- 【エロ】山形先生Part3【オカルト】
351 :本当にあった怖い名無し[sage]:2006/09/11(月) 00:25:13 ID:rqIwjqLS0 - さてここらで怖い話でもするか。
「やっぱり告白する」 石川レイカは友人達の前で宣言した。 つづく
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352 :本当にあった怖い名無し[sage]:2006/09/11(月) 00:39:43 ID:rqIwjqLS0 - 「マジ?」
「でも尾藤君人気あるからなぁ…」 「当てって砕けろって?」 二年C組の放課後である。山形ユウジロウ刺傷事件も彼が無事復帰したことで 早くも風化し、クラスもいちも通り落ち着いた雰囲気を取り戻していた。 事件の際、真っ先に電算室を飛び出し、職員室に駆け込んだサッカー部員、 尾藤ケンサクに石川レイカ惚れ込んでしまっていた。 サッカー部員とはいえ、それ程サッカーが巧みなわけではないケンサクだったが、 整った顔立ちで、清潔感があり、性格も明るかった。 一年生の頃からジャニーズ系の美男子と一部で囁かれ、実際女子に人気がある。 ただ、浮いた話はない。誰かと付き合っているという話は聞いたことがなかった。 それだけに更に人気は高い。美少年でありながら、それを鼻にかけることもなく、 女子を顔で差別しているようなこともなかった。 しかし、それ故に難攻不落とされ、告白した女子は次々にやんわりと断られるという 噂だった。不美人にもチャンスがある分、美人も自分の利点を活かせない。 とにかく一体どんな相手だったら付き合うのか、という話はよく持ち上がっていた。 つづく
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354 :本当にあった怖い名無し[sage]:2006/09/11(月) 00:58:22 ID:rqIwjqLS0 - 一応調査とばかりに、
「好きなアイドルとかいないの?」 などと訊ねてみてもはっきりしない。元モーニング娘。の矢口真里がいい と言うこともあれば、吉本興業の山田花子がいいと言うこともあり、まただいぶ 年上の山口智子がいいと言うこともある。 では年上好きなのかと問えばそうでもなく、同世代の若手アイドルにも好きな 者はいるという。では誰かと問えば恥ずかしいと言って答えない。 当然だが、同様に校内に誰か憧れの人はいないのかと問うても答えようとは せず、どんな女性がタイプかと聞いても、『相性のいい人』という余りに曖昧な 返答。 しかし、逆説的に考えると、『じゃあ誰でもいいのではないか』という答えに至り、 人気に拍車がかかっていた。 「で、いつ決行?」 「絶対早いほうがいいよ」 「そうかなぁ…」 「今日いきなよ!今日!」 もうアドバイスを超え、一見心配しているように振舞いながら、興味本位である。 つづく
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355 :本当にあった怖い名無し[sage]:2006/09/11(月) 01:10:43 ID:rqIwjqLS0 - 悩んでいたが、結局今日、告白することになった。ただ急かされたから
ではなく理由があった。 尾藤ケンサクは今日、日直だったのだ。日直といっても何をするわけでなく、 ただ朝の挨拶、授業開始時の号令、帰りの挨拶の掛け声をするだけである。 お馴染みの『起立、気を付け、礼、着席』の掛け声当番といっても支障ない。 ただ、終業後、日誌を書く役目があった。その日の時間割、主に起こった 出来事、担任教師への連絡事などを日誌に記して、職員室まで持っていく のだ。 それが何故理由になるか。要するに、放課後、日直が日誌を書く為、一人 教室に残る確率が高いのだ。そうなれば告白しやすくなる。 案の定、終業のホームルームが終り、みんなが帰り支度を済ませて、教室を 出て行く中、ケンサクが日誌を取り出して何やら書き込み始めた。 通常であれば、放課後何人かの生徒は残っているものだが、今日レイカが ケンサクに告白することを知っている一部の女子が協力し、残っている生徒を 次々と何かと理由をつけ追い出してくれる。 たちまちケンサクは一人になった。レイカは教室のすぐ外で呼吸を整えている。 一緒にいてくれる友人もあったが、一人にしてほしいというレイカの要望で、 少し離れた女子トイレに身を隠していた。 つづく
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357 :本当にあった怖い名無し[sage]:2006/09/11(月) 01:22:23 ID:rqIwjqLS0 - 「どうなると思う?」
「言っちゃ悪いけど無理だと思うよ」 「最低。けしかけといて」 「ちょっと待ってよなんであたしが悪者になるの?」 大きく一つ息をついて、石川レイカは教室に戻っていった。向こうから 話しかけてくれないかな、と期待したが、忘れ物でも取りに来ただけ だろうケンサクは日誌を書く作業を黙々と続けている。 どうやら自分から行くしかなさそうだ。意を決した。 「尾藤くん…」 少し驚いた様子だったが、ペンを置いてケンサクは振り返った。 「…?何?」 「あ、いや、あのさ、あはは…」 少し女性的なケンサクの目がこちらに向いている。それだけで激しく 緊張した。 しかしケンサクは気付いていた。告白だと。小学校の五年生あたりから モテはじめて、告白を受けた回数も多い。その雰囲気は嫌という程 味わっていた。 つづく
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358 :本当にあった怖い名無し[sage]:2006/09/11(月) 01:36:15 ID:rqIwjqLS0 - 決して悪い男ではなかったが、やはり慣れというものはある。
それはどうしようもなかった。 相手が相当の勇気をもって挑んでくるのは分かる。分かるし、嬉しくも あるのだが、断るのにも気を使う。 失礼なことだと自分で思いつつ、どうしても、『面倒くさい』という感情は 拭えなかった。 レイカはそのまま何か喋ろうとするのだが、まともな言葉になっていない。 この時間がじれったい。だからと言って、『どうせ告白でしょ』とも言えず、 ケンサクは既に断りの言葉をどうしようかと頭を悩ませていた。傷つけたくも ない。 「あの、彼女とかいるの?」 「いないけど…何で?」 ただ、質問に対して『いないよ』と答えるとまた止まってしまう。だから、『何で?』と 分かりきった質問の理由を敢えてこちらから問うことで、最終質問を促す。こう 聞かれれば相手に残された道は告白するか、『なんでもない』と言って逃げ出すか しかない。 いつの間にか身についたテクニック。ただそんな無用な会話術を持つ自分がケンサク は嫌いだった。異性にモテるというのは男性共通の夢だが、既にその夢に達して しまったケンサクにとっては正直少し迷惑だった。しかしせっかく好意を持ってくれている のに、それを迷惑と思う自分が嫌いだった。 つづく
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359 :本当にあった怖い名無し[sage]:2006/09/11(月) 01:44:38 ID:rqIwjqLS0 - 「いや…何でっていうか…こないだ、山形先生が刺された時、
校長先生とか呼びに行ったじゃん」 「あぁ、うん」 「それで、それ見た時、すごいカッコイイとか思っちゃって」 「うんうん」 「それからなんか、好きになっちゃって」 「…」 「だから、彼女とかいなかったら、付き合うっていうか…なんか」 いい調子で来ていたのに最後でつまづいた。お互い無言。何も喋らないので とりあえず告白と見なしたケンサクず仕方なく言った。 「…俺、好きな人いるんだ」 「え…あ…そうなんだ…あの、それって誰かとか聞いちゃだめ?」 「言えるわけないじゃん」 「そうだよね。そうだよね。ごめん。そうだよね。ごめん邪魔して。それじゃ…」 「…明日ね」 つづく
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360 :本当にあった怖い名無し[sage]:2006/09/11(月) 01:50:29 ID:rqIwjqLS0 - 教室から出てきて、とぼとぼと廊下を歩いてくるレイカを見計らって、
女子トイレからぞろぞろと『協力者たち』が現れた。 「なんだ…トイレにいたんだ」 「…やっぱ、駄目?」 「うん。好きな人いるんだって…」 「マジ?いるのかな?」 「断る理由じゃない?」 「ホモなんじゃないの?」 「女っぽい顔だもんね」 「化粧したらあんたより美人かもね」 「うるせーよ。やっぞ?」 「はいはい。怖い怖い」 「でも残念だったねー。大丈夫?」 「うん。初めから知ってたし」 「どんなカワイイ子が行ってもダメらしいもんねー」 つづく
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363 :本当にあった怖い名無し[sage]:2006/09/11(月) 01:58:48 ID:rqIwjqLS0 - 「じゃ帰ろうよ」
「帰りウチ寄ってく?コンビニで甘いモンでも買って」 「あチョコモナカジャンボ食いたい」 「えーアイスかよー寒ぃ…あたしアレ。なんつったっけ?長いシュークリームに チョコ乗ってるヤツ」 「なにそれ?長いシュークリーム?」 「エクレアじゃないの?」 「あーそれそれ」 「行こ行こ」 何となく、ふられたばかりのレイカの感情を全く無視しているようだが、彼女たち なりの気遣いだった。それはレイカにも分かっている。だが、どうも乗る気には なれなかった。 「ごめん。ちょっと一人になりたいんだ」 「あーそうなん?そっか。じゃあなんかあったらメールしてよ。電話でもいいし」 「うん。ありがとう」 「元気出しなよ。相手が尾藤じゃしょうがないよ」 つづく
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365 :本当にあった怖い名無し[sage]:2006/09/11(月) 02:09:48 ID:rqIwjqLS0 - わいわいと去っていく彼女達の背中を見送って、振り返る。
自分たちの教室。二年C組。尾藤ケンサクはまだ出てこない。 まだ日誌書いてるのかな。でも告白されたことがちょっと気になったり してないかな?後で『やっぱり…』みたいなメール来たりして…まさかね。 でももしあったら嬉しいな…。告白したらスッキリするのかと思ったけど。 まだなんか中途半端で…。このまま家帰ったら泣いちゃうかも。何が 気に入らなかったのかな。それだけでも聞いておけばよかった。そしたら、 そこ直してまた告白すればいいんだもん。甘いかな…。 足は教室に向いていた。扉が半分開いている。隙間からそっと中を伺う。 尾藤ケンサクは机にいたが、日誌を書いているわけではなかった。何か、 一人で口を動かしている。物を食べているわけではない。喋っている。 微かだが声も聞こえる。内容までは聞き取れなかった。電話でもしてるのかと 思ったが違う。机の上に置いた両手で、何かを大事そうに持って、それに 向かって話しかけている。 何かのお祈り?なんか変な宗教でもやってるのかな…。ちょっと気味悪い…。 変な宗教とかやってんなら付き合わなくて正解だったかも…。 と、しばらくして突然口を閉じたケンサクは机の横の金具に掛けてある通学カバン にその『大事そうに持っていた物』をしまおうと、扉の方に向きを変えた。 つづく
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366 :本当にあった怖い名無し[sage]:2006/09/11(月) 02:17:58 ID:rqIwjqLS0 - 目があった。そして石川レイカは見た。『大事そうに持っていた物』。
それは小さい人形に見えた。 「あ…ごめんなさい!」 何か見てはいけないものを見てしまった気がしたレイカは慌てて 教室から離れようとする。しかしそれをケンサクは制した。 「ちょっと待って!」 カバンと日誌を持った尾藤ケンサクがレイカを追うように教室を出てきた。 「見られちゃったかな?」 まさかあの状況で『見ていません』とはいえない。レイカはうなずく。ケンサクの 顔を伺うと特に気まずい様子もなく、いつもの笑顔を見せている。 「…これ」 彼が見せてくれたのはやはり人形だった。女の子の形を模したぬいぐるみ。 明らかに手作り、それも素人が作った物であることは一目で分かった。きっと 誰かからのプレゼントだろう。 つづく
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367 :本当にあった怖い名無し[sage]:2006/09/11(月) 02:29:50 ID:rqIwjqLS0 - しかし、いずれにしてもかなり汚らしい。薄汚れて様々なシミがついている。
「…か…かわいいお人形だね…」 「ははは…ちょっと汚いけど…これ、俺のその、好きな人からもらった…」 「そうなん…」 『そうなんだ』と言おうとしたレイカの言葉をケンサクの言葉が遮った。 「最初で最後のプレゼント」 「…え?」 「死んだんだ。知ってるだろ。隣のクラスの井上マユって」 「井上…さん?」 「ほら、こないだ火事で死んだでしょ?」 夏休みが明けて間もない頃、一人の女が死んだ。井上マユ。軽子沢中学 二年D組。オカルト同好会創立メンバーの一人。 報道では自分で自らの家に灯油を巻き、火を着けたことになっている。 一家は全滅。家も完全に燃え尽きて彼女の遺体もほとんど炭のような状態 だったという。 「これ、その人からもらったんだ」 つづく
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368 :本当にあった怖い名無し[sage]:2006/09/11(月) 02:42:11 ID:rqIwjqLS0 - 「…付き合ってたんだ。一年の時から」
「…」 「一年の時一緒のクラスでさ。すごい気が合ってね。初めて 俺から告白して。みんなに隠れて付き合ってて…二人で 動物園に行ったり…」 何を考えてるんだろうとレイカは思った。今ふったばかりの女に 死んだ元彼女の思い出話を聞かせる。しかも話しながらケンサクは 泣き始めた。次第に感情は高まり、遂にレイカの理解を遥かに超える。 「ね。あん時は楽しかったよね。そうそうホットドッグ食べて、マスタードが すごい辛くて。そうそう。そうだったよね」 人形と会話しながら話す。ぼろぼろと涙を流しながら。レイカのその神経と 精神を疑った。まともではない。次第にエスカレートするケンサクは遂には レイカの存在を全く無視して、人形とだけ話しはじめた。人形のことを『マユ』 と呼びながら。 「…ごめんちょっと用事あるから、あたし先、帰るね」 「あはは。浮気なんてしないよ。するわけないじゃん。大好きだよ。でもみんな には内緒にしておこう。ヤキモチ焼くのもいるからさ。え?俺じゃないよ!マユが 可愛いからだよ!」 付き合いきれずレイカは帰った。ふざけている様子ではない。恋人が死んだショック でおかしくなってしまったのだろうか。しかし普段は至って普通だった。 つづく
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369 :本当にあった怖い名無し[sage]:2006/09/11(月) 02:55:06 ID:rqIwjqLS0 - いずれにしても、玄関を出る頃にはレイカの気持ちはすっかり冷めていた。
単に彼が死んだ以前の恋人に今だ心を奪われているからではない。 不気味だったからだ。友達に言いたくもなかった。ケンサクが憐れに思えた。 尾藤ケンサクが職員室の前にたどりつくと既に石川レイカはいなかった。 あれ…おかしいな…そう、『マユ』のこと見られて、変なウワサでも流されたら たまらないと思って説明して…そのあとどうしたんだっけ?また思い出せない。 頭が痛い…。 日誌を提出して、自宅へ。部屋に入りドアを閉めるとカバンから薄汚れた人形を 取り出した。 「ごめんねマユ。狭かっただろ。え?だから今日の子は関係ないって!ちゃんと 断ったよ。え!そんなことないって。俺にはマユしかいないよ!愛してる。大好き だよ。怒らないでよ…今日もしてよ…ずっと我慢してたんだから…だめ?やだよ! 一週間も我慢できない!お願い!」 異様な部屋だった。壁一面に井上マユの写真が貼られている。しかしその写真は いずれも携帯電話のオマケ機能程度のカメラで撮られたものや、プリクラの写真を 無理矢理拡大したもので、画像が荒く、中には何が映っているのか分からないほどの 物もあった。 学校の遠足や運動会の写真もあるがやはり拡大コピーされ、他者と一緒に映っていたと 思われる写真はマユの姿だけを丁寧に切り取って貼られていた。 つづく
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370 :本当にあった怖い名無し[sage]:2006/09/11(月) 03:10:07 ID:rqIwjqLS0 - 更にそれらの写真の上には、カバーするように薄い透明のビニールが
重ねて貼られている。 「ねぇいいだろ?え?いいの?本当?うん。大好きだよ。マユだけ。 ありがとう」 ケンサクはズボンとパンツを脱ぎ去るとペニスを写真にこすりつけ始めた。 たちまち勃起し快感に喘ぎ、一枚一枚の写真を大事そうに手で愛で、部屋中 を移動しながら、あらゆる写真にペニスを激しくすりつける。 「ああ…マユ…愛してる…なんで俺だけ残して…あんなにずっと一緒にいよう って約束したのに…でもいつまでも一緒だよ…ずっと一緒…あっ…あぁ…」 尿道を精液が駆け抜け、マユの写真にかかったが、ビニールでカバーしてあるので 直接写真が汚れてしまうことはない。 笑顔で笑う体操服姿のマユの顔をつたって、白い精液が滴っていた。 「…マユ…マユ…帰ってきて…」 彼女に囲まれた部屋でケンサクは泣きに泣いた。 しかし奇妙なことがある。いずれの写真もマユ一人の写真ばかりで、ケンサクと共に 写っている写真が一枚もないのである。引き伸ばしたプリクラの写真も、マユが女 友達と写したもので、そこにもケンサクの姿はなかった。 終
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373 :作者 ◆xDdCPf7i9g [sage]:2006/09/11(月) 11:25:06 ID:rqIwjqLS0 - >>371
感想ありがとう^^ あと、途中で謝ってくれたけど合いの手は個人の自由だよ。 だってここ掲示板だもん。邪魔されるのがいやだったら自分でブログか何か 作ってやるってば。 話ぶった切ってもいいから気にしないでレスして。コピペとか巨大AAとかは やだけど(笑) 読んでくれてありがとう。 >>372 記憶飛んでるんだけど、読んでみるとそうだろうなぁ。でも相手はこの世に いない…自分で書いておいてなんだけど、なんか複雑な気持ちになるお話 でした。
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374 :作者 ◆xDdCPf7i9g [sage]:2006/09/11(月) 16:33:25 ID:rqIwjqLS0 - さてここらで話でもするか。
タクシードライバーがしているような綿の手袋に覆われた手が 山形家のチャイムを押した。 つづく
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376 :作者 ◆xDdCPf7i9g [sage]:2006/09/11(月) 16:45:38 ID:rqIwjqLS0 - 山形アカネが玄関のドアを開けると、そこには霧原トオルが立っていた。
「あぁトオルか…」 「あぁって何だよ」 「来る前に電話ぐらいすればいいのに」 「うん。先生、いる?」 「お兄ちゃん?ごめん今道場行ってるよ」 陰行流艶術の更なる向上の為、山形ユウジロウはブラジリアン柔術の 道場に不定期ながら通っている。 「…すごいかっこだね…」 「…あ、うん…」 少しアカネは顔を赤らめた。ナイロンのイージーパンツに、スポーツブラ。 アカネにとって見ればスポーツブラなど、丈の短いタンクトップという程度の 認識だったが、下着であることに代わりはない。敢えて口に出されると少し 恥ずかしかった。 「革の手袋はやめたの?」 女性はファッションに目ざとい。トオルの手袋の違いを一瞬で見抜いた。 つづく
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377 :作者 ◆xDdCPf7i9g [sage]:2006/09/11(月) 17:01:09 ID:rqIwjqLS0 - 霧原トオルには、触れた者の感情や思考、記憶を読み取る能力がある。
平常な人間に触れる分にはそれ程大したことはないのだが、特に感情の 昂ぶっている者や、強烈な想いを抱く者などにうっかり触れると、トオルが 望まなくともその感情が流れ込み、卒倒しそうになることが度々あった。 そのことをユウジロウに相談したところ、手袋でもすればいいのではないか という結論に至り、以来、トオルは右手にだけ黒革の手袋をするようになった。 左手はその能力的にはかなり鈍感なので、覆う必要はない。しかし、どうも 片手だけ黒革の手袋というのも、何か恰好つけているようで嫌になり、今日は ごく普通の綿の手袋にした。 居間に通されると、机の上にはヨガの入門書が乗っている。アカネが随分と ラフな恰好をしている理由が分かった。 ソファをトオルに勧めて、自分はキッチンへ向かうと、アカネはオレンジジュースを グラスに注いで、トオルに出してやった。 「ありがと」 スポーツブラから除く胸の谷間が気になった。霧原トオルには一つ年上の木下サエ という恋人がいたが、上といってもまだ十五歳。対してアカネはもう二十歳を回った 大人の女である。女の色香という意味では、恋人にはないものがあった。 「…何か着なよ」 「ん?何で?変な気持ちになる?」 からかうようにアカネは言ったが、その目には淫靡な光が宿っていた。 つづく
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378 :作者 ◆xDdCPf7i9g [sage]:2006/09/11(月) 17:11:10 ID:rqIwjqLS0 - トオルの目をじっと見るとトオルは目を逸らしてグラスを口に運んだ。
視界の横にアカネの顔がある。はっきりとは見えないが、こちらを 見つめ続けていることだけは分かる。 横に目をやる。やはり見ている。目が合う。目を逸らす。 「…なんで…見てるの?」 「…可愛いなぁって。思って」 「…」 一度は憧れた人。 「ねぇ…トオル」 「なに?」 「キスしよ」 「!」 アカネの腕が肩に回って、優しく抱き寄せようとする。わずかに横に張り出した 豊かな胸が、グラスを手にするトオルの腕に、柔らかく触れた。 つづく
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380 :作者 ◆xDdCPf7i9g [sage]:2006/09/11(月) 17:24:35 ID:rqIwjqLS0 - 「…力抜いて。だいじょぶ。怖くない…」
全身が心臓になったかのような感覚。鼓動が激しい。トオルはグラスを机に 置いて、アカネの方に顔を向けた。 思った以上に彼女の顔は近く。互い、目を閉じて。 残り二十三ミリでトオルの純潔が拒否した。 「だめだよ!こんなの!俺、彼女いるし!」 アカネは突き放された。溜息が大きい。 「よっしゃあぁぁぁぁー!」 突然キッチンカウンターの向こうから人影が現れた。ひどく驚いたが、それは あろうことか自分の彼女、木下サエだった。勝ち誇るようにガッツポーズで 立っている。 トオルは混乱していた。 「ごめんね。トオル。したくなかったんだけど…」 手を合わせてアカネが詫びた。要するに『ドッキリ』だ。かなりタチが悪い。サエが 仕組んだのだろう。トオルをアカネに誘惑させて、心が動くかどうかのテスト。 つづく
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382 :作者 ◆xDdCPf7i9g [sage]:2006/09/11(月) 17:36:04 ID:rqIwjqLS0 - トオルは何度かサエを連れて山形家を訪れたことがあった。
余り気が合いそうにもなかったがどういうわけかアカネとサエは 意気投合し、サエ個人でもアカネに勉強を教えてもらう為、山形家 を定期的に訪れていたのだ。 昨夜メールで、トオルは今日ユウジロウを訪ねることをサエに 明かしていた。それに合わせて計画されたのだろう。 トオルは憤慨していた。まだ拒否したからよかったようなものの、 そのままアカネとキスしてしまったらどうなったのか。 「まぁそう怒るな。霧原!」 満足気にサエはトオルの肩をバンバンと叩いた。アカネの服装も、 ヨガの入門書もどうも全て演出だったようだ。アカネは別室で着替えて 戻ってきた。 「ところであたし、ユタカ連れて散歩行くんだけど…どうする?」 「一緒に行ってもいいの?」 「うん。全然構わないよ。でも邪魔じゃない?」 「邪魔って?」 「いや、二人きりの方がいいかなって」 「アカネさん一緒の方がいいよー。霧原大人しいんだもん」 つづく
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383 :作者 ◆xDdCPf7i9g [sage]:2006/09/11(月) 17:58:11 ID:rqIwjqLS0 - (すいません電話です。一時停止します)
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385 :作者 ◆xDdCPf7i9g [sage]:2006/09/11(月) 18:31:34 ID:rqIwjqLS0 - (すいません長くなりました。再開しますが、またかかってくる可能性
があります。その際は御了承下さい。今回分はライブではなく、後で ゆっくりお読みになられた方がいいかも…。かなりまったりした話に なると思いますし)
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386 :本当にあった怖い名無し[sage]:2006/09/11(月) 19:02:18 ID:rqIwjqLS0 - 「じゃ、行こっか」
「行くぞ霧原。何あんたまだ怒ってんの?気にしない気にしない。 あーあれだよ、もしあの時アカネさんとキスしてもあたし平気だったし」 木下サエは全く浮気を意に介さない。最終的に自分の所へ戻ってきて さえくれれば何処で何をされても気にしない女だった。 以前付き合っていた男にも、いわゆる『四股』をかけられていて、友人づてに その話を聞いた時の彼女のリアクションは『で?』の一言だけであった。 ユタカもまだまだ仔犬だが、そろそろ多少の精悍さが出てきた。 元々は若手で有能な弁護士だった。肉体をユウジロウ再生の為に奪われた ものの、犬としてアカネの側にいることを決断したユタカ。 元が人間であるからか利口で、既に基本的な芸はマスターしているし、仮に リードがなくとも主人について散歩することもできた。 「あ、トオル、そういえばさー、動物の心って読めるの?」 「動物!?」 「おー面白そうだ。やってみろ霧原」 確かに経験したことはない。霧原トオル、余り動物が好きではなかった。 特に怖いとか、そういったわけではないが、両親が共に仕事に忙しく、ペット などを世話する時間的余裕などあるわけもなく、動物自体に接する機会が ほぼ皆無だった為、扱い方がよく分からないのだ。 つづく
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387 :本当にあった怖い名無し[sage]:2006/09/11(月) 19:15:20 ID:rqIwjqLS0 - 綿の手袋を取り去り、ユタカに手を伸ばす。人なつこい犬なので
他人に触られることに対してユタカが警戒するようなことはない。 触れる。流れ込んでくる『それ』は人間の『それ』に比べて余りに 単純だった。 トオルの能力は言わば、『交感』であり、言語化された情報が流れて くるわけではない。かと言って、ビジュアルでもなければサウンドでも ない。その『感じ』がそのまま流れ込んでくる。だからこそ、言葉の通じない 外国の人間の心も読み取ることができた。 「とりあえずこれから散歩に行けて嬉しいみたいだよ」 「そんなの見れば分かるじゃん。シッポ振ってるし」 「…でもその程度のことしか感じてないよ」 「まだ小さいからかな?」 「もう性欲もあるみたい…でも人間には向いてないと思う。犬のメスを 求めてるよ」 「へー…早いなー…去勢手術とかしとかないとね」 どうも、ユタカは既に人の心を失い今や完全な犬になったようだ。果たして それが幸か不幸かは知る由がない。 つづく
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388 :本当にあった怖い名無し[sage]:2006/09/11(月) 19:35:19 ID:rqIwjqLS0 - 人の心を残していたとしても、心はどこに収まるのか。心が脳にあると
考えれば明らかに許容量が足りない。確実にオーバーフローを起こす。 もし心が脳に依存しないとしても、脳も含めて肉体はは犬。犬の行動限界を 超えることは決してできない。 人は人として、犬は犬として生きること。当たり前のことだがそれが最も自然 であり幸せなことではないだろうか。人としてのユタカの個性は失われたが、 肉体も持たず霊としてアカネに張り付いていることが幸せとも思えない。 (第二十五話 『犬の生活』 参照) 兄、ユウジロウを復活させる為に奪ってしまった肉体。責任が取りきれるもの ではないことは理解していた。(第八話 『予期された邂逅』 参照) しかしユタカ自身がそれを許し、アカネを守ることを選択し、犬として生きる ことを決めた。ユタカ自身の魂の決定。 「アカネさん?」 心を読ませて、もしユタカの『犬になんかなるんじゃなかった!』という恨み節を トオルに告げられたらどうしようかと少し懸念していた。しかしとりあえず、ユタカは 今の生活を楽しんでいるらしいことは分かった。それで充分だが、今更に 申し訳ないという気持ちがないわけではない。無論、取り返しはつかない。 「アカネさんってば!」 「え?あぁ、はい?」 つづく
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389 :本当にあった怖い名無し[sage]:2006/09/11(月) 20:02:18 ID:rqIwjqLS0 - 「大丈夫ですか?」
「あ…うんうん。平気。行こう。お散歩」 リードにつながれたユタカは短い足をちょこちょこと必死に動かしている。 川沿いの道。 木下サエは乱暴で、自分から惚れてトオルとつきあっているにも関わらず、 随分と邪険に扱う。しかし上手くいっていないというふうでもない。 サドとマゾというわけでもないだろうが、それで成り立っている関係。 トオルもサエの心中を察しているのか、粗暴に扱われても余り気にするような 素振りもない。相手にしていないかのように見えることもある。 一見するとちぐはぐ。それでも二人が愛し合っていることは間違いないように 思える。理想的な関係とは呼べないが、それはそれで良い。 アカネは二人が羨ましかった。穢れのない関係。ただ思うまま、心のまま 愛し合える関係。自分にはできないことだった。 初恋は美しかったが、それが永遠の思い出となることは許されなかった。 (第三十八話 『憧憬』 参照) 「アカネ、大丈夫?なんか変だよ」 「ん?だって、あたし彼氏とかいないし。ちょっと羨ましいかなって。はは」 「アカネさんも彼氏作ればいいじゃん。すぐできそう。かわいいし」 つづく
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390 :本当にあった怖い名無し[sage]:2006/09/11(月) 20:25:36 ID:rqIwjqLS0 - 「彼氏かぁ…そうだねぇ…」
トオルはアカネの心を知っている。ある意味それは呪いだ。 自らを縛る呪縛。『そんなこと気にしないで』という安易な助言で 済むような問題でないことも知っている。 一見、人の気持ちも顧みず、ずけずけとものを言いそうなサエだが、 それでも女だ。何かただならぬアカネの気持ちを何となく察した。 事情は知らない。何かワケがありそうだが、向こうから言ってこない 以上はこちらから聞くことでもないのだろう。何やかんやと聞きたがる 野次馬根性をサエは持ち合わせていない。 先頭はユタカだった。ちゃかちゃかと爪を鳴らしながら川沿いの遊歩道を 歩く。少し大きめの石や歩いている虫を見つけてはそっちへ行こうとする。 アカネは軽くリードを引いて、ユタカを制した。その度にユタカに振り返って アカネの顔を眺める。怒られているのかと思っているらしい。アカネが 笑うと、安心してまたちゃかちゃかと歩き出す。 横から見たその笑顔が、哀しみを湛えているのをサエは見た。アカネとの つき合いはまだまだ短いが、この人には人に言えない何かがあるんだ。 多分トオルはそのことを知っている。でもあたしの友達のアカネさんは、 あたしの知ってるアカネさん。あたしの知らないアカネさんがいるとしても、 それはあたしの友達じゃない。だから気にしない。もっととずっと仲良く友達で いれたら、少しずつ知ってるアカネさんが増えて、知らないアカネさんは 減っていく。全部のアカネさんを知った時、まだあたしはアカネさんの友達で いられるか。それとも途中で嫌いになっちゃうか。 つづく
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- 【エロ】山形先生Part3【オカルト】
392 :本当にあった怖い名無し[sage]:2006/09/11(月) 20:38:56 ID:rqIwjqLS0 - でも今、アカネさんはあたしの大事な友達で、大事な先輩。
尊敬もしてるし、好き。いつか嫌いになっちゃうかもとか考えてたら 誰とも付き合えない。あたしだって、アカネさんに見せてない部分が ある。 ふと、トオルを見る。 そうだね。結局全部なんか見れないし、見せてくれない。霧原 だって同じこと。あたしの知らない霧原もいる。でも霧原は触るだけで 全部見えちゃうんだ。それはそれで大変だよね。便利かもって 思ったけど、全部知っちゃうって怖いことだ。隠すことは、見せないことは、 悪いことじゃない。 「さて、と」 「?」 「なんか、あたし、邪魔してるみたいな気になってきたよ」 「そんなことないよ」 「ううん。ちょっと疲れたし。休んでいくから」 急にどうしたんだろう、やはり羨ましがらせてしまったのか、 だとしたら悪いことをしたな、トオルは思ったが、適当に別れの 言葉をアカネに告げたサエに引っ張られ、そのまま川沿いの 遊歩道を早歩きに歩いた。 アカネはそのままユタカを連れて、遊歩道脇に作られたごく小さい 公園のベンチに座って泣いた。 つづく
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- 【エロ】山形先生Part3【オカルト】
393 :本当にあった怖い名無し[sage]:2006/09/11(月) 20:53:25 ID:rqIwjqLS0 - もう少し強いはずだった。今日に限って何でだろう。トオルとサエの
関係がすこぶるいいことは知っている。のろけ話も散々聞いた。 でも今日は切ない。 ユタカはしばらくリードの届く範囲内で物珍しそうに公園ベンチの周り をうろうろしていたが、アカネの様子がおかしいことに気付くと、彼女の 足元に座ってじっと顔を見上げていた。 二本足で立ち上がって、前足でアカネのすねを押す。慰めているつもり なのか、それとも散歩を続けようと催促しているのか分からないが、アカネは ユタカを抱き上げると強く抱きしめて更に泣いた。 ふと急に暗くなった。目を開けると、見覚えのある靴が見えた。顔を上げる。 「ユタカ、いやがってるぞ」 ユウジロウが立っていた。腕を緩めるとユタカはアカネの膝から飛び降りて、 よろよろと歩いた。苦しかったらしい。 「…お兄ちゃん…」 「帰ろう」 泣いている理由をユウジロウは聞かない。アカネが弱い女でないことは 知っている。いつも戦っている。ただ、戦いに疲れることがたまにある。その時 アカネは涙を流す。それだけ知っていれば充分だった。 つづく
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- 【エロ】山形先生Part3【オカルト】
394 :本当にあった怖い名無し[sage]:2006/09/11(月) 21:14:35 ID:rqIwjqLS0 - アカネと手をつないで歩く。してやれることはそのぐらい。
慰めない。慰める必要はない。哀しみに打たれ泣く女に男が してやれることは、言葉をかけることではない。 所詮人も動物で、言葉は単なる道具に過ぎないことをユウジロウは 知っている。 だから手をつなぐ。 「帰ったら抱っこしてやるから…」 そうか。いたんだっけ。つい忘れてた。難しいから。あたしのお父さんで、 お兄ちゃんで、大好きな人で。泣きやんだアカネはユウジロウの肩に頬を つけた。 ユタカはそれまでしばらく後ろを気にしながら歩いていたが、アカネが 泣きやんだことを見届けてからはずっと前を向いてちゃかちゃかと歩いた。 終
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- 【エロ】山形先生Part3【オカルト】
395 :作者 ◆xDdCPf7i9g [sage]:2006/09/11(月) 21:17:25 ID:rqIwjqLS0 - 途中電話あって長くなりました(時間が) ライブで見てた人いたら
ごめんです。 並びに今回オカルトないです。板違いも謝るです。
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