- 3.11だからぐだぐだ話したい [無断転載禁止]©2ch.net
115 :1 ◆wTLN2DmNnU @無断転載は禁止[sage]:2017/03/19(日) 21:16:20.76 ID:/lNldn+V - みなさん、ありがとうございます
19日の朝に、バスに乗り込んだ 「お姉さんと連絡とれたんだって?」 幼馴染の言葉に、あいまいな返事をする 「こっちは、まず生きてるかどうかもわからないからなー」 なんと返事をしたらいいのかわからない お父さんは生きてるみたいだよ、というのも残酷な気もした 「死んでることが分かってる方が、気楽っちゃ気楽だわ」 と、俺が言うと、幼馴染は気まずそうな顔をした
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116 :1 ◆wTLN2DmNnU @無断転載は禁止[sage]:2017/03/19(日) 21:24:56.62 ID:/lNldn+V - バスから見える風景は、何も変わらなかった
本当に、震災なんてあったのかわからないくらいに 地元に着くまでは バスの終着点である駅前は砂っぽかった 建物は建ってはいるが、ドアが外れているものばかりで、窓も割れていて 中が散らかっているのが見えた 「ここまで来たのかよ」 幼馴染はつぶやく バスを降りると強烈な磯の香りがした 本来、駅前でこんな匂いはしないのだ まるで海岸に立っているかのような匂いだった
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117 :1 ◆wTLN2DmNnU @無断転載は禁止[sage]:2017/03/19(日) 21:34:01.23 ID:/lNldn+V - 駅前から方々にバスが出ていた
今はタダで乗れるらしい ボランティアの人、自衛隊の車両、マスコミの車がいっぱいいた 俺は、かーさんの実家のあるほうへ向かうバスに乗る予定だったが まだ、次のバスまで時間があったので 幼馴染と仮の役場に行くことにした 「とりあえず、ここで情報集めないとなー」 と、避難所の名簿をめくる幼馴染をよそに、俺は死者の名簿を見に行った 遺体安置所のご案内にはびっくりした こんなに遺体安置所があるのかと そんなに遺体があるのかと 死者の名簿には、「身元の判明した方です」書いてある そこには、かーさんの名前とじーさんの名前が並んで書かれていた やっぱり嘘じゃなかった
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118 :1 ◆wTLN2DmNnU @無断転載は禁止[sage]:2017/03/19(日) 21:43:38.86 ID:/lNldn+V - 「伝言板に、おばさんの家にいますって書いてあったわ」
幼馴染は、お父さんの居場所がわかったらしい ネットが使えない、電話もつながらない状態で有効な連絡手段は仮役場の伝言板だった 俺のかーさんの実家と、幼馴染のおばさんの家は逆方向なので ここで別れることになった 俺の乗ったバスは、まさに浸水地域を進んでいった 砂埃のせいか、なんとなく茶色っぽい めちゃめちゃになった商店街を通った このバスが通れるのは、自衛隊の人たちが瓦礫を片付けてくれたからだろう どんどん、俺の実家のほうにも近づいて行った
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119 :1 ◆wTLN2DmNnU @無断転載は禁止[sage]:2017/03/19(日) 21:52:27.58 ID:/lNldn+V - 俺の実家のほうは、建物の姿がなかった
鉄筋コンクリートの建物以外はごっそりとなくなっていた 4階建ての学校の3階に車が突き刺さっていた その周りには建物の一部だったと思われる瓦礫と、つぶれた車 商店街とは比べ物にならないくらいの、まさに壊滅状態だった 交差点があった 左に曲がるとかーさんの実家、右に曲がると俺の実家にいく道だったが 今日は左へ進んでいった
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120 :1 ◆wTLN2DmNnU @無断転載は禁止[sage]:2017/03/19(日) 21:59:40.75 ID:/lNldn+V - かーさんの実家は山あいの村で、津波とは無縁だった
地震による被害はなく、建物は無事のようだった バスを降りて、まっすぐかーさんの実家へ行く ここの小学校は、避難所になっているようで、たくさんの人がいた かーさんの実家に着いた時、玄関先にいたのはねーちゃんだった 俺の姿を見るなり泣き出した すると、家の奥からばーちゃんが顔を出した 「いやあ、俺くんか。よく来たなぁ」 「どうも、お世話になります……」
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121 :1 ◆wTLN2DmNnU @無断転載は禁止[sage]:2017/03/19(日) 22:05:05.83 ID:/lNldn+V - かーさんの実家にお世話になることになった
こたつが暖かかったので「電気はどうなってるんですか」と聞いたら 炭で暖をとっているとのことだった 水が井戸水でガスはプロパンガスなので、煮炊きには困らないそうだ ばーちゃんが淹れてくれたあたたかいお茶を飲みほしたあたりで ねーちゃんが言った 「お母さんとおじいちゃんに、会いに行こう」 つまり、遺体安置所に行こう、ということだった
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122 :1 ◆wTLN2DmNnU @無断転載は禁止[sage]:2017/03/19(日) 22:13:13.46 ID:/lNldn+V - 1kmほど歩くと、昔工場だった建物がある
そこが、遺体安置所になっていた 入口には線香を上げる台があって、薄暗い建物の中に白い棺桶がズラリと並んでいた ほのかに薬品の臭いがして、静かだった その中を、ねーちゃんのあとについて歩いて行く 「ここだよ」 棺桶の横の床には、かーさんの名前の書いたガムテープが貼られていた 棺桶の蓋には顔の部分に扉がついていたので、ねーちゃんがそれを開けた 間違いなくかーさんと分かる顔だった ちょっと顔がパンパンになっているようだったが、 それを除けば、ただただ寝ているようだった
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123 :1 ◆wTLN2DmNnU @無断転載は禁止[sage]:2017/03/19(日) 23:50:34.22 ID:/lNldn+V - 「お母さんを見つけたのは、津波の次の日の朝で」
ねーちゃんが話し始める まだ寒くて雪のちらつく朝から、家の周りの瓦礫を除けながらかーさんを探したらしい 手が出てきたのを見つけたのはとーさんで、 ねーちゃんと二人で周りの瓦礫を除けて、かーさんの全身を掘り起こしたという 「全身、きれいに出てきたのに、生きてなかったんだよね」 一番つらい作業を、二人にさせてしまった ねーちゃんがかーさんの顔を撫でているのを、俺は黙って見ていた
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