- 女優・神田沙也加さん急死で樋口日奈は病むのか?
222 :君の名は(東京都) (ワッチョイ ff6e-kSWT)[]:2021/12/21(火) 00:16:37.13 ID:/lP8GyDt0 - >>220
おまえの性根がダメなだけだぞ
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- 久保の胸揉みたい
54 :君の名は(東京都) (ワッチョイ ff6e-kSWT)[]:2021/12/21(火) 00:43:46.54 ID:/lP8GyDt0 - 固そう
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- みんなでご飯食べたいと言ってた寺田蘭世が卒業した途端みんなでご飯食べながらの忘年会企画
87 :君の名は(東京都) (ワッチョイ ff6e-kSWT)[]:2021/12/21(火) 00:45:45.17 ID:/lP8GyDt0 - >>13
シロウトがギョーカイ人づらして損失だモラルだ騙るなキモチワルイ
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- 乃木坂46バトロワ小説『サンヨン』
1 :君の名は(東京都) (ワッチョイ ff6e-kSWT)[]:2021/12/21(火) 00:50:49.33 ID:/lP8GyDt0 - 3期vs4期のバトルロワイヤル小説です。
〜登場人物〜 【3期】12名 伊藤理々杏、岩本蓮加、梅澤美波、大園桃子 久保史緒里、阪口珠美、佐藤楓、中村麗乃、向井葉月 山下美月、吉田綾乃クリスティー、与田祐希 【4期】16名 遠藤さくら、賀喜遥香、掛橋沙耶香、金川紗耶 北川悠理、黒見明香、佐藤璃果、柴田柚菜 清宮レイ、田村真佑、筒井あやめ、早川聖来 林瑠奈、松尾美佑、矢久保美緒、弓木奈於
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- 結局3期4期で人気ベスト10って誰で確定したの?
264 :君の名は(東京都) (ワッチョイ ff6e-kSWT)[]:2021/12/21(火) 00:53:03.70 ID:/lP8GyDt0 - なんか、スレ立て見ようと思ったが立たんな
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- 乃木坂46バトロワ小説『サンヨン』
2 :君の名は(東京都) (ワッチョイ ff6e-kSWT)[]:2021/12/21(火) 00:54:37.93 ID:/lP8GyDt0 - 【第1章 きっかけ】
『どんっ!さぁはじまりました。乃木坂バトルロワイヤル!司会のバナナマンです!』 『そしてそして、無人島にいる乃木坂ちゃんで〜す!』 (ムニャムニャ…んん) 聞き覚えのある声がして、遠藤さくらは目を覚ました。 青い空。緑の草木。そして赤や黄色の花々が視界に映る。 (あれ?) バッと体を起こして辺りを見渡す。 「ここ、どこ?」 誰もいない。森に囲まれたお花畑で一人きり。 いやいや普通に考えてこんな所で居眠りなんて、あるはずない。 でもどうやってここまできたのか思い出せない。 というか見覚えのあるジャージを着ている。 「何ですかこれ、番組のドッキリですか?」 遠藤さくらが誰にともなく問いかけたそのとき、 またあの声が聞こえた。 『今から乃木坂ちゃんたちに、ちょっと殺し合いをしてもらいま〜す!』
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3 :君の名は(東京都) (ワッチョイ ff6e-kSWT)[]:2021/12/21(火) 00:58:04.49 ID:/lP8GyDt0 - 名前:サンヨン作者(東京都) (ワッチョイ f29d-szvh)[] 投稿日:2021/11/05(金) 22:38:32.84 ID:owp8ynSR0 [3/8]
小高い丘の中腹で、久保史緒里は目を覚ました。 そしてあの声を聴いたのである。 「はぁ?殺し合い?」 思わず立ち上がる。 見覚えのあるジャージ姿、右手首に唯一見覚えのないスマートウォッチ。 声がしたのはそのスマートウォッチからだ。 『じゃあ日村さん、ルール説明してください』 『はいはい。いまその島には3期と4期が全員いるからね! 3期と4期でがんがん殺しあって!んで勝った方だけ帰ってこれるって訳!』 『あ、国の許可は取ってあるから。人殺しても罪にはならないんで! みんな安心して殺しあっちゃってくださ〜い!』 『こんな説明でわかるかな〜』 (わかるか!) 久保史緒里はスマートウォッチを睨みつける。 本当にまったく意味が分からない。 バナナさんがふざけているから、まだ何かの冗談としか思えない。 (てか3期と4期で殺し合いなんて、冗談にしてもタチが悪すぎでしょ) そう、冗談にしても何かがおかしい。辺りにはカメラもスタッフも見えない。 本当にただの無人島にいるみたいだ。 (まさか?本当に?)
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4 :君の名は(東京都) (ワッチョイ ff6e-kSWT)[sage]:2021/12/21(火) 01:00:20.18 ID:/lP8GyDt0 - 名前:サンヨン作者(東京都) (ワッチョイ f29d-szvh)[] 投稿日:2021/11/05(金) 22:40:31.41 ID:owp8ynSR0 [4/8]
『みんな〜腕に付いてるスマートウォッチのボタン押してみ〜』 薄暗い森の中で、早川聖来は目を覚ました。 まだ頭がボーっとしている状態で、言われるがままボタンを押す。 すると画面に「火」と表示されている。 『何か出たろ〜。それが今回みんなに与えられた魔法だぞ』 『魔法!魔法で戦うの!?すげー!』 (え?魔法?いや何言ってんすかそんなわけな…) 小馬鹿にしながら、手をかざしてみた。 すると掌から火の玉がボンと飛び出て、早川聖来はひっくりかえる。 「!!!!!!!!!!???????????」 「使える!魔法が!何でや!」 あまりの驚きに、一発で眠気が覚めた。 早川聖来の右手が本当に炎に包まれている。 『さぁみんな!勝った世代が、今後の乃木坂のエースだぞ!』 『その魔法を駆使して、3期と4期、いざ、殺し合おう!』
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5 :君の名は(東京都) (ワッチョイ ff6e-kSWT)[sage]:2021/12/21(火) 01:06:22.68 ID:/lP8GyDt0 - 名前:サンヨン作者(東京都) (ワッチョイ f29d-szvh)[] 投稿日:2021/11/05(金) 22:41:30.12 ID:owp8ynSR0 [5/8]
「殺し合う訳ないでしょ」 大園桃子は崖の上で、膝を抱えて泣き出しそうにうずくまっていた。 必死に、記憶を取り戻す。 そう、昨日の夜は確か3期生12人全員で集まって最後のロケをしていた。 私がグループを卒業するから。 最後にみんなで泣いて笑って、夜空に打ち上げ花火も見た。 そこまでは覚えている。 でもそこからの記憶がどうしても思い出せない。 「どうして…」 とにかく、自分はもう卒業するから。 こんな訳のわからないことに巻き込まれる必要はないはずだ。 (おうちに帰りたい) ぐっと気持ちを込めて、顔を上げる。 眼前には広大な青い海が広がっている。 他に陸地は見えない。 無人島だ。 右手首に「風」の文字。 風に乗って、空を飛ぶことが出来たら、この無人島を脱出できるかも。 大園桃子は手を広げて、風の魔法を使ってみた。 すると風が吹いた。 三番目の風が。
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6 :君の名は(東京都) (ワッチョイ ff6e-uxDf)[sage]:2021/12/21(火) 01:13:09.68 ID:/lP8GyDt0 - 名前:サンヨン作者(東京都) (ワッチョイ f29d-szvh)[] 投稿日:2021/11/05(金) 22:42:53.06 ID:owp8ynSR0 [6/8]
「あやめちゃ〜ん!!」 筒井あやめが海沿いを歩いていると、遠くから誰かが走ってくる。 「レイちゃん!!」 物凄い勢いで走ってきたのは、仲良しの清宮レイだ。 2人はそのまま勢いで抱き合って、砂浜を転げまわった。 「よかった!ほんとにあやちゃんだ!」 「も〜1人で不安だったよ〜」 「ね!聞いた!殺し合いとか!」 「やだやだ。しないよそんなの〜」 「ね!絶対する訳ないよね!」 「3期生の先輩みんな好きだし」 「私も!」 2人は海沿いの砂浜から、森や山が広がる島を見渡す。 「本当に、ここのどこかに他のみんなもいるのかな」 「探そう!みんな集まれば、何かいい考えが浮かぶかも!」 「この島を出る方法?」 「そう!探そう!」 清宮レイは筒井あやめの手を取って、走り出した。 18歳と17歳、真夏の大冒険。
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7 :君の名は(東京都) (ワッチョイ ff6e-uxDf)[sage]:2021/12/21(火) 01:14:03.16 ID:/lP8GyDt0 - 名前:サンヨン作者(東京都) (ワッチョイ f29d-szvh)[] 投稿日:2021/11/05(金) 22:45:27.85 ID:owp8ynSR0 [7/8]
(考えろ、考えろ、どうすればいい) 登り坂になった岩場を歩きながら、梅澤美波は思考を巡らせていた 同期の中でもまとめ役的ポジションの彼女。 3期生と4期生しかいないこの島には、頼りになる先輩がいない。 自分がしっかりしなければという気持ちになっていた。 バトルロワイヤルなんて、とんでもない話だ。 「絶対に誰も死なせない!3期4期みんなでここから出る!」 口に出してみて、考えがはっきりした。 (そうだ、みんなで生き延びる!まずはみんなで集まるのが一番いい!) 「おーい!誰かいなーい!」 大声で呼んでみた。 殺し合いなら、命がけの行為だ。 でもだからこそ、他のメンバーにも信じてもらえる。 「あ、あの…」 すると早速、岩場の陰から返事がかえってきた。 声がした方へ振り返る梅澤美波。 そこには4期生の弓木奈於が隠れていた。 「梅澤さん、誰も死なせないって、本当ですか?」 「弓木ちゃん!本当に決まってるでしょ!」 「よ、よかったです」 「こっちこそよかったよ!いっしょに他のメンバーをさがそ!」 「はい!」
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8 :君の名は(東京都) (ワッチョイ ff6e-uxDf)[sage]:2021/12/21(火) 01:14:31.82 ID:/lP8GyDt0 - 名前:サンヨン作者(東京都) (ワッチョイ f29d-szvh)[] 投稿日:2021/11/05(金) 22:49:03.54 ID:owp8ynSR0 [8/8]
賀喜遥香は他のメンバーを探して、林の中を走っていた。 キョロキョロ辺りを見渡すが、何しろ林の中では視界が悪い。 (もうちょっと開けた場所に出たい) 不安で泣きそうになるのを堪える。 (私が泣いてる場合じゃない!) とにかく早く誰かに会いたかった。できれば同じ4期の仲間に。 走り続ける賀喜のその体は、うっすらと光をおびていた。 大きな岩が地面から浮かび上がっている。 (おおおおおおお〜) 岩本蓮加は自分のしたことに驚いて、目を丸くしていた。 ズドンと大きな岩が地面に落ちた。 (これが魔法…) スマートウォッチには「岩」の文字が光っていた。 その頃、掛橋沙耶香も自分の魔法を試してみていた。 「えいっ!やあっ!とおっ!」 色んなポーズで魔法を出そうとしてみる。だが反応は無い。 「えー!なにも起きないよ〜!」 掛橋沙耶香は悲しそうに頭を抱えてうずくまった。 スマートウォッチには「保険」の文字が光っていた。 「やっぱりここ島だ〜!なんかなつかし〜!」 島育ちの与田祐希は、目覚めてすぐここが島だと気付いてはしゃいだ。 「せっかくだしちょっと泳ご〜」 砂浜から海に飛び込んで海水浴をはじめる。 そうしてずっと海で遊んでいたので、 与田は大事な話を何も聞いていなかった。
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9 :君の名は(東京都) (ワッチョイ ff6e-uxDf)[]:2021/12/21(火) 01:15:22.75 ID:/lP8GyDt0 - 名前:サンヨン作者(東京都) (ワッチョイ f29d-szvh)[] 投稿日:2021/11/06(土) 17:55:48.01 ID:6rfH8G++0 [1/9]
ヒュン。 心地よい風を感じて、遠藤さくらは立ち止まる。 (あ!) 崖の上で誰かがフワフワ風に乗って浮かんでいる。 (あれは…) 坂道を上って、近付いてみる。 そしてそれが誰か分かり、遠藤さくらはホッと表情を緩めた。 「桃子さん!」 「え?あ!さくらちゃん!」 大園桃子も気付いた。風の魔法を弱め、ゆっくり崖の上に降りてくる。 この無人島で目覚めて、お互い初めてメンバーと再会できた。 その喜びで2人は微笑みあう。 「よかった。会えてうれしいです」 「ほんと!さくらちゃん私のこと殺さない?」 「そんなことできないですよ〜!」 「フフフ。だよね〜」 ともにセンターを経験し、よく泣いて、ユニット曲を歌った2人は、 先輩後輩の壁を越えて仲良くなっていた。 だから大園桃子はすぐ、この遠藤さくらに大事な相談を打ち明けようと思った。 「私ね、脱出しようと思うんだ。この無人島から」
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10 :君の名は(東京都) (ワッチョイ ff6e-uxDf)[]:2021/12/21(火) 01:16:15.90 ID:/lP8GyDt0 - 名前:サンヨン作者(東京都) (ワッチョイ f29d-szvh)[] 投稿日:2021/11/06(土) 17:57:00.23 ID:6rfH8G++0 [2/9]
「え!そんなことできるんですか?」 「できそうなの。風で飛んで。それで練習してたの」 「風で!」 風の魔法。だからさっき、空に浮かんでいたのだ。 遠藤さくらは疑問がとけた。そして同時に希望が湧いてきた。 「ねぇさくらちゃん。一緒に逃げない?」 「え」 「2人なら風で飛べると思う」 「でもこの島にはまだ他のメンバーもいますよね」 「うん、でも全員を飛ばすのは流石にムリそうだし。 どこか安全な陸地まで着いたら、警察に連絡してみんなを助けてもらお。 私一人じゃ不安だったの。でもさくらちゃんと一緒なら心強いから」 大園桃子の真剣な表情に、遠藤さくらの気持ちは揺れた。 (確かに…それができるなら…一番確実にみんなで…) 決めた。桃子さんを信じる。 「はい、わかりました。私でよければいっしょに行きます」 「ほんと!嬉しい。」 パッと満面の笑みを浮かべる大園桃子。 風を吹かせると、静かに崖の上から浮かび上がった。 そしてその手を遠藤さくらに向けてひらく。 決心のきっかけは理屈ではなくて、いつだってこの胸の衝動から始まる。 「いこう、さくらちゃん」
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11 :君の名は(東京都) (ワッチョイ ff6e-uxDf)[]:2021/12/21(火) 01:16:44.07 ID:/lP8GyDt0 - 名前:サンヨン作者(東京都) (ワッチョイ f29d-szvh)[] 投稿日:2021/11/06(土) 17:58:00.76 ID:6rfH8G++0 [3/9]
矢久保美緒は、信じ難い光景を目の当たりにして目を丸くしていた。 (あ、あそんでいる…) バトルロワイヤル。3期と4期の殺し合い。 そんな恐ろしい話を聞かされたばりかのこの状況で。 (あそんでいる子がいる…) どこをどう見ても、ビーチでぱしゃぱしゃ遊んでいる子供…。 いや、あれは…。 (子供じゃない!あれ、与田さんだ!) もっと信じ難い。 我慢できず矢久保美緒は、与田祐希の方へ駆け出していた。 「与田さ〜ん!何してるんですか、こんな時に〜!」 本気で遊んでいた与田祐希も、ビーチを駆けてくる後輩に気付く。 「お〜!矢久保っち〜!いっしょに遊ぼ〜か〜」 「ええええ」 「せっかくの島なんだよ。遊ばなきゃもったいないでしょ」 この人は本当に奇想天外かあるいは超大物なのかもしれない。 矢久保美緒はさっきまで悩んでいたことがバカバカしく思えてきた。 「そ、そっすね〜。あそびま〜す!」
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12 :君の名は(東京都) (ワッチョイ ff6e-uxDf)[]:2021/12/21(火) 01:17:20.40 ID:/lP8GyDt0 - 名前:サンヨン作者(東京都) (ワッチョイ f29d-szvh)[] 投稿日:2021/11/06(土) 18:01:08.77 ID:6rfH8G++0 [4/9]
小高い丘の上、なんとすでに4人のメンバーが集まっている。 3期の久保史緒里と阪口珠美。 4期の田村真佑と林瑠奈。 割と近い位置で目覚めた4人は、 他のエリアと比べて見晴らしの良さそうな丘が視界に入り、 それぞれが各方角から丘の上を目指した結果、 こうして一気に4人が集結する形となったのだ。 「とにかく、みんなで助け合える方法を考えよう」 「そうですね。この丘を中心に他のメンバーも探せれば…」 久保史緒里の意見に田村真佑も同意する。 「なんかこれだけいると心強いですね」 林瑠奈は、ここに来て良かったとほっとしていた。 「大丈夫。きっとすぐにみんなそろうよ」 阪口珠美も前向きに後輩を励ましている。 どんな状況であれ、メンバーが多く集まれば希望も湧いてくるものだ。 だがこのとき、4人はまだ知らずにいた。 この後に起こるおぞましい悲劇を。
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13 :君の名は(東京都) (ワッチョイ ff6e-uxDf)[]:2021/12/21(火) 01:17:53.18 ID:/lP8GyDt0 - 名前:サンヨン作者(東京都) (ワッチョイ f29d-szvh)[] 投稿日:2021/11/06(土) 18:04:05.39 ID:6rfH8G++0 [5/9]
バトルロワイヤルが開始して約30分。 ちらほらと島の各地で合流し合う者同士が増えていた。 だが、未だ殺し合いどころか、戦いすら発生していない。 それも当然だ。彼女達は殺し合いなんかとは無縁の存在。乃木坂46だ。 誰も戦う訳がない。 メンバー同士が誰かを殺すなんてありえない。 3期と4期が殺し合うなんて絶対にありえない。 島にいる者たちのほとんどは、このときそう信じ込んでいた。 全28名の極一部を除いて…。 トン…トン…トン…。 一定のリズムで、美しい女性が坂道を下っている。 坂道の下の方で茂みに隠れていた黒見明香は、その足音に気付いて顔を上げた。 (あ…) 尊敬する先輩をみつけて飛び出す。 「よかった。私一人で不安で…。 あの…ご一緒してもいいですか?」 突然の後輩の登場にも動揺せず、 坂道を下ってきた山下美月は、艶やかに美しく微笑んだ。 「もちろん」 次の瞬間、島全土に最初の犠牲者の名前がアナウンスされた。
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14 :君の名は(東京都) (ワッチョイ ff6e-uxDf)[]:2021/12/21(火) 01:18:37.29 ID:/lP8GyDt0 - 名前:サンヨン作者(東京都) (ワッチョイ f29d-szvh)[] 投稿日:2021/11/06(土) 18:07:08.56 ID:6rfH8G++0 [6/9]
『お待たせ〜!!ようやく1人死んだよ〜〜〜〜!!!!』 『やっとか〜〜〜〜!!ほんと待ったよ〜!!』 「ひっ!!」 突然、例のスマートウォッチからバナナマンの大声が響いたので、 黒見明香はちいさく悲鳴をあげた。 目の前では、あの山下美月も口をあけてビックリしている。 (一体誰が…?) 別の場所では、早川聖来がジタバタ慌てふためいていた。 火の魔法を試していたところに突然の大声。 ひっくり返るほど驚いて、火が自分の髪の毛に引火しかけたのだ。 いや燃えていない。自分の魔法には耐性があるみたい。 「ったくこっちが死ぬわ!」 「…って、え?え?まって?1人?死んだ?」 焦げかけていた顔が、今度は青ざめる。 筒井あやめと清宮レイは、抱き合ってアナウンスの続きを待つ。 「ほ、ほんとなのかな…レイちゃん」 「嘘に決まってる!同期のみんなも3期の先輩達も、誰も死なない!」 信じる。乃木坂の絆を。信じている。 『では発表しま〜〜〜〜す!最初の犠牲者は〜〜〜〜』
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15 :君の名は(東京都) (ワッチョイ ff6e-uxDf)[]:2021/12/21(火) 01:19:10.81 ID:/lP8GyDt0 - 名前:サンヨン作者(東京都) (ワッチョイ f29d-szvh)[] 投稿日:2021/11/06(土) 18:08:17.92 ID:6rfH8G++0 [7/9]
『大園桃子〜〜〜〜!!!!!!!!!』 (!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!) 山下美月の表情が。 久保史緒里の表情が。 岩本蓮加の表情が。 3期生たちの表情が、一斉に凍り付いた。 いや4期生たちの表情にも絶望が浮かんでいる。 3期からも4期からも誰からも愛される、そんな存在だったのだ。 大園桃子という存在は。 その大園桃子が…死んだ!? ガクン。 同期でも、特に大園と親しくしていた梅澤美波が、膝から崩れ落ちた。 そしてボロッボロッと涙をこぼす。 「どうして…?どうして…?桃子が…?桃子が死ななきゃいけないの…?」 もう卒業を決めていて…これからは普通の女の子として… 幸せな人生に生きていくだけだったはずの桃子が…どうして!!」 近くにいた弓木奈於は震えるだけで何も答えることができない。 絶望と衝撃の中、アナウンスはまだ続く。 『それで〜大園を殺したのは〜〜〜〜』
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16 :君の名は(東京都) (ワッチョイ ff6e-uxDf)[]:2021/12/21(火) 01:19:42.25 ID:/lP8GyDt0 - 名前:サンヨン作者(東京都) (ワッチョイ f29d-szvh)[] 投稿日:2021/11/06(土) 18:11:30.46 ID:6rfH8G++0 [8/9]
(殺した!?) 涙ぐむ梅澤美波の瞳がカッと見開く。 「誰かが殺したっていうの…桃子を?」 「そんな訳ないです!誰も桃子さんを殺すような子はいません!4期には!」 弓木奈於も泣きながら叫ぶ。 「だよね…いる訳ないよね…そんな子…」 泣きながら梅澤美波は呟く。その瞳に小さく闇が宿る。 「でももし…いたとしたら…桃子を殺した子がいたとしたら…、 私はその子を…」 そして、誰も想像さえしていなかった名前が、島全土に響き渡る。 3期生12人の絆を、永遠に壊した者として、刻みこまれる名前。 悲劇の殺し合いの、きっかけを作った者の名前。 『大園を殺したのは〜〜〜〜遠藤さくら!!!!!』 THE FIRST KILL。きっかけは遠藤さくら。 【第1章 きっかけ 終】 3期生 全12人 死亡者1人 生存者残り11人 4期生 全16人 死亡者0人 生存者残り16人
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17 :君の名は(東京都) (ワッチョイ ff6e-uxDf)[]:2021/12/21(火) 01:20:10.55 ID:/lP8GyDt0 - 名前:サンヨン作者(東京都) (ワッチョイ f29d-szvh)[] 投稿日:2021/11/06(土) 18:12:52.61 ID:6rfH8G++0 [9/9]
【3期】 ・生存者残り11人 伊藤理々杏、岩本蓮加「岩」、梅澤美波、久保史緒里、 阪口珠美、佐藤楓、中村麗乃、向井葉月 山下美月、吉田綾乃クリスティー、与田祐希 ・死亡者1人 大園桃子「風」 【4期】 ・生存者残り16人 遠藤さくら、賀喜遥香、掛橋沙耶香「保険」、金川紗耶 北川悠理、黒見明香、佐藤璃果、柴田柚菜 清宮レイ、田村真佑、筒井あやめ、早川聖来「火」 林瑠奈、松尾美佑、矢久保美緒、弓木奈於 ・死亡者0人
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18 :君の名は(東京都) (ワッチョイ ff6e-uxDf)[]:2021/12/21(火) 01:20:51.61 ID:/lP8GyDt0 - 名前:サンヨン作者(東京都) (ワッチョイ f29d-szvh)[] 投稿日:2021/11/07(日) 18:52:49.62 ID:h3AVzDve0 [1/9]
【第2章 君に叱られた】 遠藤さくらが大園桃子を殺した。 それだけ告げるとアナウンスは消え、また島に静寂が戻った。 (…さくちゃん) 賀喜遥香は1人立ち止まり空を見上げ、顔を歪めていた。 (はやく、さがさなきゃ!) そしてまた木々の合間を走り出した。 体全体が光を帯び、まるで背中に翼が生えたように、加速していく。 「嘘だ!嘘だ!嘘だ!」 「そんな訳ないよ!そんな…」 筒井あやめと清宮レイは、信じられず声をはりあげていた。 4期生の誰もが彼女達と同じ気持ちだ。 誰よりも優しく、愛くるしい。 あの子が人殺しなんて絶対にする訳がない。 だが、同期の仲間を殺された3期生たちはどう思うだろうか。 全員が遠藤さくらを敵視する可能性も…。 恐ろしい想像に、筒井あやめはゾッとする。 しかし現実は、想像よりも早く事態を急変させていた。
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- 乃木坂46バトロワ小説『サンヨン』
19 :君の名は(東京都) (ワッチョイ ff6e-uxDf)[]:2021/12/21(火) 01:21:26.58 ID:/lP8GyDt0 - 名前:サンヨン作者(東京都) (ワッチョイ f29d-szvh)[] 投稿日:2021/11/07(日) 18:53:58.35 ID:h3AVzDve0 [2/9]
「驚いたよ」 「はい、あの、ビックリしすぎて、何が何だか…」 黒見明香は動揺してもう訳が分からなくなっている。 そんな黒見のそばに山下美月が微笑を浮かべたまま歩み寄る。 「あの子が…」 「あ、あ、あのさくらちゃんが」 「私より先に殺しちゃうなんて」 「そ、そ、そうですよね山下さんより先にころしちゃ…ころ…え?」 ブワッ。 突如、山下美月の左手から漆黒の闇が膨れ上がる。 「っ!!!!」 黒見明香の反応は速かった。 魔法「功夫」。功夫の達人の如く身体能力が跳ね上がる。 バク宙2回で闇を逃れた。と思ったが着地の所で謎の引力に足をとられた。 「いや!いやーーー!!!」 あらがえない。漆黒の闇が瞬く間に黒見明香を体ごと吸い込んでしまった。 これが恐怖の魔法「闇」。チリ1つ残さぬブラックホール。 「ごめんね。黒見ちゃん。でもさくらちゃんがやる気みたいだから」 山下美月は微笑を浮かべたまま、また静かに坂を下り出す。 (私も、殺る気になっちゃった)
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20 :君の名は(東京都) (ワッチョイ ff6e-uxDf)[]:2021/12/21(火) 01:21:50.62 ID:/lP8GyDt0 - 名前:サンヨン作者(東京都) (ワッチョイ f29d-szvh)[] 投稿日:2021/11/07(日) 19:00:20.32 ID:h3AVzDve0 [3/9]
シュウウウウウウウウウウウウウウ…。 梅澤美波は泣いていた。 それは悲しみと怒りによる涙。 彼女の周りには、巨大な窪地が出来上がっている。 魔法「重力」 圧倒的な重さで、まわりのすべてを押し潰す能力。 その窪地の片隅に、弓木奈於が倒れていた。 右手に魔法『弓』で産み出した大きな弓が握られている。 その弓を使用することもないまま、 彼女は潰され、すでに息を引き取っていた。 (もう…道はない…) (全員で笑って帰る道はない…) (その道を消したのは…あの子だ) 「決めたよ…私は戦う…」 (戦うしか道がないなら、私は戦う!) (勝って!残っている3期のみんなで帰る!) 覚悟を決めた梅澤美波が、歩み出す。 「とりあえず、遠藤さくらは殺す!」
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21 :君の名は(東京都) (ワッチョイ ff6e-uxDf)[]:2021/12/21(火) 01:22:16.78 ID:/lP8GyDt0 - 名前:サンヨン作者(東京都) (ワッチョイ f29d-szvh)[] 投稿日:2021/11/07(日) 19:01:05.53 ID:h3AVzDve0 [4/9]
与田祐希はまだ矢久保美緒と遊んでいた。 海の中にいたのでまた大事な話を何も聞いていなかった。 「与田さ〜ん!あれやってくださいよ〜!スト子!」 調子に乗って矢久保が与田の名物キャラをリクエストする。 「え〜。じゃ〜特別だよ〜」 普段はしないけれど、今は島でご機嫌だからノリがいい。 「ぐるぐる〜」 すると、突然、海がグルグルと渦を巻きだした。 (え?へ?あれ?) あまりに激しい海の渦に矢久保もグルグル飲み込まれてゆく。 「与田さ!ちょっ!待っ!ストッ!…ガボッ」 矢久保は魔法「砂」を使った。 だがお構いなしに砂ごとグルグル海中に飲み込まれてしまう。 (そんな〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!) 「スト子だっちゃ!」 ポーズを決めた与田祐希。 しかしそこにはもう、誰もいなかった。 「え〜!矢久保っちひどい!やらせといて〜!」 プンすか怒る与田。 「もういいや。海で遊ぶのは」 自分がやったことにも気づかず、与田祐希は海を出る。 (とりあえず、次は山で遊ぼう)
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22 :君の名は(東京都) (ワッチョイ ff6e-uxDf)[sage]:2021/12/21(火) 01:23:05.16 ID:/lP8GyDt0 - 名前:サンヨン作者(東京都) (ワッチョイ f29d-szvh)[] 投稿日:2021/11/07(日) 19:02:35.95 ID:h3AVzDve0 [5/9]
『黒見明香、死亡!勝者、山下美月!!』 『弓木奈於、死亡!勝者、梅澤美波!!』 『矢久保美緒、死亡!勝者、与田祐希!!』 驚愕の三連続殺害報告が、メンバー全員にアナウンスされる。 「いやっ!そんな!」 柴田柚菜は入り組んだ海辺の岩肌に座り、恐怖に青ざめていた。 「矢久保…なおちゃん…くろみん…」 こんな簡単に同期が3人も死んでしまうなんて、とても受け入れられない。 次は自分の番では、という怖さも襲い来る。 今いる場所は人に見つかりにくい場所だった。 (私、どうしよう…このまま隠れていた方がいいのかな…でも…) チラリと、スマートウォッチに表示された文字を見る。 そこに「雷」の文字があった。 金川紗耶もまた同期を3人も失った悲しみと衝撃に顔を歪めていた。 「山下さんと…梅澤さんと…与田さんが…」 3期の中でも絶対的エース級の御三方。 (その3人が揃って、私たち4期を殺し始めたってこと?) (とても信じられない) (そもそもあのさくちゃんが桃子さんを殺したことから信じられない) (探さなきゃ…先輩たちより早く…さくちゃんを…) 魔法「速」を発動。 金川紗耶はこの島を誰より速く駆け抜けることができる。
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23 :君の名は(東京都) (ワッチョイ ff6e-uxDf)[sage]:2021/12/21(火) 01:23:34.00 ID:/lP8GyDt0 - 名前:サンヨン作者(東京都) (ワッチョイ f29d-szvh)[] 投稿日:2021/11/07(日) 23:05:37.78 ID:h3AVzDve0 [6/9]
そんな中、この無人島でいま最も緊迫していたのは、あの丘の上だった。 3期の久保史緒里と阪口珠美。 4期の田村真佑と林瑠奈。 和気あいあいと脱出の話で盛り上がっていた。 大園桃子、そして黒見明香と弓木奈於と矢久保美緒。 彼女達が殺されたというアナウンスが届くまでは。 「…」 誰も何も言葉を発せない。 4期の仲間が3期生を殺してしまったこと。 3期の仲間が4期生を殺してしまったこと。 血みどろの戦いが、すでに始まってしまったということ。 誰も動けない。 4人のうち誰かが動き出したら、 今すぐこの場で殺し合いが始まってしまいそうな緊張感。 (どうやって…) (どうやってこの場を切り抜けたらいい…?) 震えながら、田村真佑は思考する。 自分の使える魔法は事前に把握していた。 この魔法ならば、この場を切り抜けることができるのはないか。 後手に回って、やられたら終わり。 (先手を取ればこの場を…) そう考えた瞬間、別のメンバーが先に動き出した。
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24 :君の名は(東京都) (ワッチョイ ff6e-uxDf)[]:2021/12/21(火) 01:24:02.89 ID:/lP8GyDt0 - 名前:サンヨン作者(東京都) (ワッチョイ f29d-szvh)[] 投稿日:2021/11/07(日) 23:06:42.07 ID:h3AVzDve0 [7/9]
林瑠奈だ。 もうこの緊張感に耐えきれなかった。 誰より先にその魔法を発動する。 魔法「木」。 足元からブワッと細長い木々が伸びてくる。 その木々が密接していた4人を分断した。 それを受けて阪口珠美も動いた。 魔法「銃」。 彼女の手に小型の拳銃が出現する。 銃なんて使ったことはない。 だけど魔法のおかげでスムーズに扱うことができる。 「うわあああああああああっ!!!」 パンッ!パンッ!パンッ! 銃声が3発鳴り響いた。 田村真佑は思わず耳を塞ぐ。だがどこにも痛みはない。 いずれの弾も、木の幹に当たっていた。林瑠奈も無事だ。 でも今回はたまたまラッキーだっただけ。 あんな拳銃に狙われたら、いつ殺されてもおかしくない。 (出遅れた!) (私もやらなきゃ!) 田村真佑もすぐさま魔法を発動した。 魔法「煙」。 モクモクモクと白い煙が立ち上り、4期の2人を包み込む。
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25 :君の名は(東京都) (ワッチョイ ff6e-uxDf)[]:2021/12/21(火) 01:24:21.68 ID:/lP8GyDt0 - 名前:サンヨン作者(東京都) (ワッチョイ f29d-szvh)[] 投稿日:2021/11/07(日) 23:12:52.15 ID:h3AVzDve0 [8/9]
「なっ!?」 阪口珠美は驚く。 これでは視界が悪く、銃で相手に狙いを定められない。 一方、久保史緒里はまだ魔法の使用を躊躇していた。 危険度の高い魔法で、今使えば仲間の阪口まで巻き込む恐れがあったのだ。 その隙を逃さなかったのが林瑠奈。 「やああっ」 数本の大木を、動かない久保史緒里に向けて放った。 大木が久保史緒里の上に落ちて、山の様に積み上がった。 「っ!!!!!」 「史緒里!」 叫ぶ阪口。やられた。1vs2。一気に形勢が傾いてしまう。 さらに煙がせまってきた。 「ゴホッ、ゴホッ」 咳込む。この煙はまずい。これに包まれたら、もう何もできなくなる。 (よし!) 田村真佑は微笑む。 (これなら勝てる!先輩達に勝て…) ドゴォォォンッッッッ!!!!!!!!!!
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26 :君の名は(東京都) (ワッチョイ ff6e-uxDf)[]:2021/12/21(火) 01:24:46.47 ID:/lP8GyDt0 - 名前:サンヨン作者(東京都) (ワッチョイ f29d-szvh)[] 投稿日:2021/11/07(日) 23:51:47.48 ID:h3AVzDve0 [9/9]
巨大な爆発音と共に、大木の山が吹き飛ぶ。 その中心、血まみれの久保史緒里が両手を広げて立ち尽くしていた。 「イッツ、ショウタイム」 久保の右手が動く。 林瑠奈が盾にしていた木々ごと爆発で吹き飛んだ。 久保の左手が動く。 田村真佑は危険を感じ、咄嗟にケムリの中に身を隠した。 だが爆発で、ケムリが吹き飛んでしまう。 「見えた」 その瞬間、阪口珠美がようやく姿の見えた田村真佑に向けて突進する。 パンッ!パンッ!パンッ! 突進しながら拳銃を乱射。 2発は足元に外れた。1発が田村真佑の腹部に命中する。 「うっ!」 「とどめだ!」 さらに追い打ちをかける阪口。その体を光の線が貫いた。 何が起きたのかもわからず、阪口は手から拳銃を落とし、前のめりに倒れた。 銃で撃たれた田村真佑は口から血を流し、瞳からは大粒の涙をこぼす。 その視界に、光を放った人物が映っていた。 (嗚呼、来てくれたのね…) この光は私たちの希望の光。4番目の光。 「かっきー」
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27 :君の名は(東京都) (ワッチョイ ff6e-uxDf)[]:2021/12/21(火) 01:25:04.85 ID:/lP8GyDt0 - 名前:サンヨン作者(東京都) (ワッチョイ f29d-szvh)[] 投稿日:2021/11/08(月) 19:27:46.75 ID:1BMtu9+N0 [1/5]
丘の下に、賀喜遥香が立っていた。 魔法「光」をその手にかざして。 みんなを探して走り続けていた彼女は、 銃声と爆発音に気付き、急いでこの場に駆けつけたのであった。 そして賀喜遥香はもう一人、久保史緒里にも光線を放つ。 「くっ!!」 ボンッ!!!! 久保は爆風の勢いで自らの体を飛ばし、光線を避ける。 その隙に賀喜遥香は田村真佑の元へ駆け寄った。 賀喜は泣き出しそうな顔で、血の滲んだ田村の腹部を見る。 「まゆたん」 「かっきー、まだ油断しないで」 離れた場所で、血まみれの久保史緒里がこちらを睨んでいた。 「久保さんの魔法は爆発。強いよ」 「うん」 賀喜遥香も久保を見る。 光というこちらの手の内もバレた。簡単に勝てる相手ではない。 久保史緒里もまた、賀喜遥香の光の手強さを承知していた。 爆発と光。 どちらも一撃で相手を殺傷できる威力を秘めている。
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28 :君の名は(東京都) (ワッチョイ ff6e-uxDf)[]:2021/12/21(火) 01:25:27.01 ID:/lP8GyDt0 - 名前:サンヨン作者(東京都) (ワッチョイ f29d-szvh)[] 投稿日:2021/11/08(月) 19:29:35.78 ID:1BMtu9+N0 [2/5]
(やれやれ) クラっと一瞬眩暈がした。 あの大木のダメージが今頃きてる。 (これ以上、血を流すのはまずい) 賀喜と田村を見据えながら、少しずつ後ろに下がる。 久保が下がることに気付き、賀喜も田村を庇いながら下がる。 (この人と戦ったら、たぶんお互いタダではすまない) (今はそれよりも、まゆたんを…) 久保史緒里と賀喜遥香。 互いに、今はこれ以上の戦闘を避けたいという気持ちが一致した。 それぞれ反対側から丘を下る。 こうして計5人の魔法が飛び交った丘の乱戦は、ひとまず幕を降ろした。 『林瑠奈、死亡!勝者、久保史緒里!!』 『阪口珠美、死亡!勝者、賀喜遥香!!』 丘を降りて、茂みに身を隠した賀喜遥香と田村真佑。 だが、腹部を銃で撃たれた真佑は重症であった。 「まゆたん…」 「そんな顔しないで…かっきー」 泣き出しそうな賀喜を、真佑の方がなだめる。
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29 :君の名は(東京都) (ワッチョイ ff6e-uxDf)[]:2021/12/21(火) 01:25:55.50 ID:/lP8GyDt0 - 名前:サンヨン作者(東京都) (ワッチョイ f29d-szvh)[] 投稿日:2021/11/08(月) 19:31:58.97 ID:1BMtu9+N0 [3/5]
なんとかしたい。 だけどここは無人島。病院も医者もいない。どうにもできない。 せっかく、せっかく再会できたのに。 ボロッボロッと賀喜は泣き崩れる。 「私はもう助からない、自分でわかる」 「やだ!やだ!」 「かっきーは行って。他のみんなを助けてあげて」 「やだ!やだ!まゆたんといる!」 「ダメ!」 ビクッと震える賀喜。 真佑のこんな真剣に怒った顔を初めて見た。 ぎゅっと両手を握って訴える。 「あなたはみんなを救う力をもっている。私たちの希望なんだよ。 きっと今もどこかで、あなたの助けを待っている子がいる。 だから、あなたは行って。私に構わず、もう行って」 「ウッ…ウウッ…ウウッ…」 号泣する賀喜遥香。 泣きながら、コクリと頷く。 繋いでいたその手を離すと、くるりと背を向けて走り出した。
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30 :君の名は(東京都) (ワッチョイ ff6e-uxDf)[]:2021/12/21(火) 01:26:23.19 ID:/lP8GyDt0 - 名前:サンヨン作者(東京都) (ワッチョイ f29d-szvh)[] 投稿日:2021/11/08(月) 19:35:31.19 ID:1BMtu9+N0 [4/5]
やっとわかった。わかった。君の存在。 当たり前すぎて気づかなかった。 小さくなっていく賀喜遥香の背中を、田村真佑は泣きながら見送る。 (本当は2人で行きたかった…ごめんね全部任せちゃって…) (みんなのことを…お願い…ね…) そのまま、田村真佑は静かに息を引き取った。 『田村真佑、死亡!!』 叱られた賀喜遥香は走る。泣きながら走る。 田村真佑に託された言葉ひとつひとつを胸に。 大人になって、初めてだった。 いつもはあんなやさしい君に叱られた。 (もう迷わない!) (私がみんなを助ける!) 【第2章 君に叱られた 終】 3期生 全12人 死亡者2人 生存者残り10人 4期生 全16人 死亡者5人 生存者残り11人
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31 :君の名は(東京都) (ワッチョイ ff6e-uxDf)[]:2021/12/21(火) 01:26:51.66 ID:/lP8GyDt0 - 名前:サンヨン作者(東京都) (ワッチョイ f29d-szvh)[] 投稿日:2021/11/08(月) 19:43:39.87 ID:1BMtu9+N0 [5/5]
【3期】 ・生存者残り10人 伊藤理々杏、岩本蓮加「岩」、梅澤美波「重力」、 久保史緒里「爆発」、佐藤楓、中村麗乃、向井葉月 山下美月「闇」、吉田綾乃クリスティー、与田祐希 ・死亡者2人 大園桃子「風」、阪口珠美「銃」 【4期】 ・生存者残り11人 遠藤さくら、賀喜遥香「光」、掛橋沙耶香「保険」 金川紗耶「速」、北川悠理、佐藤璃果、柴田柚菜「雷」 清宮レイ、筒井あやめ、早川聖来「火」、松尾美佑 ・死亡者5人 黒見明香「功夫」、田村真佑「煙」、林瑠奈「木」 矢久保美緒「砂」、弓木奈於「弓」
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32 :君の名は(東京都) (ワッチョイ ff6e-uxDf)[sage]:2021/12/21(火) 01:27:11.87 ID:/lP8GyDt0 - 名前:サンヨン作者(東京都) (ワッチョイ f29d-szvh)[] 投稿日:2021/11/09(火) 21:10:41.35 ID:ipJofECS0 [1/6]
【第3章 Out of the blue】 島の各地で3期と4期の戦いは加速する。 森の中で、向井葉月と早川聖来が対峙していた。 「戦うしかないんですよね」 「うん。みんな戦っている。もう戦うしかないよ」 向井葉月が手を広げると、大きな白い物体が飛び出してきた。 (なんやそれ) 白い物体にぶつかる早川聖来。 ドカそうとするが、体にくっついて離れない。 「こ、これって…」 「そう。おモチだよ」 向井葉月の魔法「餅」 「一度捕まったらもうくっついて離さないよ。これで…」 「…そうですか」 二ヒヒと笑う早川聖来。その体が真っ赤な炎に包まれる。 早川聖来の魔法「火」。
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33 :君の名は(東京都) (ワッチョイ ff6e-uxDf)[]:2021/12/21(火) 01:27:33.19 ID:/lP8GyDt0 - 名前:サンヨン作者(東京都) (ワッチョイ f29d-szvh)[] 投稿日:2021/11/09(火) 21:11:45.27 ID:ipJofECS0 [2/6]
「一丁上がり」 ほどよくお焦げのついた焼き餅が出来上がった。 向井葉月は目を丸くする。 餅にとって火は相性が最悪だった。 炎をまとまった早川聖来が先輩に向けて手を広げる。 「すいません。なるべく苦しむ前に終わらせますね」 決着は一瞬でついた。 『向井葉月、死亡!勝者、早川聖来!!』 勝った。初めての戦い。初めての勝利。 早川聖来は今さら体が震え出してきた。ドッと疲れも襲ってくる。 (まゆたん…かっきー…私もやるわ…) 4期のお姉さんとして、先頭に立ってみんなを引っ張る。 (でも今は少し休もう…疲れちゃったし) どこか一休みできる場所を探すため、振り返った早川。 そこに佐藤楓の姿を見つける。 (う、うそ…) 「よくも葉月を…」 佐藤楓は見たこともない怒りの形相をしていた。 そしてすぐに襲いかかってきた。
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34 :君の名は(東京都) (ワッチョイ ff6e-uxDf)[]:2021/12/21(火) 01:29:00.20 ID:/lP8GyDt0 - 名前:サンヨン作者(東京都) (ワッチョイ f29d-szvh)[] 投稿日:2021/11/09(火) 21:12:39.26 ID:ipJofECS0 [3/6]
(そんなー!連戦なんて!) 予期できないこと。まさかまさかの急展開。 聖来はもう一度気力を振り絞り、戦闘態勢に入る。 2人は同時に魔法を放った。 早川聖来の火。そして佐藤楓の魔法「氷」。 分厚い氷壁が炎を阻む。 真っ赤な炎が氷壁を溶かす。 奇しくも相反する属性同士の戦い。 「うぐぐぐぐ…」 「んんんんん…」 2人の中央で、魔力と魔力がぶつかりあう。 (やばい!このままじゃ…) スタミナに定評のある佐藤楓はまだまだ元気である。 先の戦闘で無駄に餅を焼いた分、聖来は無駄に疲労している。 (このままじゃ…力がなくなって…) 脳裏に氷漬けとなった自分の姿が浮かぶ。 (…負ける?) 火と氷の激突は、互いの体力を消耗しあう長期戦となった。 同時刻、別の場所でも新たな戦いが始まる。
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35 :君の名は(東京都) (ワッチョイ ff6e-uxDf)[]:2021/12/21(火) 01:29:40.29 ID:/lP8GyDt0 - 名前:サンヨン作者(東京都) (ワッチョイ f29d-szvh)[] 投稿日:2021/11/09(火) 21:27:16.79 ID:ipJofECS0 [4/6]
ずっと行動を共にしていた筒井あやめと清宮レイは、 前方の中村麗乃と、後方の吉田綾乃クリスティーに囲まれていた。 「レイちゃん、挟まれてる」 「うん、もうやるしかないってことだよ」 魔法「力」。 強力なパワーをその身に宿した清宮レイが、中村麗乃に向けて飛び出す。 「やああああああああああ!!!」 突如、清宮の足元の大地が突き上がった。 「あああああああああああ!!!」 叫びながら清宮は吹っ飛んだ。 固い岩肌に激突しそうになったところ、大きな水の固まりで守られた。 (ブクブク…これ…は…あやめちゃんの!) 筒井あやめの魔法「水」が、間一髪、清宮レイの窮地を救う。 「大丈夫、レイちゃん」 「うん、ありがと。でもあれって…」 中村麗乃は、魔法「地」で周りの地面を盛り上げていた。 これでは、近接戦向けの清宮では迂闊に近づけない。 「こっちは私がなんとかするから」 水の筒井あやめが、地の中村麗乃の方を向く。 麗乃がもう一度大地を突き上げる。 迫りくる大地の固まりを、あやめは水で押し流した。 (負けない!)
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36 :君の名は(東京都) (ワッチョイ ff6e-uxDf)[sage]:2021/12/21(火) 01:30:05.34 ID:/lP8GyDt0 - 名前:サンヨン作者(東京都) (ワッチョイ f29d-szvh)[] 投稿日:2021/11/09(火) 21:28:58.30 ID:ipJofECS0 [5/6]
「あやめちゃんお願い!よーしじゃあ私はあっちだ!」 力の清宮レイ、今度は反対側、吉田綾乃クリスティーに向けて突進。 今度は地面も何も邪魔が入らない。 清宮レイの両手が吉田綾乃クリスティーに届く。 「やああああああああああ!!!」 「かかったね」 その瞬間、吉田綾乃クリスティーの身体が右と中央と左、3つに分裂した。 魔法「分身」。 吉田と綾乃とクリスティー。 3人に分身する魔法。つまりその戦闘能力は3倍! 1vs1のはずが、一瞬にして1vs3の状況! (終わりよ!) 3人に囲まれ絶体絶命の清宮レイは、 そんなことお構いないしに、3人まとめてぶつかっていった。 「やあああああああああああああああああああああああああ!!!」 「へ?」「へ?」「へ?」 止まらない。止められない。 吉田と綾乃とクリスティー。3人がかりだとゆうのに。 清宮レイが驚愕のパワーで3人まとめて一気に押し込む。 「パワアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!!!」 「きゃあ!」「きゃあ!」「きゃあ!」 そのまま固い岩壁まで3人まとめて一気に突き飛ばした。
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37 :君の名は(東京都) (ワッチョイ ff6e-uxDf)[sage]:2021/12/21(火) 01:30:33.83 ID:/lP8GyDt0 - 名前:サンヨン作者(東京都) (ワッチョイ f29d-szvh)[] 投稿日:2021/11/09(火) 21:30:11.98 ID:ipJofECS0 [6/6]
決着。 吉田綾乃クリスティーを倒した清宮レイは、すぐ振り返る。 中村麗乃と戦っている筒井あやめの助太刀に…。 と思ったが、もうその必要はなかった。 海からきた10m超の巨大な津波が、中村麗乃を飲み込むところだったのだ。 麗乃は大地を盛り上げて防波壁を造ったが、それで防げるレベルではなかった。 これが、筒井あやめの魔法「水」。圧巻の破壊力。 「ハハ…あやめちゃん、味方でよかった〜」 笑顔の清宮レイが、筒井あやめの元に駆け寄り、 パチンと手を叩いて勝利を祝った。 「2人一緒なら、誰にも負けないね!」 「いたいっ!」 『吉田綾乃クリスティー、死亡!勝者、清宮レイ!!』 『中村麗乃、死亡!勝者、筒井あやめ!!』 清宮レイと筒井あやめ。 序盤、3期の猛者たちにもっていかれた流れを、 この最強(さいつよ)JKコンビが、一気に4期の流れに引き戻した!
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38 :君の名は(東京都) (ワッチョイ ff6e-uxDf)[]:2021/12/21(火) 01:31:06.02 ID:/lP8GyDt0 - 名前:サンヨン作者(東京都) (ワッチョイ f29d-szvh)[] 投稿日:2021/11/10(水) 21:28:50.45 ID:s/qLtSvw0 [1/2]
だがもちろん、あの3期の猛者たちがこのまま大人しくしている訳はない。 掛橋沙耶香はみつからないよう、こそこそ移動していた。 何しろ、肝心の魔法がまったく使えないのだ。 これでは戦いにすらならない。 3期生の誰かにみつかった途端、人生が終わってしまう。 (みつからないように…みつからないように…) 「掛橋ちゃん」 ビクッと飛び上がる掛橋。そしてゆっくり振り返る。 自分の名を読んだその声の主は…。 (神様!神様!神様!同期の子でありますように!もしくは優しい先ぱ…) 背後で山下美月先輩が、優しく微笑んでいた。 「遊ぼうか」 深い山の中で、松尾美佑は目を疑っていた。 楽しそうに木登りしている子猿がいる。 (子猿じゃない!あれ、与田さんだ!) 海を出て次は山で楽しんでいた何も知らない与田祐希も、 松尾美佑の存在に気付いて、木の上から笑顔で手を振る。 「遊ぼうか」
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39 :君の名は(東京都) (ワッチョイ ff6e-uxDf)[]:2021/12/21(火) 01:31:45.36 ID:/lP8GyDt0 - 名前:サンヨン作者(東京都) (ワッチョイ f29d-szvh)[] 投稿日:2021/11/10(水) 21:31:11.66 ID:s/qLtSvw0 [2/2]
バッタリと。山の斜面の角をまがったところで、本当にバッタリと。 金川紗耶は梅澤美波と遭遇した。 (っ!!) 魔法「速」で誰より速く移動できる金川は、咄嗟に距離を置く。 だが梅澤は攻撃をしてこない。妙に落ち着いている。 「まって、聞きたいことがあるんだけど」 異常事態でのその落ち着きに、逆に怖さを感じる。 この人が弓木を殺したことを知っている。 だが何を聞きたいのかという好奇心が怖さを凌駕した。 「聞きたいこと?何ですか、梅澤さん」 「ああ、遠藤さくらの居場所を知らない?」 この人の口から大親友の名前が出て、ゾッとした。 遠藤さくらの居場所を訪ねる理由。 言うまでもない、梅澤美波の瞳が雄弁に告げている。 自分の速さならば、ここから逃げ出すことはできる。 だがその名前を聞いてはもう、逃げ出す訳にはいかなくなっていた。 「知りません。まぁ知ってても教えませんけどね!」 ドンッ! 最高速度で梅澤美波の背後に回り込む金川紗耶。 (おっ、やる気か) 梅澤美波の瞳に鬼が宿る。 「お前、やんちゃだねぇ」
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40 :君の名は(東京都) (ワッチョイ ff6e-uxDf)[sage]:2021/12/21(火) 01:32:13.78 ID:/lP8GyDt0 - 名前:サンヨン作者(東京都) (ポキッー f29d-szvh)[] 投稿日:2021/11/11(木) 21:36:23.94 ID:KqGVXq/L01111 [1/3]
実はこのとき、遠藤さくらを誰よりも先に見つけていた人物がいた。 空飛ぶ少女、北川悠理。 魔法「空」。 優雅に空を歩きながら、彼女を見つけ出したのだ。 いつものゆったりとした口調で声を掛けた。 「さくらちゃ〜ん」 遠藤さくらは高台の崖の上、一人縮こまって泣いていた。 ふわふわ近付いてきた北川悠理に気付いて、思わず叫ぶ。 「まって!悠理ちゃん!」 「え?」 「ダメなの!私に近付いちゃダメ!」 驚いた。 あの穏やかな遠藤さくらがここまで声を荒げるなんて。 動揺する北川。 一番最初に大園桃子さんを殺したというアナウンス。 (まさか…そんな…本当にさくらちゃんが…) 動揺していて直前まで気付けなかった。 空飛ぶ少女に狙いを定める存在が、近付いていたこと。
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41 :君の名は(東京都) (ワッチョイ ff6e-uxDf)[sage]:2021/12/21(火) 01:33:03.74 ID:/lP8GyDt0 - 名前:サンヨン作者(東京都) (ポキッー f29d-szvh)[] 投稿日:2021/11/11(木) 21:37:31.06 ID:KqGVXq/L01111 [2/3]
北川悠理目がけて、巨大な岩が物凄い勢いで飛んできた。 「ふぇ!!!!!!?」 ドォォォォォォォンッ!!!!!!!!! 突然の出来事に、遠藤さくらは固まる。 さきほどまで目の前にいた北川悠理が、 いきなり巨大な岩石に弾き飛ばされたのだ。 おそるおそる、岩の飛んできた方向に視線を向ける。 そして、崖の下に立つ岩本蓮加と目が合った。 『北川悠理、死亡!勝者、岩本蓮加!!』 (こんなところに!) 空飛ぶ北川を見つけて追ってきた蓮加は、まさかの大物発見に高ぶる。 血が血で争う残酷な3期と4期の殺し合い。 そのデスゲームを始めた張本人。遠藤さくら。 今や3期ほぼ全員がその首を狙う存在。 「桃子の仇!」 魔法「岩」。 蓮加は再び巨大な岩石を浮かべると、さくらに向けて発射した。
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42 :君の名は(東京都) (ワッチョイ ff6e-uxDf)[sage]:2021/12/21(火) 01:33:28.70 ID:/lP8GyDt0 - 名前:サンヨン作者(東京都) (ポキッー f29d-szvh)[] 投稿日:2021/11/11(木) 21:38:49.05 ID:KqGVXq/L01111 [3/3]
その瞬間、遠藤さくらの体から凄まじい突風が吹いた。 風が岩の軌道を変える。 ズドォォォォォォォンッ!!!!!!!!! 岩石は、さくらに命中することなく、崖に激突した。 (風?) 追撃の構えをとる岩本蓮加。 ゆっくりと立ち上がり、叫ぶ遠藤さくら。 「ごめんなさい!私は…私は戦いたくないです!」 「ハ?」 「殺し合いなんて絶対に嫌です!」 「何言ってんだお前」 もう一度、岩石を飛ばす蓮加。 また、突風が吹いた。 ズドォォォォォォォンッ!!!!!!!!! 崖にぶつかり砕け散る岩石。 「お前がはじめたんだろ!殺し合いを!」 涙ぐんで吠える蓮加。 そこにもう、遠藤さくらの姿は無かった。
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- 乃木坂46バトロワ小説『サンヨン』
43 :君の名は(東京都) (ワッチョイ ff6e-uxDf)[]:2021/12/21(火) 01:33:56.65 ID:/lP8GyDt0 - 名前:サンヨン作者(東京都) (ワッチョイ 639d-kg9b)[] 投稿日:2021/11/12(金) 21:24:36.12 ID:5m4JFtZh0 [1/4]
(か、体が…動かない…) すごい速度でバックをとり、攻撃をしかけた金川紗耶だったが、 突如見えない何かに押し潰されて、地面でもがいていた。 これが梅澤美波の強烈な魔法「重力」。 「もう一度聞く。遠藤さくらはどこ?」 「…言いましたよね」 重力に潰されながら不敵に笑う金川。 ゆっくりと歩み寄る梅澤。 「知ってても絶対に教えな…!」 ドンッ!!!! 月面のクレーターの様に、周囲の地面ごと押し潰す。圧倒的重力。 金川紗耶の細い体が地中にめり込んだ。 もう動かなくなった後輩に、梅澤は一瞥をくれる。 「やんちゃも、ほどほどにしときな」 『金川紗耶、死亡!勝者、梅澤美波!!』
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44 :君の名は(東京都) (ワッチョイ ff6e-uxDf)[sage]:2021/12/21(火) 01:34:33.93 ID:/lP8GyDt0 - 名前:サンヨン作者(東京都) (ワッチョイ 639d-kg9b)[] 投稿日:2021/11/12(金) 21:25:22.51 ID:5m4JFtZh0 [2/4]
掛橋沙耶香は、恐怖で尻もちをついていた。 肌で感じる。 決して抗うことのできない絶望的な力の差。 「あ…あ…あぁ…」 「お利口だね。そう、抵抗してもムダだよ」 「…ぃ、いや」 「バイバイ」 山下美月の身体から出た漆黒の闇は瞬く間に膨れ上がり、 そのまま怯える掛橋沙耶香を飲み込んで、消した。 後に何も残さない。 もはや戦いともいえない、一瞬の決着。 「あーあ。つまんないな」 誰もいなくなった坂道で、山下美月は一人目を伏せる。 後輩に勝っても、それが何だというのか。 「どうせなら、もっと強い人とやりたいよ…」 空を見上げて、そこにある先輩を思い浮かべた。 (飛鳥さん…)
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45 :君の名は(東京都) (ワッチョイ ff6e-uxDf)[sage]:2021/12/21(火) 01:35:18.81 ID:/lP8GyDt0 - 名前:サンヨン作者(東京都) (ワッチョイ 639d-kg9b)[] 投稿日:2021/11/12(金) 23:14:39.26 ID:5m4JFtZh0 [3/4]
松尾美佑の魔法「月」。 月の光を浴びることで無敵の強さを得ることができる。 「ぐるぐる〜」 森の斜面がグルグルうずまいて、巻き込まれる松尾。 夜は最強の魔法も、昼間は全く役に立たなかった。 「あああああああああああああ」 木登りして遊んでいた与田祐希は、 いっしょに遊ぼうと誘った松尾美佑が いつの間にかいなくなっていることに気付く。 さっきの矢久保に続き、また後輩がいなくなってしまった。 「むむ〜」 何も知らない与田も、流石に怪しんできた。 「あ!もしかして!」 与田も気付いた! 「みんな、かくれんぼしてるの!?」 『松尾美佑、死亡!勝者、与田祐希!!』
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46 :君の名は(東京都) (ワッチョイ ff6e-uxDf)[sage]:2021/12/21(火) 01:35:58.28 ID:/lP8GyDt0 - 名前:サンヨン作者(東京都) (ワッチョイ 639d-kg9b)[] 投稿日:2021/11/12(金) 23:15:19.98 ID:5m4JFtZh0 [4/4]
小さな洞穴の中に身を隠しながら、佐藤璃果は泣いていた。 みんな。みんな死んでしまった。 黒見明香、林瑠奈、松尾美佑、弓木奈於。 新4期と呼ばれる仲間たちが、もう自分以外誰もいない。 その現実に押し潰されそうだった。 「あれ〜そこに誰かいる〜」」 ドキッとした。 洞穴の入り口に誰かが立っている。 その声の主は、3期生の伊藤理々杏。 「は、はい」 ついに自分の番が来てしまった。 もはや逃げ場はない。 佐藤璃果は恐る恐る入口へと向かう。 「璃果ちゃんか」 「理々杏さん」 不敵な笑みを浮かべた伊藤理々杏が、両の拳を構えて待っていた。 魔法「喧嘩」。 「ボク強いよ?喧嘩してみる?wシュッシュ」
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