先着順。連絡は直接メールで、とのことだった。 つづく
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530 :作者 ◆gby2MQSCmY [sage]:2006/10/16(月) 00:58:24 ID:UkB9bn8C0 - ケンシロウはすぐにメールを送った。
やっと夜になった送られてきた返信には、待ち合わせの時間と場所が書かれていた。 もう彼が四人目、最後だという。 間に合ってよかったという気持ちと、これで最期か、意外と呆気ないものだなという気持ちは あったが、不思議と恐怖はなかった。まるで歯医者の予約を取った、程度の感情しかない。 彼は自分の一生、自分の命について考えながら、いつの間にか眠っていた。 待ち合わせの時間までは余裕があったので、彼は学校に体調不良でしばらく休むという連絡を いれ、遺書を記した。三千万円の貯金と、株券など合計で七千万程の資産がある。独身で、家も クルマも趣味も持たず慎ましくやってきた結果だ。彼はこれを全て学校に寄付するつもりだった。 『…銅像の一つでも建ててくれれば嬉しいな…。でも自殺じゃそうもいかんかな…』 彼は駅へ向かった。 待ち合わせの時間。中途半端な時間である。午後三時。主催者のメールによれば、とにかく ガソリンがなくなるまで、都内の夜景を見たり、どこか景色のいい港から日の出を見たり、 山か、寺院を回るなどして、明日の夜、ひっそりと静かな森の中で練炭による、一酸化中毒死を しよう、ということだった。ケンシロウはそのプランも気に入っていた。 夜は六本木ヒルズか、レインボーブリッジ、御台場のフジテレビ社屋なども見ておきたいな。 朝やけは横浜か横須賀辺りで。明日の日中は鎌倉か、富士山がいい。彼はわがままながら そんなことを考えながら電車に揺られる。 つづく
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531 :作者 ◆gby2MQSCmY [sage]:2006/10/16(月) 01:11:32 ID:UkB9bn8C0 - やがて待ち合わせの駅についた。いい時間だ。ある程度余裕があったので、
最期に何か記念に残るものを食べておこうと、モスバーガーに入った。 余りに慎ましいが、年柄、ファストフードには縁があまりなかった。子の一人 でもいれば口にしたのだろうが、一度食べておきたいとは思っていたのである。 注文の仕方もよく分からず、セルフサービスとはこういうものなのかと実感しながら なんとか、想い出にハンバーガーを食べることができた。 シェイクなるものも飲んでみた。なるほどソフトクリームをもう幾らか柔らかく溶かして ストローで飲むとは考えたものだと今更ながらケンシロウは感心するのである。 午後三時。待ち合わせの時間になったが、ついぞクルマは現れなかった。彼は都内に しては寂しい駅前で、小一時間立ち尽くしていた。 主催者のメールアドレスを携帯電話に打ち込んでおくべきだったと思ったが、やり方も よく分からず時既に遅く。彼は待ちぼうけをくう。 と、切符の発券機の前にたたずむ中年女性の姿が気になった。やはり辺りをきょろきょろと 気にしているようで、思い出せば自分がハンバーガーショップから駅に戻ってきた頃から ずっとそこにいる覚えがある。 何となくきまぐれで、ケンシロウはその女性に声をかけた。中年とはいえ、自分よりずっと 若い。まだ四十がらみの、艶気を残す大人の女だった。 「あの、失礼ですが、インターネットで…?」 つづく
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533 :作者 ◆gby2MQSCmY [sage]:2006/10/16(月) 01:21:15 ID:UkB9bn8C0 - 女は少し戸惑った様子だったが、うなずいた。しかしインターネットといっても
色々ある。ケンシロウは意を決して訊ねた。 「…あの、自殺の…」 少し恥ずかしそうにしながら女は、一言だけ 「はい」 と言った。ケンシロウは簡単な自己紹介をして、どうやらすっぽかされたらしい ということを彼女に伝えた。彼女もそのようですね、と答えた。 バス停のベンチに座り、しばらく二人で話すうち、意気投合し、寒さもあって、もう 主催者のクルマは来るまいと、駅前の適当なレストランに入る。 女は夫を若くに亡くしていた。長男も病死し、次男もいるが、まともに家にも帰らず、 果たしてどこでどんな生活をしているのか、彼女も分からないと言う。 ケンシロウも身の内を明かす。独身で、女性と付き合ったこともなく、ずっと寂しいと。 そして女を励ました。亡くなったとは言え愛する人と一時でも共にいれたことは幸せな ことだ。私はずっと一人。たった一人で生きてきた。 女はむしろ一人の方が気が楽だと言う。愛する相手がいなければいなでそれはそれで いい。ただ一度愛してしまうとそれに捉われてどうしようもなくなる。そしてその愛の結晶 ともいえる、次男の姿を見る度に、愛する人の面影を見てしまう。 つづく
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534 :作者 ◆gby2MQSCmY [sage]:2006/10/16(月) 01:29:01 ID:UkB9bn8C0 - 結局、二人はお互いが、それぞれどれだけ幸せか、言い合っていた。
あなたの方が幸せだ、いやきみの方がしあわせだ。 そんなことを話しているうちに馬鹿馬鹿しくなってきて、二人笑顔になり、 では私たちは幸せなのだね、という結論に至る。 二人は安物ではあるがワインで乾杯し、散々不幸話を言い合ううちに気が すっかり楽になっていた。 「…あなたに会えたことは、死ぬことより価値があったかもしれない」 くさいと思いつつも、正直な気持ちであった。むしろ、自殺グループの主催者が 現れなかったことに、感謝さえしている自分がいる。 「…そうかもしれませんね」 「もう少し、生きてみませんか。お互い人生半分。あと半分で、どうせ死ねるんです」 女はそうですね、と上品に笑った。笑ったのは自分はともかく、ケンシロウは人生半分 というには少し行き過ぎていた気がしたからだ。 二人は酔った。その頃にはちょうどいい時間。大人の男と女の時間だった。 つづく
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535 :作者 ◆gby2MQSCmY [sage]:2006/10/16(月) 01:34:08 ID:UkB9bn8C0 - 長野シュウイチは、今まで皆勤、一度も学校を休んだことがない校長が
休むと聞いて、なにやらただならぬものを感じ、尾行していた。 そして彼は見た。軽子沢中学校校長。五十八歳定年間際にして独身。 童貞の鬼塚ケンシロウが、まだ四十台の女とホテルに入っていくのを。 驚くべきことだった。余りにショッキングで記事にできない。 新聞委員会への報告もためらわれた。 何故ならば。 ケンシロウとホテルに入っていった女が、新聞委員会委員長、編集長、 的場リュウジの母親だったからだ。 終
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536 :作者 ◆gby2MQSCmY [sage]:2006/10/16(月) 01:36:07 ID:UkB9bn8C0 - 途中(>>533)で気付いた奴がいたら尊敬する。(笑)
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539 :作者 ◆gby2MQSCmY [sage]:2006/10/16(月) 01:59:34 ID:UkB9bn8C0 - >>537
こんな時間だから寝てる人も多いでしょ。明日(ってか正確には今日だけど…) 驚けって感じで(笑) >>538 合いの手サンクス!特に>>529はすごい綺麗だった。初めて見たわ。愛してる。 とりあえずもうオカルトはあんまり気にしないことにしたから(笑) あと、雑談スレ 見てもらえば分かると思うけど、自分的には文章を書く仕事が将来的にしたいし、 もういい歳なんで、色々と懸賞出したりするのに文章書いてて、そっちの都合も あるんで、多分毎日投下はしないから期待しないでね。 本当はこっちで投下した作品を、懸賞に出せればいいんだけど、著作権の 問題とというか、ほぼ全ての懸賞が『未発表の作品に限る』って条件出して るんで無理なのよね。 そんなんで。前作みたいな勢いはないと思うけど。その分『質』を高めたいと 思っております。よろしくね。
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543 :作者 ◆gby2MQSCmY [sage]:2006/10/16(月) 15:03:27 ID:UkB9bn8C0 - >>540
…なんか分析されると照れるな…そこまで読み取ってくださるなら弱点も 教えてくれると嬉しいです。優しくね。じゃないと泣いちゃうから…。 >>541 はーい。頑張るね^^ ありがとう。 >>542 そんな板あったんだ…今見てきたけど色んな意味ですごいな…。俺の書いたの なんかクソミソ言われそうだ…。こわいこわい…。
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545 :作者 ◆gby2MQSCmY [sage]:2006/10/16(月) 19:51:42 ID:UkB9bn8C0 - >>544
『2ちゃんねる 創作文芸板』で検索したら出るよ。普通のブラウザで ちょっと見た程度だけど。 出版は大変だよぉ。本になるんだもん。自分の書いたことが。ましてや それでゴハン食べていこうなんて…。 でももう俺には他の選択肢がなかったりする(笑)不器用だし体力もないし…。 まあやるだけやって駄目なら飢え死にだ。
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548 :作者 ◆gby2MQSCmY [sage]:2006/10/16(月) 22:07:49 ID:UkB9bn8C0 - >>547
ありがとうございます。頑張ります。もし書店に並ぶようになったら お知らせしますので、買ってくれとはいいません、私の本をせめて 目立つ場所にこっそり移動させておいて下さい(笑)
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