- : 【エロ】山形先生Part4【オカルト】
455 :作者 ◆xDdCPf7i9g [sage]:2006/10/13(金) 14:10:01 ID:5hWl08T/0 - 百
霧原トオルは天井を見据えていた。埋め込み式の照明は消えている。 薄手のカーテン越しに入ってくる陽が鮮やかに室内を照らしているはずだった。 つづく
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456 :作者 ◆xDdCPf7i9g [sage]:2006/10/13(金) 14:22:34 ID:5hWl08T/0 - しかし高熱のせいだろうか。視界が全体にセピアがかって見える。
部屋の空気もいつもよりとどんよりとして何か不潔に思えた。 突然今朝になって体調を崩し、自ら学校に電話をして、薬を飲んで 眠った。異様に疲れていた。そのまま日が暮れるまで寝ていようと思う。 ところが目が覚めてみればまだ十時を過ぎたあたりだった。 身体がだるい。寝ようと試みて何度も寝返りをうつが全く眠れず、そのまま 三十分ほどじっとしていた。 しばらくして、何か人の叫ぶのを聞いた気がしたが、構わずそのまま寝転がって いるとやがてまどろみが訪れた。 瞬間、目が醒めた。 右手がぴりぴりと痺れる。 「…サエ…」 恋しくなった。体調が優れないためか、何なのか、唐突に木下サエに会いたくなった。 何か不安を感じる。 愛する人が、しばらくの間、海外留学へ行くことになったりするとこんな気持ちになるの だろうか。トオルは何となくそう思った。 つづく
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457 :作者 ◆xDdCPf7i9g [sage]:2006/10/13(金) 14:31:27 ID:5hWl08T/0 - 右手の痺れがひどくなっていく。
単なる風邪ではなく何か神経系の病気を疑った。脳のどこかに異常が あるのかもしれない。 先日テレビで見た、海外の不幸な出来事を思い出す。少年がバスケットボールを していて、たまたま転び頭を強く打った。 その時は何ともなく、家に帰ってからも異常なく食事を摂った。しかし猛烈に眠くなり 毎日シャワーを欠かさなかった彼はベッドで寝入ってしまう。朝起きると足にしびれを 感じたがそのまま登校した。そして彼は授業中に居眠りをし、そのまま亡くなった。 そんな事件だった。やはり病院に行くべきか。 眠いが眠れず、遂にトオルはベッドから抜け出した。途端、痺れが治まった。 「あれ…」 もう一度寝転がってみるが痺れはない。気のせいかともう一度起き上がろうとすると、 ある一瞬、痺れを感じた。 気になって、手を振ったり、上げたり下げたりしていると、手がある方向に向いた時だけ、 痺れを感じることが分かった。 次に彼は手を床と水平にまっすぐに伸ばし、身体を回転させてみた。するとやはりある 一点で痺れを感じる。 その手の遥か先には、彼の通う軽子沢中学があった。 つづく
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458 :作者 ◆xDdCPf7i9g [sage]:2006/10/13(金) 14:39:07 ID:5hWl08T/0 - 彼は制服にも着替えず、寝巻きの上からコートを羽織っただけの
かっこうで、学校へ向かった。 頭が高熱で朦朧とする上、学校の方へ手をかざすと何か多くの思念が 複雑に絡み合ったどろどろとしたエネルギーを感じた。その度に急激に 体力を奪われるようで、彼は自転車にも乗ることができず、ひたすら よろよろと歩いて学校への道を急ぐ。 平日の午前中とあってすれ違うタクシーもない。あっても既に誰か客を 乗せている。 近づくにつれ、右手からは容赦なく、わけの分からない、ただし決して良くはない 入り乱れた思念が流れ込んできて彼を苦しめた。 近づけば近づくほどにその歩みは遅くなる。 行ってはならないという感情と行くべきだという感情のジレンマの中で彼は身体 全体を引きずるように、それでも学校に近づいていく。 つづく
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459 :作者 ◆xDdCPf7i9g [sage]:2006/10/13(金) 14:45:15 ID:5hWl08T/0 - 途中、何度も道端に吐いた。胃の中は空っぽで、ただ酸っぱい
わずかな胃液を何度も吐いた。 何度か誰かに声をかけられた気がするが気にも留めなかった。 右手はおろか、鈍感な左手さえ、その異様な信号を受け取っている。 恐らくこの場に斧があったなら、彼は恐らく自らの右手を切断しただろう。 それほどの苦痛を右手は彼に与え続けた。 坂を昇りきると、眼下に学校が見えるはずだったが、そこにあったのは 灰色のもやだった。 彼は急いだ。後ろから何か音がして、自分の横すれすれにクルマがエンジンを ふかして走り去っていく。すれ違い様、運転手から何か言われた気がするが、 理解する余裕がない。 トオルは道のど真ん中を力なく歩いていた。 つづく
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460 :作者 ◆xDdCPf7i9g [sage]:2006/10/13(金) 14:52:42 ID:5hWl08T/0 - 目は充血し、口元からは唾液か胃液か、何か液体を滴らせている。
そこに普段の美少年の姿はなかった。髪も激しく乱れていた。 学校の校門前にはちょっとした人だかりができている。 軽子沢中学の校舎全体が、灰色のガスか霧のようなもので覆われているのだ。 天気は快晴である。 通りすがる時間のある者は興味深げに、こんなこともあるのかとその様子を 見ていた。 ある者が面白がって、もやの中へ入っていったが出てこない。どうしたのかと 続いた者もまた出てこない。 もやの中はしんと静まり返り、何の音もせず、入っていった者に、声をかけても 返事はなかった。 校庭の半分ほどはもやから出ていたが、体育などをしている生徒もいないようだ。 見ている者も何かただならぬものを感じてはいたが、果たして誰を呼ぶべきか、 どこに連絡すべきか迷っていた。 確かに事件ではないから警察を呼ぶ必要もない。怪我人がいるわけでも火の手が あがっているわけでもないから消防でもない。 市役所だ、保健所だ、気象庁だ、と色々と野次馬の中で話はもたれたが、誰もその 連絡先を知らなかった。 つづく
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461 :作者 ◆xDdCPf7i9g [sage]:2006/10/13(金) 14:59:04 ID:5hWl08T/0 - 「お、おいなんだよ、押すなよ!」
その野次馬の群れにトオルは突っ込んで、人を掻き分けて 校舎の異常を見た。 後ろでは彼の異常な雰囲気、強引な行動をぶつぶつと非難する 声があったが彼は耳を貸さなかった。 校門を入る。 「おい、お兄ちゃん危ねぇぞ!入った奴は出てこれないんだ!」 中年の男が言うとトオルはそこで立ち止まり、ゆっくり手を、校舎に、 もやにかざした。 強烈な思念が流れ込んでくる。そりは余りに混乱していた。同時に 数十人の人間から耳ともでぎゃあぎゃあと騒がれているような不快感。 ただその中に、一際大きい意思を感じた。しかしそれは、大群衆の怒号の 中から、一人の人間の発する声を聞き分ける行為に等しい。 トオルは頭が割れそうになるのに耐えながらじっとその一人の声を聞いた。 つづく
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462 :作者 ◆xDdCPf7i9g [sage]:2006/10/13(金) 15:05:48 ID:5hWl08T/0 - そしてそれは短時間ではあったが強烈にトオルの頭を叩く。
彼は告げていた。それは三度同じ事を繰り返し、消えた。 「…山形先生…」 充血した目から涙を流し、トオルは歩を進めた。後ろから彼の無謀を 止める声がしたが、力づくで連れ戻そうなどという勇敢な者はいなかった。 しかしそれはかえって好都合だった。体力的にはもうぎりぎりである。 もやの外側にクラブハウスの一部が飛び出している。 一番手前の新聞委員会、編集室。トオルはそこへ入り、的場リュウジの 散らかったデスクの上を漁り、それを見つけた。 つづく
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464 :作者 ◆xDdCPf7i9g [sage]:2006/10/13(金) 15:16:40 ID:5hWl08T/0 - プラスチック製のカバーが取り付けられた赤いボタン。カバーはどこからも
開けることができず、トオルはそれをデスクにあった置時計で破壊した。 そして赤いスイッチを押す。 ユウジロウからの最後のメッセージ。 『編集部、的場リュウジのデスクにある『自爆スイッチ』を押し、三分以内に逃げろ』 それを三度だけ繰り返して、ユウジロウの思念は消えた。 トオルは濡れた目で赤いボタンを三分間見続けた。 『軽子沢中学爆破事件の続報です。今だはっきりしたことは分かっておりませんが、 爆発直前、校舎が濃い霧のようなものに覆われていたという証言が多数あることから、 警察は天然ガスによる爆発の可能性も考えられるとし、事件と自然災害、両面からの 捜査を進めています。校舎全体が跡形もなく吹き飛んでおり… あ、お待ち下さい。現在速報が届きました。軽子沢中学爆発事件についての速報です。 消防は生存者一名を確認。救出しました。繰り返します。生存者一名が救出された 模様です。えー…名前は…出ませんか…?はい。名前も明らかになっているようです。 生存者の名前は…』 完
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