- 【エロ】山形先生Part3【オカルト】
661 :作者 ◆xDdCPf7i9g [sage]:2006/09/24(日) 00:09:04 ID:r0dsn49p0 - 既にハンバーガーを食べ終え、また先ほどの連中のことを思い出したのか。
何となくサエは機嫌が悪そうだった。しばらく何か考えた素振りを見せると、 口を開いた。 「そういえばウチの中学ってなんでヤンキーいないの?」 「…確かにそうだね、見たことない」 「ちょっと髪染めてる子ぐらい?」 「うん」 「風紀委員のせいでしょ。委員会で身体鍛えてるのあそこぐらいだよ」 「走ってるもんなぁ…。でもそれだけかなぁ。周りにはいるよね?」 「いるいる。駅前とか来ると分かるよね」 学校近くの堂坂公園で不良に絡まれたことをアヤは思い出して、少し嫌な 気分になった。その事は他の二人にはさすがに伝えていない。 (第六十二夜 『障壁』 参照) 「あれ?そういえば、アヤのお兄ちゃんって、ウチの卒業生じゃない?」 今時珍しく、草壁家は大家族といえた。両親は健在で、三十五歳の長女を筆頭に、 三十二歳の長男、二十九歳の次男、二十七歳の次女、二十一歳の三男がおり、 アヤは六番目の子供だった。末っ子である。 つづく
|
- 【エロ】山形先生Part3【オカルト】
662 :作者 ◆xDdCPf7i9g [sage]:2006/09/24(日) 00:17:35 ID:r0dsn49p0 - 軽子沢中学はできてまだ十年しか経っていないので、二十一歳の三男より
上の兄姉は他の中学へ通っていたが、三男は軽子沢中学を出ている。それに しても六年も前の話だ。 「あーうん。一人お兄ちゃんはウチ出てる…。すごい荒れてたって」 「そうなの?」 「らしいよ。脅かされたもん。入るとき。怖かったなぁ。入って安心したけど」 「そうなんだ…それで風紀委員ができたのかな?」 「ううん。風紀委員はあったよ。お兄ちゃんそうだったもん」 「ん〜?じゃあ何が変わったんだ?」 「さぁ…」 それ以上続けても仕方のない話なので、適当に話は移り変わり、ポテトフライも 食べつくして、そろそろ頃合、解散ということになった。とはいえ途中まで帰る方向 は一緒である。 「あれ!もう暗いやー」 「ほんとだ…今日ってなんか面白いテレビあったっけ?」 「いいなー余裕ある人は…」 つづく
|
- 【エロ】山形先生Part3【オカルト】
663 :作者 ◆xDdCPf7i9g [sage]:2006/09/24(日) 00:26:49 ID:r0dsn49p0 - なんだかんだと話しながら駅の方へと向かっていく。と、先ほどの連中とは
また別の、更に凶悪度を増したような風体の若い男が四人ほどで何かを やっている。 街行く人も気にはなっている様子だが基本的に無視だ。 見ればどうも、若者四人で一人の男を囲んで何やらやっている。 「おいあれ、カツアゲだよな…?」 「ひどい…おじさんっぽいよ」 「…ちょっとおじさんって…え!うそ…」 「なになに?」 なるべく気付かれないように横目で見ながら通り過ぎる。若者四人に 囲まれて縮こまっている男には見覚えがあった。 「チェンジマン…!」 「だよね?だよね?」 「あちゃあ…校長だめだめだなぁ…」 百メートル程離れて様子を伺っていると、四人は校長を囲う形で移動 し始めた。 つづく
|
- 【エロ】山形先生Part3【オカルト】
664 :作者 ◆xDdCPf7i9g [sage]:2006/09/24(日) 00:35:06 ID:r0dsn49p0 - 「やべぇ…連れてかれるよ…」
「どうするんだろ…」 「見えない所でボコして財布取るとか、そんな感じっぽいなぁ」 「えー!」 「警察行こう!」 「待てって。とりあえずどこに連れてくか見ておかないと…。じゃあ リョウコ先に駅前の交番の前に言ってて。あたしどこ連れてくか見て 電話するから」 「あぁ、そか。わかったわかった」 「アヤはここにいな。面倒ごとになったら大変だよ」 「ありがとう…。ごめんね」 若者四人は不良というよりむしろチンピラといった感じである。サエも さすがに手が出せず充分な距離を置いてついていった。 最近パチンコ店が潰れてできたコインパーキングへ入っていく。クルマで 拉致するつもりかとも思ったがどうも違うらしい。 そのコインパーキングはL字型の敷地をしており、奥まった所へ入ると、 表通りからは全くの死角となる。 つづく
|
- 【エロ】山形先生Part3【オカルト】
665 :作者 ◆xDdCPf7i9g [sage]:2006/09/24(日) 00:42:45 ID:r0dsn49p0 - 耳を立てると、『金を出せ』だの『ぶつかっておいて』だの『謝って済む
問題じゃねぇ』だのという罵声が聞こえた。 一触即発の危機だ。サエはコインパーキングから離れたところでリョウコに 電話をかけた。 しかしよりによって通じない。何度かけても 「お客様のお掛けになった電話は、電波の届かない所におられるか…」 仕方なくサエは交番に向かって走った。そんなに時間はかからない。 電話を持って不安げにしているリョウコは驚いた顔をしている。 「え?どうしたの?」 「そこ電波届かないってさ!」 そのままサエは交番へ入り、息も絶え絶えに、コインパーキングで若者四人に 人がからまれていることを伝えた。 いちいち説明するのも面倒なので校長がどうのという説明は省いた。 警察官も彼女の只ならぬ様子にすぐに現場へ向かう。あのコインパーキングが 犯罪の温床であることは知っている。表通りから見えにくい為、恐喝や車上荒らし といった犯罪が起こっていた。だからコインパーキングと聞いた途端にぴんと来た。 つづく
|
- 【エロ】山形先生Part3【オカルト】
666 :作者 ◆xDdCPf7i9g [sage]:2006/09/24(日) 00:56:33 ID:r0dsn49p0 - サエとリョウコも続いたが、普段鍛えている警察官の俊敏さには
全く追いつけない。 コインパーキングでやっと追いつく。 そこには、がらの悪い四人の若者の無残な姿があった。 ある者は首を折られ、またある者は腕がありえない方向に曲がり、 ある者はコインパーキングの照明が取り付けられている柱に もたれるようにして、後頭部から大量の血を流していた。 「…き…君たちは…何を見たのかね…」 「…いや…おじさんが…この人たちに絡まれてて…それで…」 若者四人は全員死んでいた。詳しいことを聞かれたが校長の名は勿論、 絡まれていた男の特徴すら『よく見えませんでした』で通した。結局そのまま 返される。 帰り道、アヤは言った。サエが交番へ走ってしばらく後、校長が一人、 コインパーキングから出てきて、そのまま何事もなかったかのように 帰っていったこと。そしてその直後、警察官が駆け込んできたのだ。 その間わずか三、四分。その間何があったのか。 軽子沢中学には、不良がいない。 終
|
- 【エロ】山形先生Part3【オカルト】
670 :作者 ◆xDdCPf7i9g [sage]:2006/09/24(日) 02:31:44 ID:r0dsn49p0 - >>667
感想ありがとう。怖がってくれてありがとう。自分でも好きな話です。 >>668 ケンシロウという名前にしてしまったのがいけなかった…絶対結ばれる だろうと思ったけど案の定…その発想で行くと途端に笑い話になって しまうんだよなぁ…。でも見方は人それぞれですな。(笑) >>669 今日の話は日常から一気に恐怖へ転落する話を書きたくて、かなり 満足のいく落ちっぷりなんだけど、北斗の拳と絡められるともう お笑いでしかない(笑) こまったキャラだよケンシロウ…。 教頭にすべきだったかなぁ。いや、でも校長だな。あと二十話ちょっとで 一応終わるわけだけど、もしかすると、最後にもっとも嫌われるというか、 裏切られるキャラクターは鬼塚ケンシロウかもしれません…。 ヒント:彼は単に『普段弱そうだけど実は強い人』ではない可能性がある…。 あくまで、『可能性』…。
|
- 【エロ】山形先生Part3【オカルト】
673 :作者 ◆xDdCPf7i9g [sage]:2006/09/24(日) 18:48:38 ID:r0dsn49p0 - >>タイトルさん
毎度ですー。今回のタイトルもいいです『夜の花』はいい。響きがすきです。 『アイコノクラズム』は単にそのまま『偶像破壊』という意味からもらいました。 アイドル=偶像ですから、敢えてアイドルとしてデビューはするが、そのテーゼを破壊する。 『アイドルを超越した超アイドル』といった意味合いでつけました。 CIMAも元はBUCK-TICKの曲名から取ったみたいですけどね。
|
- 【エロ】山形先生Part3【オカルト】
674 :作者 ◆xDdCPf7i9g [sage]:2006/09/24(日) 21:56:39 ID:r0dsn49p0 - さてここらで怖い話でもするか。
山形ツネコは日がな一日、居間に座して、テレビもつけずに 一人、柱に掲げられた日めくりカレンダーを見上げていた。 つづく
|
- 【エロ】山形先生Part3【オカルト】
675 :作者 ◆xDdCPf7i9g [sage]:2006/09/24(日) 22:12:11 ID:r0dsn49p0 - その日は今日であった。
忘れることもない。肉体は何百という男に開いてきたが、心まで開くことはない。 その心を開いた一人の男。生涯唯一愛した男が没した日。 死刑であった。 戦後最凶最悪と語られる連続強姦魔岩手ノリオ。 貞操観念などという言葉がまだ確かに生きていた時代。それでいて、非合法の 売春が横行し、社会問題化しているという矛盾した時代。 そんな時代の闇から生まれた男。逮捕後の供述で犯した女の数は五十余名と されたが実数はその三倍とも四倍とも言われる。 一九六五年。十六歳のツネコはノリオに犯された。完璧とまではいかないが既に 『お留め』の技術の大半をマスターしていたはずだった。 ノリオの力に屈したわけではない。その卓越したテクニックに心が折れた。貞操を 守ることよりも、悦楽に溺れることを彼女の肉体は選択する。 そのまま抵抗を続けていれば恐らくは、犯されることはなかっただろう。 言ってしまえば、ツネコは『犯された』のではない。『犯させた』のだ つづく
|
- 【エロ】山形先生Part3【オカルト】
676 :作者 ◆xDdCPf7i9g [sage]:2006/09/24(日) 22:26:27 ID:r0dsn49p0 - 以来、処女だったツネコの生活は一変する。男を求める日々が続いた。
しかしいずれも彼女を満足させるには至らず。 そんな頃、岩手ノリオ逮捕の報が入る。余罪の多さに関わらず、裁判は早かった。 彼が犯した女のうち二人が、犯された後に自害したのである。包丁で自らの喉を 突き、また一人は首をくくった。 しかし、検察側はそれを強姦のショックによる自殺とは取らず、あくまで、ノリオが 暴行後、殺害したと言い張った。 一方で、ノリオはその二人の女を知らないと言った。ノリオは極めて狭い範囲で 犯行を行っていた。東京多摩地区を中心に、都内一部。埼玉県南部、遠くても 神奈川県北部。 殺害されたと言われる二人の女はいずれも愛知と、福島の者だった。 弁護側も必死の弁護を繰り返したが、検察側の圧倒的有利は変わらなかった。 当時、ノリオの事件を結果的に模倣する形で、凄惨な性犯罪が多く行われていた。 その全ての罪をノリオは甘んじて受けたのである。ノリオは釈明らしい釈明は 一切行わなかった。どんな心境だったのか、とにかく裁判に入って以降、 『その事実を認めますね?』の質問には『認めます』としか答えなかった。 弁護する側も、本人が認めてしまう以上弁護のしようもなく、上訴も控訴もないままに。 判決は、死刑。 つづく
|
- 【エロ】山形先生Part3【オカルト】
677 :作者 ◆xDdCPf7i9g [sage]:2006/09/24(日) 22:42:50 ID:r0dsn49p0 - 逮捕直後から、ノリオはツネコに手紙を出し続けた。
謝罪と、愛の言葉が並んでいた。 ツネコもそれを受けて返事を出し続けた。彼女もノリオを許し、愛したのだ。 しばらくあって、ノリオの子、ユウジロウが生まれる。 公判中も、時間があればノリオは彼女に手紙を書いた。裁判の内容などは 一切なく、ごく普通の手紙だった。ユウジロウが生まれてからは彼はそれを 喜び、まるで単身赴任か出稼ぎに出ている夫がしたためるような手紙だった。 立てるようになったか?なにかしゃべるか?体調はどうだ? 死刑の日取りや予定がいつ本人に告げられるのか、ツネコは知らない。 そしてまた、判決が死刑になったことはニュースになったが、執行された ことは報道されなかった。 手紙の返事が来ないことで、ツネコはノリオの死を悟る。 時にユウジロウ五歳の頃である。 その後、売春で生計を立てるようになったツネコはある官僚から、ノリオの 正式な死刑執行日、つまりは命日を聞きだした。 それが、今日なのである。
|
- 【エロ】山形先生Part3【オカルト】
678 :作者 ◆xDdCPf7i9g [sage]:2006/09/24(日) 22:53:00 ID:r0dsn49p0 - 二十二時に寝室へ。自分の布団を敷き、隣にもう一枚、布団を敷いた。
二枚の布団はぴたりとついている。 電灯を消し、闇の中で彼女は自分の布団に潜り込んだ。 眠らずにいる。今でもあの十六歳の頃を思い出すと女が疼いた。 当時はノリオの方が倍以上も年上だったが、今ではそのノリオの年齢を 自分が上回ってしまっている。 岩手ノリオ。享年四十歳。一方で、山形ツネコ。現在五十七歳である。 と、隣の布団がめくれて、小さい風が頬を撫でた。 闇に見えない。 ただ彼は毎年、こうして訪れる。 一年ぶり。それでも愛しく、切なかった。一年に一度、それも夜の何時間か だけ。朝まで起きていようと思っても、最愛の人が隣に寝ていてくれるという 安心感だけでつい、うとうととしてしまう。 普段特に寂しいというわけでもないのに。なぜかその包容力にまどろみを 覚える。 一年。八七六〇時間のうちの、ほんの何時間か。 つづく
|
- 【エロ】山形先生Part3【オカルト】
679 :作者 ◆xDdCPf7i9g [sage]:2006/09/24(日) 23:02:05 ID:r0dsn49p0 - そっと隣の布団に手を差し入れる。手が握り返す。ごつごつとしたたくましい
男の手だ。 優しく手を握りながら、親指で優しく手の甲を撫でてくれる。 ツネコは年に一度だけ泣く。 言葉はかけたことがない。かけると消えてしまいそうだから。 そのまま情に任せて抱きついたこともない。そこにいなかったら切ないから。 ただ毎年、何時間かだけ、手を慰めてもらう。 恥じらいを覚えた。もう私も随分と年をとった。色々と気は使っているけれど、 衰えは隠せない。あの人の手はいつもたくましくて、いつも変わらないけれど、 あたしの手はどうだろう。骨張って、しわが増えて、若い頃のように水分に 満ちた柔らかで弾力のある肌はない。 ずいぶん老けたと思われないかしら。 それでも彼は毎年同じように優しく、ただ手の甲を撫でてくれる。 それだけで、最愛の人に抱きすくめられ寵愛されているような安心感と満足が あるのだ。 眠りたくない。そのままずっと朝まで。それでも、まぶたは、やがて重くなって。 さらなる暗闇へ。手の感覚をぎりぎりまで残したまま。 つづく
|
- 【エロ】山形先生Part3【オカルト】
680 :作者 ◆xDdCPf7i9g [sage]:2006/09/24(日) 23:17:11 ID:r0dsn49p0 - 「…愛してる」
確かに聞こえた。やっと。四十一年間待っていた言葉。 読んだことはあるが直接聞くことはなかった言葉。 柔らかく閉じられたまぶたから、伝う涙を何かが優しく拭ってくれた。 「わたしも…」 というのがやっとだった。深い愛に包まれることがこれほどの充足を もたらすのか。母に抱かれ眠る子のように、ツネコは夢の世界へ 落ちていった。 暗闇の中、二つの目が光っている。ツネコの目ではない。年に一度だけ 復活することを許された戦後最凶最悪の強姦魔、岩手ノリオの目である。 愛する人が眠りに落ちたことを確認すると彼は動き出す。心の闇が動き出す。 その目は既に優しさの微塵もなく、ただ夜の闇に光る獣の目。 これを読んでいる女性は気をつけたほうがいい。忘れてはならない。彼が、 最凶最悪と呼ばれ、恐れられたことを。彼は現れる。ツネコの元へ現れた ように。ただ、ツネコにしたようにはしないだろう。 何をするかは…。 今宵、あなたの、まくらもとへ…。 終
|
- 【エロ】山形先生Part3【オカルト】
682 :作者 ◆xDdCPf7i9g [sage]:2006/09/24(日) 23:58:39 ID:r0dsn49p0 - >>681
ヒント:アッー! うそうそ(笑)
|