- : 【エロ】山形先生Part4【オカルト】
386 :作者 ◆xDdCPf7i9g [sage]:2006/10/11(水) 00:12:34 ID:B0OjX5jJ0 - 食事は外で済ませてきた。ゆっくりと風呂に入り、化粧水をはたいて、
テレビのニュースを見終えると、電灯を消して、ベッドに入る。 枕元に置かれたスタンドを着け、いよいよ『ブックオフ』の袋から、謎の 本、『◆xDdCPf7i9g』を取り出した。 タイトルは面白いが内容はどうだろうか。単に奇をてらっただけの駄作 かもしれない。 とりあえず前書きによれば、この本のタイトルは 『菱形スモールエックス・ディーディーシーピーセブンアイナインジーヤマガタ』 と読むらしい。インターネットの『2ちゃんねる』、『オカルト板』でひっそりと四ヵ月 近くに渡って連載された、全百話に及ぶ、 『なんともいえない話』(と前書きにある) だという。福岡ユウコは少しがっかりした。まずプロによって書かれたものでは ないこと。また『2ちゃんねる』発祥ということで、話題になった『電車男』のような ものかと思う。 当然彼女も売れ筋の本には大概目を通しているので『電車男』も読んだが、 果たしてどうも何が面白いのやらよく分からず、まず小説化されていないこと、 また時折現れるアスキーアートなども余り好みではなかった。 つづく
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388 :作者 ◆xDdCPf7i9g [sage]:2006/10/11(水) 00:27:06 ID:B0OjX5jJ0 - 前書きには
『エロとオカルトの融合。正にエロ怖いの世界が展開』 なる謳い文句があったが確かにその通り。しかし少し下品が過ぎる 気がして嫌な気分になった。ただ、主人公である山形ユウジロウという 教師のキャラクターが妙に自分の知っている同姓同名の教師に似ている。 何話か読み進めたが彼は余りに似すぎていた。 彼女は思った。これは自分の学校の生徒か教師か、とにかく関係者が 自分の学校をモデルにして書いたのではないか。 興味は沸いたが、ひどい文章である。これでよくも書籍化できたものだと適当に ぺらぺらと眺めていると、『福岡ユウコ』なる人物まで出てくる。 間違いない。これはうちの学校の関係者が書いたものだ。面白くはないが自分が どうも美人女教師として描かれている。意外なところで自分と出会い、福岡ユウコは 照れくさかった。 今一度彼女は本の頭から、隅々を読んでみることにした。山形ユウジロウがいて、 その妹にアカネがある。そしてアカネは教育実習生としてやってくる。 事実である。ただ、そこに書かれている山形ユウジロウの死については、虚構だ。 そんな話は聞いたことがない。 つづく
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389 :作者 ◆xDdCPf7i9g [sage]:2006/10/11(水) 00:35:41 ID:B0OjX5jJ0 - 虚構と事実が複雑に絡み合ってこの物語はできている。
文章はひどく稚拙ではあるが、ユウコは夢中になってページを めくった。 知りえないこともある。青木先生が山形先生に暗視スコープを 貸してノゾキに行かせた?まさか。あの明るいが真面目そうな 青木先生がノゾキなんて。 しかし次第に福岡ユウコは蒼褪めるのである。はじめてユウジロウに 誘われ『枡や』に行った日の出来事。彼を部屋に招き、抱かれかけた。 「…うそ…」 誰にも言っていない。誰が知っている?知っているのは自分と山形先生だけだ。 だとすれば。 書いているのは、主人公である山形ユウジロウ、本人。 しかも話数を重ねるに従い文体は整えられ、ある程度まともな物語へと発展する。 そして同時に虚構部分は減り、現実の話ばかりが目立つようになる。 つづく
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390 :作者 ◆xDdCPf7i9g [sage]:2006/10/11(水) 00:50:41 ID:B0OjX5jJ0 - しかし中には山形ユウジロウが関係しない話も出てくる。
ユウコはわけがわからなくなった。 しかも、校内では謎、警察でさえさじを投げた事件の真実が 幾つも書かれている。例えば井上マユの死。 悪魔を呼び出したと書かれているが虚構なのだろうか。そうだ。 そうに決まってる。 話は次第に広がりを見せる。ホーク有吉。有名なAV男優だ。 こないだ死んだとワイドショーで話題になった。そんな人まで 登場するのか…しかも実名で…。 山形ユウジロウの過去、アカネの過去。アカネは妹ではなく、ユウジロウの 娘であるという記述。 にわかには信じがたいが、年齢の差など全て辻褄が合ってしまうのだ。 やはりこれを書いたのはあの山形ユウジロウ本人だろう。 村野マユミによる山形ユウジロウ刺傷事件。これも事実だ。しかし刺した 村野マユミの心理描写までなされている。これもまた想像なのだろうか。 つづく
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391 :作者 ◆xDdCPf7i9g [sage]:2006/10/11(水) 01:03:17 ID:B0OjX5jJ0 - 徳島教頭の過去。霧原トオルと木下サエの性癖。的場リュウジ、校長、
ユウジロウによるノゾキ…。 あの事件は校長がホモセクシュアルで霧原トオルに性的いやがらせを した事件ではなかったのか。 三ヶ月給料が支払われないのは事実だ。その話は聞いている。しかし その裏話としてこんな話があったと想像できる想像力…。 完全に山形ユウジロウによる著作だと判断した彼女であったが、その次の 話で、そのほぼ確定していた仮説を捨てざるを得なかった。 『枡や』、群馬泰蔵、通称『テッちゃん』から聞いた事務所荒らしの話。あれは その後誰にも話していない。自身の手だけを残し逃げた事務所荒らし。 違う。山形ユウジロウによって書かれたものではない。いや、『枡や』の店主が 後に、彼に、こんな話があって、と伝えた可能性も考えられるが…。 そこで彼女はあることに気が付いてしまったのである。 決してこの本はあってはならないのだ。 なぜならば、その『枡や』での話から、一月も経っていないのである。そして その話は七十七話とある。全部で百話。そしてこの一連の物語はほぼ一日 一本のペースで書かれたと前書きにあった。 つづく
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392 :作者 ◆xDdCPf7i9g [sage]:2006/10/11(水) 01:16:01 ID:B0OjX5jJ0 - 全く計算が合わないのだ。なぜ一月も経っていない実際の話が、既に
書籍化され、ましてや古書として売られているのか。この後どうなるのか。 時間も気にせず彼女はページをめくり続けた。 ホーク有吉が死んだ。ほんのついこないだの話だ。しかも事の仔細まで 書いてある。アダルトビデオ製作会社『モイライ』襲撃事件。それも記憶に 新しい。犯人は今だ見つかっていない。 もし書いている人間が山形ユウジロウ本人だとしたら丸きり犯行声明では ないか。 ページが進むにつれ、今現在に迫ってくる。彼女はめくる指を抑えたかったが 好奇心には勝てなかった。 バリゴン。話題になった。その犯人が新聞委員会? バスケットボール部員の事故。一条マイの死。本当についこないだの話では ないか。まだページは残っている。 しかし七十七話を最後に、ぷっつりと自分が登場しなくなっていた。このまま 百話になった時自分はどうなっているのだろう。誰が書いているのかしらないが 忘れられているのだろうか。 しかしそれは百話を目前にして唐突に現れた。 福岡ユウコは苛立っていた。かなり初期から登場するレギュラーメンバー ながら、最近めっきり名前が出ない。 終
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393 :作者 ◆xDdCPf7i9g [sage]:2006/10/11(水) 01:17:32 ID:B0OjX5jJ0 - …やりたいこと分かった?(笑)
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395 :作者 ◆xDdCPf7i9g [sage]:2006/10/11(水) 01:33:51 ID:B0OjX5jJ0 - なんか予定してたオチと全然変わってしまったんだが…
まぁいいかってところで…。なんか『世にも奇妙な物語』とかに ありそうだし、中学生辺りの子でも思いつきそうな話で…。 申し訳ない。力量不足でした。 合いの手たくさん入って今夜は楽しくかけました。ありがとう^^
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397 :作者 ◆xDdCPf7i9g [sage]:2006/10/11(水) 01:47:45 ID:B0OjX5jJ0 - >>396
> いよいよ、ラスト3話ですね > 本日も大変興味深く読ませていただきました! これまた…。興味深いというのは…。お褒め頂いていると受け取って よろしいのでしょうか…。何となく今回の話は自信がもてません。 ラスト3話。もう内容は固まってるので明日3連続投下してもいいん だけどね…。 1日で終わらせるか3日かけるか…。 いずれにせよ、九十八話に相当する話は多分かなり短い話になると 思います。あくまで最終回の導入部分ですから…。そのへんお許し ください。
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400 :作者 ◆xDdCPf7i9g [sage]:2006/10/11(水) 03:08:12 ID:B0OjX5jJ0 - >>399
えー!一昨日!そんな人もあるのか…。いやある意味ショックだわ…。 毎日投下はもう無理だと思うけど、それなりに需要があればパート2 なり別の話なり書く余裕は全然ありますので、もしよかったら雑談スレの 方に続編希望の旨、一筆頂けると幸いです。 他の方も続けて欲しいなど要望ありましたら雑談スレの方へお願いします。 事実上大した労力は使っていないので別に気を使わんでもいいです。 趣味でも書きますが、多い日で一日原稿用紙40枚ほど書きます。それに 比べると ◆xDdCPf7i9g はほとんど片手間で書けるんで。 重ねて、オカルト板以外でもっと適切な板を知っているという方も情報くれると 嬉しいです。たまに、『オカルト板だからオカルトからめないとなー』というのが 重荷になることがあります。ほのぼの板使っちゃっていいのかな…。ID出ると いいんだけどね。 って要望なかったら哀しいよな(笑) まぁいずれにしてもこのスレ放棄するのも 何だし、色々面白いことやってみようかなというつもりはある。とりあえず本スレ が終わるまでは。(削除依頼出されたりして(笑))
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402 :作者 ◆xDdCPf7i9g [sage]:2006/10/11(水) 12:35:23 ID:B0OjX5jJ0 - >>401
うん…読み手さんの方からすればそりゃそうだよなぁ…。 一応、98、99、100、あわせて最終回です。ただし話としては独立しています。雰囲気と しては、長野のトオルのおじいちゃんちに行った86〜88話みたいな感じかな?続いてる けどエピソードとしてはスタンドアローンというような。 だから、いきなり話ぶった切って、『どうするユウジロウ!〜つづく〜』みたいな系統には したくないな…と。 そんな感じなんで、ジリジリと待たなければならないということにはならないと思います。 なんか、緊張します…。
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404 :作者 ◆xDdCPf7i9g [sage]:2006/10/11(水) 19:29:14 ID:B0OjX5jJ0 - 九十八
軽子沢中学校長鬼塚ケンシロウは職員用トイレの鏡の前で、 ネクタイの結び目を確認し、一本目立って出ていた鼻毛を認めて、抜いた。 つづく
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406 :作者 ◆xDdCPf7i9g [sage]:2006/10/11(水) 19:38:24 ID:B0OjX5jJ0 - 校長室へ戻り、応接セットの椅子を整え、机の上を拭く。灰皿も用意し、
自分は窓を背にして、黒い革張りの椅子に座して時を待つ。 午前十時。約束の時間まであと三十分。 十五分間、険しい表情を見せたケンシロウだが、残りの十五分で無理に 笑顔を作る練習をした。 ひきつる頬を手で揉みほぐし、不自然な笑顔で、一人。 校庭からは体育の授業だろう生徒達の明るい声が登ってくる。 やがて十時三十分。校長室のドアがノックされた。 「どうぞ」 その場で立って出迎える。その頃には慇懃な笑顔ができあがっていた。 あくまで表面上であるが。 ドアから入ってきた男たちはいずれも地味なスーツ姿で、足元のスリッパが 間抜けであった。青いスリッパに金字で『軽子沢中学』とある。 校内は何人たりとも土足厳禁。来客用のスリッパである。 つづく
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407 :作者 ◆xDdCPf7i9g [sage]:2006/10/11(水) 19:47:11 ID:B0OjX5jJ0 - 「お待ちしておりました。どうぞお掛け下さい」
当然だ、という態度で男たちは応接用のソファに腰を降ろす。一人の 男が持つ、アルミのアタッシェケースが気になった。 「わざわざお出向き頂いて恐縮です」 「…仕事ですから」 男は淡々とアタッシェケースを開け、何枚かの書類を取り出した。 「軽子沢中学校校長、鬼塚ケンシロウ先生への辞令と異動命令が 出ています。先日、お電話した通りです」 「…辞令というのは…?」 「教職に対する辞令、というわけではありません。あくまで特命教師としての 辞令。通常の校長職に戻っていただきます」 「…御検討は頂いたんでしょうな…?」 笑顔が一瞬消え、相手を凍りつかせるような鋭い視線をケンシロウは投げかけたが、 相手は書類を確認するばかりで彼の表情など見てもいない。 「…既にプロジェクトの中止は決定しています。そもそもこのプロジェクト、現大臣すら 知らなかったとの話…。一部文科省役人の暴走行為という見解を我々はしています」 つづく
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408 :作者 ◆xDdCPf7i9g [sage]:2006/10/11(水) 19:56:42 ID:B0OjX5jJ0 - 「暴走…!三十年かけて築き上げてきたものを暴走の一言で片付けるの
ですか!?」 「旧文部省の一部、更に警視庁関連の一部までをも巻き込んだプロジェクト…。 これを暴走と呼ばずして何を暴走と言いますか?検討の余地は全くありません」 「そんな…」 「…もっとも当時の一部官僚による極秘のプロジェクトとの話…。鬼塚先生は あくまで一つの『コマ』に過ぎなかった。その事情を鑑み、校長職だけは続けられる ようこちらでも善処してつもりです。お疲れ様でした」 「その一部官僚たちも既に現役を退き、今やその亡霊たちが惰性で動いているに 過ぎない…」 暴走。亡霊。ほぐれたはずのケンシロウの頬はいよいよ引きつった。 「もっとも、あなた方は結局、何の結果も出せなかった。それが最大の問題です」 それを言われてしまうとケンシロウは何も言えなかった。しかし計画は最終段階まで 来ていたのである。 窓の外をケンシロウは眺めた。明るく、生徒達がボールを追いかけている。 「…現実をご覧下さい。この学校へ赴任して五年。五年かかってこの平和を築き あげた…」 つづく
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409 :本当にあった怖い名無し[sage]:2006/10/11(水) 20:11:33 ID:B0OjX5jJ0 - 「平和…。夢ですな。校長。あなたは優秀な教師であり校長であったかも
しれない。しかし全てはもう手遅れ。新しい手段を講じなければ、日本は 既にぎりぎりの窮地に立たされている」 「今ある問題に目を向けて頂けないと困りますな。既に教師一人、校長一人の 力でどうにかなる時代ではないのですよ。いやむしろ一時代としてそんな時代は なかった。あくまでプロジェクトは暴走。勝手な思い込みに過ぎません」 「お分かりいただけますね。鬼塚さん」 全く納得はできなかった。三十年散々振り回され、目標達成直前で全てが水泡の 如く弾けて消える。 「…すでに他の特命教師…とはいえもう大半は定年で退職されましたが…。その 方々には御理解頂けました。残るはあなた一人だけ。御理解下さい」 理解しろという方が無理だった。プロジェクト。『素晴らしき子供たち計画』その最終段階を ケンシロウは確かに見ていた。三十年かけて見えたゴール。それがゴールどころか、 コースごと全て失われる。 「元は…元は大臣が言い出したことだ…文部大臣…」 「今は文部科学省です。そして当時の大臣も当に故人となっています。正直申し上げて、 鬼塚先生、あなたは、過去の遺物に過ぎない」 「…過去の…遺物…」 つづく
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- : 【エロ】山形先生Part4【オカルト】
411 :作者 ◆xDdCPf7i9g [sage]:2006/10/11(水) 20:25:51 ID:B0OjX5jJ0 - 「定年まで、あとわずかです。鬼塚校長、ごゆっくりなさって下さい」
数枚の書類がケンシロウに渡された。 「…受理、しかねますな」 机に置かれた書類をケンシロウは見ようともしない。 「鬼塚先生!先ほども申し上げたとおり、我々も精一杯の妥協したのです。 場合によっては校長資格を失いますよ?」 「…脅迫ですか…?」 次第にスーツの男たちの顔色が変わってきた。彼らは単に書類を渡しに来た だけに過ぎない。議論をしに来たわけではないのだ。 「…『素晴らしき子供たち計画』…私はやめる気がありません。無論その下地を 築いたこの軽子沢中学を離れるつもりもない。教師を辞める気もなければ、 校長を退くつもりもない…。私はあくまで特命教師だ…」 「…こちらとしてはその旨、現大臣に報告するまでですが…?先ほど申し上げた 警視庁の一部勢力も既にその関係を否定しているんですよ?」 「簡潔に申し上げて、あなたは孤立無援の状態にある。なぜプロジェクトに こだわるのですか?」 「…私の三十年がかかっているのだよ…教師生活の全てが…人生の大半が…!」 つづく
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413 :作者 ◆xDdCPf7i9g [sage]:2006/10/11(水) 20:43:51 ID:B0OjX5jJ0 - 議論は感情の昂ぶりを見せたが、スーツの男たちは間を置いて、
冷静を心がけた。 既に文科大臣の印鑑の押された書類が発行されている。中学校の 一校長があがいたところでどうにもならない段階まで来ている。 同情するつもりもない。そもそもそのプロジェクト自体が夢のまた夢。 単なる税金と三十年間という長い時間の無駄遣いでしかなかったのである。 言ってしまえば、話を聞くまでもなく、書類だけ渡して帰ればそれでいい 仕事なのだ。説得は仕事のうちに含まれない。 「…書類はお渡ししました。御熟読の上、以後その指示に従って下さい。また 特命教師としての特別手当はもう出ません。ただし、こちらで検討させて頂いた 結果、退職金の方でそちらのいいように、処理させて頂きます。御安心下さい」 「我々としても驚いているのですよ。そのようなプロジェクトがかつてあり、未だ 進行中であったこと…。旧文部省の気の迷いとしか言いようがない。それに 振り回された、先生の御苦労はお察し致します…」 「では、我々はこれで。お疲れ様でした」 つづく
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416 :作者 ◆xDdCPf7i9g [sage]:2006/10/11(水) 21:01:34 ID:B0OjX5jJ0 - 「…お待ち下さい…」
アタッシェケースを閉じ、立ち上がったスーツの男たちをケンシロウは止めた。 「まだ、何か?」 溜息混じりに、やや呆れた表情で男が言う。既に気が緩んだのか、その顔には 鬼塚ケンシロウをねぎらう気持ちは見えず、ただしつこいな中年を相手にしなければ ならない面倒の色だけが見えた。 「…私だ。校長室まで来てくれないか?『内調』全員を集めてくれ」 風紀委員会別室校内調査部。通称『内調』。彼らは各クラスに一人ずつ、計十二名 いる。その全員が集まることはない。そもそも完璧な秘密主義の為、十二名はお互いに その名も顔も知らないのだ。 彼らはそれぞれ学校から与えられたプライベートとは別の携帯電話で連絡を取り合うこと はあったがその際も、全て『一』から『十二』のコードナンバーで呼ばれることになっていた。 それを全員集める。全員が集まれば当然顔を合わせることになる。何度か確認したが、 ケンシロウは構わないと答えた。 初めて『一』から『十二』までの『内調』が顔を合わせた。校長室である。そこにあったのは、 アタッシェケースと散乱した書類。四人の男の無残な骸。 そして、照明器具を固定する頑丈な金具から伸びたローブに揺れる、鬼塚ケンシロウの 首吊り死体だった。 終
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