- : 【エロ】山形先生Part4【オカルト】
248 :作者 ◆xDdCPf7i9g [sage]:2006/10/03(火) 00:07:23 ID:pywkRo1z0 - 「人に見られるのが嫌でねー。あたしって白いでしょ。生まれつきだけど。
それでよく見られるんだジロジロって。それがいやでねー」 「綺麗ですよ?」 「でも見られるの苦手だったんだよねー。そしたら視線が見えるようになった」 「…へー…」 「その視線に入らないようにすれば透明人間になれるの」 「…へー…」 「見せるね」 サヨリはコンビニエンスストアの店内に入っていった。しばらくすると、普通に雑誌 二冊と弁当一つとおにぎりを持って出てきた。 「?」 「万引き」 「…!」 確かに袋にも入っていなければ、袋はいらないです、と言った時に貼られるテープも 貼られていない。 つづく
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249 :作者 ◆xDdCPf7i9g [sage]:2006/10/03(火) 00:14:39 ID:pywkRo1z0 - そのまますたすたとコンビニエンスストア向かいの公園へ歩いていくので、
カエデもついていった。ベンチに並んで座る。 「おにぎりあげる」 「…どうも…」 「信じてないんでしょ?」 唐突に言われて右を向くと、そこには雑誌二冊と弁当が重ねて置かれている ばかりで、サヨリの姿がない。 からかっているなと探すが全く見つからない。しかし公園の砂の地面をじゃりじゃりと 動く回る音はする。どこかに隠れてじっとしているわけではないらしい。 「ね、必ず死角に入れる。視線が見えるんだよ」 すぐ背後で声がした。振り向くが誰も居ない。ただざざっとすばやく動く音だけが 聞こえる。カエデは観念した。 「すごい。忍者みたいです…」 と、すぐ横にサヨリは立っていた。紅い唇を歪めて。この一件で、カエデはサヨリに 大きく興味を寄せた。 つづく つづく
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250 :作者 ◆xDdCPf7i9g [sage]:2006/10/03(火) 00:22:51 ID:pywkRo1z0 - サヨリは何でも知っていた。芸能、スポーツ、歴史、難しい哲学のような
ことまで知っているようだったが、カエデには分からないことばかりで、 果たしてそれが本当のことなのかどうか分からなかった。 完全に常識から外れているようなことも彼女は平気で言うのだ。だから 全てを信用することはできないなとカエデは思っていた。 部活動が終わり、みんなでわいわいと話していると、気付けば外は暗く、 サヨリとカエデは二人きりになっていた。 「あれ、もう暗いですよ。帰りませんか?」 「カエデちゃん、前に確率の話をしたでしょう?」 記憶はほとんどなかったが、そう言うならそうなのだろうとカエデは適当に 相槌を打った。サヨリはよく人の言うことを無視する。質問しても全く見当 外れなことを言い出したり、違う質問が返ってきたりした。だから会話の 食い違いにはそろそろ慣れている。 つづく
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251 :作者 ◆xDdCPf7i9g [sage]:2006/10/03(火) 00:32:42 ID:pywkRo1z0 - 「こういうのってどうかなー」
椅子を縦に二つ並べた。前の席にカエデを座らせ、自分は後ろの席に座る。 「あたしからはカエデちゃんの背中が見えるね。カエデちゃんにはあたしが 見える?」 見えるわけがない。サヨリはカエデの背後にいるのだ。 「今あたしって喋ってるからあーいるな、生きてるなってカエデちゃんにも分かる だろーけど、あたしが黙りこくったらどーなるんだろ?あたしの生きてる確率 何パーセント?」 よく分からずにいると、それきりサヨリは何も言ってこなくなった。話しかけても 答えない。ふざけているなとは思ったがいい加減耐えられなくなり振り返ると、 ただ椅子があるばかりだった。 また死角に入ったのかと探すが気配すらない。 以来彼女を学校で見ることはない。ただ、たまに、すぐ近くで上履きと床の こすれる音がすることがある。誰もいないのに。 終
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253 :作者 ◆xDdCPf7i9g [sage]:2006/10/03(火) 00:43:59 ID:pywkRo1z0 - >>252
やっぱそこいっちゃうよなぁ〜読み返して思った。 全く忘れておりますたT_T 俺が先に生きていれば…(笑)
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255 :作者 ◆xDdCPf7i9g [sage]:2006/10/03(火) 20:51:07 ID:pywkRo1z0 - >>読者の皆様方へ。
今夜、投下するお話で、90話目となります。この作品名『◆xDdCPf7i9g』通称、 『山形先生シリーズ』は100話にて一度完全に終了します。 雑談スレの方では、その後の存続の可能性について語られていますが、とにかく 一度、終わってしまいます。その後、例えば『パート2』のようなものの製作等に おいては全くの未定です。要望については目を通しますが、こちらが了解し得ない 場合もありますので御了承下さい。 また、残り十話内において、唐突に本編とは関係のないキャラクターや場所などの シーンがインサートすることがありますが、それについての質問については一切 お答えできません。これもまた御了承下さい。よろしくお願いいたします。
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256 :作者 ◆xDdCPf7i9g [sage]:2006/10/03(火) 21:06:56 ID:pywkRo1z0 - さてそろそろ九十話でも書くか。
新聞委員会編集員、長野シュウイチは軽子沢中学、西棟一階を、 更に西に向かって歩いていた。 つづく
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257 :作者 ◆xDdCPf7i9g [sage]:2006/10/03(火) 21:23:14 ID:pywkRo1z0 - 西棟一階の端には大きな鉄の扉があり、そこから渡り廊下が延びていた。
そして体育館と接続している。 彼の目的地は体育館であった。肩から取材用のバッグが下がっている。 体育館に近づくにつれ、木の床をボールが叩く音や、床のスニーカーのゴム底が きゅっきゅとこすれる音が騒がしく聞こえてくる。 放課後の部活動で体育館の使用を許可されているのは女子バレーボール部、 女子バスケットボール部、男子バスケットボール部、そして卓球同好会だった。 手狭なのでそれぞれ曜日を代え、順に使用するようになっていた。曜日からすれば、 今日は女子バレーボール部と、男子バスケットボール部、卓球同好会が使っている はずだ。 その中で、シュウイチの目的は男子バスケットボール部だった。 新聞委員会の発行する『軽子沢新聞』は週に一部のペースで発行される。何か 国際的な事件が起きる度に号外と称して別冊が発行されるが、それは主に 的場リュウジが勝手にやっていることで、シュウイチはタッチせずに済んでいた。 あくまで長野シュウイチの担当は校内である。もっとも、校内新聞であるのだから、 全員が校内担当でなければならないのだが、基本的に、リュウジは国際、マサトは 国内担当となっており、それぞれ世界中、日本中を駆け回っているので、本来主役で あるべきはずの校内担当シュウイチの扱いは散々たるものだった。 つづく
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258 :作者 ◆xDdCPf7i9g [sage]:2006/10/03(火) 21:42:34 ID:pywkRo1z0 - しかも、世界のあらゆる場所からリュウジによって送られてくる電子メール、
郵便物、電話などを受け、それをまとめて新聞にするのもまたシュウイチの 仕事である。まだデジタルカメラの画像であればそのまま編集しやすいので いいのだが、父親の形見であるニコンにこだわるリュウジからは下手をすれば 現像前のフィルムがそのまま送られてくるのだ。 それを現像し、スキャナで取り込み、それに、場合によっては国際郵便で送られて くる手書きの原稿をパソコンに打ち込み、画像に添えて、体裁を整え印刷し新聞に する。せめて電子メールで送ってくれればと思うのだが、アマゾンの奥地からでは それも無理かと考える。 勿論マサトからも怒涛の様に国内事件を扱ったメールや画像が送られてくる。 更には自分本来の校内取材もしなければならない。 カメラマンであり取材記者であり編集員であり印刷屋なのだ。 長野シュウイチは多忙であった。 先月から毎週それぞれの部活を回り、その主たる活動以外の話題を紹介する シリーズものの記事を書くことになっていて、今回の主役が男子バスケットボール部 だった。 主たる活動以外の話題、というのがなかなか難しい。男子バスケットボール部で あれば当然バスケットボールを行っており、その試合結果などは当然掲載されるわけ だが、そういった、バスケットボール部であれば何かバスケットボール以外の話題は ないか、という趣旨の取材をする。 つづく
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261 :作者 ◆xDdCPf7i9g [sage]:2006/10/03(火) 22:00:56 ID:pywkRo1z0 - 例えば、変わった練習法を取り入れているとか、何か試合で部員がミスをした
場合に面白い趣向を凝らした罰ゲームがあるとか、そういった具合の記事。 先週は野球部が対象だったが、練習でばててしまった時に飲む秘伝のスペシャル ドリンクのレシピや、主将の実家がお好み焼き店で、軽子沢中学野球部員だけが 注文することができる『軽子沢スペシャル』というボリューム満点のお好み焼きが あるという記事で、なかなか好評だった。 意外と、他から見れば珍しい、面白いことでもも当人たちからすれば当たり前の ことで、『何か変わったことはないですか?』と取材してもなかなか回答が得られず 難しい取材といえた。 体育館は半面を男子バスケットボール部が、半面を女子バレーボール部が使い、 哀れ卓球同好会は舞台に卓球台を上げて、舞台上で練習している。まるで、 『欽ちゃんの仮装大賞』のような状態だ。何か始まるのではないかと期待を持たせるが 淡々と卓球をこなしている。しかも真剣味がない。ただ、今体育館内で活動している 部の中では唯一男女混合なので、その点は楽しそうではある。 体育館の半面と半面では全く雰囲気が違っていた。方や女子ばかり、方や野郎ばかり。 女子バレーボール部には力強さもあったが華やかさもあり、また何かいい香りがした。 しかし男子バスケットボール部には力強さと汗、筋肉、マッチョ、ぶつかりあい、蒸れた 臭いと野郎の空気が漂っていた。 つづく
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262 :作者 ◆xDdCPf7i9g [sage]:2006/10/03(火) 22:17:10 ID:pywkRo1z0 - とりあえず主将の顔は知っていたので、初対面だが声をかける。
ちなみに悪名高く今は無き女子テニス部前主将、五十嵐ヒトミの彼氏は、前任の 男子バスケットボール部主将だ。(第五十七夜 『陰の宴』 参照) 前主将はかなり短期気の荒い人物として知られていたが、現主将は、長身でやや 人相が悪いものの、面倒見がよく、優しい人物だった。 「あれ?新聞委員?…あー読んだ読んだ。野球部の、ね。あのドリンク作ってみたよ。 すっげぇ不味ぃのね。ははは。そっかぁ今回はウチかぁ…何かあっかなぁ…」 やはり同じ対応。ここからは粘りが必要だった。 「ちょいちょい、練習やめぇ!おいおい、やめろって!新聞屋さんが来てるんよ。何か 変わったことないかって。なんかねぇかな?」 前主将が現役だった頃のバスケットボール部も知っていたが、主将が変わるとこうも 雰囲気が変わるものなのだろうか。以前はどこかぴりぴりとした緊張感が伝わって くるようだったが、今は部員全員、晴れ晴れと部活動を楽しんでいる様子だった。 それでいて、試合の結果などは前主将退任後の方が上々といえた。 わざわざ練習の手を止めて部員全員でうんうんと考えてくれている。シュウイチは 何やら申し訳ない気持ちになってきた。 つづく
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263 :作者 ◆xDdCPf7i9g [sage]:2006/10/03(火) 22:30:19 ID:pywkRo1z0 - 「何でもいいんですよ。何かあればこっちで適当に面白おかしく書きますから」
「そうだなぁ…」 出ては来るが、誰が誰とつきあってるとか誰が誰を好きだとか、そのような話で、 さすがに個人の色恋沙汰の記事は書けない。それでも相手の口を少しでも軽く する為、大袈裟にいいですね、なるほど、などといいながらメモを取るふりをした。 「何か他にないですかね?」 「あとは『思い出ボール』ぐらい?」 やっと何かそれらしい話が出てきた。他の部員も、ああそれがあったという表情を 見せた。 「『思い出ボール』?なんです、それ?」 とりあえず、ことのあらましを聞いた。何でも代々伝わる『思い出ボール』なるものが あるらしい。何か楽しいことでも悔しいことでも、内容はよく分からないが、とにかく、 思い出のつまったボールが体育準備室に保管されているという。 体育準備室に保管されているといっても、通常バスケットボールでもバレーボール でも卓球台や跳び箱に至るまで全てそこにしまうようになっていた。 部員に練習の再開を促すと、案内してくれるというというのでシュウイチは主将に ついて行った。やはり体育準備室。それは体育館の重い鉄の扉を開けたすぐ向こうの 誇りっぽい部屋だ。 つづく
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264 :作者 ◆xDdCPf7i9g [sage]:2006/10/03(火) 22:37:59 ID:pywkRo1z0 - 体育館内で使用する運動器具の類はボールなども含めて全て
ここに収納されている。 屋外スポーツで使用する道具は校庭にまた別の物置があった。 そこに比べればまだ土に汚れたものがないだけ清潔だった。 キャスターのついた、鉄製のかごにそれぞれの競技で使用する ボールが詰まっている。 「『思い出ボール』はまず使わないから一番奥なんだ」 狭い室内にとにかく跳び箱やらマットやら、そのボールを詰めたかごやら が所狭しと置かれている。 主将はその長身をぐりぐりと捻りながら準備室の奥へ入っていくと、隠れて 見えなかった、ボールの入ったかごを一台、ごろごろと引っ張ってきた。 狭いので、無理矢理に引きずり出す。跳び箱にぶつけようが、バレーボールの ネットにひっかけようがお構いなしだ。 しばらくしてやっとそのかごは、シュウイチの目前に置かれた。他のボールを 収納するかごの塗装が全てブルーなのに対し、これは赤い。しかし所々ペンキが 剥げて、ブルーの地が見えている。 どうも元々は同じブルーのかごを区別する為に赤く塗ったようだ。 つづく
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265 :作者 ◆xDdCPf7i9g [sage]:2006/10/03(火) 22:45:01 ID:pywkRo1z0 - 「はい。これが『思い出ボール』」
「…一体何なんです?」 「さっきも言ったけど、先輩たちの思い出がつまってるんだって」 「なるほど…」 「それで、ウチはいま部員がちょうど二十人いるから、ボールは二十個 あれば充分なわけよ」 「はい」 「で、このカゴと、このカゴに、大体十二個ずつボールが入ってるから、 これがあれば充分なんだよ」 主将は、ブルーのボールかごに触れながら言った。 「そうですね」 「でも、もしボールが足りない場合?そういう時はこの『思い出ボール』を 使うしかないんだけど、決まりがあって…」 すると、主将は赤い『思い出ボール』のかごに向かって、深々と礼をしながら、 「『思い出』、一つ、お借りしまーす!」 と大きな声で行った。そして一つボールを手にし、一度ドリブルするように床に バウンドさせるとボールを手に取った。埃が舞う。 つづく
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266 :作者 ◆xDdCPf7i9g [sage]:2006/10/03(火) 22:53:09 ID:pywkRo1z0 - 「これが決まり」
「え?」 「どうしても『思い出ボール』を使わないといけない時は、『思い出、一つ、 お借りします』って礼をしながら言って取らないといけないんだ。ああ、もし二つ いっぺんに取るんだったら『思い出、二つ、お借りします』、ね」 「へぇ面白い…風習と言うか…習慣と言うか…。何年ぐらい前からあるんですか?」 「ずっと前からあるんじゃないかな?その辺は知らないなぁ。悪ぃけど」 「いえいえとんでもない」 メモを取り終えると、シュウイチは取材用のバッグから、サンヨーのデジタルカメラを 取り出し、普通のブルーのかごと、『思い出ボール』の赤いかごを並べて写真を撮り、 更に、『思い出ボール』を持って、かごの傍らで笑う主将を撮った。 「あぁ、せっかくだから部員のみなさんと『思い出ボール』の写真もいいですか?」 「いいね!撮ってやってよ。集めるから」 がらがらと赤いかごを引きずって、準備室を出ると部員に声をかけ、集めた。 「おぉい、新聞出れるぞー。写真撮るぞ写真!」 わらわらと部員が集まってきた。 つづく
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267 :作者 ◆xDdCPf7i9g [sage]:2006/10/03(火) 23:06:06 ID:pywkRo1z0 - クオリティが高いというか、校内新聞にはアメリカ大統領や内閣総理大臣、
また国内事件の記事なども同時に載るため、校内新聞に出ることは、 一般紙に出るようなものだった。何せブッシュ大統領などと写真が並ぶのだ。 それだけで一種の記念になる。事実通常の中学の校内新聞であれば、まとも に読まれないか、読まれても大概はすぐに捨てられてしまう。しかし軽子沢新聞は 自分関係の記事が掲載された場合、保存している者が多いと聞く。 世界情勢などと共に掲載されるので、後に『あぁあの試合に勝った時は、こんな ことが世界であったのか』という、記憶をたどる目安になるらしい。 まず一枚目は赤いかごを囲んだ部員の写真。のりがいいたちなのか、主将は 赤いかごの前に寝そべって、ふざけた恰好をしている。楽しそうな写真が撮れた。 次はそれぞれ部員が『思い出ボール』を手にした写真を撮ることになった。 「思い出二つ、お借りしまーす!」 腰を折って、元気よく言い、主将がかごから二つボールを取ると、一つを副主将にパスした。 後も続いてそれぞれ部員が、 「思い出二つ、お借りしまーす!」 「思い出一つ、お借りしまーす!」 と主将にならった。かなり浸透している習慣らしい。しかしカゴにはまだまだ 『思い出ボール』が入っている。 つづく
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268 :作者 ◆xDdCPf7i9g [sage]:2006/10/03(火) 23:16:24 ID:pywkRo1z0 - 面倒になったのか、二年生のある部員が、
「思い出四つ、お借りしまーす!」 叫んだ。主将は驚いた顔をしている。 「おい四つってお前そんなに持てるのか?」 「だいじょぶっすよー」 どうも、あくまで『思い出ボール』を取れるのは、幾つ借ります、と宣言した 本人だけで、誰かが言い、別の人間が取ったりするのは禁止らしい。しかも、 宣言した数を取り終えるまで、他人に渡したり、床に置いてもだめなようだ。 その部員はまず一つのボールを取り、二つ目のボールも取った。ここまでは 問題ない。 その後、取った二つのボールを縦に雪だるまのように重ね、屈んで、太ももと あごの間に器用に挟んだ。そして三つ目のボールを取り、それを股の間に挟み 最後の一個をようやく取ろうかという時、バランスが崩れて、太ももとあごで 挟んでいた二つのボールがこぼれた。 「ほら見ろ。四つは無理だよ」 みんな笑っている。あくまで風習なのでそれ程深刻なことでもないのだろう。その後 はそれぞれ、習慣通りにボールを取り、二十人全員に『思い出ボール』は 行き渡らなかったが、ボールを持った部員を前列に、持ってない部員は適当にふざけた ポーズを後列で取って、撮影した。 つづく
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269 :作者 ◆xDdCPf7i9g [sage]:2006/10/03(火) 23:35:37 ID:pywkRo1z0 - シュウイチは編集室に取って返して早速記事を書き上げた。更に写真を
チェックする。どれも楽しそうに取れているが、最後の一枚、『思い出ボール』を みんなで持って撮影した写真、四つ借ります、と宣言して取りこぼしてしまった 彼の表情がどことなく暗い印象を受けて、使うかどうか迷った。 むしろ、その前に取った、赤いかごをみんなで囲んでいる写真の方が明るく見え 楽しそうな雰囲気もあって、そちらを使うことにした。 午後七時までかかってなんとか原稿を仕上げ、あとは明日の朝一番で印刷し、 明日中には生徒の手に渡るだろう。 安心したが、結局その記事は使えず仕舞いで、取り急ぎ穴を埋める為、シュウイチは マンガ同好会に所属する友人に無理をいって八コマ漫画を書いてもらい、その漫画 に記事は差し替えとなった。 宣言通りに『思い出ボール』を取れなかった彼が、帰宅途中にバイクにはねられ、命に 別状はないものの、三箇所を骨折する重傷で、今朝になって主将の方から、記事 差し止めの突然の申し出。面白がって『思い出ボール』取りに挑む者が出るといやだから と言う。 事故そのものを記事にすることもできたが取材が間に合わなかった。誰々が事故で 重症、というだけの情報では紙面が埋められない。正確な情報を得るには時間が 足りな過ぎた。 人知れず、『思い出ボール』が一つ、増えていた。 終
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271 :作者 ◆xDdCPf7i9g [sage]:2006/10/03(火) 23:40:31 ID:pywkRo1z0 - 『蒸れた臭いと野郎の空気』っていいキャッチコピーだわー…(笑)
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272 :作者 ◆xDdCPf7i9g [sage]:2006/10/03(火) 23:44:16 ID:pywkRo1z0 - >>270
ありがとうって俺がありがとうだよ^^;; モデルは当然あたしの中学の体育館なんだけど…まぁ体育館 なんてどこも似たようなもんだよね。ただ記憶をたどるのが大変… しかも体育館なんかあまり縁がなかったからなぁ…。 よくドラマで昼休みとか放課後に体育館を開放してるらしい描写って あるけどどう?普通入れなかったよね? なんかよく青春ドラマみたいので親友と二人っきりで体育館でバスケの シュートやって、「そろそろ卒業だな。俺達…」みたいな。 ウチはガッチリ南京錠かかってましたよ。えぇ。
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