- 【エロ】山形先生Part3【オカルト】
628 :作者 ◆xDdCPf7i9g [sage]:2006/09/22(金) 01:03:00 ID:ympX+bwM0 - >>624
『片腕の男』は犯人なんでしょうか。私にも分かりません… >>625 たまにナンコツに若干身(肉)がついた状態で出してくれる店が あるんですよ。あれがまた美味いです。あとつくねにワザとナンコツ 混ぜてる店。いいです^^ こりっこり。 >>626 『四次元居酒屋』なので何でもあると思いますww 基本的に山形先生に出てくる食べ物や小物といったアイテムは私が 実際に食べたり飲んだり使ったり好きだったり、愛着のある物を出して るんですが、日本酒は余り明るくないんですよ…。今度飲んでみるです^^ >>627 幽霊が直接ズバっと出てくるより個人的にこの手の話が好きですね。 なんだか分からないけど怖いみたいな。『夜にも奇妙な物語』ともちょっと 違うんだけど…。『枡や』での会話が中心、しかも語り手が若干べらんめぇで 無骨なてっちゃんだからどこまで怖さが伝わったか…。 感想たくさん感謝!読んでくれた人みんなにありがとう^^
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629 :作者 ◆xDdCPf7i9g [sage]:2006/09/22(金) 20:40:56 ID:ympX+bwM0 - さてここらで怖い話でもするか。
草壁アヤはいつもの自信を失いかけていた。 きっと大人が、やけ酒というのをやる時はこんな時なのだろうと思った。 つづく
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630 :作者 ◆xDdCPf7i9g [sage]:2006/09/22(金) 20:54:37 ID:ympX+bwM0 - 業界大手とされるプロダクションのオーディションに参加したものの、
落選した上、きつね顔の審査員からは 「もう諦めたほうがいい。高校受験をして普通の人生を送った方がいいよ」 と嫌味半分に言われた。 これで主だったオーディションには出尽くした。後はアイドル発掘を内容とした テレビ番組に応募してみるか、一年に何度か行われる全国規模の企画物の オーディションを狙うぐらいしか方法がない。 素人参加番組に、応募して何か目立つことをやって誰かの目に止まるように 仕向ける方法もあったが、それはもう宝くじのようなものだった。 このまま電車に乗って帰るのもいやで、ファストフード店で一人、好物の チーズバーガーをぱくついたが気分は一向に晴れず、そのままその辺に ぽつんとあった公園のブランコに揺られていた。 猫の額ほどの狭い公園。この程度の公園でも都会ではそこそこ広いほうだろう。 そろそろ夕闇が迫ろうとする時間。地面に新聞紙を敷いて、ギターを奏でている 青年がいた。 アルペジオの旋律が、低いビルの谷間に吸い込まれていく。 大きく溜息をつく。やはり芸能人は無理か。 一応そこそこの高校に行ける学力があることが疎ましかった。(第六十二話 『障壁』 参照) つづく
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631 :作者 ◆xDdCPf7i9g [sage]:2006/09/22(金) 21:03:32 ID:ympX+bwM0 - 何となく自分には、進学という逃げ場がある気がするのだ。必死になりきれない
気がしないでもない。 頑張っているつもりなのだが、本当に玉砕覚悟の精神を持っているのか。 そう考えると思考は止まらなくなる。弱い。テレビに出てくるあの同世代の子たちは テレビではあんな明るく楽しくやっているようだけど必死なんだ。生き残るため。 サバイバル。その精神力と、芸能にかける情熱。自分はその道を進む意外に道は なしという猪突猛進の強い意思と勢い、直進性。それが自分にあるか。 『もう諦めたほうがいい。高校受験をして普通の人生を送った方がいいよ』 やばい。泣けてきた。その世界に入り頑張りたいのに、その世界に入ることすら 許されない屈辱。入ってしまえばいけそうな気がする。いや、入れない時点で 駄目なんだ。 やはり、泣いていた。 「どうしたの?」 声がする。気付けば隣のブランコに人が座っている。いつの間にいたのだろう。 優しそうな老人だった。笑顔をなげかけているが前歯がない。 「好きな人にでもふられたのかな?」 アヤは大きくかぶりを振った。 「よかったら、お爺ちゃんに聞かせてよ。話」 つづく
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632 :作者 ◆xDdCPf7i9g [sage]:2006/09/22(金) 21:15:43 ID:ympX+bwM0 - 鼻をすすり、バーバリーのトレンチコートの袖で瞼を拭う。
そういえば、親にも友達にも、 『芸能人って大変でしょ?大丈夫なの?』 と聞かれる度、平気だと言い続けてきた。自信はあると。自分に言い聞かせる ように。弱味を見せないように。 弱味を見せればつけ込まれる気がした。 『だったらやめちゃえばいいじゃん。頭もいいんだしさー』 親も本音を言えば進学を望んでいるようだし、弱味を見せることはできなかった。 絶対いける。絶対大丈夫! しかしそろそろ限界だった。 アヤは老人にぽつぽつと話をした。こんな老人に芸能界のことが分かるだろうか。 しかし優しげに彼女の話を聞きながら、老人はうなづき、よく話を聞いてくれた。 その様子に引き込まれたのかアヤは全てを曝け出していた。不安。恐怖。悔しさ。 それでいて、進学という退路に少しずつ感じている魅力。 今の若者が将来へ抱く感情を老人は知ってか知らずかとにかく聞いている。アヤは アヤで話してだいぶ気が楽になったのか、少しずつ笑顔を見せるようになっていた。 「笑うと可愛いねぇ。今テレビに出てる子たちなんかより、よっぽど可愛いよ」 つづく
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633 :作者 ◆xDdCPf7i9g [sage]:2006/09/22(金) 21:22:06 ID:ympX+bwM0 - 素直に嬉しかった。と老人はこんなことを言い出した。
「歌も歌うって言ったね。アヤちゃんの歌が聞いてみたいなぁ」 その場限りの社交辞令的冗談かと思ったがどうも本気らしい。 「聞かせてもらえないかなぁ」 「えーここでですか?」 「歌手っていうのは、みんなの前で歌うのが仕事でしょう?」 言われて気付いた。確かにその通りだ。何となく度胸試し、舞台根性をつける 為、老人に一曲披露することにした。 ブランコを降りて、ギターの青年の元へ向かう。 「すいません」 「…はい?」 「あの、あたし、歌いたいんで、伴奏つけてくれませんか?」 「あぁ、いいよ」 青年も少し驚いた様子だったが、嬉しいのか喜んで歌本を出して、好きな歌を 選ぶように言った。老人に聞かせるのだし伴奏がギター一本なら静かなゆったり した曲がいいだろうとアヤは知っている曲を一曲選んだ。 つづく
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634 :作者 ◆xDdCPf7i9g [sage]:2006/09/22(金) 21:28:55 ID:ympX+bwM0 - 「これで、お願いできます?」
「うん。全然だいじょぶ」 老人は少し離れてブランコに小さく揺れている。公園には何組かの カップルもいた。 ギターの前奏に続いてアヤが歌いはじめた。 アヤの声量は飛び抜けている。それ故、オーディションでは顔をしかめる 審査員もいた。声が大き過ぎるというのだ。 しかし、室外においてその響きは絶大な威力を発揮した、公園の側を通り かかった者ですらをも公園内に引き込む。 歌い終わる頃には小さい人だかりができて、拍手が起こった。アヤは頭を下げ、 ギターの青年に礼を言うと、ブランコに戻った。 やっと集まり始めたギャラリーは、なんだ一曲だけだったのかと少々残念そうだった。 「いやあ上手いね!」 老人は感心した様子で帰ってきた彼女を迎える。 「そうですか?」 「それでオーディションに受からないの?おかしいねぇ。どうかしてるよ」 つづく
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635 :作者 ◆xDdCPf7i9g [sage]:2006/09/22(金) 21:38:45 ID:ympX+bwM0 - とにかく老人の褒めっぷりは凄まじく、遂に彼は正体を明かした。
「今度是非連絡をちょうだいよ」 「え?」 「あのね…私はこういうことやってるの」 「はぁ…」 「それじゃ、余り遅くなったら危ないよ。最近物騒だからね。早く帰った方がいい。 必ず連絡してね」 つい先日襲われたことを思い出して(第六十二話 『障壁』 参照)、別れの挨拶も 適当にアヤは駅へと向かった。 老人が最後に手渡したものは黄ばんだ名刺だった。 『福井芸能事務所 社長 福井宗一郎』 とあり、電話番号と住所が書いてある。聞いたこともない芸能事務所だ。少しだけ アヤは落胆した。恐らく売れない演歌歌手を何人かかかえて細々とやっている 小さい事務所だろう。 電車に揺られながら、アヤはまた大きく溜息をついた。 つづく
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636 :作者 ◆xDdCPf7i9g [sage]:2006/09/22(金) 21:48:10 ID:ympX+bwM0 - 翌日の昼休み、アヤは一応その名刺にあった電話番号に電話を
してみることにした。 何を当てにしたわけではない。きっぱりと断るためだ。この福井という 老人は嫌いじゃないし、親身になって話を聞いてくれた。でも、小さい 事務所でこつこつやっていくつもりはない。 変に期待もさせたくないから、もし自分を囲って、デビューさせるような つもりが向こうにあるなら、はっきり断ろうと思ったのだ。 しかし妙なことに気付いた。電話番号がおかしい。電話をしてもつながらない。 「あれ?」 困っていると声をかけられた。 「よお草壁」 見れば山形ユウジロウが立っている。 「あ…先生…」 「どうした?やっぱり上手くいかないのか?」 無論、アイドルタレントへの活動の話である。事情はよく知っていた。一応進路相談専門の 教師はいるにはいるのだが、まずほとんどの生徒が高校進学する中で、タレントに なりたいという相談にはさすがに乗り切れず、主立って真剣に気にかけてくれている教師は ユウジロウぐらいだった つづく
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637 :作者 ◆xDdCPf7i9g [sage]:2006/09/22(金) 21:52:53 ID:ympX+bwM0 - 「いや…そういうのじゃないんですけど…これ見て下さい」
名刺を見せる。 「電話、つながらないんですよ」 「…こりゃまた古い名刺…つながるわけないよ。これまだ九桁の時のだ」 「九桁?」 「知らないか…。昔東京の電話番号ってのは九桁しかなかったんだよ。 今は十桁。人口が増えすぎて番号が足りなくなったから、いつだったか 一桁増えたんだ」 「そうなんですか…」 「しかしこんな古い名刺誰から…」 と言いかけて、ユウジロウの動きが固まった。 「これどこでもらったの?」 「…渋谷かな…?あの辺の公園で…。おじいさんから…」 「ちょっと預かっていいか?」 「いいですけど…」 つづく
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638 :作者 ◆xDdCPf7i9g [sage]:2006/09/22(金) 22:01:40 ID:ympX+bwM0 - その日、夜になってユウジロウからアヤに電話があった。今から迎えに
行くから準備をして待っていろというのだ。 わけも分からず着替えて家の外で待っていると、赤いポンコツの軽自動車が やってきた。言われるままに乗り込んで、向かう先は山形家だった。 「え?先生やですよえっちなこととか…」 「ばか!そんなんじゃない。いいから降りろ!」 居間に通される。アヤが山形家に入るのは初めてである。居間には中年と 呼ぶには少々歳のいった身なりのいい男が座っていた。見覚えがあるようで ない。 男と向かい合うように、アヤとユウジロウは座った。男が口を開く。 「この名刺をもらったのはあなたですか?」 ユウジロウに渡した名刺を男は見せた。 「あ、はい」 名刺を渡された詳しい経緯を教えてくれと言うので、アヤは詳しく話した。公園。 ブランコ。老人。ギターの青年。歌。集まった人。もらった名刺。 男はひどく難しそうな顔をして聞いていた。 つづく
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640 :作者 ◆xDdCPf7i9g [sage]:2006/09/22(金) 22:24:14 ID:ympX+bwM0 - 「実は私、この福井宗一郎の息子でして」
机に置かれた黄ばんだ名刺を男は四本の指でとんとんと叩いた。 「はぁ…」 「父は十六年前に他界しました」 「え?」 彼の父親、福井宗一郎は一九五〇年、三十七歳の時設立福井芸能事務所を 設立した。そして六十歳を迎えるにあたり会長職に退き、息子であるこの男に 社長職を引き継がせた。 しかし会長となっても七十七歳で逝去するまで芸能人の卵を発掘しては育てて きた。会長なくして福井芸能事務所なし、と言わしめた程の人物。 彼の育てた芸能人は数知れず。今だマネージメントの神様、プロデュースの神様と 呼ばれる。 そしてその息子は父の死後、社名を世界に通用させる為に日本名から横文字に 変更。 モンロービルプロモーションである。 つづく
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641 :作者 ◆xDdCPf7i9g [sage]:2006/09/22(金) 22:31:23 ID:ympX+bwM0 - 「申し送れましたが私こういう者です」
男が差し出す真新しい名刺。そこにあった名は 『モンロービルプロモーション 代表取締役 福井幸之助』 アヤは失神しかけた。モンロービルプロモーション。それは業界最大手と される芸能事務所だった。余りに巨大、しかもオーディションなどは一般に 行われていない。 オーディションなどしなくても、芸能界を目指す有能な者たちからの履歴書、 デモテープ、写真が毎日ごまんと送りつけられてくる。その中から選ぶか、 もしくは小劇団や、地道に活動しているバンドにまで触手を伸ばし、原石を 見つけては磨き、世に送り出す。 今では日本人アーティストや俳優を外国にも売り出し成功を収めていた。 そのトップが目の前にいるのである。アヤも無意識的にモンロービルは 避けていた。どこかで絶対に自分では通用しないと思いこんでいた。 「え…あの…」 戸惑うアヤにとにかく土曜日に本社へ来るように告げて、そろそろ遅いからと、 アヤを帰らせた。ユウジロウがクルマで送っていく。 福井幸之助は一人不思議そうに父の名刺を眺めていた。 つづく
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642 :作者 ◆xDdCPf7i9g [sage]:2006/09/22(金) 22:37:30 ID:ympX+bwM0 - 居間にアカネが入ってきた。
「福井さん…」 「あぁすいませんでした今日は…」 「いえいえ」 「あの草壁という子の言っていた公園。あそこは父が事務所を初めた時に一室を 借りていたビルの跡地です」 「そうなんですか…それで、どうなんでしょう。あの子は…」 「まだ分かりませんが…父の目は絶対でした。死ぬ間際まで。ろくに目も見えず、 耳も遠いのに、あの人にはその後世に出る人が分かっていた」 「…」 「父がみつけた最後の原石です。輝かせてみせます」 「あたしからもお願いします」 「大丈夫ですよ。父は、絶対ですから」 草壁アヤの未来が約束された瞬間であった。 終
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