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名も無き被検体774号+@無断転載は禁止
俺を拾った女の話を書く [無断転載禁止]©2ch.net

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1 :名も無き被検体774号+@無断転載は禁止[]:2017/05/21(日) 00:19:51.50 ID:AvmYbN9t
語り。長文。文章下手。
でも、語らせてくれ。
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4 :名も無き被検体774号+@無断転載は禁止[]:2017/05/21(日) 00:22:48.60 ID:AvmYbN9t
勝手に書きます。批判等は最後にうけます。読んでしまったひとの時間を無駄にしたことを、先に詫びます。
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5 :名も無き被検体774号+@無断転載は禁止[]:2017/05/21(日) 00:23:27.92 ID:AvmYbN9t
早っ。
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8 :名も無き被検体774号+@無断転載は禁止[]:2017/05/21(日) 00:24:27.65 ID:AvmYbN9t
文字通り、俺はある女に「拾われた」
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9 :名も無き被検体774号+@無断転載は禁止[]:2017/05/21(日) 00:25:08.86 ID:AvmYbN9t
当時、ロックバンドをしていた俺は、ライブの打ち上げの途中、メンバーと別れてひとり酒を飲んでいた。

「ある悩み」を抱えてた俺は打ち上げ特有の馬鹿騒ぎに付き合う気になれず、ひとりで静かに悩み事の整理をしたかった。
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11 :名も無き被検体774号+@無断転載は禁止[]:2017/05/21(日) 00:25:59.58 ID:AvmYbN9t
打ち上げにはライブスタッフやメンバーの関係者、ライブには必ず足を運んでくれる固定ファンなど、売れてないバンドにもかかわらず結構な数の「知らないひと」がいて、その知らないひとと話をするのが少し苦痛だった。
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13 :名も無き被検体774号+@無断転載は禁止[]:2017/05/21(日) 00:26:39.72 ID:AvmYbN9t
脱退したメンバーの後釜という俺の立場では、内輪トークの盛り上がりはただの疎外感しか生まなかった。

打ち上げを早々に切り上げて、俺は馴染みのバーで悩み事を肴に、酒のペースを忘れて飲み続けていた。記憶に残っている最後の映像は、カウンターに置かれたスコッチの琥珀色だった。
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14 :名も無き被検体774号+@無断転載は禁止[]:2017/05/21(日) 00:27:15.55 ID:AvmYbN9t
目を覚ますと、あっ生きてた、という女の声がした。

「歩道でね、いまどき見ないくらいの見事な行き倒れっぷりだったよ」

女は笑いながら言った。
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15 :名も無き被検体774号+@無断転載は禁止[]:2017/05/21(日) 00:28:06.79 ID:AvmYbN9t
「あなたを中心に人だかりが出来ててさ、誰かが警察呼んで、とか言ってたから、友達と一緒にあなたを拾ってきちゃったの」


「あっ、でも大丈夫、エッチな事はしてないからね。」
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16 :名も無き被検体774号+@無断転載は禁止[]:2017/05/21(日) 00:28:49.51 ID:AvmYbN9t
女は一方的に話した。

何か飲むかと尋ねられ、水が欲しいと頼むと代わりに黒い液体を差し出された。
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17 :名も無き被検体774号+@無断転載は禁止[]:2017/05/21(日) 00:29:23.78 ID:AvmYbN9t



「特製黒酢蜂蜜ジュースだよ」

女は得意気に言った。
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18 :名も無き被検体774号+@無断転載は禁止[]:2017/05/21(日) 00:29:59.61 ID:AvmYbN9t
歳は同じか少し上か、という感じだった。長い髪は多少ウェーブがかっていて、小綺麗にまとめあげられていた。慌ただしく部屋を片付けたり俺の世話をやくその容姿は、細身で背丈も幾分あった。

「じゃあ、もう仕事にいくから。鍵、置いておくからお店まで返しに来てね。」
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20 :名も無き被検体774号+@無断転載は禁止[]:2017/05/21(日) 00:30:32.78 ID:AvmYbN9t
。」


「あと、黒酢蜂蜜ジュース好きに飲んでいいからね。部屋は勝手に触らないように。じゃ、行ってきます」

そう残すと女は足速に部屋を後にした。「お店」の場所も名前も告げずに。
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21 :名も無き被検体774号+@無断転載は禁止[]:2017/05/21(日) 00:31:25.60 ID:AvmYbN9t
ひとり部屋に残された俺は、今自分が置かれてる現実を順を追って整理してみた。

ライブの打ち上げがあった。途中で抜けてバーに行った。女の部屋にいる。スジが通らない。
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22 :名も無き被検体774号+@無断転載は禁止[]:2017/05/21(日) 00:32:01.46 ID:AvmYbN9t
飲み過ぎて記憶がなくなることは、初めてではない。道に倒れていたというのは流石に初めてだが、起こり得ない事ではない。

しかし、見ず知らずの人間に介抱され、更には泊めてもらったというのは、有難いを通り越し少々不気味さを感じた。こんな事が起こり得るのだろうか。
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24 :名も無き被検体774号+@無断転載は禁止[]:2017/05/21(日) 00:33:09.10 ID:AvmYbN9t
自分に置き換えて考えてみても、それは起こり得ない事だった。見ず知らずの女が道で倒れている。介抱くらいはするかもしれない。けれども最終的にはは警察に任せるであろう。素性の知れない人間に関われば親切が仇となり返ってくることはままある。異性であれば当然、性的な問題もあるだろう。俺が変質者だったら彼女はレイプされていたかも知れない。
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25 :名も無き被検体774号+@無断転載は禁止[]:2017/05/21(日) 00:33:43.79 ID:AvmYbN9t
あるいは、美人局の様な事がこれから起こるのだろうか。ヤクザがこの部屋に乗り込んで来て、ひとの女に手を出しやがって、と金を脅し取られるのだろうか。しかし、彼女は「エッチはしていない」と言った。それはつまりセックスをしていないという事だろう。よく分からなかった。
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26 :名も無き被検体774号+@無断転載は禁止[]:2017/05/21(日) 00:34:29.58 ID:AvmYbN9t
とりあえず場所の把握をする必要がある。ここの住所まで分からないにしろ、だいたいの位置が分かれば昨日の足取りが掴めるかもしれない。借りた鍵で部屋の施錠をして、外に出て見る事にした。

足取りはすぐに掴めた。打ち上げ会場、バー、女の部屋、それから駅。多少ジグザグはするがほぼ直線で結ぶことができる位置関係だ。おそらくバーから駅に向かう途中で倒れていたのだろう。そばには誰かが吐いた吐しゃつ物が片付けられないで残っている。
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27 :名も無き被検体774号+@無断転載は禁止[]:2017/05/21(日) 00:35:07.69 ID:AvmYbN9t
おそらくは俺のものであろう。

俺は一度女の部屋に戻ることにした。
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28 :名も無き被検体774号+@無断転載は禁止[]:2017/05/21(日) 00:35:57.58 ID:AvmYbN9t
居場所が分かり帰る方法も掴めたけれど、問題は「鍵」をどうするか、という事だった。

女は鍵を返せと言った。だが、肝心の女の居どころが分からない。開け放しで帰る訳にもいかない。かと言って持ち帰る訳にもいかない。鍵を掛け、新聞受けに放って置いたとして、鍵がスペアキーでなければ、困るのは女の方だ。何よりも、女にもう一度会って礼を言いたかった。
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29 :名も無き被検体774号+@無断転載は禁止[]:2017/05/21(日) 00:39:08.65 ID:AvmYbN9t
俺は女が帰ってくるまで待つことにした。
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30 :名も無き被検体774号+@無断転載は禁止[]:2017/05/21(日) 00:39:57.15 ID:AvmYbN9t
女の部屋は小綺麗に片付けられていた。百円均一の廉価店で買った様なものを上手に工夫して収納を確保していた。

大量のCD。音楽が好きなのであろうか。

それから、これもまた、大量の女性ファッション誌。
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31 :名も無き被検体774号+@無断転載は禁止[]:2017/05/21(日) 00:40:36.91 ID:AvmYbN9t
そして、十数冊の文庫本。小説だろうか。シェイクスピア、トルストイ、カフカ、スタインベック、カミュ・・・全て、聞いた事はあるが読んだ事はないものだった。そして全てが教科書に出てきそうな海外の作家のものだった。
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32 :名も無き被検体774号+@無断転載は禁止[]:2017/05/21(日) 00:41:21.78 ID:AvmYbN9t
退屈凌ぎに、一番薄いという理由でカミュの「シーシュポスの神話」という本を手にとってみた。
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33 :名も無き被検体774号+@無断転載は禁止[]:2017/05/21(日) 00:42:09.11 ID:AvmYbN9t



「神を欺いたことで、シーシュポスは神々の怒りを買ってしまい、大きな岩を山頂に押して運ぶという罰を受けた。彼は神々の言い付け通りに岩を運ぶのだが、その岩には細工がしてあって、山頂に運び終えたその瞬間に岩は転がり落ちてしまうのだ・・・」
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34 :名も無き被検体774号+@無断転載は禁止[]:2017/05/21(日) 00:43:04.28 ID:AvmYbN9t
読んでいる途中、携帯電話が鳴った。バンドメンバーのDからだ。昨日、打ち上げを途中で抜けてきた事が少し後ろめたかったが出ない訳にはいかない。

「もしもし、たかお君?昨日はどうしちゃたの?」

Dは軽く責めるような口調で言った。
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35 :名も無き被検体774号+@無断転載は禁止[]:2017/05/21(日) 00:45:16.87 ID:AvmYbN9t
「ごめん。ちょっと調子悪くなって、先に帰っちゃって。昨日は集計どうだった?CDは売れた?」

「客入りは悪くないし、CDも結構売れた。機材、預かってるから、また取りに来てよ。」

じゃあ、またスタジオで、と要件だけ告げるとDは電話を切った。
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36 :名も無き被検体774号+@無断転載は禁止[]:2017/05/21(日) 00:46:20.30 ID:AvmYbN9t
Dはこのバンドでギターを担当していた。曲を作り、アレンジをして、バンドの方向性を決めるいわゆる「バンドマスター」としての役割りも担っていた。俺は抜けたドラムスの代わりとして入ったばかりで、お互いまだ多少の距離を感じていた。今回のライブは自主制作CDの発売ライブという位置づけで、打ち上げを途中で抜けるというのはメンバーとして、やはりまずかったのかもしれない。
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37 :名も無き被検体774号+@無断転載は禁止[]:2017/05/21(日) 00:46:59.91 ID:AvmYbN9t
軽い動揺から本を諦めた俺は、いつ帰るかも分からない女を待つうちに、再び暴力的な睡魔に意識を奪いとられていた。
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38 :名も無き被検体774号+@無断転載は禁止[]:2017/05/21(日) 00:47:32.17 ID:AvmYbN9t
そしていつも見る夢に、また捕まっていた。
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40 :名も無き被検体774号+@無断転載は禁止[]:2017/05/21(日) 00:50:18.74 ID:AvmYbN9t
携帯電話が鳴る。電話に出る。相手がものすごい勢いで怒っている。女の声だ。内容は分からない。ただ、その怒気だけは伝わってくる。俺にも言い分がある。伝えなければと口を挟もうとする。けれども何故かこちらの言い分は全く声にならない。そうしているうちに、一方的に電話を切られ俺は呼吸が出来なくなっている。
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42 :名も無き被検体774号+@無断転載は禁止[]:2017/05/21(日) 00:51:49.01 ID:AvmYbN9t
声を出さないと不味い事になる、と懸命に声を出そうとする。けれどもやはり声が出ない。何故だか後悔の念が湧いてくる。そうこうしているうちに目が覚めるのだ・・・。
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43 :名も無き被検体774号+@無断転載は禁止[]:2017/05/21(日) 00:52:30.53 ID:AvmYbN9t
>>41
サンクス
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44 :名も無き被検体774号+@無断転載は禁止[]:2017/05/21(日) 00:53:16.17 ID:AvmYbN9t
「ねえ、ちょっと大丈夫?」

目を覚ますと女の声がした。

汗でシャツも髪の毛も濡れていた。不意に悪寒が襲った。朦朧とする意識の回復を待って伝えなければならない言葉を探した。
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46 :名も無き被検体774号+@無断転載は禁止[]:2017/05/21(日) 00:58:55.85 ID:AvmYbN9t
「ごめん、鍵を返そうと思ったんだけれど場所が分からなくて・・・」

「ごめんね、店の場所教えてなかったから。それより、うなされてたよ。本当に大丈夫?」
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47 :名も無き被検体774号+@無断転載は禁止[]:2017/05/21(日) 01:00:29.98 ID:AvmYbN9t
大丈夫、よくある事だ、といい、俺は昨日助けてもらった礼を言った。そして長居を悪く思って帰ろうとしたが、お腹が空いたなぁ、と女が言うので
昨日のお礼に食事に誘った。女は近くにある居酒屋に行きたいというので、2人で行く事にした。
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48 :名も無き被検体774号+@無断転載は禁止[]:2017/05/21(日) 01:01:15.67 ID:AvmYbN9t
生ビールとつまみを数種頼み、運ばれたビールで軽く乾杯をしたあと、お互い自己紹介をした。
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49 :名も無き被検体774号+@無断転載は禁止[]:2017/05/21(日) 01:01:51.58 ID:AvmYbN9t
女の名前は「みどり」と言った。歳は俺より二つ上で三十路に足を踏み入れるところだと言った。家から地下鉄でふた駅行ったところのデパートに入っている服屋で雇われ店長をしているとのことだ。知人に路上で酔い潰れて亡くなったひとがあるしく、放って置けなくて俺を拾ったらしい。


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50 :名も無き被検体774号+@無断転載は禁止[]:2017/05/21(日) 01:02:39.44 ID:AvmYbN9t
「まあ、悪いひとには見えなかったっていうのもあるけどね。」

少なくとも美人局でないことに、俺は安堵した。
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52 :名も無き被検体774号+@無断転載は禁止[]:2017/05/21(日) 01:03:27.27 ID:AvmYbN9t
それから、俺も少しずつ自分の話をした。人付きあいが下手で今も勉強中である事。仕事が特殊でひと月に4日しかない事もあれば、数ヶ月休みが取れない事があること。音楽を聴くのが苦手なのに、バンドマンである矛盾を抱えている事。
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53 :名も無き被検体774号+@無断転載は禁止[]:2017/05/21(日) 01:04:32.66 ID:AvmYbN9t
「えっ?じゃあ何でバンドなんかやってるの?」

みどりは笑いながら聞いた。

「要求が明確だから。」

俺は、答えた。人付きあいに於いての要求は俺には難解であった。俺は過去に2人の女の子と交際した事があった。2人とも、性格も容姿も物の好みも全く違っていた。けれども別れ際に言われた言葉だけは全く同じだった。
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54 :名も無き被検体774号+@無断転載は禁止[]:2017/05/21(日) 01:05:20.29 ID:AvmYbN9t
「たかお君が何を考えているのか全然分からない。」

それが辛い、と。
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55 :名も無き被検体774号+@無断転載は禁止[]:2017/05/21(日) 01:06:06.65 ID:AvmYbN9t
ひとに求められる事が俺にとって、一番大切な事だった。求められることが存在理由を確認できる唯一だった。求められれば出来る限りのことで返した。相手が逢いたくなったならそれが夜中でも必ず逢いに行ったし、話したいときには話すがままに、話をじっと聞いた。欲しいものがあればお金が許す限り要求されたものを渡したし、相手が望む理想の人間になれるようひたすら努力した。
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56 :名も無き被検体774号+@無断転載は禁止[]:2017/05/21(日) 01:07:13.23 ID:AvmYbN9t
ただひとつ、致命的に出来なかったこと、それは自分から、他人に何かを要求する事だった。
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57 :名も無き被検体774号+@無断転載は禁止[]:2017/05/21(日) 01:07:45.52 ID:AvmYbN9t
けれども、音楽は違った。バンドのメンバーとして、自分のパートを確実にこなせば必要とされるし、間違っていれば努力の目標をくれた。それに応える事ができる限り、俺は他人から必要とされる。それが嬉しかった。
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58 :名も無き被検体774号+@無断転載は禁止[]:2017/05/21(日) 01:08:44.96 ID:AvmYbN9t
「ふーん、バンドマンねえ。売れてんの?」

みどりは酒が回ってきたのか、少しぞんざいな言い方だった。

「だいたい、30歳過ぎてバンドやってるんだったら、もうある程度の結果が出てないとおかしいだろって話」

みどりは吐き捨てる様に言ってすぐに謝った。
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59 :名も無き被検体774号+@無断転載は禁止[]:2017/05/21(日) 01:09:32.28 ID:AvmYbN9t
「ごめん、たかお君のことじゃないから、ごめんね」

「いや、別に構わないよ。俺もそう思うし。彼氏がバンドマンなの?」
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60 :名も無き被検体774号+@無断転載は禁止[]:2017/05/21(日) 01:10:13.52 ID:AvmYbN9t
元彼氏、だけどね。みどりは言った。もともと浮気の多い男だったが、今回は本気らしく、突然の別れを告げられたそうだ。バンドは集客も上がってきていたらしい。
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61 :名も無き被検体774号+@無断転載は禁止[]:2017/05/21(日) 01:11:24.17 ID:AvmYbN9t
「7年だよ、7年!売れないバンドマンを支えた時間が、7年!たかお、分かるか?」

大分酔いが回っているようだった。口調が少し絡むような感じに変わってきた。そろそろお開きに、とみどりを促し会計を済ませ部屋まで送っていった。
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62 :名も無き被検体774号+@無断転載は禁止[]:2017/05/21(日) 01:12:14.13 ID:AvmYbN9t
部屋に入るとみどりは吐いた。やはり飲み過ぎだったのだ。みどりの吐しゃ物の始末をしていると、みどりは泊まってゆけ、といった。そして介抱しろと。

「それでこそ、五分と五分だ。」

といった。その男らしい言葉遣いに少し笑ってしまった。
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