- 【エロ】山形先生Part3【オカルト】
434 :作者 ◆xDdCPf7i9g [sage]:2006/09/15(金) 00:34:08 ID:OurzwY6k0 - >>まとめ人 さま
今回の話、悪くないとは思うんだけど、引用引いちゃってるし、 まとめサイトに格納しなくていいです。 わがままいってゴメンね。
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- ■■■■■ 東京 多摩 3 ■■■■■
846 :本当にあった怖い名無し[sage]:2006/09/15(金) 00:43:44 ID:OurzwY6k0 - そろそろスレ違いなんじゃねぇのと突っ込みたくなるが相手が相手
だけに一概に否定できないところがオカルトだな。
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436 :作者 ◆xDdCPf7i9g [sage]:2006/09/15(金) 21:44:42 ID:OurzwY6k0 - (すいません慢性胃炎持ちなのですが今日は腹痛がひどいです。途中でリタイア
しちゃったらごめんなさい…) さて、ここらで怖い話でもするか。 長く続いたイラン・イラク戦争も停戦に至り、韓国ソウルで開催されたオリンピックも 終わった。 つづく
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438 :作者 ◆xDdCPf7i9g [sage]:2006/09/15(金) 21:56:00 ID:OurzwY6k0 - 日本はバブル景気で、浮ついた雰囲気が漂っていた。
一九八〇年代の末である。 山形ツネコの自宅前には黒塗りの高級車が止まっていた。 降り立った初老の男はそのままツネコの家へと足を踏み入れた。 玄関ではツネコが三つ指をついて彼を出迎えた。 「ようこそいらっしゃいまし」 「いやいや今日は茶を頂きに参ったまで。どうか恐縮なさらず…」 男は客間に通され、ツネコは茶を立てた。 「…陛下の御容態はいかがですか?」 茶を差し出しながら、ツネコは訊ねた。男は渋い顔をした。 「余り、かんばしくないのですね…」 何も答えず、男は茶を一口すすった。彼はツネコの客であった。金を払い、 ツネコを抱いている。しかし今日のようにただ、彼女に会いにくるだけのことも 多かった。 恐らくは寄る年波に勝てず、精力も減退しているのだろう。その上に、大変に ストレスのかかる仕事をしている。男はさる大臣だった。 つづく
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441 :作者 ◆xDdCPf7i9g [sage]:2006/09/15(金) 22:12:14 ID:OurzwY6k0 - 他愛もない話がゆったりとした時間の中で続いた。
オリンピックのこと。世間を騒がす連続幼女誘拐事件のこと。 レースのカーテン越しに入ってくる秋の風が涼しい。 表の通りでは小学生たちが 「ファッミコンウォーズが出ぇるぞっ!」 「ファッミコンウォーズが出ぇるぞっ!」 「こっいつっはたっのしいシミュレーション!」 「こっいつっはたっのしいシミュレーション!」 「のめりこめ!」 「のめりこめ!」 「のめりこめ!」 「のめりこめ!」 「かーちゃんたっちにっは内緒だぞっ!」 「かーちゃんたっちにっは内緒だぞっ!」 とCMソングを真似て調子よく唄いながら走っていく。 大臣は口元を緩めて少しだけ微笑むと、スーツの内ポケットから ハイライトの箱を取り出した。咥えると同時にツネコが気を利かせて 身を乗り出してカルティエのライターを差し出すのを遠慮するように 手で制して、男は自分のライターで火を着けた。 つづく
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444 :作者 ◆xDdCPf7i9g [sage]:2006/09/15(金) 22:21:54 ID:OurzwY6k0 - 大きく煙を吐き出しながら大臣はぽつりと言った。
「ここにいるのが一番落ち着く…」 「畏れ入ります」 大臣には妻がいる。ここへ初めて訪れた頃、ツネコに惚れ、 求め、年甲斐もなく恋焦がれたものだが、ツネコにとっては、 客のそういった感情をいなすのも仕事の内だった。 今となってはそんな感情もなく、単に癒しを求めてやって来ている 自分に、男は今更ながらに気付いた。 「…それもその陰行流の技術の一つですか?」 ツネコは着物の袂で口を隠すようにして笑った。 「人を気持ちまで操るすべがあるなら…このような生活はしませんわ」 「…書の道具はありますか?」 「…書?」 「墨と筆と紙さえあれば」 ツネコは一度客間を出ると、自分の寝室から書道具を持ってきた。 つづく
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445 :作者 ◆xDdCPf7i9g [sage]:2006/09/15(金) 22:33:07 ID:OurzwY6k0 - 「余り、字は上手くないのですが」
と断り、大臣は自分で墨をすり、半紙に筆を滑らせた。 謙遜なのか達筆である。書きあがったそれは、賞状だった。 山形ツネコを、重要無形文化財として認める旨が記されていた。 「御冗談を」 そう言いながらもツネコは微笑んでうやうやしく、頂いた。 と、客間の襖が開いた。幼いアカネが立っていた。 「ねー、アンパンマンまだあ?」 「…これは大変な失礼を…これ、アカネ…」 「はは、いや構わないですよ。アカネちゃんおいで」 アカネは大臣の膝の上に座ったが煙草の煙が嫌だった。 「たばこやだなー」 そういうと立ち上がってさっさと客間を出て行った。 「ふられてしまいましたか…」 大臣は寂しそうに煙草を灰皿に押し付けた。 つづく
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446 :作者 ◆xDdCPf7i9g [sage]:2006/09/15(金) 22:42:10 ID:OurzwY6k0 - 玄関のドアを開け閉めする音がした。どうやらアカネが外へ
出て行ってしまったらしい。 退屈を嫌うアカネは最近ドアの鍵に手が届くようになって、一人、 勝手に出歩くことがある。 しかしまだ四歳だ。ツネコは心配したが客人の手前、それを表情に 出すわけにはいかなかった。 と、大臣は察したのか、そろそろ時間なので、と告げて立ち上がった。 「ごゆっくりなさればいいのに」 「いえ少し仕事がありましてね」 「残念ですわ」 「…これは今日のお茶代です」 そこそこ厚みのある封筒だった。ツネコは素直に受け取り、玄関まで 連れ立って、大臣が靴を履くのを見届けると深々と頭を下げた。 「またのおいでを、お待ちしております」 ドアが閉まりクルマが走り去る音を聞くと、草履を履いて表へ出た。 もうアカネはどこにもいなかった。 つづく
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447 :作者 ◆xDdCPf7i9g [sage]:2006/09/15(金) 22:52:24 ID:OurzwY6k0 - アカネはとことこと歩いて、家から程近い公園に来ていた。
砂場が目当てだったが、砂場には既に誰かがいて、水道の水を バケツに汲んではぶちまけて、泥団子を作ったり、溝を掘って 川を作ったりしていた。 アカネはいいなあと思いつつも、その仲間に入ることができなかった。 内気なのである。 どの遊具にも誰かしらがいる。唯一シーソーは空いていたが一人では 遊べない。 仕方がないのでベンチに向かった。そこには老人が一人座っていた。 内気ではあるが、中年以上であれば平気だった。特に、おじいちゃんや おばあちゃんと呼べる年代の人には愛着がある。 アカネはてってと走って行った。 そんなアカネを見て老人はにこにこと笑っている。しかし、近づいたアカネは 老人の奇妙な点に気付き、足が止まった。 老人は斜視だった。幼いアカネにとっては、それは何か怖いものに見えた。 それに気付いた老人はさらに笑って、おいでおいでと手を振る。 ゆっくりと警戒しながらアカネは近づいた。 つづく
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448 :作者 ◆xDdCPf7i9g [sage]:2006/09/15(金) 22:57:30 ID:OurzwY6k0 - 「おじいちゃん、おめめどうしたの?」
「これはね、薮睨みと言うんだよ」 「やぶ?」 「そう。やぶにらみ」 「やぶにやい…お病気?」 「んん…そうだねぇ。お病気かな」 「痛いの?」 「いいや。痛くないよ。大丈夫だよ」 アカネは老人の隣に座った。 「お嬢ちゃんはみんなと遊ばないの?」 「だってみんな知らない人だもん」 「そうかそうか。知らない人は苦手か」 「うん。ちょっとこわい」 「そうかそうか」 優しく老人は笑った。 つづく
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449 :作者 ◆xDdCPf7i9g [sage]:2006/09/15(金) 23:02:19 ID:OurzwY6k0 - 「でも、お砂場で遊びたかったなー」
「ふぅん。砂場が好きなのかい」 「あのね、お山作ってトンネルにするんだよ」 「そうかそうか」 「やりたかったなー」 「砂場を自分で作ればいいよ」 「え?」 「自分で作るんだよ。砂場を」 そうかと思い、アカネはちょこんとベンチから飛び降りると、持ってきた 玩具のスコップで公園の地面を掘り始めた。しかし地面は固く、プラスチックの スコップでは全く歯が立たない。 「だめだって」 「うん。それじゃ砂場はできないね」 だんだんアカネはいらいらしてきた。やっぱり帰ろうとすると、アカネは砂場にいた。 「ん?」 つづく
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450 :作者 ◆xDdCPf7i9g [sage]:2006/09/15(金) 23:09:07 ID:OurzwY6k0 - 「砂場はこうやって作る」
顔中皺だらけにして老人は笑った。アカネは混乱している。 いつの間にかベンチの前が砂場になったのだ。 向こうにも砂場が見える。男の子たちが泥遊びをしている。 公園に砂場は一つしかないはずだった。 試しにスコップをあてがうと、さくりと砂は簡単に掘れた。 「お砂場!」 薮睨みの老人が見守る中、アカネはスコップを使い手を使い、 できるだけ大きい山をこしらえた。手で堅く固めて、トンネルを 掘る。見事にそれは開通した。 「ほら!」 「うん。よくできたねぇ。トンネルだ。すごいなぁ」 「おじいちゃんも何か作ってよー」 「んー?何がいいかな?」 「んと…象さん」 「象か…象…象…」 つづく
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452 :作者 ◆xDdCPf7i9g [sage]:2006/09/15(金) 23:16:21 ID:OurzwY6k0 - 老人がぶつぶつと呟いてばかりで動かないので、アカネは
この人は象を知らないのだと思った。 「あのね、象ってね、大きくてね、お鼻が長くってね、お耳も大きいの」 「ほら、できたよ」 「ん?」 老人がアカネの背後を指差すので振り返るとそこには、リアルな象が 既に出来上がっていた。 「向こうから見てごらんよ」 言われるまま砂場の向こうに回りこむと、大きい象に隠れて何と子象まで いる。 「すげー!お兄ちゃんとアカネだ!」 「そうかい。アカネちゃんっていうのかい。お兄ちゃんがいるの?」 「いるよー。でも今お仕事行ってる」 「お仕事?お兄ちゃんはもう働いてるいるのかな?」 『働く』という言葉の意味がアカネには分からなかった。 つづく
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453 :作者 ◆xDdCPf7i9g [sage]:2006/09/15(金) 23:23:31 ID:OurzwY6k0 - うんうん考えていると老人は言い直した。
「お兄ちゃんは、もう大人の人かい?」 「あーうん。もう大きいんだよ!」 「そうかいそうかい」 アカネは象を感心して眺めている。その技術性の高さは幼いアカネにも 分かった。手も触れず、こんなものをどう作ったのか。まさに象そのもの。 ちょうど砂のグレーと象のグレーも似ていて、ぞうっとするほど象だった。 失礼。 そこへ声が聞こえた。アカネを呼ぶ声だった。そちらの方を向くと着物の 女性が立っている。ツネコだった。 「あ、ママだ」 「おやおや。迎えに来てくれたんだねぇ」 じっと母の姿を見ている。ツネコは小走りに向かってきた。そうだママにこの 象を見せよう。きっとびっくりするよ。 「アカネ!駄目でしょ!勝手に外に出ちゃ!」 怒られているが全くの無視である。それより象を見せたい気持ちが強かった。 つづく
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454 :作者 ◆xDdCPf7i9g [sage]:2006/09/15(金) 23:31:41 ID:OurzwY6k0 - 「ねぇママ見て!アカネとねぇ、お兄ちゃんの象なんだよ!」
指差す先に象はなく、それどころか自分が作った山も、砂場自体が 消えていた。 ベンチに老人が一人座っているばかりである。 「あれー!?」 「あれーじゃないでしょ!ほらアンパンマン始まるって!」 「あのねぇ、あのおじいちゃんがね、象作ってくれたの」 何を言ってるのかわけが分からないがとにかくどうも何か老人に世話に なったらしいことを感じ、ツネコは老人に礼を述べた。 「いやいやいい退屈しのぎができました…あまり怒らないでやって下さい…。 ね。アカネちゃん。遊びたかったんだよね」 「うん」 「本当にすいません。失礼致します…」 頭を下げ下げ去っていく歳の随分と離れた親子を老人は笑顔で見送った。 つづく
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456 :作者 ◆xDdCPf7i9g [sage]:2006/09/15(金) 23:45:40 ID:OurzwY6k0 - その後二十年近く経った今に至るも続くアニメ、『アンパンマン』の記念すべき
第一回放送を見て、しばらくすると新米教師のユウジロウが帰宅。 夕食の席でもアカネは今日の出来事をとにかく繰り返した。 「でね、おじいちゃんがね、やぶにやいでね」 「何だヤブニヤイってのは?」 「ん?目がね、変なドラえもんみたいなの」 「はぁ?」 少し解説を要する。アカネがいう『変なドラえもん』とは、ネズミなどを見て、 少々おかしくなってしまった時のドラえもんのことだ。時に目が星になったり、 クエスチョンマークになったりするが、目が斜視のように、あちらこちらに なることがある。アカネはそれを伝えたかったのだが、ユウジロウやツネコに その真意が伝わるはずもない。 「それでね。砂場ができてね、お山を作ってね、トンネルを掘ったの」 「うんうん」 「そしたら象ができたんだよ!」 「へー」 意味が分からないので関心の持ちようがなかった。しかし、巷を騒がせている 幼女誘拐事件もあって、少しユウジロウは心配だった。 つづく
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457 :作者 ◆xDdCPf7i9g [sage]:2006/09/15(金) 23:54:17 ID:OurzwY6k0 - その後もアカネの『脱走』は続いた。目的地は勿論件の公園である。
いつも薮睨みの老人はいた。 そしてアカネは母に発見され、連れ戻されるまで老人からレクチャーを 受けた。 「いいかい。アカネちゃん。想像力ってわかるかい?わからないかな」 「うん」 「思い出すんだよ。頭の中に絵を書く。目を閉じてね」 もうツネコも諦めていた。いつもアカネが行く場所は決まっている。公園だ。 そして同じ老人と一緒にいる。悪い人ではなさそうだが、何か異様な雰囲気を 持っていることが気がかりだった。 アカネも老人と一緒にいた後は一日中妙なことを言う。たまにはっきりと彼女は 言った。 「イメージはやがて現実になる」 意味が分かっていっているふうではなかったが、子供のいう言葉ではない。 何か妙なことを教え込まれているらしいがアカネは至って楽しそうだし、何度か もうその老人と会っては駄目だと告げたが、隙を見ては出て行ってしまう。 つづく
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